◆ 特集1◆ 新たな防災気象情報
1 新たな防災気象情報
国土交通省水管理・国土保全局と気象庁では、令和6年(2024年)6月に取りまとめられた「防災気象情報に関する検討会」の提言を踏まえ、防災関係機関や国民の皆様の避難等の防災対応が一層効果的なものとなるよう、令和8年(2026年)5月から新しい防災気象情報を運用開始しました。
この新たな防災気象情報では、河川氾濫・大雨・土砂災害・高潮に関する警報・注意報を、避難行動に対応した5段階の警戒レベルと整合させ、災害発生の危険度に応じて発表します。これまでの警報・注意報などの情報体系が大きく変わります。
なお、この新しい防災気象情報に関連する気象業務法及び水防法の一部改正について、トピックス(Ⅱ)(10頁)の「(1) 洪水の特別警報等の創設」や「(2) 高潮の共同予報及び警報の創設」で紹介していますので、併せてご覧ください。

1-1 新情報のポイント
(1)5段階の警戒レベルへの整合
避難情報に関するガイドラインでは、5段階の警戒レベルにより住民がとるべき行動が設定されています。警戒レベルに相当する河川氾濫・大雨・土砂災害・高潮に関する情報は、これまで警戒レベルとの対応が情報ごとに異なり、分かりにくい点がありました。今般の改善では、情報名称への警戒レベルの数字の付記、河川氾濫に関する特別警報の新設、警戒レベル4に相当する危険警報の創設など、情報の名称や体系を見直します。これにより、国民の皆様がとる防災行動の判断を、より一層支援できるようにします。

(2)情報へのレベルの付記
危機感を適切に伝え、住民がとるべき防災行動をより連想しやすくするため、情報に対応する警戒レベルとの関係を明確にし、情報名称そのものに警戒レベルの数字を付けて発表します。例えば、警戒レベル3相当の大雨警報は「レベル3大雨警報」として発表します。これにより、レベルの数字を見聞きしただけで、現在の気象状況がどのような防災行動をとるべき段階にあるのかが分かりやすくなります。
レベル3の警報やレベル4の危険警報が発表された場合には、自治体からの避難指示等に十分留意
いただくとともに、災害の危険度の高まりを地図で表示する「キキクル」や河川の水位情報を参照して、危険な場所にいる方は早めの避難を心がけてください。
(3)河川氾濫に関する特別警報の新設
河川氾濫については、これまで予測技術が十分ではなかったことから、特別警報を運用していませんでした。しかし、近年の河川水位の観測・予測技術の進展により、特別警報の運用が技術的に可能となってきました。このため、洪水予報河川を対象として、河川ごとに河川氾濫に関する特別警報の運用を新たに開始し、「レベル5氾濫特別警報」として発表します。
(4)レベル4相当情報としての「危険警報」の運用
警戒レベル4相当情報は、自治体や住民が避難指示や避難の判断に用いる重要な情報ですが、これまで統一された名称がありませんでした。また、大雨による浸水害を対象とする警戒レベル4相当の情報がないという課題がありました。このため、警戒レベル4に相当する情報として、新たに「危険警報」を運用することで情報名称の統一を図ります。併せて、大雨に伴う浸水害等についても「レベル4大雨危険警報」を新設します。
(5)気象防災速報、気象解説情報の新設
特別警報や警報、注意報を補足・解説する気象情報については、速やかな防災対応を後押しする情報と今後の防災対応の検討を後押しする情報との区別を明確にするため、短時間の記録的な大雨や線状降水帯による大雨、竜巻の発生など、極端な現象を速報的に伝える情報は「気象防災速報」、その他の情報は気象状況等を網羅的に解説する「気象解説情報」として発表します。

1-2 その他の情報の充実について
(1)時系列情報(明日までの警報等の見通し)の提供
時系列情報は、明日までの気象の見通しを提供する予測情報です。レベル3やレベル4などの情報発表が見込まれる時間帯の有無が分かりますので、事前の備えや避難の準備等にご活用ください。時系列情報は、毎日4回(05時、11時、17時、23時)発表され、気象庁ホームページでいつでも最新の情報が確認できます。定時の発表以外にも、今後の見通しが大きく変わった場合などには、必要に応じて臨時に修正情報を発表します。

(2)キキクルについて
キキクルは、大雨の際にどの場所で災害発生の危険度が高まっているのかを5段階に色分けして地図上に表示する情報で、大雨や土砂災害等の5段階の各レベルの情報の発表状況と結びついています。現在の雨の状況と今後の予測を踏まえて10分毎に更新され、どの場所が危険なのかが一目で分かりますので、避難行動の判断に役立ちます。
大雨や土砂災害の情報が発表された場合には、キキクルを確認して、実際にどの場所でどの災害の危険度が上昇しているのかを確認し、自分のいる場所が赤色(レベル3相当)や紫色(レベル4相当)になっている場合には、早めの避難を心がけましょう。今般の情報改善にあわせ、従来の洪水と浸水のキキクルの両方を重ね合わせた大雨キキクルが新しく提供されます。キキクルは気象庁ホームページから誰でも確認できますし、民間事業者からキキクルの危険度をお知らせするアプリも提供されていますので、是非ご活用ください。

1-3 新たな防災気象情報の周知広報について
気象庁では、ホームページに新たな防災気象情報に関する特設ページを公開しています。ここでは、情報の概要をはじめ、各情報の運用内容等に関する資料とともに、広報用のチラシやリーフレット等を掲載し、ダウンロードできるようにしています。また、新たな情報は自治体をはじめとする防災機関の皆様の防災対応に深く関連する情報となることから、こうした防災機関の皆様に新しい情報をしっかりと活用いただけるよう、必要なフォローアップを今後も引き続き行っていきます。
防災気象情報は社会のさまざまな場面で活用されています。今回改善する新たな防災気象情報がしっかりと社会に定着し、有効に活用されることが何よりも重要です。気象庁では関係機関と連携しながら、あらゆる機会をとらえて、引き続き新情報の周知広報に取り組んでまいります。
<新たな防災気象情報に関する特設ページ>
https://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/bosai/keiho-update2026/index.html


コラム
●新しい防災気象情報

株式会社 南気象予報士事務所 代表取締役
防災気象情報に関する検討会 委員
気象予報士 技術士(応用理学)
南 利幸
防災気象情報が新しくなりました。これまでは様々な情報が複雑に組み合わさった情報になっていましたが、新たな情報はシンプルで分かりやすくなったのではないでしょうか。新たな情報の特徴を3つ挙げると、1つはレベル4の危険警報が新設されたことです。危険警報はレベル3の警報とレベル5の特別警報の間で、危険な場所にいる人は避難が必要であることを示している情報です。2つ目は河川氾濫に関する情報が、気象の警報や特別警報の範疇に入ったことです。これによりテレビの天気予報の中で大雨の警報等と共に河川氾濫の情報も扱うことになりました。3つ目は情報にレベル5やレベル4等の数字が付いたことです。これは地震の震度情報を意識しています。震度情報は100年以上前から発表されているため、多くの日本人は震度4よりも震度5の方が、揺れが強いことを感覚として分かっています。防災気象情報のレベルも何年後かには感覚として理解できる情報になるはずであるとの思いが込められています。
新たな防災気象情報が状況の把握や避難行動の目安として早く定着することを願いながら、情報の内容を広めるために努力をしなければならないと考えています。
コラム
●新しい防災気象情報への期待とデジタルの伝え手の責務

LINEヤフー株式会社 メディアSBU Yahoo!天気・災害企画
防災気象情報に関する検討会 委員
堤 浩一朗
このたび、防災気象情報は5段階の警戒レベルと完全にリンクする体系へと大きく刷新されます。この変更は、風水害の危険度をより直感的に伝えるための大きな一歩であると考えていますが、Webサイトやスマートフォンアプリを利用した情報伝達を主とするインターネットメディアとして、新しい情報への期待と、変更時の対応についての課題の両方を感じています。
複雑化した防災気象情報の体系が整理されることで、住民の皆さんが直感的に防災行動を判断しやすくなることへの期待は大きいものです。特に、これまでレベル4にあたる情報がなかった気象警報に「レベル4危険警報」が含まれることで、避難情報との紐付けもわかりやすくなるのではないでしょうか。
一方で、現在配信している防災気象情報の体系を変更することについては、伝え手にとっては移行作業の負担を伴うものとなります。例えば、これまで一般向けの警報扱いではなかった指定河川洪水予報が、気象警報と同じ枠組みに統合されることは大きな変更点です。また、レベルが付かない気象警報との併存についても、誤解のない伝え方が必要となります。さらに、新たなXML電文(VPWP50等)への切り替えについても、仕様の読み解きから切り替え当日の対応まで、綿密な設計や多くのパターンを想定したテストが求められるでしょう。
インターネットメディアは、ある程度情報そのものにフィルタをかけることはできても、基本的には配信されたデータをそのままWebサイトに表示したり、スマートフォンアプリに通知したりすることになります。変更後の情報を受け取った方が誤解することのないよう、デザインや文言を工夫したり、変更についての説明ページを別途設けるなど、細心の注意を払う必要があると考えています
ともあれ、今回の情報刷新は、変えることが目的ではありません。Webサイトやスマートフォンアプリを利用する住民の皆さんが、新しい情報を元にいかに適切な防災行動を取ることができるか、デジタルの伝え手としても背負う期待と責任は大きいと感じています。利用者の皆さんの反応を見つつ変更後も気象庁様と連携し、より良い形へとブラッシュアップを図っていきたいと考えています。

