◆第Ⅲ章◆ 気候変動対策への一層の貢献

Ⅲ 気候変動対策への一層の貢献

Ⅲ-1 令和7年(2025年)夏(6~8月)の記録的高温について

 令和7年(2025年)の夏は、沖縄・奄美を除く北日本から西日本にかけての広い地域で記録的な高温となり、日本の夏平均気温は、統計開始(1898年)以降で、昨年や一昨年の記録を大幅に上回り、3年連続で最も高くなりました。猛暑日(日最高気温が35℃以上の日)となった地点や、酷暑日(日最高気温が40℃以上の日)となった地点の延べ数をみると、比較可能な平成22年(2010年)以降で最も多くなりました。そして、群馬県伊勢崎では、歴代最高の41.8℃も記録しました。また、季節の進行が早く、多くの地方で過去最も早い梅雨明けとなり、7月は記録的な少雨となったところがありました。こうしたことから、令和7年夏の高温や少雨の発生要因について「異常気象分析検討会※」で分析・検討を行い、9月5日にその結果を公表しました。

※異常気象分析検討会:社会・経済に大きな影響を与える異常気象が発生した場合に、その発生要因について最新の科学的知見に基づいて分析し、その見解を迅速に発表することを目的としています。大学・研究機関等の気候に関する専門家で構成し、平成19年(2007年)6月より運営しています。

夏の猛暑日と酷暑日の延べ地点数

 本検討会では、令和7年夏の顕著な高温・少雨は、次に挙げる要因が重なってもたらされたと分析されました。

・太平洋熱帯域の西部で海水温が高く、積乱雲の活動がアジアモンスーン域で早くから活発となり、フィリピンの東海上では平年に比べて極めて活発となった時期もあった。

・その影響で上空の偏西風が平年より大幅に北を流れ、日本付近はチベット高気圧と太平洋高気圧が重なった背の高い暖かな高気圧に覆われ、下降気流が卓越して晴れて気温が上がった。

・地球温暖化の影響に加えて、北半球中緯度帯の海面水温がここ数年顕著に高いことも、日本を含む中緯度帯の気温が高いことに寄与した可能性がある。

夏の顕著な高温と少雨をもたらした大規模な大気の流れ

 気象庁では引き続き、気候の監視・予測を行い、異常気象に際しては大学・研究機関等の専門家と連携した分析を行い情報発信に取り組んでまいります。

Ⅲ-2 令和7年夏の記録的な高温や大雨に地球温暖化が寄与

 令和7年(2025年)夏(6~8月)の平均気温は、気象庁の統計開始以降1位の記録を更新しました。また、8月前半は九州地方や北陸地方などで記録的な大雨となりました。特に8月10日から11日にかけては九州北部で線状降水帯が複数発生し、熊本県には大雨特別警報が発表されました。これらの高温や大雨に対する地球温暖化の影響を調べるため、イベント・アトリビューション(EA)を行いました。

(1)日本の夏の平均気温への影響

 夏の高温のEAは、「地球温暖化対策に資するアンサンブル気候予測データベース」(d4PDF)を応用して開発された、極端現象の発生確率に対する地球温暖化の影響を迅速に見積もる予測型の確率的EA手法を用いて評価しました。その結果、令和7年の海面水温分布の影響と地球温暖化の影響が共存する状況下(実際の気候条件下)では、夏の高温は約38年に一度の稀な現象だったと推定されました。これに対し、地球温暖化の影響が無かったと仮定した状況下では、夏の高温はほぼ発生し得なかったと推定されました。

令和7 年夏の日本の気温の相対頻度分布

(2)8月10日から11日の九州北部の大雨への影響

 大雨の評価には量的EA手法を用いました。この手法は、実際の大気の状態を基に1kmメッシュで大雨を高精度で再現した結果(再現実験)と、実際の大気の状態から現在までの気温や水温の上昇を除いたうえで大雨を再現した結果(擬似非温暖化実験)を比較することで、地球温暖化の影響を評価しました。いずれの計算ともに、8つの初期時刻(8月9日9時から10日6時まで3時間ごと)から計算した結果を平均することで、シミュレーションのばらつきを軽減させています。

 その結果、1kmメッシュの再現実験は九州北部の27時間積算降水量を非常によく再現しました。そして、黄色枠内で平均した27時間積算降水量は、地球温暖化に伴う気温上昇が無かったと仮定した実験に比べ、およそ25%増加したことが分かりました。気温上昇から見積もられる水蒸気量の増加率は約10.5%のため、それよりも多くの降水増加が計算されました。これまでの研究から、工業化以前と近年の気候状態の比較から得られる地球温暖化に伴う降水量の変化率は、背景となる大気の流れ等によって異なることが分かっています。この結果は九州北部を中心とした大雨について、地球温暖化に伴う気温上昇によって降水量が増加した可能性を示唆しています。

令和7 年8 月10 日から11 日にかけての大雨のシミュレーション

Ⅲ-3 黒潮大蛇行の終息

 黒潮は、東シナ海を北上し日本の南岸に沿って流れる、世界有数の流れが強い海流です。この黒潮には、四国・本州南方での流路に大きく分けて2種類の安定したパターンがあり、紀伊半島から東海沖で南へ大きく蛇行した流れを「大蛇行流路」、四国・本州南岸にほぼ沿った流れを「非大蛇行流路」と呼んでいます。

 黒潮の大蛇行は、1年程度で終わる場合もあれば、数年にわたって継続する場合もあります。近年では、平成29年(2017年)8月以降、紀伊半島から東海沖で大きく離岸して流れ大蛇行の状態となり、令和7年(2025年)4月に蛇行していた黒潮の一部が東海沖で切離するまで7年9か月続き、昭和40年(1965年)以降で過去最長となりました(下表参照)。

大蛇行終息時(令和7 年4 月下旬)と大蛇行期(令和6 年7 月上旬)の黒潮流路

 黒潮の流路は、船舶の経済的な運航や、魚種・漁場の位置、沿岸の海洋環境等に影響を与えます。また、黒潮が大蛇行になると、黒潮や黒潮から分かれた暖水の影響で、東海地方から関東地方にかけての沿岸を中心に潮位が上昇しやすくなります。令和元年東日本台風が北上した際には、黒潮大蛇行の影響で潮位が上昇していたところに、台風の接近・通過に伴う潮位上昇が重なったため、静岡県や神奈川県などで過去最高の潮位を観測し、高潮による浸水被害が発生しました。

 気象庁では、黒潮流路等の把握にご利用いただけるように、黒潮などの海流や海面水温等の現在の状況や約1か月先までの予測情報を気象庁ホームページや「デジタルアメダスアプリ」を通じて提供しています。今後も、黒潮流路の変動を注意深く監視し情報提供を行っていきます。

昭和40 年以降の黒潮大蛇行の発生期間と継続月数

Ⅲ-4 電力等エネルギー分野における気候情報の利活用について

 気象と電力需要には密接な関連があります。特に夏季の高温や冬季の低温による需要増大は電力の需給調整に大きな影響を及ぼし、令和4年(2022年)や令和5年(2023年)夏季には高温に伴う節電要請が実施されるほど電力需要が増えました。このため、電力関係機関と関連省庁は、電力需給見通しについての情報交換を行う打合せを、令和4年以降夏季・冬季の年2回実施しており、気象庁はこの中で最新の週間天気予報及び季節予報について解説しています。また、気候変動が今後更に進行していくと見込まれ、我が国全体として緩和策・適応策に関する取組が進められる中、電力インフラのリスク評価等において気候変動の将来予測を活用する動きが広がりつつあります。

 このように電力等エネルギー分野において週間天気予報や季節予報、気候変動の将来予測等(以下、「気候情報」)の重要性が高まる中、気象庁では令和8年(2026年)1月に「電力等エネルギー分野における季節予報及び気候変動に関する将来予測の利活用」をテーマとして、「気候情報の応用技術に関する検討会」(以下、「検討会」という)を開催しました。検討会では、電力分野の民間企業・研究機関・関連省庁等のほか、気象情報や建設分野の民間企業に参加いただき、気象庁から気候情報について情報を提供しつつ、電力等エネルギー分野における気候情報の利活用の現状や課題等について議論を行いました。

 検討会では、はじめに「季節予報の利活用」をテーマに議論しました。電力の需給調整等では週間天気予報や季節予報が活用されており、降雪時の電力需要増加を事前に想定するため、1週間以上前の段階で、大雪の可能性に関する予測情報が地域的に詳細な形で提供されていれば有用というご意見をいただきました。また、発電施設の稼働調整のため、気温や降水量等の予測精度向上が必要というご意見をいただきました。気象庁では、令和8年1月から新しい季節アンサンブル予報システムの運用を開始するなど、予測精度の向上に取り組んでおり、今後も改良を重ねて、更なる精度向上を目指していきます。

 また、「将来予測の利活用」をテーマにした議論では、気候変動に伴う極端現象の増加が電力インフラの機能や電力供給の変動に影響することや、そのような影響を加味して建物計画を策定する必要があること等を紹介いただきました。気象庁では、検討会でいただいた知見を参考として、気候変動の将来予測に関する情報の更なる改善に取り組んでいきます。

気候情報の応用技術に関する検討会

コラム

●気象情報を活用した電力需給管理について


資源エネルギー庁 電力ガス事業部長

久米 孝


 我々が活動する上で欠かせない電力は、大量に貯蔵することができないため、需要と供給のバランスがとても重要です。電力会社は将来使用される電力量を事前に予測し、その予測にあわせて発電量を調整する需給管理を適切に行うことで、電力の「消費量(需要)」と「発電量(供給)」の需給バランスを一致させています。仮に需給バランスが崩れると大規模な停電に至る可能性があります。何らかの理由により、需要に対して余力を含めた供給が足りなくなる場合を電力需給ひっ迫と呼び、需給ひっ迫時には、需要家の皆様に節電をお願いする可能性もあります。

 需要は急激な気温変化などで大きく増加する可能性があり、また、供給も発電所のトラブルによる停止や悪天候による発電量の減少(降雨時の太陽光発電出力低下など)の可能性があります。太陽光発電などの再生可能エネルギーが広く普及した一方で、異常気象の頻度が増加している現代においては、需給ひっ迫のリスクは高まっており、天候や気温などを正確に予測した上で、不測の事態に備え、想定する最大需要に対して十分な供給力を確保することが重要です。

 実際に、2022年3月16日(水)の福島沖地震では、東北地方に所在する複数の火力発電所が緊急停止し、一部はほどなく復旧したものの、地震から2日後の3月18日(金)の時点でも、一部の火力発電所の停止は継続していました。さらに、折悪しく季節外れの寒波が到来していたため、3月22日(火)に想定を上回る寒さとなった場合、暖房需要に起因して電力需要が増大し、需給バランスが崩れるおそれがありました。

 このため、資源エネルギー庁、電力広域的運営推進機関(以下、「広域機関」という)及び電力会社は、発電所の高出力運転、他地域から東京エリアへの電力融通などに取り組みました。また、「電力需給ひっ迫警報」を2012年の制度整備後に初めて発令し、官民が各種媒体を通じて広く国民の皆様に節電を要請し、その協力のもと、結果として大規模な停電は回避されました。

 この経験を踏まえ、国民生活・経済活動を制限しかねない需給ひっ迫を極力回避するためには、需要や供給の変動をより精度の高い形で予測する必要があるという認識のもと、気象庁に協力を依頼し、正確な気象予報を取り込んだ需給管理を開始しました。具体的には、電力の高需要期である極暑期や厳寒期に資源エネルギー庁、広域機関、電力会社、気象庁による定期的な打ち合わせを開催。専門家のアドバイスのもと、最新の気象予報を活用することで、より緻密な需給管理に努めています。

2022 年の定例打合せの様子

Ⅲ-5 季節アンサンブル予報システムの更新

 気象庁では、3か月予報、暖・寒候期予報、エルニーニョ監視速報(以下、「3か月予報等」という)の作成に用いる季節アンサンブル予報システム(以下、「季節EPS」という)を令和8年(2026年)1月に更新し、同年2月発表の3か月予報等からその利用を開始しました。また、1か月予報においても、同年1月29日の発表分から新しい季節EPSの利用を開始しました。

 季節EPSでは、大気だけでなく、エルニーニョ・ラニーニャ現象等のような海洋の変動とそれらの相互作用を考慮するため、大気海洋結合モデルを利用しています。今回の更新では、大気モデルにおいて雲や陸面等の物理過程を改良するとともに、鉛直層数の増強等を行いました。また、海洋モデルの改良等も合わせて実施しました。これにより、大気・陸面・海洋の平均的な予測誤差を軽減し、3か月予報等における高温や低温などの天候の特徴をこれまでよりも精度良く予報できるようになります。

3 か月予報の平均誤差減少

 さらに、新しい季節EPSを1か月予報で利用することにより、熱帯域の季節内変動(季節変化より短い周期で強弱を繰り返す大気の変動)等、日本の天候へ影響する現象を、1か月予報で従来利用していた全球アンサンブル予報システム(全球EPS)と比べて精度良く予測できることを確認しました。このため、1か月予報においても季節EPSの利用を開始しました。

 気象庁では、引き続き季節EPSの改良に取り組み、季節予報の精度向上を通じて社会経済活動へ貢献していきます。

1 か月予報における熱帯域の季節内変動の予測精度向上

Ⅲ-6 1週間から数か月先の情報の高度化に関する検討会

 気象庁では、スーパーコンピュータを活用したアンサンブル予報などの数値予報技術の改善の成果を活かして、週間天気予報や季節予報の精度の向上、内容の拡充、利活用促進に取り組んできました。

 近年、顕著な大雨や大雪、記録的な猛暑などにより、毎年のように各地で被害が発生しており、今後、地球温暖化等の気候変動が進行すれば、災害をもたらすような大雨や極端な高温等の頻度が更に増加することが懸念されています。令和7年(2025年)6月に交通政策審議会気象分科会でとりまとめられた「「2030年の科学技術を見据えた気象業務のあり方」の補強」では、重点的に講じるべき施策である「気候変動情報の高度化」を求めており、二週間から一か月先までの予報について、予測精度向上と現象の時間スケールに応じた情報提供体系の構築、大雨や大雪等の顕著な現象に関する情報の充実を求めています。

 このため気象庁では、熱中症や雪害等に対する早期の事前対策、各産業における気候リスクの軽減や生産性向上など社会の多様なニーズに資するため、今後の週間天気予報や季節予報のあり方について検討する「1週間から数か月先の情報の高度化に関する検討会」を開催しています。本検討会は、様々な産業分野における利用者、学識者、報道関係者等に参画いただき検討を行っており、令和8年(2026年)2月に開催した第1回会合では、これまで実施したニーズ調査の結果の分析に加えて、利用者である委員から各業界のニーズについて幅広い意見をいただきました。今後、予測技術の進展及びニーズを踏まえた予報の高度化について詳細に検討を進め、最終とりまとめを行う予定です。

1 週間から数か月先の情報の高度化に関する検討会

Ⅲ-7 気候変動対策への更なる貢献に向けて

(1)「日本の気候変動2025」の活用支援の強化

 気象庁は、国や地方公共団体、事業者等に気候変動対策を効果的に推進していただくための基礎資料として、日本における気候変動の観測結果と将来予測をまとめた「日本の気候変動2025 ―大気と陸・海洋に関する観測・予測評価報告書―」を、令和7年(2025年)3月に文部科学省と共同で公表しました。「日本の気候変動2025」は、日本の気候変動に関する基本事項を網羅した「本編」、より専門的に詳しく記載した「詳細編」、特に重要な事項をコンパクトにまとめた「概要版」から成ります。また、より多くの方々に気候変動を身近なものとして知っていただくための入門資料として、気候変動の概要を紹介する解説動画や都道府県別の情報を掲載する都道府県別リーフレットも作成しています。解説動画については、字幕・手話通訳付きの動画も公開しています。さらに、令和8年(2026年)3月には、地方公共団体における活用の支援を強化するための補助資料として「日本の気候変動2025を用いた気候変動解説の手引き」を公表しました。本手引きは気候変動に関する普及啓発の場面での的確な説明を支援するためのもので、「本編」の内容に説明表現の例や注意点等の補足を記載しています。また、説明時に紹介できるような生活等への影響や適応策事例等も、環境省が令和8年2月に公表した「気候変動影響評価報告書」から引用するなどして掲載しています。

<日本の気候変動2025>

https://www.data.jma.go.jp/cpdinfo/ccj/index.html


(2)「日本の気候変動2025」の普及活動について

 気象庁は、「日本の気候変動2025」をより多くの方に知っていただくために、普及活動にも努めており、関係省庁や地方公共団体と連携した取組も行っています。様々な分野の方に情報提供を進めるとともに、全国各地において市民向け講習会や講演会等を実施しました。

 気候変動を踏まえた今後の気象防災を考えるきっかけとなるよう、「『日本の気候変動2025』と地域防災を考えるシンポジウム」を、令和7年12月18日に文部科学省と共催しました。本シンポジウムでは、気候変動に伴う降水の変化に注目したうえで、国土交通省及び静岡県による流域治水の取組や、倉敷市の過去の災害を教訓とした防災の取組、世論調査を基にした防災意識について、質疑も交えてご紹介しました。気象庁からは気候変動の適応策として、令和8年5月に運用開始予定の新たな防災気象情報についても解説しています。本シンポジウムの様子は動画で配信していますので、ぜひご覧ください。

「日本の気候変動2025」と地域防災を考えるシンポジウム

(3)将来予測データの活用機関との対話・連携の強化

 地方公共団体や事業者における気候変動適応の取組の急速な拡大に伴い、インフラ整備や農業などの各分野での気候変動の影響を分析するニーズが高まっています。こうしたニーズに応えるため、気候変動に関する情報の高度化と共に、分析等に用いるデータの利活用促進にも取り組んでいます。

 気象庁では、予測データの活用メリットのわかる実例(優良事例)の創出のため、データ活用機関との対話を進めています。実際に調査研究や事業に将来予測データを活用している様々な分野の研究機関や事業者と対話を実施し、予測情報のニーズやデータ活用に必要なこと等の聞き取りを行っています。また、データの活用機関を招いたセミナーや検討会を実施し、活用事例の創出や要望の収集に努めています。

 今後も対話や連携強化を実施し、数年・十年・数十年先等、今世紀末までをつなぐシームレスな近未来予測情報等の検討にもその成果を反映させていく予定です。

Ⅲ-8 60年目を迎えた東経137度線の海洋観測

 気象庁では、地球温暖化などに大きく関わる海洋の状況把握や長期変動の監視のため、北西太平洋で観測船による海洋観測を実施しています。海洋の長期変動などを見極めるためには、一定の海域を長期かつ継続的に監視することが重要です。このための「観測定線」のうち、東経137度線(現在は北緯34度から北緯3度まで)に沿ったもの(図)は、昭和42年(1967年)1月の観測開始以来、今年で60年目を迎えました。この東経137度線においては、水温、塩分や海流の速さや向きなど、海洋の基本的な観測項目に加え、昭和50年代後半(1980年代)からは、海に溶け込んだ二酸化炭素などの観測も始めました。現在までの観測データは、気候や海洋の変動などに関する国内外の多くの研究成果の礎となっており、気象庁の海洋観測は世界的に高い評価を得ています。

東経137 度線

 現在では、令和6年(2024年)に竣工した四代目「凌風丸」(写真)が東経137度線などにおける観測航海を行っています。また、凌風丸とともに「啓風丸」も海洋観測に従事しており、現在その代替船建造を進めています。気象庁は、今後も東経137度線をはじめとした海洋観測を継続し、その成果を通じて、海洋変動の実態・メカニズム解明や、地球温暖化予測の精度向上に貢献していきます。

海洋気象観測船

コラム

●第3次気候変動影響評価報告書について


環境省 地球環境局 総務課 気候変動科学・適応室 室長補佐

小穴 倫久


 環境省は、気候変動適応法に基づき、気候変動影響の総合的な評価報告書である「第3次気候変動影響評価報告書」(以下「報告書」)を令和8年2月に公表しました。この報告書は、最新の科学的知見を踏まえおおむね5年ごとに作成するもので、農業・林業・水産業、水環境・水資源、自然生態系、自然災害・沿岸域、健康、産業・経済活動、国民生活・都市生活の7つの対象分野を細分化した80の項目ごとに、重大性(影響の程度、可能性等)、緊急性(影響の発現時期や追加的な適応策への意思決定が必要な時期)、確信度(現在の状況や将来予測の確からしさ)の3つの観点で気候変動の影響を評価しています。

 本報告書のポイントとしては、①最新かつ広範な科学的知見を反映したこと、②影響の重大性の評価を2段階から3段階に細分化したこと、③特に強い影響を受ける地域や対象を整理したこと、④適応策及びその効果に関する知見を整理したことです。これらによってどの影響が特に重大なのかより分かりやすくなりました。また、特に強い影響を受ける地域や適応策に関する知見を整理することで、地方公共団体や事業者が、それぞれの関係する地域や対象への気候変動の影響を把握し、その影響に対する適応策を取捨選択・実行する際に参考にしていただけるようになったと思います。

 評価結果全体の概要としては、全7分野80項目のうち、23項目(29%)で現状既に「特に重大な影響が認められる」と評価され、50項目(63%)で将来(3~4℃上昇時)において「特に重大な影響が認められる」と評価されました。また、54項目(68%)で「緊急性は特に高い」と評価されました。また、収量や品質の低下が予測されている「水稲」や洪水の発生地点数の増加が予測されている「洪水」など、現状から将来予測にわたって重大性・緊急性・確信度が高いなど特に優先的に対応が必要な項目が明らかになりました。

気候変動影響評価結果(例:自然災害・沿岸域分野)

 また、本報告書では、文部科学省及び気象庁の「日本の気候変動2025 ― 大気と陸・海洋に関する観測・予測評価報告書 ―」に基づき、日本における気候変動に関する観測結果と将来予測の概要についてもまとめています。

 都道府県・市町村等が地域気候変動適応計画を策定・改定する際や、民間企業が気候変動影響に対する対策を講じる際にも本報告書の内容を参考にしていただきたいと考えています。また、令和8年度には、本報告書の内容等を勘案して、政府の気候変動適応計画の改定を予定しており、政府を含む一層の関係主体の適応策の加速化を図っていきたいと考えています。

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