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アメリカで発生するトルネードとの違い

近年の気象ドップラーレーダー等の観測網の充実によって、日本でも竜巻発生の実態が明らかとなってきています。 竜巻の頻発国である米国と日本とでは、発生する竜巻に違いがあるでしょうか。 以降では、日本と米国における竜巻を比較し、その類似点と相違点について解説します。

発生確認数

日本では、平均して年に25個程度、竜巻の発生が確認されています(2007~2015年、海上竜巻を除く)。 米国では、年平均で約1,300個(2004~2006年の統計)もの竜巻が確認されていますが、 単位面積に換算すると日本での竜巻の発生確認数は米国の半分程度で決して少ないとは言えません。

スケール別の発生確認数

下図左と中央は、それぞれ、米国と日本における藤田(F)スケールごとの竜巻の確認数を表わしています。 Fスケールとは、竜巻やダウンバーストなどの突風により発生した被害の状況から風速を大まかに推定するため 1971年にシカゴ大学の藤田哲也博士により考案された指標で、Fの値が大きいほど強い竜巻であることが示されます。 両国とも、Fスケールの増加と共に、竜巻の確認数は減少する傾向があり、強い竜巻ほど発生が確認される数が少なくなっています。 米国では、Fスケールが2つ増加すると、確認数は10分の1程度に減少しています。

日本では、F0の竜巻の確認数が少なくなっていますが、 竜巻と断定されなかった突風及び被害が微弱であったためにFスケールの判定が行われなかった事例をすべてF0とみなすと、 Fスケールと確認数の関係は米国の場合と似た形になります(下図右)。 しかし、日本では、Fスケールが2つ増加すると確認数は10分の1から100分の1程度となり、 米国に比べてFスケールの増加に伴う確認数の減少が顕著です。また、日本では、F4以上の竜巻は確認されていません。

米国で発生が確認された竜巻のFスケール別総数
日本で発生が確認された竜巻のFスケール別総数 日本で発生が確認された竜巻のFスケール別総数

左上図:1990年代の10年間に米国で発生が確認された竜巻のFスケール別総数
左下図:1961年から2010年までの50年間に日本で発生が確認された竜巻のFスケール別総数
右下図:左下図と同じ。ただし、竜巻と判定されたものの他に、竜巻と断定されなかった突風、 及び被害が微弱であったためにFスケールの判定が行われなかった事例をすべてF0とみなして、左下図に加えたもの。

地域分布

竜巻は一般的に、中緯度の平地で発生する傾向があります。 米国では、フロリダ半島南端(北緯25度)から、カナダ領(北緯50度)に至る緯度範囲で竜巻の発生が見られます。 米国西部のロッキー山脈周辺は高地になっており、竜巻が発生しにくい地域になっています。

日本では、北海道(北緯45度)から沖縄(北緯24度)に至る全国で発生が見られます。 日本の国土は多くが山地であるため、海岸線沿いに竜巻の発生が多くなっています。

※分布図をクリックすると拡大表示できます。

米国における竜巻の州別平均年間発生確認数
米国における竜巻の州別平均年間発生確認数(NOAA/NCDC)
   
日本における竜巻の発生分布
日本における竜巻の発生分布(1961-2010年)

季節変化

米国では竜巻は5月と6月に最も多く発生します。12月から2月の発生は少ないですが、どの月にも発生が見られます。

日本では竜巻は9月と10月に最も多く発生します。1月から5月の発生は少ないですが、どの月にも発生が見られます。

米国における竜巻発生の季節変化
米国における竜巻発生の季節変化(NOAA/NCDC)
縦軸は、1年間当たりの発生確認数の季節変化(1991年から2010年までの20年平均)
日本における竜巻発生の季節変化
日本における竜巻発生の季節変化
縦軸は、1991年から2010年までの20年間の確認総数

発生環境とその違い

竜巻の頻発地域である米国中西部(オクラホマ州付近)は、北極からの寒気団とカリブ海からの暖気団が衝突する地域であり、 両気団の衝突で大気が不安定になった時に竜巻が発生しやすくなります。 また、米国中西部の上空には、ロッキー山脈を越えて乾燥した偏西風があります。 このため、ラジオゾンデによる高層気象観測では、上空に行くに従い、風向が時計回りに変化することが多くなります。 このような気象条件の時は、積乱雲が回転しやすくなります。 これらの気象条件が揃うことにより、米国中西部では、強力な竜巻が多数発生する傾向があります。

日本では、日本の脊梁山脈や沿海州の山に阻まれて、 北極からの寒気と南方の暖気が直接衝突することはあまりありません。 また、日本の西方には、偏西風に影響を与えるほどの大きな山脈がありません。 このため、極度に乾燥した偏西風が現れ、風向が顕著な時計回りの回転をすることは、 日本では米国に比べて少なくなります。このため、米国で発生するような強い竜巻はあまり発生しません。 しかし、低気圧や台風の接近時に、大気の状態が不安定になり、南から温かく湿った空気が流入した時は、 竜巻が発生しやすい気象状況になることがあります。

メカニズムの差異

風向が、高度と共に、顕著な時計回りの回転をする時には、 「スーパーセル」と呼ばれる回転する巨大積乱雲が発生しやすくなることが知られています。 スーパーセルは回転しているため、ドップラーレーダー観測では、 回転を示す風のパターンが観測されます。この回転部分は気圧が低く、 直径が数キロメートルであるため、数キロメートルの大きさを表す「メソ」という用語と低気圧を表わす「サイクロン」という用語を1つにして、 「メソサイクロン」と呼ばれています。米国中西部で観測される竜巻は、 スーパーセルに伴って発生することが多いという特徴があります。

これに対して、米国のカリブ海沿岸部や日本では、 風向が、高度と共に、顕著な時計回りの回転をすることが少ないため、 小型のスーパーセルが発生する傾向があります。 また、弱い前線の周辺では、スーパーセルに伴わない竜巻も多く発生していると言われています。

スーパーセルに伴う竜巻では、メソサイクロンの他に、 フックエコーと呼ばれる特徴的な鉤状のレーダーエコーパターンが現れることがあります。 フックエコーは、現れないことも多いため、通常は、スーパーセルの観測には、 ドップラーレーダーを用いたメソサイクロンの検出を行う方法が一般的になっています。

被害

米国では、1年間当たり平均で54.6人が竜巻の犠牲になっています (1975年から2000年までの26年間の平均値)。 記録上最大の人的被害をもたらした竜巻として、1925年3月18日に、 ミズーリ州、イリノイ州、インディアナ州の3州にまたがって移動した竜巻(F5)があり、 死者695名の記録が残っています。最近では2011年5月22日に、ミズーリ州で発生した竜巻(F5)で、 死者158名が記録されています。米国の竜巻多発地域は人口密度が小さいのですが、 竜巻の発生が多く、強力で長寿命の竜巻が発生するため、人的被害は、毎年報告されています。

日本では、1年間当たり平均で0.58人が竜巻の犠牲になっています (1961年から1993年までの33年間の平均値)。 最大の人的被害は、2006年11月7日に北海道佐呂間町で発生した竜巻(F3)による被害であり、 死者9名となっています。日本は、人口密度が高い国ですが、大型で長寿命の竜巻の発生が少ないため、 人的被害は米国に比べて少なくなっています。

参考文献

Brooks, H., C.A. Doswell III, 2001: Some aspects of the international climatology of tornadoes by damage classification. Atmos. Res. 56, 191-201.
Brooks, H., and C.A. Doswell III, 2002: Deaths in the 3 May 1999 Oklahoma City Tornado from a Historical Perspective. Wea. Forecasting 17, 354-361.
Niino, H., T. Fujitani, and N. Watanabe, 1997: A Statistical Study of Tornadoes and Waterspouts in Japan from 1961 to 1993. J. Climate 10, 1730-1752.
National Oceanic and Atmospheric Administration, National Climatic Data Center (NOAA/NCDC), U.S. Tornado Climatology. (http://www.ncdc.noaa.gov/oa/climate/severeweather/tornadoes.html).

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