ウィンドプロファイラ
ウィンドプロファイラの概要
ウィンドプロファイラは、「ウィンド(風)のプロファイル(横顔・輪郭・側面図)を描くもの」という意味の英語の合成語です。ウィンドプロファイラは、地上から上空に向けて電波を発射し、大気中の風の乱れなどによって散乱され戻ってくる電波を受信・処理することで、上空の風向・風速を測定します。地上に戻ってきた電波は、散乱した大気の流れに応じて周波数が変化しているので(ドップラー効果という)、発射した電波の周波数と受信した電波の周波数の違いから大気の動きがわかります。実際の観測では上空の5方向に電波を発射しているので、風の立体的な流れがわかります。
ウィンドプロファイラは、2001年4月に運用を開始し、現在全国に33か所あります。 各ウィンドプロファイラで得られた観測データは、気象庁本庁にある中央監視局に集められ、きめ細かな天気予報のもととなる数値予報などに利用されています。 この観測・処理システムは総称して「局地的気象監視システム」(略称:ウィンダス・WINDAS:WInd profiler Network and Data Acquisition System)と呼びます。
ウィンドプロファイラのデータについて
ウィンドプロファイラは、上空の風を高度300m毎に、10分間隔で観測しています。観測データが得られる高度は、季節や天気などの気象条件によって変わりますが、 最大で12キロメートル程度までの上空の風向・風速を観測することができます。雨が降っている場合、ウィンドプロファイラの観測するデータは雨粒の動きになります。これは、大気による電波の散乱より雨粒による散乱の方が強いためですが、 雨粒は風に流されているので、雨粒の動きから風向・風速が分かります。このときの鉛直方向の観測データは、雨粒の下降速度を捉えたものとなります。
ウィンドプロファイラが観測した各観測高度における風のようす(速報値)は、気象庁ホームページ(→最新データ表示)で見ることができます。
ホームページ上でのデータ表示 (→最新データ表示)
グラフの種類 | 風向 | 風速 | 鉛直速度 | 表示例 |
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地図表示(毎時) | 風の吹いている方向を矢印で示します。 | 風の速さを色の違いで示します。 | (なし) | |
観測表 | 北、北北東、北東、東北東、東、東南東、南東、南南東、南、南南西、南西、西南西、西、西北西、北西、北北西の16方向で表します。北東の風とは北東から吹いてくる風を言います。 | 水平面の風の速さを1m/s単位で表します。 | (なし) | |
時間-高度断面図 | 各高度における風向を矢印で表します。真上を向いた矢印は南風です。 | 風の速さを矢印の長さで表します。 | 風の上下方向の速さ(上昇が正、下降が負)を色の違いで示します。 |
地図表示や観測表の高度毎の風向・風速は、その高度に最も近い高さで観測した風のデータを表示しています。時間-高度断面図の風のデータは、観測した高度を基点(矢印の根元)とする矢印で示しています。
ウィンドプロファイラ観測地点一覧
観測点一覧表
地点名 | 地点番号 | 所在地 | 緯度(度分) | 経度(度分) | アンテナの標高(m) |
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留萌(るもい) | 47406 | 北海道留萌市 | 43°56.8′ | 141°37.9′ | 23 |
帯広(おびひろ) | 47417 | 北海道帯広市 | 42°55.3′ | 143°12.7′ | 38 |
室蘭(むろらん) | 47423 | 北海道室蘭市 | 42°19.4′ | 140°58.2′ | 3 |
宮古(みやこ) | 47585 | 岩手県宮古市 | 39°38.8′ | 141°58.0′ | 43 |
酒田(さかた) | 47587 | 山形県酒田市 | 38°54.5′ | 139°50.6′ | 3 |
仙台(せんだい) | 47590 | 宮城県仙台市 | 38°15.7′ | 140°53.8′ | 39 |
若松(わかまつ) | 47570 | 福島県会津若松市 | 37°29.3′ | 139°54.6′ | 212 |
高田(たかだ) | 47612 | 新潟県上越市 | 37°06.4′ | 138°14.8′ | 13 |
福井(ふくい) | 47616 | 福井県福井市 | 36°03.3′ | 136°13.3′ | 9 |
水戸(みと) | 47629 | 茨城県水戸市 | 36°22.9′ | 140°28.1′ | 29 |
熊谷(くまがや) | 47626 | 埼玉県熊谷市 | 36°09.0′ | 139°22.8′ | 30 |
勝浦(かつうら) | 47674 | 千葉県勝浦市 | 35°09.0′ | 140°18.7′ | 12 |
八丈島(はちじょうじま) | 47678 | 東京都八丈島八丈町 | 33°07.3′ | 139°46.7′ | 152 |
河口湖(かわぐちこ) | 47640 | 山梨県南都留郡富士河口湖町 | 35°30.0′ | 138°45.7′ | 860 |
静岡(しずおか) | 47656 | 静岡県静岡市 | 34°58.6′ | 138°24.2′ | 14 |
名古屋(なごや) | 47636 | 愛知県名古屋市 | 35°10.1′ | 136°57.9′ | 51 |
尾鷲(おわせ) | 47663 | 三重県尾鷲市 | 34°04.2′ | 136°11.6′ | 15 |
美浜(みはま) | 47795 | 和歌山県日高郡美浜町 | 33°53.6′ | 135°07.5′ | 9 |
鳥取(とっとり) | 47746 | 鳥取県鳥取市 | 35°31.9′ | 134°12.0′ | 6 |
浜田(はまだ) | 47755 | 島根県浜田市 | 34°53.8′ | 132°04.2′ | 20 |
高松(たかまつ) | 47891 | 香川県高松市 | 34°19.1′ | 134°03.2′ | 9 |
高知(こうち) | 47893 | 高知県高知市 | 33°34.1′ | 133°33.0′ | 3 |
清水(しみず) | 47898 | 高知県土佐清水市 | 32°43.4′ | 133°00.6′ | 31 |
厳原(いづはら) | 47800 | 長崎県対馬市 | 34°09.2′ | 129°13.4′ | 130 |
平戸(ひらど) | 47805 | 長崎県平戸市 | 33°21.6′ | 129°33.1′ | 58 |
大分(おおいた) | 47815 | 大分県大分市 | 33°14.2′ | 131°37.2′ | 5 |
熊本(くまもと) | 47819 | 熊本県熊本市 | 32°48.8′ | 130°42.4′ | 38 |
延岡(のべおか) | 47822 | 宮崎県延岡市 | 32°34.9′ | 131°39.5′ | 19 |
市来(いちき) | 47848 | 鹿児島県いちき串木野市 | 31°42.5′ | 130°19.3′ | 25 |
屋久島(やくしま) | 47836 | 鹿児島県熊毛郡屋久島町 | 30°23.0′ | 130°39.5′ | 36 |
名瀬(なぜ) | 47909 | 鹿児島県奄美市 | 28°22.8′ | 129°29.7′ | 3 |
南大東島(みなみだいとうじま) | 47945 | 沖縄県島尻郡南大東村 | 25°49.8′ | 131°13.7′ | 16 |
与那国島(よなぐにじま) | 47912 | 沖縄県八重山郡与那国町 | 24°28.0′ | 123°00.6′ | 30 |
(緯度、経度の値は世界測地系による)
ウィンドプロファイラ観測網(平成26年4月現在)
データの見方の例
・上空の気圧の尾根、気圧の谷の通過
ウィンドプロファイラのデータを用いて、上空の気圧の尾根や谷の通過を把握することができます。 上空の気圧の尾根が西から東へと通過するときは、北西よりであった風向が次第に南西よりに変わる様子が、また、 上空の気圧の谷が通過するときは、南西よりであった風向が次第に北西よりに変わる様子がわかります。
気圧の谷の通過をとらえた観測の例
上段:2015年6月28日13:00~19:00のウィンドプロファイラ名瀬局の観測データ
下段:2015年6月28日15:00の地上天気図
図左の凡例に示されている矢羽は、風が西から東向き(図の左から右向き)に吹くことを表しています。 矢羽の背景色は、暖色系が南から北向きに吹く風を、寒色系が北から南向きに吹く風を表しています。
・前線の通過
ウィンドプロファイラのデータを用いて、前線の通過や前線の立体構造を把握することができます。温暖前線が通過するときは、上空から地上にかけて次第に南よりの風に変わる様子が、また、寒冷前線が通過するときは、地上から上空にかけて次第に北よりの風に変わることがわかります。
寒冷前線面の通過をとらえた観測の例
上段:2015年5月12日0:00~24:00のウィンドプロファイラ市来局の観測データ
下段:2015年5月12日12:00の地上天気図
図左の凡例に示されている矢羽は、風が西から東向き(図の左から右向き)に吹くことを表しています。 矢羽の背景色は、暖色系が南から北向きに吹く風を、寒色系が北から南向きに吹く風を表しています。
・台風
ウィンドプロファイラのデータを用いて、台風の通過や、台風の位置や構造を把握することができます。風向が反時計回りに変わった場合は台風が観測局の東側を通過したことが、風向が時計回りに変わった場合は台風が観測局の西側を通過したことがわかります。また、台風が構造を保っているときは、地上付近から上空まで風向がほぼ同時に変わる様子が伺えますが、台風が上陸などして構造が崩れ始めると風向の変化するタイミングがずれるようになります。
台風の通過をとらえた観測データの例
上段左:2015年7月16日21:00~7月17日03:00のウィンドプロファイラ高知局の観測データ
上段右:2015年7月17日02:00~08:00のウィンドプロファイラ高松局の観測データ
下段:2015年7月17日03:00の地上天気図
ウィンドプロファイラのデータについて
ウィンドプロファイラは大気が乾燥しているとデータを得にくくなります。また、得られたデータが正しいかどうか品質管理を行っています。つまり、データが表示されていないところは大気が乾燥しているか、もしくは品質管理によって正しい風ではないと判断したデータです。