火山灰の監視・予測

 航空路上における危険な現象の1つに、噴火に伴う噴煙があります。火山の噴煙は航空路の視程を悪化させるだけでなく、火山灰に含まれる硬い粒子によってコックピットの窓が傷ついて見えづらくなったり、飛行機の機体が損傷したりすることがあります。また、火山灰はジェットエンジンの燃焼温度より融点の低いガラス質を多く含んでいるため、エンジンに入り込んでしまうと、熱で溶かされて付着してしまい、最悪の場合エンジン停止になることもあります。

 昭和57(1982)年6月24日には、クアラルンプール(マレーシア)からパース(オーストラリア)へ向かっていたブリティッシュ・エアウェイズのボーイング747が、スマトラ島の南の高度11,470mでガルングン火山(インドネシア)の火山灰により、エンジンが4基とも停止するという事態に見舞われました。幸い乗員・乗客は全員無事でしたが、エンジン損傷の被害総額は85億円にのぼりました。

 気象庁では、これらの火山灰によって引き起こされる航空機の被害を防止・軽減するため、国際民間航空機関(ICAO)の下で、東京航空路火山灰情報センター(東京VAAC)を運営しています。

航空機に対する火山灰情報の提供及び予測

 火山の噴火に伴う火山灰により航空機の運航に影響がある場合、または、予想される場合は、東京VAACが「航空路火山灰に関する情報」を発表し、国内外の関係機関に提供しています。「航空路火山灰に関する情報」には、「航空路火山灰情報」(テキスト形式で発表する「火山灰テキスト報」及び図形式で発表する「火山灰拡散予測図」)や、「火山灰実況図」などがあります。

 火山灰の拡散予測は、気象衛星等のデータについて火山灰の高度及び移動方向・速度の解析を行った後、数値予報を利用した移流拡散モデルにより行っています。

 気象庁ではまた、「航空路火山灰情報」を受けて、国内空域を対象とする空域気象情報(シグメット情報)を発表します。これらの情報により航空機は、飛行経路の変更等により火山灰を回避しています。

衛星による火山灰監視

気象衛星による火山灰監視の例
カムチャツカ半島のツパノフスキー火山から噴出した火山灰の様子
ひまわり8号による観測画像(左:バンド13とバンド15の差分画像、右:バンド11、バンド13、バンド15を組み合わせたカラー画像(Ash RGB画像))

情報発表の流れ

航空路火山灰情報提供の流れ

航空路火山灰実況図

火山灰拡散予測図の発表例
火山灰の実況及び、6時間後・12時間後・18時間後に火山灰が拡散すると予想される領域を、黒い枠で示しています。