台風に伴う高波

風が吹くと水面には波が立ち、まわりへ広がります。波は、風によってその場所に発生する「風浪(ふうろう)」と、他の場所で発生した風浪が伝わってきたり、風が静まった後に残された「うねり」の2つに分類されます。そして、風浪とうねりを合わせて「波浪(はろう)」と呼びます。

うねりとなって伝わる波は、遠くへ行くにしたがって波高は低くなり、周期が長くなりながら次第に減衰しますが、高いうねりは数千キロメートルも離れた場所で観測されることもあります。

昔から、夏から秋にかけて太平洋に面した海岸に押し寄せる高い波(うねり)を「土用波」と呼んで高波に対する注意を促していました。これは、この時期の台風が太平洋高気圧の周りをまわってから日本に近づくので、その前にうねりの方が早く日本にやってくることを言ったものです。

沿岸波浪図(平成23年8月28日9時)
と地上天気図(平成23年8月28日9時)

沿岸波浪図(左)と地上天気図(右)(平成23年8月28日9時) (関東地方以西の太平洋沿岸では台風第12号からのうねりにより波高が3 mを超えている。)

波には、風が強いほど、長く吹き続けるほど、吹く距離が長いほど高くなるという3つの発達条件があります。台風はこの3つの条件を満たしており、例えば台風の中心付近では、10 mを超える高波になることがあります。しかも、風浪とうねりが交錯して複雑な様相の波になります。

また、周辺の海域では台風の移動に伴って次々と発生する波がうねりとなって伝わるため、いろいろな方向からうねりがやってきて重なり合います。そこで風が吹いていれば風浪が加わり、さらに複雑な波になります。

台風による海難の発生状況は台風のコースやそのときの状況で大きく異なりますが、海上保安庁の調査によれば、昭和50年(1975年)から平成6年(1994年)までの20年間で台風などの異常気象のもとでの要救助船舶件数は3,775隻(年平均約190隻)に達しています。例えば、昭和54年(1979年)に温帯低気圧に変わりつつあった台風第20号により北海道近海で衝突9隻、転覆3隻など合計37隻が遭難し、66名の死者・行方不明者がでました。このことは、台風が温帯低気圧に変わりつつある、あるいは変わった、といっても決して油断できないことを示しています。

最新の波浪については、「波浪観測情報」をご覧ください。

波の高さについて

波浪予報などで使われている波高(波の高さ)は、有義波高と呼ばれる波の高さです。これは、ある点を連続的に通過する波を観測したとき、波高を高い順に並べ直して全体の三分の一までの波の高さを平均した値です。目視で観測される波高はほぼ有義波高に等しいと言われており、一般に波高と言う場合には有義波高を指しています。

同じような波の状態が続くとき、100波に1波は有義波高の1.5倍、1,000波に1波は2倍近い高波が出現します。また、確率としては小さいのですが、台風によるしけが長引くほど「三角波」「一発大波」などと呼ばれる巨大波が出現する危険性が増すため、十分な注意が必要です。

なお、気象庁では波の高さを説明する際には、4 mから6 mの波を「しけ」、6 mから9 mの波を「大しけ」、さらに9 mをこえる波を「猛烈なしけ」と呼んでいます(参考資料:波浪予報の表)。

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