◆第Ⅱ章◆ 線状降水帯や台風等による気象災害への対策
Ⅱ 線状降水帯や台風等による気象災害への対策
Ⅱ-1 台風第15号による大雨・突風
(1)気象概況
令和7年(2025年)9月4日から5日にかけて、台風第15号が日本列島に接近・上陸しました。これに伴い、西日本から東日本の太平洋側や東北地方の広い範囲で大雨となって、宮崎県、静岡県、神奈川県で線状降水帯が発生し、24時間降水量は宮崎県で450ミリ、静岡県で350ミリを超えたところがあったほか、静岡県、茨城県、高知県では竜巻等の激しい突風が発生しました。
特に、5日の昼過ぎに台風が通過した静岡県では、台風本体や台風周辺の暖かく湿った空気が流れ込んで大気の状態が非常に不安定となり、非常に発達した積乱雲が通過しました。このため、竜巻等の激しい突風が複数の地域で発生したほか、5日に菊川市菊川牧之原で1時間に127.0ミリの猛烈な雨を観測し、また牧之原市静岡空港、熱海市網代、掛川市掛川で1時間降水量や3時間降水量の観測史上1位の値を更新するなど、記録的な大雨となりました。

(2)令和7年9月5日に静岡県で発生した突風について
台風第15号の接近に伴い、静岡県では複数の市町で竜巻などの激しい突風による被害が発生しました。静岡県内で発生した突風被害のうち最も被害の大きかった牧之原市から吉田町では、店舗の外壁材の飛散や電柱の折損などの被害を確認しました。調査の結果、発生した突風の種類は竜巻と認められ、その強さはJEF3(風速約75m/s)に該当することが分かりました。これは、1961年からの統計開始以降で、国内最大級の強さの竜巻となります。
気象庁は、突風被害等を伴う災害が発生した際に、災害発生の要因となった現象と災害との関係等を把握するため、災害が発生した地域に気象庁機動調査班(JMA-MOT:JMA Mobile Observation Team)を速やかに派遣し現地調査を実施します。上述の静岡県で発生した突風による被害が広範囲で確認されたことから、地元気象台である静岡地方気象台に加え、東京管区気象台、名古屋地方気象台、横浜地方気象台からも応援を派遣してJMA-MOTによる現地調査を実施し、6市町で突風被害が相次いで発生したことを確認しました。



Ⅱ-2 令和7年9月18日につくば市で発生した竜巻について
令和7年(2025年)9月18日に茨城県つくば市において竜巻によると認められる突風被害が発生しました。気象研究所ではこの突風被害に着目して、最新型の気象レーダーを用いた解析を行いました。
(1)最新型の気象レーダーによる観測
気象研究所には、主に2種類の気象レーダーがあります。一つはフェーズドアレイレーダーです。平面上に並べた数多くの小型アンテナを用いて、10~30秒という短時間で立体空間を素早く観測することが可能です。もう一つは二重偏波レーダーです。水平方向と垂直方向に振動する電波を用いて、雨・雹・雪といった降水粒子のほかに、突風に伴う飛散物などの非降水粒子を判別することが可能です。いずれのレーダーも降水粒子などから反射される電波のドップラー効果を用いて、レーダーに近づく風の成分と遠ざかる風の成分を測定することができます。

(2)突風被害をもたらした竜巻の様子
これらの気象レーダーを用いて積乱雲に伴う風の様子を詳しく観測したところ、以下のことが明らかになりました。
①非常に発達した積乱雲が東南東に進みながらつくば市を通過しました。この積乱雲は、後面から前面に向けて流入する強い気流を伴っていました。
②積乱雲の前面にあったガストフロント(突風前線)と呼ばれる風の急変域が、後面からの気流によって強められ、その付近に3つの渦が作られました。これらの渦は毎秒17メートルから21メートルの速さで南東に進みました。
③このうちの2つの渦は、14時53分から14時56分にかけて、地上から巻き上げられた飛散物を伴いながら同市の花室(はなむろ)から上広岡(かみひろおか)にかけて通過する様子が気象レーダーの観測によって明らかになり、渦の経路の周辺では竜巻によるとみられる被害や痕跡が確認されました。
これらのことから、この被害をもたらした現象はガストフロントに伴う複数の竜巻であったと推定されました。このような現象を最新型の気象レーダーを用いて至近距離から高解像度で捉え、被害の分布との対応を詳細に確認できたことは珍しく、世界的に見て貴重なデータです。現在、メカニズムの解明に向けて詳しい解析を進めています。

(3)未来の高度な防災技術に向けて
最新型の気象レーダーを用いることによって、局地的な大雨や竜巻などの突風、また集中豪雨や台風などの現象を詳しく捉えることができると考えられます。気象研究所では、このような新しい観測技術とAIなどの先端的なデータ処理技術を組み合わせながら、未来の高度な防災のための研究開発に取り組んでいます。
Ⅱ-3 台風情報の高度化について
気象庁は、台風による災害の防止・軽減に資するため、これまで台風情報の精度の向上と内容の拡充に努めてきました。一方、近年は、台風情報等の防災気象情報を活用した公共交通機関の計画運休、自治体等によるタイムライン(防災行動計画)の策定などが進んでいます。こうした社会の変化を踏まえ、利用者のニーズに応じた台風情報のあり方について議論を行うため、令和6年(2024年)9月から令和7年(2025年)7月にかけて台風や防災の専門家、報道関係者などに参加いただき、「台風情報の高度化に関する検討会」を開催しました。令和7年8月に同検討会の報告書がまとめられましたので、その内容を紹介します。
(1)台風情報の改善について
気象庁は、現在、24時間以内に台風が発生すると予想した時点から進路予報等の台風情報を提供しています。検討会では、更に早い時期からの情報として、①台風シーズンを通した発生数の見通し、②1か月先までの間に台風が存在する可能性の高い領域、③1週間先までの間に熱帯低気圧が台風に発達する可能性を提供する必要性が示されました。これらの情報により、住民がより早くから防災へ備えることや、事業者が事業計画を策定すること等に活用できるようになることが期待されます。
また、台風が発生した後の情報では、①5日先までの進路・強度予報を24時間刻みから6時間刻みへ細かくすること、②風の情報について現状の暴風域・強風域の円表示に加えて警戒・注意すべき範囲・期間がより適確に伝わる詳細な分布情報を提供すること、③高潮・波浪の情報について予報期間を5日先まで延長するとともに、台風の位置・風分布などと整合した分布情報を提供することなどが必要とされました。このように、台風の特徴をより細かく伝える情報を提供することによって、住民の主体的な行動や自治体等の防災対応により一層活用できるようになることが期待されます。
これらの情報改善について、令和12年(2030年)頃に向けて必要な技術開発やシステム整備を進め、順次改善を実現するとともに、その後も技術開発を進め更なる精度向上と情報改善を図ることが必要とされました。また、台風情報の改善を支える基盤的な取組として、静止気象衛星や海洋気象観測船の整備等の観測の強化、数値予報技術の開発等の予測技術の向上を推進していく必要性や、先端AI技術の積極的な活用の重要性が示されました。

(2)台風情報の解説・普及啓発の充実について
住民、自治体等の防災関係機関、航空関係機関や指定公共機関、各種事業者等に早めの備えを促すとともに、様々な事前対策や防災対応がより効果的に行われるためには、情報自体の改善に加えて、発表した情報について利用者に応じた解説や、情報の活用方法について平時からの普及啓発を充実させることも重要です。解説については、台風発生前のより早くからの台風の見通しに関する解説や、より詳細となる台風発生後の情報の解説、それらに資する気象庁ホームページ上での台風災害等に関する解説資料の充実・整理の必要性が示されました。また、普及啓発については、大きく台風情報が変わることになるため、住民に向けて情報の見方や利用方法を様々な媒体を通じてより分かりやすい形で提供することや、専門家に向けて情報の詳細な仕様や精度等を提供すること、国に加えて報道機関や気象予報士等の様々な「担い手」による普及啓発活動を推進していく必要性が示されました。
気象庁では、台風情報がこれまで以上に社会の防災・経済活動において有効に活用されるものとなるよう、報告書で示された台風情報の高度化に向けた取組を着実に進めてまいります。

コラム
●台風情報高度化検討会に重ねた台風発生予測の夢

台風情報の高度化に関する検討会座長(横浜国立大学 教授)
筆保 弘徳
1998年10月、台風第10号が地元・岡山に襲来した。それまで台風被害がほとんどなかった岡山県北部に台風10号は狂暴な強風と大雨をもたらし、国から激甚災害の指定を受けるほどの被害が出た。その地に住んでいた祖父が丹精込めて育てていた稲も、収穫を目前に控えて一面倒れてしまった。被害を受けた田を前に祖父は私にこう語った。「台風が来る一週間前、いや二週間前に分かっていたら、農家は備えることができた」。稲刈りは人手を集め、作業の段取りを組んだ上で数日間かけて行う。一週間前の情報では間に合わず、二週間の猶予がなければ実際の行動にはつながらない。その言葉は、米農家にとっての切実な時間感覚が込められていた。
当時の私は気象学を志し始めたばかりであったが、この「二週間前」という言葉が強く心に残った。台風は、発生してから日本に接近するまでに概ね3~5日を要する。二週間前に備えるには、発生後に追いかけるのでは遅く、そもそも「発生するかどうか」を捉える台風発生予測が求められる。しかし、気象庁による台風発生予測は当時も現在も行われていない。台風発生予測の実現は、私の台風研究人生における大きな目標となった。そして私がポスドク研究員をしていた頃、全球非静力学モデルNICAMを用いた数値実験により、初期値から約二週間後に発生する台風が、現実と同様に再現されている結果を目にした。そのとき、二週間前の台風発生予測は夢物語ではなく、技術的には可能性があることと、社会がその予報情報をどう受け取るかが問われる課題であると感じた。
気象庁から台風情報高度化検討会参画の依頼を受けた際、私の頭に浮かんでいたのもあの「二週間前」という言葉であった。検討会を経て、台風発生予測が今後の情報の在り方として最終報告書に盛り込まれたことは、社会にとって重要な一歩であると同時に、私自身が長年抱いてきた夢が前進した瞬間でもあった。
もっとも、最終報告書の内容は台風発生予測にとどまらない。台風発生後の進路・強度予報の高度化、風・高潮・波浪といった防災情報の充実、普及啓発の重要性など、台風の一生を通じて、様々な立場の利用者が余裕をもって台風に備えるための情報提供の在り方が整理されている。検討会に関わった一人として、この最終報告書は胸を張って示せる内容になったと感じている。
さいごに、本検討会を通じて強く印象に残ったことに触れておきたい。検討会の準備や議論の過程で、座長として力不足を感じる場面は少なくなかった。それでもこうして良い形にすることができたのは、気象庁の、とりわけ若い職員の皆さんが主体的に考え、しっかりと検討会を支えてくれたからにほかならない。彼らから、台風情報を社会に届けるという使命や強い当事者意識を随所に感じた。こうした支えがあったからこそ、本検討会が結実できたことに心より感謝申し上げたい。同時に、気象庁という長年の現業で根ざした組織の確かな力と将来性を、たいへん頼もしく感じた検討会であった。
Ⅱ-4 線状降水帯対策
(1)線状降水帯に関する情報改善の取組
次々と発生する発達した雨雲の一群が、数時間にわたりほぼ同じ場所を通過・停滞することで生じる、強い降水をともなう雨域を線状降水帯といいます。ひとたび線状降水帯が発生すると顕著な大雨をもたらし、災害発生の危険度が急激に高まります。
気象庁は、観測・予測技術の高度化を進め、線状降水帯に関する情報の段階的な改善を実施しています。令和3年(2021年)に、線状降水帯が発生し災害発生の危険度が急激に高まっていることを伝えるため、「顕著な大雨に関する気象情報」の提供を開始しました。また、令和4年(2022年)からは、線状降水帯の発生を半日前から予測し警戒を呼びかける「線状降水帯半日前予測」を運用しています。これらの情報に加えて、令和8年(2026年)からは、線状降水帯発生の予測を、発生の2~3時間前を目標に発表する「線状降水帯直前予測」の運用を開始します。
この情報は、線状降水帯が今後3時間以内に発生する危険性が特に高まった場合に、一次細分区域(府県内をいくつかの地域に分けた区域)を対象に発表します。この情報が発表された場合には、自治体からの避難情報に留意いただくとともに、「キキクル」や河川の水位情報などを確認し、崖や川の近くなど、危険な場所にいる方は、適切な避難行動をとっていただくことが大切です。
あわせて、線状降水帯による大雨のおそれがある領域を地図で示した「線状降水帯予測マップ」の提供を開始します。「線状降水帯直前予測」が発表された際には、気象庁ホームページから、どこに大雨のおそれがあるのかをこの予測マップで確認していただき、適切な行動に繋げていただくことを期待しています。
令和8年の新たな防災気象情報の開始により、これら線状降水帯に関する情報の名称はそれぞれ、「気象防災速報(線状降水帯発生)」、「気象防災速報(線状降水帯直前予測)」、「気象解説情報(線状降水帯半日前予測)」として発表します。

(2)線状降水帯・台風等に関する機構解明及び予測技術向上に向けた研究
激甚化・頻発化する気象災害の被害防止・軽減に向けて、線状降水帯や台風等の予測精度向上は喫緊の課題です。気象研究所では、令和3年度より線状降水帯とその環境場に関する研究を大学や研究機関と連携しつつ推進してきました。これらの研究から、線状降水帯の発生形態は極めて多様であること、また、線状降水帯による大雨は台風の直接的・間接的影響を受けることも多いことが分かってきています。これらの成果に基づき、気象研究所では今までの取組を更に強化し、令和7~10年度(2025~2028年度)の計画で、緊急研究課題「線状降水帯・台風等に関する集中観測による機構解明及び予測技術向上」を新たに開始しました。
この研究課題では、線状降水帯や台風とそれに伴う激しい気象現象の実態を把握し、そのメカニズムや大気海洋相互作用の役割を明らかにすることで、予測技術の向上を目指します。まず、国内の様々な大学や研究機関と協力し、北西太平洋域などの海洋上も含めた広域で、多様な測器による大気・海洋の集中観測を実施します(第1図)。さらに、集中観測で得たデータや衛星データ等も活用し、データ同化・数値シミュレーション手法の開発・改良により、線状降水帯や台風に伴う大雨や暴風、更に高潮や洪水等の予測技術向上を目指します。
令和7年度には5月下旬から10月に集中観測を実施しました。航空機ドロップゾンデ観測(名古屋大学と共同で実施)では、飛行経路に沿った大気の鉛直構造を取得し、上空の寒気や、下層の暖かく湿った空気が流入する様子が捉えられました(第2図)。また、様々なデータ同化・予測システムの実験環境の構築を進め、実験を試行しました。統計台風強度モデルでは、海洋同化・予測システムによる海面水温や海洋貯熱量の予測値を用いる実験を行い、台風の通過による海面水温低下等の影響が反映されることにより、台風の最大風速の予測が良くなる事例がみられています(第3図)。
今後も、集中観測、及び、その観測データ等を活用した取組を大学や研究機関と連携しつつ推進し、線状降水帯や台風等のメカニズム解明、予測技術向上に貢献していきます。

コラム
●「測れなかった場所」を測る ―台風直下の海域観測―

NTT宇宙環境エネルギー研究所
主幹研究員 松原 浩史(写真中)
主任研究員 遠藤 直人(写真左)
主任研究員 小阪 尚子(写真右)
近年、台風による強風・高波・大雨の被害は激甚化しており、進路や発達をより正確に予測することが求められています。被害を少しでも減らすためには、その精度向上が欠かせません。その鍵となるのが、台風が発達する海域での観測データです。台風直下や周辺海域では、台風は海からエネルギーを受け取って発達します。なかでも、そのエネルギーのやり取りが最も活発になるのが、台風中心付近の海域です。しかし、強風や高波のため船舶観測は困難で、十分なデータが得られてきませんでした。
この測れなかった場所を観測するため、無人で、波の力を利用して長期間航行できる海洋観測機器「せいうちさん」(図1)を活用し、各種センサにより大気と海洋を同時に観測します。台風シーズン前から沖縄近海に展開し、進路予報に応じて遠隔で位置を調整することで、人が立ち入ることなく台風直下での観測を実現しています。取得データは衛星通信を通じてリアルタイムに伝送されます。これまでに、沖縄科学技術大学院大学と連携し、2022年の台風第11号、2023年の台風第6号(図2)をはじめ、2024年には複数の台風を連続して観測することができました。

2025年からは、気象研究所との連携へと拡張し、得られたデータをもとに、台風や線状降水帯がどのように生まれ、発達するのかを明らかにする研究に取り組んでいます。
将来的には、NTTが構想する新たな通信網を活用し、より広い海域を同時に観測できる体制の構築をめざし、予測精度のさらなる向上につなげていきます。

(3)数値予報モデルの進化:局地モデルの高解像度化と局地アンサンブル予報システムの運用開始
気象庁では、令和8年3月に局地モデル(LFM)の水平格子間隔を2kmから1kmに高解像度化し、更に局地アンサンブル予報システム(LEPS)の運用を開始しました。これらの数値予報モデルの業務運用に向けては、文部科学省・理化学研究所の協力の下でのスーパーコンピュータ「富岳」の活用や線状降水帯予測スーパーコンピュータの導入によって開発を加速化するとともに、数値予報モデル開発懇談会や線状降水帯予測精度向上ワーキンググループ等において、有識者からのご助言もいただきながら進めてきました。
線状降水帯は、積乱雲の発生や発達がごく小さな気象条件の違いで大きく変わり、場所と時間を特定した予測は困難です。このため、線状降水帯の予測を的確に行うためには、個々の積乱雲を表現する高解像度かつ精緻な数値予報モデルと、豪雨の発生を確率的に予測するアンサンブル予報の両方のアプローチが必要です。
LFMは気象庁が運用する数値予報モデルの中で最も解像度が高く、線状降水帯等による大雨の予測を担っています。今回の高解像度化により、LFMが予測する積乱雲の表現能力が向上し、積乱雲を形成する対流が発生するタイミングの遅れや現実より強い雨を予測する傾向が改善し、降水予測精度が向上します。線状降水帯の位置や降水量の予測が改善する事例を紹介します。

アンサンブル予報は、僅かに条件を変えた多数の予測を行い、その統計的な性質から予測の確からしさを把握し、現象の発生を確率的に捉えて予測する技術です。今回、線状降水帯の構造を細かく表現できるLFMに基づくアンサンブル予報として、LEPSを新たに開発しました。水平解像度2kmのLEPSは、既存の水平解像度5kmのアンサンブル予報(MEPS)よりも、多くの事例で線状降水帯等による大雨を高い確率で予測します。

気象庁では、これらの進化した数値予報モデルの活用や関連する技術開発により、今年の出水期から「気象防災速報(線状降水帯直前予測)」の発表を開始しました。今後も更なる数値予報モデルの改善や、線状降水帯による大雨の可能性に関する半日程度前からの呼びかけの精度向上を進めていくとともに、令和11年度(2029年度)に計画している半日程度前に線状降水帯発生による大雨の可能性が高い市町村を把握できる格子形式の分布図の開発や準備を進めていきます。
(4)海洋気象観測船の一般公開
気象庁は、海洋気象観測船「凌風丸」と「啓風丸」を用いて、気候変動の実態把握や海洋環境の監視のため、海水温や二酸化炭素濃度、塩分などの海洋観測を行っています。また、令和3年からは、線状降水帯の予測精度向上に寄与するため、海上の水蒸気量の観測も行っています。気象庁では、これらの海洋気象観測船とその役割を広く知っていただくための取組を行っています。令和7年は、大分市で開催された「大分みなと祭り」で「啓風丸」を、神戸市で開催された「Techno-Ocean 2025」で「凌風丸」を一般公開しました。
○一般公開の概要
海洋気象観測船の一般公開では、船を操縦するための操舵室のほか、海洋観測や気象観測に使用する観測機器及び採取した海水などを分析する観測室を公開しました。特に、「凌風丸」は令和6年(2024年)に竣工した海洋気象観測船であることから、最新鋭の操船計器や観測機器をご覧いただきました。現地では船外で乗船を待つ人の列は途切れることがなく、「大分みなと祭り」では1日で850名を超えるなど大変多くの方に乗船いただきました。大人から子どもまで幅広い世代の方が乗船され、「気象庁が船でも観測を行っているなんて知らなかった」、「凌風丸に乗れて良かった」などのコメントをいただきました。
今後も海洋気象観測船の一般公開を通して、気象庁の業務や海洋気象観測船の役割を広く知っていただけるよう、これからも各地で海洋気象観測船の一般公開を実施してまいります。

