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Ⅶ 世界気象機関(WMO)が気象データに関する新たな方針を採択

 大気に国境はなく、台風等の気象現象は国境を越えて各国に影響を及ぼします。このため、世界の各国が精度の良い天気予報とそれに基づく的確な警報・注意報などの気象情報を発表するためには、気象観測データや予測結果等の国際的な交換や技術協力が不可欠です。気象庁は、世界気象機関(WMO)等の国際機関を中心として世界各国の関連機関と連携するとともに、近隣諸国との協力関係を構築しています。


 WMOは、世界の気象業務に係る調和的発展を目的として設立された国際連合の専門機関の一つであり、我が国は昭和28年(1953年)に加盟しました。4年ごとに開催する世界気象会議(以下「総会」という。)で向こう4年間の予算や事業計画を審議し、執行理事会において事業計画実施の調整・管理に係る検討を毎年行っています。我が国はWMOの主要な資金拠出国であるとともに、アジア地区における気象情報サービスの要として国際的なセンター業務を数多く担当するなど中心的な役割を果たしています。また、歴代気象庁長官は執行理事としてWMOの運営に参画しているほか、気象庁の多くの職員も専門家として専門委員会や地区協会の活動に貢献しています。


 世界の国々が効率的な気象業務を行うためには、統一された方法による大気や海洋の観測、観測や予測データの迅速な交換・共有、高度なデータ処理に基づく気象情報の作成・提供が必要です。特に、精度の良い天気予報や防災情報等が提供されるためには、解析や予測に必要な観測データが確実に各国で交換・利用されることが重要です。

様々な気象観測

全世界的な気象通信ネットワーク(GTS)

 一方、データ交換に関する考え方は各国で異なるのが実際です。自国で所有する気象データを基本的に公開する国もあれば、気象データを販売して利益を得たいと考える国もあります。そのような背景の中、WMOは、平成7年(1995年)に開催された第12回総会にて気象データの国際交換に関する基本的な方針(データポリシー)を採択し、各国はこのポリシーを踏まえて気象データの国際交換を実施してきました。しかし、その後の観測技術や通信技術、数値予報技術などの科学技術の進展に伴う気象業務に利用可能な観測データの増加により、従来のデータポリシーを見直す必要が生じてきました。このため、WMOは気象に限らず様々な分野も含めたデータの国際交換に関するポリシーの検討を行い、令和3年(2021年)10月にオンラインで開催された臨時総会において、WMOの新たなデータポリシーが採択されました。

 今回採択されたデータポリシーでは、気象、気候、水文、大気組成、雪氷圏、海洋、宇宙天気の7分野を対象とし、あらゆる気象業務の基盤となる全球数値予報に必要不可欠な観測データと、全球数値予報による予測結果(プロダクト)の世界的な共有を目的とし、各分野における国際交換されるべきデータの要件が定められました。これらの要件の具体は、WMOが管理する技術規則に定められ、科学技術の進展や気象業務に必要なデータのニーズ等を踏まえ、必要な改定を行っていくことになっています。新しいデータポリシーに基づいたデータの国際交換は、民間と公的部門双方によるより良いサービス実現を促し、社会経済活動の発展につながるとともに、技術研究の更なる推進が期待されます。

 本臨時総会には、我が国は長谷川直之気象庁長官を首席代表とした政府代表団が出席し、本データポリシーに関する議題を含めた様々な議題において積極的に議論に参加し発言を行うなど存在感を示しました。気象庁は、世界的にも先進的な技術・知見を生かし、今後とも我が国及び世界の気象業務の発展・改善に積極的に貢献していきます。

オンラインで実施された令和3 年のWMO 臨時総会で発言する長谷川気象庁長官(右スクリーン)
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