トピックス

Ⅴ 大雨・洪水・雪等の情報の改善

トピックスⅤ-1 大雨や台風に備える防災気象情報の改善

 気象庁は、災害に結びつくような激しい現象が予想されるときには、危険度の高まりに応じて注意報、警報、特別警報を段階的に発表して、市町村、都道府県、国の機関等の防災関係機関の活動や住民の主体的な安全確保行動の判断を支援しています。住民の皆さまが主体的に避難行動をとっていただく判断をしやすくなるよう、とるべき行動が5段階に分けられた「警戒レベル」が令和元年(2019年)から導入されており、気象庁から発表される警報等もこのレベルと結び付けられています。詳細は気象庁ホームページ「防災気象情報と警戒レベルとの対応について」をご覧ください。

 https://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/bosai/alertlevel.html


 さらに、最新技術の進展を踏まえて、避難が必要な状況であることをより明確に伝えて、より安全なタイミングで避難を判断いただくための情報発信を強化する取組を進めています。その最新の取組内容をご紹介します。

「警戒レベル」と注意報・警報・特別警報等の関連


(1)「キキクル(大雨警報・洪水警報の危険度分布)」の進化

 キキクルは、大雨警報や洪水警報等が発表されたときや雨が強まってきたときに、どこで危険度が高まっているかを把握できるよう、雨量予測データから算出した危険度の高まりを1キロメートル四方の区域ごとに5段階に色分けして表示します。大雨による災害からより多くの皆様の命を守るため、キキクルは進化を続けています。

大雨による災害発生の危険度の高まりを伝えるキキクル


進化①:危険な場所を一目で分かりやすく

 いざというときに避難するためには、もともと災害が発生しやすい場所(地域における災害リスク)について日頃から理解するとともに、緊急時にも簡単に確認できることが重要です。

 気象庁ホームページでは、市町村のハザードマップにも用いられる「重ねるハザードマップ」の災害リスク情報を、キキクルと重ね合わせて表示できるようにしています。土砂キキクルでは土砂災害警戒区域等が、洪水キキクルでは浸水想定区域が、リアルタイムの危険度の高まりと一緒に確認できます。

リスク情報と土砂・洪水キキクルとの重ね合わせ表示の例

進化②:より多くの方に気付いていただけるように

 キキクルは10分ごとに更新していますが、地図情報のため、キキクルの危険度(色)が変わって危険度が高まってもすぐに気付くことができないことがあります。このため、危険度の高まりを確実にお届けできるよう希望者向けにスマホアプリやメールでプッシュ通知するサービスを、民間事業者の協力を頂いて令和元年(2019年)7月から開始しています。令和3年(2021年)6月からは政令指定都市において区単位の通知を開始しました。

進化③:とるべき行動をより分かりやすくお伝えするために

 キキクルにも、注意報や警報と同様に、危険な場所からの避難が必要とされる「警戒レベル4」や高齢者等の避難が必要とされる「警戒レベル3」に相当する危険度(色)が結び付けられています。

 また、令和3年(2021年)5月に災害対策基本法が改正され、市町村が発令する避難情報の位置付けが変更となったことに合わせて、キキクルにも「災害切迫」(黒)を「警戒レベル5」相当として新設するとともに、これまでの「非常に危険」(うす紫)と「極めて危険」(濃い紫)を統合し「警戒レベル4」相当の「危険」(紫)に一本化します(令和4年(2022年)6月より)。「災害切迫」(黒)は災害がすでに発生している可能性が高い状況ですので、これを待つことなく「危険」(紫)が出現した段階で速やかに安全な場所に避難することが極めて重要となります。

キキクルの「うす紫」「濃い紫」の「紫」への一本化、「黒」の新設

(2)気象特別警報・警報・注意報のさらなる改善

ア.とるべき行動に見合った呼びかけができるように

 特別警報・警報・注意報は市町村単位で発表しており、災害発生に密接に結びついた指標(キキクルに用いている指数や、風速、潮位等)に基づき発表します。この基準は、市町村ごとに過去の災害をくまなく調査した上で重大な災害が発生するおそれのある値に設定しています。例えば、暴風警報の基準は「風速がこの値以上に到達すると重大な災害が発生するおそれがある」です。この発表基準は、インフラの整備等により災害の起こりやすさが変更となった場合等には必要に応じて見直しています。


イ.主体的な避難の判断に一層使っていただけるように

 警報等は、防災関係機関や住民に伝わり安全確保行動がとられるまでにかかる時間を考慮して、現象発生までの猶予時間(リードタイム)を確保できるように発表しています。台風や発達した低気圧等の接近に伴う高潮災害では、潮位が上昇する前に風が強まり屋外への立退き避難が困難な状況となることがあります。このような場合、暴風が吹き始める前に避難を完了することが重要です。このため、避難指示(警戒レベル4)を発令する目安となる高潮警報について、暴風が吹き始める時間帯も考慮して十分なリードタイムを確保して発表する改善を令和3年6月に実施しています。

改善後の高潮警報の発表例(令和3 年台風第6 号の時の沖縄県石垣市)

ウ.大雨特別警報の改善

 大雨特別警報は警戒レベル5に相当し、発表時には何らかの災害がすでに発生している可能性が極めて高い状況です。この警戒レベル5相当の状況に一層適合させるよう、雨量に替わり災害発生との結びつきが強い「指数」により新たな基準値を設定するとともに、基となるデータを5キロメートル四方から1キロメートル四方に高解像度化することで、発表対象地域を大幅に絞り込んで空振り(特別警報を発表したが重大な災害は発生しないこと)を少なくする改善を推進しています。令和2年(2020年)7月から大雨特別警報(土砂災害)についてキキクルの技術を用いた指標による全国的な運用を開始し、令和4年(2022年)6月からは大雨特別警報(浸水害)についても同様に改善する予定です。

大雨特別警報(浸水害)の改善

コラム

■「気象台からのコメント」始めました


 令和3年(2021年)2月のリニューアルに合わせて、気象庁ホームページに「気象台からのコメント」の掲載を始めました。このコンテンツは、気象警報や注意報、情報等の防災気象情報をより効果的に活用いただけるよう、詳細な気象状況や今後の情報発表の見通しを解説することで「気象台が今持っている危機感」をお伝えするものです。具体的には、「〇〇までに大雨警報を発表する可能性が高い」「〇〇となった場合は、大雨警報を発表する可能性がある」「大雨のピークは〇〇頃である」といった警報等の発表の見込みや現象のピーク、警報等の解除の見込みや現時点で注目してもらいたいコンテンツなど、地域の防災に係る内容のうち、その時々に最も伝えたいことを選んで簡潔に記述しています。図は東京都の例ですが、背景色も、警報発表中や発表の可能性が高いときは赤、警報発表の可能性があるときは黄色、警報の発表可能性が低く注意報も発表されていないときは青として、ひと目でどれくらい状況が切迫しているかがわかるようになっています。

 「気象台からのコメント」は、基本的に1日3回の天気予報発表時にあわせて更新しており、状況が変わった場合はその都度更新しています。ぜひ、ご活用ください。

気象台からのコメント(東京都の例)

(3)下層悪天予想図(詳細版)の提供

 顕著な災害発生時の救助・救難活動で利用される小型航空機の多くは、常に操縦士の目視により飛行するため、運航可否の判断や安全な飛行には気象状況がとても重要です。これらの同一都道府県内を飛行する小型航空機等の運航を支援するため、気象庁では、おおむね府県単位に分割した全国64領域を対象に、地上5,000フィート(約1,500メートル)の風や領域内の雲域、雷電、地上の見通し等の航空機の運航に重要な影響を及ぼす悪天を1時間ごとに予想する下層悪天予想図(詳細版)を令和4年(2022年)3月から気象庁ホームページ(https://www.data.jma.go.jp/airinfo/index.html)で提供しています。

下層悪天予想図(詳細版)の例(高知)

 日本を北海道、東北、東日本、西日本、奄美、沖縄の6つの領域に分けて3時間ごとに予想する下層悪天予想図によりおおまかな気象状況の推移を把握いただき、下層悪天予想図(詳細版)で時間的・空間的にさらに詳細な予想を確認するというご活用方法が有効です。

 なお、下層悪天予想図、下層悪天予想図(詳細版)ともに各地の気象台が発表する最新の予報や警報、注意報などと合わせてご活用下さい。


(4)防災気象情報に関する検討会

 気象庁では、防災気象情報全体の体系整理や個々の情報の抜本的な見直し、受け手側の立場に立った情報への改善などの検討事項を中心に議論を行うため、学識者、報道関係者等による「防災気象情報に関する検討会」を開催しています。


ア.防災気象情報の現状と課題

 気象庁及び国土交通省水管理・国土保全局等では、注意報、警報、土砂災害警戒情報、特別警報、指定河川洪水予報など様々な防災気象情報を段階的に発表し、大雨等によって引き起こされる災害への警戒を呼び掛けています。また、各種防災気象情報は令和元年度(2019年度)より導入された警戒レベルの相当情報として位置付けられ、市町村の防災対応や国民の避難行動の判断等に活用されています。

 これまでも、大きな災害が発生した際には災害対応を振り返り、有識者検討会における議論等を踏まえ、明らかとなった課題に対して改善を重ねてきました。しかし、長年の改善の中で、防災気象情報の種類が増えて分かりにくくなった等の課題も明らかになったほか、先述の警戒レベルの導入のように、社会も日々、取り組みを進化させていることから、防災気象情報をいまいちど見直し、内容の過不足なくシンプルかつ適切なタイミングで受け手に「伝わる」よう整理することとしました。

気象庁等が発表する気象に関する情報の印象

 また、令和3年(2021年)4月に取りまとめられた「防災気象情報の伝え方に関する検討会」の報告書において、「防災情報全体の体系整理、及び個々の防災気象情報の抜本的な見直しを行うべき時期に来たと捉え、中長期的に腰を据えて検討していくべきである。」との提言がなされたところです。


イ.防災気象情報に関する検討会の立ち上げ

 こうした警戒レベルの導入や情報体系整理の必要性の高まりを受け、防災気象情報全体の体系整理や個々の情報の抜本的な見直し、受け手側の立場に立った情報への改善などの検討事項を中心に議論を行うため、学識者、報道関係者等による「防災気象情報に関する検討会」を開催することとなりました。


ウ.防災気象情報体系整理にあたっての視点

 これまでの検討会では、防災気象情報の体系整理についての基本的な方向性について議論されました。

 防災気象情報のターゲット及び役割を改めて整理しつつ、警戒レベルを軸とした分かりやすい情報体系の素案を基に討議が行われましたが、検討会委員からは「防災気象情報に関する課題の整理と改善の方向性については、気象庁が担う防災気象情報について細部にとらわれない大局的な議論を行うべき」、「避難に関して防災気象情報だけで人を動かすことはできないので市町村との連携、鉄道事業者や道路会社との連携も考慮すべき」といった意見が出されました。これらを踏まえて、今後も引き続き検討を進めていくこととなります。

情報体系整理に向けて


エ.今後の予定

 防災気象情報の体系整理にあたっては、多くの課題・検討事項を抱えていることから、「防災気象情報の伝え方に関する検討会」の報告書にもあるとおり、「中長期的に腰を据えて検討していく」ため、計10回程度開催し、令和5年度(2023年度)の秋から冬頃に取りまとめる予定です。


コラム

■「防災気象情報に関する検討会」に期待すること

田中 淳

防災気象情報に関する検討会座長

(東京大学大学院 情報学環 総合防災情報研究センター 特任教授)

田中 淳

 災害が発生するたびに、防災行政は新たな課題を突き付けられてきた。そして、これまで気象庁は、精度の改善とともに、技術的に提供可能となった新たな情報を発表することで、社会的要請に対応してきた。その一方で、結果として防災気象情報は複雑になり、わかりにくいといった指摘を耳にするようになってきた。それらの指摘を受けて、「防災気象情報の改善に関する検討会」(平成25年(2013年)9月)では、警戒レベルの導入等防災気象情報の体系の改善を求めていた。

 防災気象情報の改善は、個別の情報の改善、まして名称を変えることだけでは解決できない。もっと体系的に、情報と行動との関係ならびに情報と情報との関係に分析を深める必要があると当時から考えていた。このうち情報と行動との関係については、レベル化-とるべき行動からレベルを規定し、そのレベルと情報とを結びつけること-で、情報と行動との関係性を明示できるのではと考えていた。また、情報と情報との関係については、警報よりも切迫性が高い状況になっているにもかかわらず、「〇〇情報」として発表されるのは、情報の順序性からわかりにくく、改善の余地がある。

 今回の検討会では、これらの点に加えて、新たな視点から見ることができればと思う。まず情報と行動との関係については、行動を促す土俵づくりへの配慮が一層求められると感じている。一般的に、人は情報だけで避難等防災行動に移ることは容易ではなく、周囲の人の行動や呼びかけが重要である。これらの行動を促すすべての試みの中で、情報の役割を再考していく必要がある。また、行動に移す動機を高めていくため、切迫性を徐々に高めていくなど一連の情報戦略が必要である。これら行動を促す全体の中で、気象庁が果たすべき役割を明確に位置付け、さらにその役割を果たすために情報はどうあるべきかを包括的にみていくことが、今後の防災気象情報には望まれる。

 もうひとつの情報と情報との関係については、情報の特質を明確にしていく枠組み作りが必要だと感じている。たとえば、「台風」という気象場が「大雨」を降らせ、河川のはん濫や土砂災害などの「災害」を引き起こす。この3段階のいずれを中心とした情報体系とするのか整理が必要だと考えている。大雨を降らせる原因はたくさんあり、大雨によって生じる災害も多様である。その考え方を整理し、その中に警報や気象情報を位置付けていくことが望まれる。

 いずれにせよ、社会が成熟すれば、あるいは技術が進展すれば、防災気象情報の適切さも変わっていくだろう。したがって、この防災気象情報のあり方の検討は常に継続していく必要があり、この検討会がその場に結びついていければと願う。


トピックスⅤ-2 洪水及び土砂災害の予報のあり方に関する検討会

 ひとたび発生すると人命に関わる重大な災害を引き起こす洪水や土砂災害については、現在、市区町村の防災対応や住民等の避難に資するよう、国や都道府県が予報を提供しています。一方で、近年頻発・激甚化する災害を受けて、より局所的・短時間の予報やより広範囲・長時間の予報が求められるなど、洪水や土砂災害の予報へのニーズが多様化しています。またそれらを背景として、研究機関等において予測に関する様々な研究や新たな技術開発が進展してきています。これら新たな技術も活用し、洪水及び土砂災害に対する的確な防災対応や避難の促進、多様化するニーズへの対応のため、有識者からなる「洪水及び土砂災害の予報のあり方に関する検討会」を令和3年(2021年)1月から8月まで国土交通省水管理・国土保全局と共同で開催し、10月5日に報告書がまとまりました。


(1)社会の適切な防災行動や多様なニーズへの対応に向けた予報のあり方

 検討会で実施した洪水及び土砂災害の予報のニーズに関するヒアリングでは、市区町村から、避難指示等の判断に資するより詳細な地域の予報やより長時間先の予報へのニーズがありました。市区町村からは、それらに加えて、命を守る避難に直結する洪水及び土砂災害の予報は公的機関の情報が基本だという意見や複数から異なる予報が提供された場合の住民の混乱や問合せの殺到を懸念する意見も多くありました。また、民間企業等から、事業所や施設等の所在地の防災対応や事業継続計画に対応した予報へのニーズがありました。

 これらニーズや市区町村からの防災上の懸念も踏まえつつ、社会に対し予報が適切かつニーズに沿って提供されるよう官民の役割分担の必要性が示されました。

 国等は、市区町村の防災対応や住民等の避難に資する役割を引き続き担っていくため、新たな技術も取り入れつつ、洪水及び土砂災害の予報の継続的な高度化を進め、広く一般に対し洪水及び土砂災害の予報を単一の発信元からの責任と一貫性を有する提供(いわゆるシングルボイス)を行うこととされました。また、研究機関や民間気象事業者等は、防災上の考慮をしたうえでの多様なニーズに応える予報を提供するとともに、新たな技術の研究開発を進めることとされました。



(2)国等による洪水及び土砂災害の予報の高度化に向けた具体的な取組

 洪水予報の高度化に向けた取組として、国や都道府県の水位観測網や河道等の情報を一体的に取り扱い予測する「水系・流域が一体となった洪水予測」を実現することにより、精度向上、予測時間の延長、提供河川の拡大が期待できます。また、洪水予測の入力となる降水予測についても更なる高度化を推進していく必要があります。さらに、観測の充実や受け手に分かりやすく「伝わる」情報提供、技術開発に関する国と研究機関、民間気象事業者等の連携推進などの取組を進めていくことが示されました。

 土砂災害の予報の高度化に向けて、災害事例や地域の降雨特性等を踏まえた検証・発表基準の改善等による精度向上の取組や、研究機関等と連携し新たな研究・開発の有効性の確認・技術導入に向けた検討などを進めていくことが示されました。加えて、研究機関等と互いに連携し技術を高めていくため、国等における研究機関等の多様な予測技術の活用に向けた評価・社会実装体制の強化や、研究機関等における研究や技術開発の更なる推進に向け国等が保有するデータの提供を進めていくべきと示されました。


(3)民間による洪水及び土砂災害の予報に関する具体的な取組

 これまで洪水及び土砂災害の予報業務許可は、防災との関連が強いことに加え、インフラの整備・運用状況等に影響を受けるため技術的に的確な予測を行うことが困難であるとして実施されていませんでした。民間気象事業者等が防災上の考慮をしたうえで予報を提供していくためには、技術的水準を確保し利用者のニーズに寄与できるよう、国は予報の許可に係る条件や技術上の水準を定める必要があります。今般、洪水及び土砂災害の予報業務許可に当たって、予報に利用する降水予測の技術的担保に加え、水文学・水理学・砂防学の観点も含めて技術的な水準を担保しうる基準を定めて審査できるような制度の構築が求められました。また、国等は、民間気象事業者等による予報業務の実施のため、河川の水位等のデータを効率的・安定的に提供できるよう進めていくべきと示されました。


(4)提言

 報告書では提言として、「国等による水系・流域が一体となった洪水予測の実施」「国等による土砂災害警戒情報などの更なる精度向上」「民間による洪水及び土砂災害の予報の提供に向けた制度の構築」「研究者や民間気象事業者等における技術開発や予報業務を推進する環境整備」の取組を進めていくことが示されました。提言を受けて、気象庁と水管理・国土保全局は、緊密に連携しながら、これらの施策の実施に向けて具体的な検討を進めています。

提言

トピックスⅤ-3 新しい雪の予報「今後の雪」

 気象庁は、集中的・記録的な降雪による大規模な車両渋滞・滞留など、大雪が社会活動に与える影響が問題となっている近年の状況を踏まえ、現在の積雪の深さと降雪量の分布を1時間ごとに約5キロメートル四方で推定する「解析積雪深・解析降雪量」の提供を令和元年(2019年)11月に開始し、気象庁ホームページの「現在の雪」ページで公開してきました。また、雪による交通への影響等を前もって判断いただくための情報を拡充するため、令和3年(2021年)11月より新たに、6時間先までの1時間ごとの積雪の深さと降雪量を予測する「降雪短時間予報」の提供を開始し、「今後の雪」ページで公開しています(「現在の雪」からリニューアル)。


(1)解析積雪深・解析降雪量

 解析積雪深は、積雪の深さの実況を1時間ごとに約5キロメートル四方で面的に推定したものです。積雪内部の物理量の変化を計算する積雪変質モデルに、解析雨量(気象レーダーとアメダスなどの降水量観測値から作成した降水量分布)や数値予報モデルの気温などを与えて積雪層内の雪質や密度などを計算し、その結果得られた積雪の深さを積雪計の観測値で補正しています。解析積雪深が1時間に増加した量を1時間の解析降雪量とし、減少した場合の解析降雪量は0となります。

雪の分布が点の情報から面的な情報へ(令和元年(2019 年)11 月提供開始)


(2)降雪短時間予報

 降雪短時間予報は、6時間先までの1時間ごとの積雪の深さと降雪量を約5キロメートル四方で面的に予測するもので、1時間ごとに更新されます。積雪変質モデルに解析積雪深や降水短時間予報(解析雨量や数値予報モデルの降水量を利用して予測した降水量分布)、数値予報モデルの気温などの予測値を与えて積雪の深さを計算した後、積雪の深さの増加量を統計的に補正して予測します。降雪量は、積雪の深さの1時間ごとの増加量とし、減少が予測される場合は0とします。

「積雪の深さ」「降雪量」を6 時間先まで約5 キロメートル四方で予報

(3)気象庁ホームページ「今後の雪」

 解析積雪深・解析降雪量と降雪短時間予報は、気象庁ホームページ「今後の雪」(URL : https://www.jma.go.jp/bosai/snow/)で公開しています(令和3年(2021年)11月に「現在の雪」からリニューアル)。「今後の雪」では、積雪の深さ及び降雪量の24時間前からの実況と6時間先までの予測を、地図上でシームレスに確認いただくことができます。表示要素は積雪の深さ、3、6、12、24、48、72時間降雪量を用意しており、利用者のニーズに応じて選択いただけます。1時間ごとに更新されますので、最新の情報をご利用ください。

 冬の外出前には交通情報とともに気象庁ホームページ「今後の雪」をご覧いただくことにより、目的地までの経路が大雪になっていないか、この先大雪の恐れがないかなどを確認いただけるほか、除雪判断など交通障害の備えにもご活用いただけます。近年の大雪による社会活動への影響を受け、気象庁では引き続き、解析積雪深・解析降雪量、降雪短時間予報の精度向上に努めていきます。

気象庁ホームページ「今後の雪」の表示例
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