◆第Ⅶ章◆ 民間気象業務に関する取組

Ⅶ 民間気象業務に関する取組

Ⅶ-1 気象ビジネスにおけるデータ利活用促進の取組

(1)気象データ利用ガイド

 気象庁及び気象ビジネス推進コンソーシアム(WXBC)は、ビジネスにおける気象データ活用を促進するため、気象データの活用事例や利用手順、入手方法等をとりまとめたウェブサイト「気象データ利用ガイド~先を読むビジネスへ~」を令和6年(2024年)から公開しています。

 https://www.data.jma.go.jp/developer/weatherdataguide/index.html


 本サイトでは、データの基本的な使い方、個別データの解説、実際の活用事例など、気象データをビジネスに活用するためのヒントを多数紹介しています。これから気象データを活用したビジネスを始める方、業務で気象データを使っている方など、幅広い分野で活躍される皆さまの一助となるよう、内容の充実を図ってまいりますので、本サイトをぜひご活用ください。

気象データ利用ガイドトップページ

(2)気象データアナリスト

 気象データアナリストとは、気象データを活用して企業におけるビジネス創出や課題解決を行うため、気象データの知識とデータ分析の知識を兼ね備え、気象データとビジネスデータを分析できる人材です。気象庁では、民間事業者等が人材を育成するための「気象データアナリスト育成講座」の認定を行っています。

 「気象データアナリスト育成講座」は、「気象」、「データサイエンス」、「ビジネス」に関して修得すべき知識・技術(スキルセット)等を示した「カリキュラムガイドライン」(気象庁が気象ビジネス推進コンソーシアム協力のもと作成)に適合し、経済産業省の「第四次産業革命スキル習得講座認定制度」(Reスキル講座)として認定された講座を気象庁が認定するものです。

 令和8年(2026年)1月現在、 4事業者で6つの認定講座が開講中です。気象データを含むデータを活用したビジネスに関心のある方は、ぜひ認定講座をご活用ください。

気象データアナリストリーフレット

コラム

●電気事業に貢献する気象データアナリストを目指して


株式会社 電力計算センター

増田 南波


 私は、電力中央研究所のパートナーとして設立された会社に勤務しております。電気事業の研究開発に関わる情報処理・数値解析等を実施しており、主に気象流体分野の研究開発を支える技術サポートとして、数値気象モデルや数値流体解析ソフトウェアを用いた現象の再現や解析に携わっています。電気事業に関係する気象解析の対象は多岐にわたり、送電線など電力設備への雪害・塩害・高波・高潮対策等の防災支援、再生可能エネルギーの発電量予測、地球温暖化の解析などが含まれます。こうした各分野の目的に応じて、観測データからモデルデータまで、様々な気象データを取り扱っています。

 近年、機械学習を用いた解析依頼も増加してきました。そのため、社内で輪読形式の勉強会を続けてきましたが、実際の生データを扱いながら学ぶ機会は多くありませんでした。そこで、気象データの取り扱いから機械学習の活用までを、実際に手を動かしながら体系的に学ぶ機会が必要と思い、気象データアナリスト講座を受講することとしました。

 講座は統計学に始まり、機械学習・深層学習を段階的に学び、最後に気象データを扱って実務に必要な力を培う構成でした。各講義では様々なデータや学習手法について手を動かして学ぶことにより、ビジネス課題やデータに幅広く対応できる実践的な力を身に着けることができました。 

 特に、機械学習を用いれば必ずしもすぐに高精度なモデルが得られるわけではないという実感を得られたことは大きな収穫でした。データに触れながら試行錯誤を繰り返し、課題への対処法や考え方を体系的に理解できたことで、実務に役立つ力が身についたと感じています。実務においても同様な場面に直面することがあり、その経験が活かされています。

 講習終了後は、機械学習を用いた太陽光・風力発電量や需要量予測、気象モデルのバイアス補正の業務を担当しました。講習の演習を通して身に着けた、データの整理から予測モデルの構築、結果のまとめまでの一連の流れを、実務で活かすことができています。また、機械学習を用いない様々な業務においても、気象データのハンドリング技術は役立っております。

 今後は、弊社に長年のノウハウとして蓄積されている数値解析モデル・シミュレーションと、機械学習の組み合わせが非常に役立っていくのではと考えています。近年、気象モデルの代替として学習モデルを用いることも世界中で検討されていますし、気象モデルの予測誤差を学習モデルで補正する手法、気象モデルのインプットを学習モデルで作成する手法など、様々な組み合わせ手法があると思います。これからも、気象モデルも計算できる気象データアナリストとして、活躍していきたいと思います。


コラム

●AI時代においても信頼される天気予報を届けるために


株式会社 ヤマテン 気象予報士

浅井 丈昭


 私は、株式会社ヤマテンが運営する登山者向けの天気予報サービス「山の天気予報」において、日々の予報業務を担当しています。加えて、気象データを活用した予報支援資料の開発や、新しいサービスのシステム設計にも携わっています。こうした業務に取り組めるようになった背景には、気象データアナリスト講座での学びが大きく影響しています。

 そもそも私がこの講座を受講しようと考えたきっかけは、業務工数の削減でした。実際の予報業務では、観測資料や各種予報支援資料があちらこちらに散在しており、それらを探し、確認し、組み合わせて予報を構築していくだけでも多くの時間を要していました。資料を一元的に管理し、予報にかかる工数を減らしたい。そのためには、気象そのものの知識だけでなく、システムを制御・設計する技術が必要だと感じ、独学で試行錯誤を始めました。

 しかし、気象データの取り扱いは想像以上に難解で、「このやり方で本当に合っているのか」という不安が常につきまといました。深層学習による予報支援資料の開発にも関心はありましたが、背景知識が不足している状態では、計算結果に責任を持てず、手を出すことに躊躇もありました。そうした折に出会ったのが、気象データアナリスト講座でした。

 講座では、気象学・統計学・深層学習といった分野を基礎から応用まで体系的に学ぶことができ、気象データのハンドリングや予測モデルの開発、さらにはビジネスにおける意思決定を支援する資料作成にも実践的に取り組むことができました。特に印象的だったのはグループワークで、異なる分野の受講生と議論することで、自分にはなかった視点や考え方に触れられたことです。視野が広がると同時に人とのつながりも生まれ、修了後も相談し合える関係が続いています。

 講座で得た知識や考え方は、現在の業務に確実に活かされています。実運用の段階では、システム構築に苦労する局面もありますが、生成AIの活用や、講座を通じて知り合った方々や仲間の助けを借りながら、そうした課題を一つずつ乗り越えていける環境にあります。今後も、各種天気図やAI予報モデルをはじめとした予報支援資料の作成や、予報と実況を検証するツールの開発を継続的に進めていきたいと考えています。

 生成AIを活用することで、システム構築にかかる時間は大きく短縮され、様々なデータを簡単に入手することができるようになってきました。一方で、AIに「頼り切らない」こと、そして各データに内在するクセを見抜くことの重要性も強く感じています。観測データにはノイズが含まれ、物理予報モデルであれAI予報モデルであれ、分解能の制約や時間発展に伴う不確実性は避けられません。計算結果はあくまで参考資料として捉え、その品質を自ら精査した上で、登山者にとって本当に信頼できる情報を今後も提供していきたいと考えています。

Ⅶ-2 外国法人等規制強化

(1)予報業務許可制度について

 経済の発展や、災害の激甚化・頻発化に伴い、気象情報は日常生活や企業活動、防災対策等において、ますます重要な役割を果たすようになっています。こうした中、気象庁は、皆様に広く利用いただける気象情報や、防災関係機関の活動や住民の安全確保行動の判断を支援するため警報等を発表しています。また、気象庁以外の民間事業者等も、交通、エネルギー、防災等の幅広い分野において、ユーザーの多様なニーズに応じて個別にカスタマイズした予報サービスを創出・提供しています。

 一方で、気象等の予報は人々の行動や判断に密接に関連した情報であるため、技術的裏付けのない予報が社会に広く流通した場合、社会に混乱や被害を招き、生活の安全・安心を損なうおそれがあります。このため、気象業務法では、気象庁以外の者が予報業務を行う場合には、気象庁長官の許可を受けることを義務付けており、気象庁が技術的な審査を行い、許可後も随時監督することにより、その予報サービスの技術的裏付けを担保し、安心して利用できる気象情報が流通するよう努めています。

(2)気象業務法の改正

 近年、情報通信技術の進展により、国境を越えて、外国法人等が国内の利用者に向けて気象情報を提供する事例が増えており、本来許可が必要な予報業務を無許可のまま行っているケースも見受けられるようになりました。さらに、その中には、気象庁が警報を発表していない状況にも関わらず、誤って警報が通知されている例や、予測精度が低くその予測手法が審査基準を満たしていないことが疑われる例など、利用者に被害が生じ得るような予報の提供が確認されています。

 こうした外国法人等による予報サービスについても技術的裏付けを担保し、国内利用者を適切に保護する必要があるため、気象業務法を改正し、外国法人等が行う予報業務の許可に関する規定を整備しました。具体的な改正内容は、トピックス(Ⅱ)(10頁)を参照ください。

(3)今後の取組

 気象庁では、今回の法改正も踏まえ、外国法人等に対して予報業務許可制度を周知し、本制度が適切に遵守されるよう取り組んでいきます。

 また、民間事業者との連携等により、違法性が疑われる予報業務に関する情報収集を行い、その実態確認や指導を進めていきます。その際に、指導に従わず違法な予報業務を継続する事業者を公表し、技術的裏付けが確認できていない予報であることを広くお知らせしてまいります。

 加えて、許可を受けており信頼できる事業者について皆様に一層周知していくことも必要であると考えております。すでに気象庁ホームページに予報業務許可事業者の名称を掲載しておりますが、今後、許可を受けた事業者であることがより分かりやすくなるような環境づくりを検討してまいります。

 皆様においては、予報アプリ等を利用される際には、予報業務許可を受けた信頼できるサービスをご利用いただくようお願いいたします。気象庁は、今後も関係者と連携しながら、信頼できる情報の流通と国民の安全・安心の確保に努めてまいります。

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