数値予報の利用の広がり

数値予報の開始当初の目標は、1~2日先までの低気圧の発達や移動の予測でした。その後、予報期間は次第に延長され、1週間先の天気予報から1か月より先の長期予報へと利用範囲が拡大しました。また、数1000kmスケールの低気圧を予報することから、台風、そして前線上の小低気圧へとより水平スケールの小さい現象の予報を実現してきました。現在では、雲の生成から降水の発生にいたる細かな過程を再現する高分解能モデルを用いることで、水平規模が数10kmスケールで数時間降り続く集中豪雨などのメソスケール現象を予報できるようになりました。

しかしながら、短時間で急激に発達する積乱雲に伴う局地的な大雨を、時間と場所を特定してピンポイントで予測することはまだ難しく、より精密で高分解能な数値予報モデルの開発を進めています。

一方、数値予報の適用範囲は天気予報から様々な分野に広がり、大気汚染物質や火山灰の移流拡散予測、オゾンや二酸化炭素といった大気微量成分の生成・消滅を考慮した分布予測も行われています。また、海流や水温・塩分の変化を予測する海洋モデルも利用されています。これらの大気と海洋モデルを結合し、地球の将来の気候を予測する地球システムモデルの開発も進んでいます。