大雪について

大雪のおそれに応じて段階的に発表する気象情報

 大雪となると、道路の通行止めや車両滞留、鉄道の運休や立ち往生、航空機・船舶の欠航等の交通障害、農業用ハウスの倒壊や果樹の枝折れ等の農業被害、停電などが発生し、経済活動に影響を与えます。また、集落の孤立や家屋の倒壊などの重大な災害も引き起こします。
 気象庁では大雪による災害の防止や交通障害等の雪による社会的な混乱を軽減するために、警報・注意報や気象情報等を発表し段階的に警戒や注意を呼びかけています。5 日先までに警報級の大雪が予想されている時には、「早期注意情報(警報級の可能性)」を発表して注意を呼びかけます。社会的影響の大きい災害が起こるおそれのある時には、そのおおむね 3 ~ 6 時間前に「大雪警報」を発表しています。
 気象情報は、大雪となる概ね24時間から2~3日より前に、警報や注意報に先立って現象を予告し、注意を呼びかけるために、情報を発表することがあります。注意報や警報の発表中には、現象の経過、予想、防災上の留意点等の解説として情報の発表を行います。
 また、積雪の深さと降雪量について 24 時間前の状況から 6 時間先までの予報を一体的に確認できる、「今後の雪(降雪短時間予報)」を公開しており、外出予定の変更や迂回経路の選択等の行動判断に有効活用いただきたいです。
 近年の大雪では、集中的な降雪等により、鉄道の立ち往生や車両の大規模滞留が繰り返し発生しており、高速道路や国道のような除雪体制の整った道でも車両の大規模滞留が発生しています。特に、雪の少ない地域の車両が雪の多い地域へ移動して立ち往生し、その車両を先頭に大規模滞留が発生するケースがしばしばみられます。段階的に発表する気象情報のなかには、平成30年(2018年)の大雪事例を踏まえて開始した「大雪に一層の警戒を呼びかける気象情報」があります。この情報により、どのような改善が行われたのか、以下に紹介します。

参考

大雪に一層の警戒を呼びかける気象情報について

平成30年(2018年)の大雪事例

 平成30年(2018年)1月22~23日に、本州の南海上を進んだ低気圧(南岸低気圧)により首都圏では広範囲で大雪となり、東京で最深積雪23センチを記録、鉄道や道路が広範囲でストップし、社会活動に大きな影響が出ました。また、同年2月3~8日 には冬型の気圧配置となって強い寒気が流入し、北陸地方を中心として記録的な大雪となりました。福井県では、福井市で「昭和56年豪雪(196cm)」以降最も深い積雪147センチを記録し、国道8号で1500台を超える大規模な車両滞留が発生して、自衛隊の災害派遣も行われました。
 大雪により交通機能が麻痺すると、復旧までに数日かかることも多く、その間、物流が止まるなど社会活動に大きな影響が生じます。気象庁では平成30年(2018年)の大雪事例を踏まえ、大雪に対して一層の警戒を呼びかけるために気象情報の改善を行ってきました。

平成30年(2018年)2月の北陸地方の大雪

平成30年(2018年)2月の北陸地方の大雪(福井県坂井市国道8号)
提供:国土交通省近畿地方整備局

大雪警報の基準を大幅に上回る等の一層の警戒を呼びかける気象情報

 警報級の大雪が見込まれる場合、気象台では「大雪に警戒」といった内容の気象情報を発表していますが、更なる一層の警戒が必要な場合に、災害の危険性がイメージできる表現を用い、影響を受ける地区と時間をできるだけ絞って、大雪に対する厳重警戒を呼びかける大雪に関する気象情報を発表しています。この情報は沖縄を除く全国の都道府県で発表することとしており、普段から雪の多い地域だけではなく、雪の少ない地域でも発表します。

(1) 普段、雪の多い地域

 過去の重大な災害を踏まえ、大きな社会的影響を及ぼした大雪事例と同程度又は超える降雪量または積雪深となる可能性が高まった場合に「厳重警戒」を付した大雪に関する気象情報を発表することとしています。

普段、雪の多い地域での大雪に関する気象情報のイメージ

普段、雪の多い地域での大雪に関する気象情報のイメージ

 この情報は、雪の降り方や雪への備え等の違いにより各地で状況は異なりますが、例えば警報級の大雪が長く継続、あるいは短い期間で繰り返すことで、路面から除雪した雪を道路脇から取り除く「排雪」が間に合わず、除雪そのものが難しくなる状況によるなど、大雪による社会的に大きな影響が生じる可能性が高まっている場合を想定して発表しています。この呼びかけを行った場合は、実際に大規模な交通障害が発生し、社会活動の麻痺が長期間継続するなど社会的な影響が非常に大きくなることが多いため、不要不急の外出を控えていただき、また周辺地域からもその地域に向かわないことが重要となります。

(2) 普段、雪の少ない地域

 おおむね降雪量が大雪警報基準を超える予想があり、基準を超えた後も更に降り続くと予想され、一層の警戒が必要となる場合に発表することとしています。

普段、雪の少ない地域での大雪に関する気象情報のイメージ

普段、雪の少ない地域での大雪に関する気象情報のイメージ

 太平洋側における南岸低気圧による大雪などでは、普段、雪が少ない地域のため、スタッドレスタイヤなどの備えをしてない車両や雪道走行に不慣れなドライバーが多い、あるいは除雪のための車両や装備も少ないなど、雪国とは異なる事情があり、降雪量が多くなくても、立ち往生やスリップ事故など交通障害が発生しやすくなっています。

平成26年(2014年)2月の関東甲信地方の大雪(国道139号:本栖湖付近)

平成26年(2014年)2月の関東甲信地方の大雪(国道139号:本栖湖付近) 
提供:国土交通省関東地方整備局

短時間の大雪に一層の警戒を呼びかける気象情報

 重大な災害の発生する可能性が高まり、一層の警戒が必要となるような短時間の大雪となることが見込まれる場合に「顕著な大雪に関する府県気象情報」を発表しています。これは降雪の勢いが強く、除雪が降雪の勢いに追いつかないことで、大規模な交通障害が発生する可能性の高い状況を想定しており、下の例のように、現在の降雪量と今後の見通しを簡潔に記述した短文形式の気象情報として発表しています。

顕著な大雪に関する府県気象情報のイメージ

顕著な大雪に関する府県気象情報のイメージ

 雪の降り方や雪に対する備えなどには地域ごとに特徴があり、大規模な交通障害の要因となる雪の降り方も様々であることから、短時間の大雪と大規模な交通障害の関係性が明らかとなった地域において運用を行っています。この気象情報は令和元年11月に北陸地方の4県(新潟、富山、石川、福井)と東北地方の2県(福島(会津地方)、山形)から運用を開始しました。その後、令和3年12月からは近畿地方の3県(滋賀、京都、兵庫)、中国地方の4県(広島、岡山、鳥取、島根)でも運用を開始しました。

 これまでの発表時の状況を振り返ると、その多くで実際に大規模な車両滞留が発生しており、大規模な交通障害との相関の高い情報となっています。「顕著な大雪に関する府県気象情報」が発表された地域では、不要不急の外出を控えていただき、また他の地域からもその地域に向かわないことが肝要です。

参考リンク