トピックスⅡ 気象業務法及び水防法の一部改正について

 近年、豪雨等の自然災害が頻発化・激甚化する中で、防災気象情報である予報・警報を高度化・適正化するため、洪水の特別警報や高潮の共同予報・警報の創設、外国法人等による不適切な予報業務に関する規制の強化などを行うことを内容とした「気象業務法及び水防法の一部を改正する法律」が、令和7年臨時国会(第219回国会)において成立し、令和7年(2025年)12月12日に公布されました。本改正法は、令和8年(2026年)5月29日から施行しています。

 なお、下記の改正内容(1)及び(2)に関連する取組を特集1(12頁)で、(3)に関連する取組をⅦ-2(77頁)で紹介していますので、併せてご覧ください。

(1)洪水の特別警報等の創設

 地域の住民が災害の危険度を理解し、的確な防災対応がとれるよう、自治体が行う避難指示などの避難情報は、5段階の警戒レベルで整理され、認知が進んできました。しかし、防災気象情報と警戒レベルの関係は、洪水や大雨などの現象ごとに異なっており、統一されていませんでした。このため、令和6年(2024年)6月に、有識者・報道関係者等からなる「防災気象情報に関する検討会」において、シンプルでわかりやすい情報体系に向けた改善方針が示され、気象庁と水管理・国土保全局では、防災気象情報の体系の見直しを進めていくこととなりました。

 洪水については、降った雨が河川に流れ込み、河川の水位が上昇することで起こる現象であり、その予測には、雨量だけでなく、ダム等による洪水調節の状況や、堤防等のインフラ施設の状況、短い間隔での水位の変動の実態や予想を踏まえて行うことが必要となります。しかし、以前のシステムでは、洪水の予想を精度よく行えないことから、洪水については特別警報を発表していませんでした。

 このような中、近年は洪水の予測技術が進展しており、また河川水位の観測体制の拡充と相まって、より精度よく予想が行えるようになったことから、洪水についても、特別警報を創設しました。洪水の特別警報の創設により、大雨等の気象災害と同様、洪水による危険を明確かつ確実に自治体・住民等に伝えることができるようになり、特に警戒レベル5相当になる状況において、適確かつ迅速な防災対応や避難行動などの判断の支援につながることが期待されます。

 これに加えて、特別警報を発表するにあたっては、河川管理施設や水位の変動の状況を把握することが必要であるため、洪水の特別警報の創設と併せ、気象庁が特別警報の判断に必要な情報を適切に入手できるよう、国土交通省水管理・国土保全局、都道府県との連携に係る規定について、気象業務法に位置付けました。あわせて、洪水による氾濫が迫っていることを、気象庁や水防関係者にプッシュ型で情報提供するため、河川等の状況を最もよく知る河川管理者等が氾濫による危険の切迫を認める場合に、関係者に通報する制度を、水防法に位置付けました。この通報は、特別警報と相まって、市町村長が発令する警戒レベル5の緊急安全確保措置に直結する極めて重要な情報となります。

(2)高潮の共同予報及び警報の創設

 現在、高潮の予報・警報は、気象庁が全国の海岸を対象に行っており、これは、

 ・台風などによる気圧の低下によって、海面が吸い上げられる効果

 ・台風などの強い風によって、海水が海岸に吹き寄せられる効果

による海面の水位(潮位)の上昇を予想しています。

 しかし、実際の高潮による浸水は、潮位の上昇に加えて、押し寄せた波が海岸の地形や堤防などの施設に打ち上がる効果も合わさって発生するものであり、こうした「波の打上げ」の効果も反映することで、より精緻で、実態に即した高潮の予測が行えるようになることが指摘されていました。

 こうした中、国土交通省水管理・国土保全局では、波の打上げ高を予測するシステムを開発し、都道府県と協力し、全国の海岸で実証を進めているところ、令和8年度から正式に運用を開始することとしています。このため、

 ・潮位や波浪の予想を行う気象庁

 ・波の打上げ高の予想を行う国土交通省

 ・水位の観測結果や沿岸の地形・施設等の情報を有する都道府県

が共同することで、より精緻な高潮の予報・警報を行うための共同予報・警報の制度を創設しました。共同による高潮の予報・警報は、観測体制の整備状況等も踏まえ、国土交通大臣が高潮により重大な損害が生じるおそれがあるとして指定した海岸を対象として行われることとなります。より精度の高い高潮予測モデルを用いた共同予報・警報を導入することで、今後の高潮に対する警戒避難体制の強化を図ってまいります。

(3)外国法人等が行う予報業務の許可に関する規定の整備

 気象業務法では、技術的な裏付けのない予報が広く流通し、利用者が被害を受けることを防止するため、気象庁以外の事業者等が予報を行おうとする場合は、予報業務の許可が必要となります。しかしながら、近年、スマートフォンのアプリケーションなどの情報通信技術等の進展によって、国境を越えて、外国法人等が国内利用者に向けて様々な気象の情報を提供する例もみられるようになり、許可が必要な予報業務を無許可で行っているケースも出てきています。さらに、これらの無許可で行われる予報業務において、気象庁が警報を発表していない状況にも関わらず、誤って警報が通知されている例や、予報業務許可の審査基準を満たさないような手法を用いている疑いがあり、精度の低い予想が提供されている例など、利用者に被害が生じ得るような予報の提供が確認されています。このため、こうした予報が流通することによる国民への被害を防止するべく、外国法人等により無許可で予報がなされないよう措置を講じる必要がありました。

 こうした背景の下、外国法人等が許可を申請するに当たっては、国内事業者と同様に、責任の所在を明確化させ、気象庁が指導監督を徹底できるようにするために国内代表者等の指定を義務付けました。また、外国法人等が許可を取得した後に、国内代表者等の所在が分からなくなった場合には、簡易的な手続により許可を取り消すことをできるようにしました。

 さらに、気象業務法に違反して、許可を取得せずに、国内向けの予報業務を行う外国法人等に対しては、利用者に適切な情報を提供し、保護を図るという観点から、事業者の氏名や提供するアプリケーションの名称などを公表できるようにしました。


 気象庁は、この改正法を通じて防災気象情報をより一層高度化・適正化することにより、災害時における国民の生命及び財産の被害軽減が図られるよう万全を期してまいります。

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