気圧配置 大気の流れ・エルニーニョ・予報手法に関する用語

大気の流れなどに関する用語

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循環指数 大気大循環の状態をみるために、その特徴をよく表すように作られた指数。主に、500hPa高度を用いて作られる。 東西指数、極渦指数をはじめ、亜熱帯指数、沖縄高度指数、オホーツク海高気圧指数、小笠原高気圧指数、中緯度高度指数、東方海上高度指数、西谷指数などがある。
備考 循環指数に用いる極東東西指数などの「極東」とは90°Eから180°Eの範囲を指す。90°Eの値を含み180°Eの値は含まない。
東西指数 偏西風が南北に蛇行しているか(低指数)、あるいは東西の流れが卓越しているか(高指数)を示す指数で、特定緯度圏間の高度差またはそれを換算した地衡風速で表す。
備考 季節予報では40°Nと60°Nの500hPa高度偏差から算出している。
極渦 北極付近の上空に形成される低圧部のこと。
西谷 地球をとりまく大きな流れの中で、日本の西に気圧の谷が形成されている状態。日本付近には南西の気流が流入しやすくなる。
日本谷 地球をとりまく大きな流れの中で、日本付近に気圧の谷が形成されている状態。
東谷 地球をとりまく大きな流れの中で、日本の東に気圧の谷が形成されている状態。日本付近には北西の気流が流入しやすくなる。
北暖西冷型 気温分布型のひとつ。日本を大きく北と西とに分けて北が平年より高く、西が平年より低い状態をいう。冬期に暖冬に関連して用いる。
備考 「北冷西暑」など、暖(暑)、冷、並を組み合わせて用いる。ただし、「暑」は西が平年より高い場合のみ。全国一様のときは、全国高温または全国低温などと表現する。
北冷西暑型 気温分布型のひとつ。日本を大きく北と西とに分けて北が平年より低く、西が平年より高い状態をいう。夏期に着目される。
層厚換算温度 2つの等圧面の間の高度差を温度に換算した量で、等圧面間の気層の平均気温を表す。
備考 季節予報では、北半球全体と緯度帯別に帯状平均した300hPa面と850hPa面間の層厚換算温度を算出しており、おおよそ対流圏の平均気温とみなすことができる。
偏西風 極を中心にして西から東に向かって吹く地球規模の帯状風。
備考 平均的には、赤道付近と極地方の下層部を除く対流圏は偏西風域である。
偏東風 東から西に向かってほぼ定常的に吹く地球規模の帯状風。
圏界面 対流圈と成層圏の境界である対流圏界面を単に「圏界面」とも呼ぶ。
強風帯 周囲に比べて風速の大きな帯状の領域。規模の大きなものでは、圏界面付近で風速が最大になり、中緯度帯に沿ってほぼ地球を一周するジェット気流があり、逆に規模の小さなものでは、集中豪雨時に大気下層の 700~850hPa付近によく出現する下層ジェットがある。
ジェット気流 対流圏上部または圏界面付近の狭い領域に集中して吹いている帯状の非常に強い風。通常は10kmくらい上空に強風の軸があり、中心の風速は寒候期には50~100m/sに達する。
備考 北半球では、緯度30度付近にある亜熱帯ジェット気流と、その北側の中緯度帯にあり、寒帯前線をともなう寒帯前線ジェット気流とがある。後者はポーラー・ジェット気流ともいわれる。
強風軸 高層天気図などで強風帯の中心を連ねた線。ジェット気流の中心線は典型的な強風軸である。
偏西風の軸 ある高度で偏西風の最も強いところ。前線帯や地上の低気圧の位置と密接に関連する。
偏西風の蛇行 極の周りを西から東に流れる偏西風は、南と北の温度差を減少させるように南北に波を打ち蛇行する。偏西風の蛇行の様子は、地上の高・低気圧の動向および天気経過と密接に関連する。
備考 a) 蛇行の大きな流れ:南北の熱の交換が大きく、強い寒気が南下することがある。南北流型あるいは低指数循環という。
b) 蛇行の小さな流れ:南北の熱の交換は小さく、強い寒気が南下することは少ない。東西流型あるいは高指数循環という。
ブロッキング現象 長波の振幅が大きくなり、その位相が長期間停滞する現象。同じ天候が長く続くことから、異常気象の原因ともなる。長波の気圧の尾根をブロッキング高気圧という。
貿易風 赤道付近で定常的に吹いている対流圏下層の偏東風。エルニーニョ現象発生時には貿易風が弱まる。
ハドレー循環 低緯度における子午面方向の南北直接循環。この循環の上昇気流域は対流活動が活発な熱帯収束域に、下降気流域は亜熱帯高気圧域に対応する。北半球が夏の時は赤道付近の対流圏下層では南風が、上層では北風が吹き、冬の時はその逆となる。
ウォーカー循環 太平洋赤道域で見られる東西の循環。通常、対流圏下層で東風が、上層で西風が吹いており、インドネシア付近が上昇流域に、太平洋東部が下降流域になっている。エルニーニョ現象時にはこの循環が弱くなることが知られている。
テレコネクションパターン ある特定の季節において、遠く離れた地域の例えば 500hPa高度偏差が同じ(あるいは全く逆の)符号となる分布が統計的にいくつか見られる。その高度偏差パターンの総称のこと。北東太平洋から北米大陸にかけてのPNA(太平洋・北米)パターンやユーラシア大陸から日本付近にかけてのEU(ユーラシア)パターンなどがある。
熱帯の対流活動 季節予報や気候系監視では、熱帯収束帯(前線に関する用語参照)に沿った積雲対流雲群など、熱帯における大規模な積雲対流群の活動を、熱帯の対流活動と呼ぶ。熱帯域の積雲対流活動に伴う潜熱放出は、地球規模の視点で見た大気の流れを駆動する重要な熱源のひとつである。
備考 熱帯の対流活動はENSO(エンソ)や季節内変動、モンスーンなど熱帯域の大気と深い関係があるほか、中緯度の大気の流れに大きな影響を与える。
北極振動(AO) 大規模な海面気圧偏差パターン(テレコネクションパターン)の一つで、北極域と中緯度域のあいだが逆符号となるほぼ同心円状の偏差パターン。 北極域が平年より高い(低い)とき、中緯度域で平年より低く(高く)なる。 冬季には成層圏にまで及ぶような背の高い構造をしており、極渦の強さと関係している。日本の天候を左右する要因の一つとして注目されている。Arctic Oscillation
季節内変動 季節変化より短く10日程度より長い周期で強弱を繰り返す大気の変動の総称。このうち、 赤道域を30~60日の周期で対流活動活発域等が東進する現象を赤道季節内振動、あるいは発見者の名前に因み、Madden-Julian振動(MJO)と呼ぶ。
モンスーン 季節的交替する卓越風系、すなわち季節風(いろいろな風に関する用語参照)を意味する。 広い意味では、この季節風伴う雨季も含めて、モンスーンと定義される。 季節風が卓越する地域はモンスーン(季節風)気候帯と呼ばれる。 代表的なものとしては、アジア・モンスーン(インド・モンスーン)を含む)、 オーストラリア・モンスーン、アフリカ・モンスーン、南アメリカ・モンスーンなどがあり、アジア・モンスーンに伴う対流活動の変動は日本の天候に大きな影響を与える。

エルニーニョ現象に関する用語

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エルニーニョ現象 東部太平洋赤道域で2~7年おきに海面水温が平年より1~2℃、ときには2~5℃も高くなり、半年から1年半程度続く現象。この影響は地球全体に及び、世界各地に異常気象を引き起こす傾向がある。
備考 a) 気象庁では、エルニーニョ監視海域のうちNINO.3海域(北緯5度~南緯5度、西経150度~90度)の月平均海面水温を用いて、エルニーニョ現象、ラニーニャ現象を次のように定義している。世界的に統一された定義はない。
 エルニーニョ現象:NINO.3海域の月平均海面水温の基準値(その年の前年までの30年間の各月の平均値)との差の5か月移動平均値が6か月以上連続して+0.5℃以上になった場合。
 ラニーニャ現象:同じく5か月移動平均値が6か月以上連続して-0.5℃以下になった場合。
b) 「エルニーニョ」は狭義には、クリスマスのころエクアドルからペルー沿岸に暖水が進入する現象を指すが、広域的な現象として「エルニーニョ現象」と同じ意味で用いられることもある。 季節予報などの解説で広域的な現象を指す場合は「エルニーニョ現象」を用いる。
ラニーニャ現象 エルニーニョ現象とは逆に、東部太平洋赤道域の海面水温が平年より低くなる現象。
備考 季節予報などの解説では「ラニーニャ」ではなく「ラニーニャ現象」を用いる。
南方振動指数 南太平洋上のタヒチとオーストラリアのダーウィンの地上気圧偏差を基に、その差を指数化したもので、貿易風の強さの目安となる。エルニーニョ現象発生時にはマイナス(負値)となることが多い。
ENSO(エンソ) エルニーニョ/ラニーニャ現象と南方振動とは、同じ現象を海洋と大気の側面からとらえたものと考えられ、エルニーニョ(El Nino)と南方振動(Southern Oscillation)のそれぞれの頭文字を取ってENSO(エンソ)と呼ばれている。
エルニーニョ監視海域 気象庁がエルニーニョ現象を監視するために太平洋赤道域に設けた監視海域で、NINO.1+2、3、4、WEST海域がある。
単に「エルニーニョ監視海域」と言う場合、エルニーニョ現象のシグナルとして最も重要な「NINO.3海域」を指す。別図参照。
備考 米国海洋大気庁(NOAA)では、エルニーニョ現象、ラニーニャ現象の定義にはNINO3.4(北緯5度~南緯5度、西経170度~120度)の月平均海面水温を用いている。
OLR指数 OLR(気象衛星に関する用語参照)を使って求めた指数で、正の値は積乱雲が多いすなわち対流活動が平年よりも活発であることを、負の値は対流活動が平年より不活発であることを表す。
備考 気象庁で指数を計算する領域には、フィリピン付近、インドネシア付近、日付変更線付近の3つがある。
月毎の変動の他に、ENSOの状況にあわせて、数年周期の変動を示す。
詳細はこちらを参照。
赤道東西風指数 赤道付近の東西循環の指数の1つで、正(負)の値は西風(東風)偏差であることを示す。
備考 気象庁で指数を計算する領域は、対流圏下層(850hPa)の西部太平洋赤道域、中部太平洋赤道域、東部太平洋赤道域と対流圏上層(200hPa)のインド洋、中部太平洋赤道域がある。
月毎の変動の他に、ENSOの状況にあわせて、数年周期の変動を示す。
詳細はこちらを参照。
海洋データ同化システム 数が少なく空間的、時間的に偏在している海洋観測データから、空間的、時間的に均質なデータを生成するシステム。
暖水の蓄積 太平洋の赤道付近において、貿易風によって海面近くの相対的に暖かい海水(暖水)が、西部に吹き寄せられて厚く蓄積すること。一方、東部太平洋赤道域では、通常暖水の厚さは薄くなっている。エルニーニョ現象などに伴って、この水温構造は大きく変動する。
西風バースト 対流圏下層の太平洋西部から中部にかけて赤道上で吹く強い西風のこと。 赤道を挟んで北半球と南半球のそれぞれに熱帯低気圧が発生する(ツインサイクロン)ことに伴って吹くことが多い。エルニーニョ現象の発生に結びつくような海洋表層の変化をもたらすことがある。
エルニーニョ監視速報 エルニーニョ現象等の監視と予測に関して毎月1回発表する情報。予測情報として、 向こう6か月までの「エルニーニョ現象等の今後の見通し」を記述している。
インド洋ダイポールモード現象 北半球の夏から秋(6~11 月)にインド洋熱帯域の海面水温が、南東部で平年より低くなり、西部で平年より高くなる現象を正のイ ン ド 洋 ダ イ ポ ー ル モ ー ド ( IOD: Indian OceanDipole mode)現象と呼び、これとは逆にインド洋の海面水温が、南東部で平年より高くなり、西部で平年より低くなる場合を「負のIOD 現象」と呼ぶ。海面水温偏差の東西の二極構造が現れるためダイポール(双極子)モードと呼ばれる。

予報手法に関する用語

分類 用語 区分 説明
力学的手法 数値予報モデルを用いた予測手法。
統計的手法 過去の観測資料を統計的に処理して、あらかじめ予測式を作成しておく予測手法。
最適気候値(OCN)モデル 統計的手法の一つ。 過去の気候状態がさらに継続すると仮定して、気候値(過去のある統計期間の平均状態)をそのまま予測値とする手法。統計期間の選択が予測精度を左右するため、統計期間を過去1年間から30年間とした場合のそれぞれの気候値と予測値の関係を調査し、最も予測精度の良い期間を最適な統計期間として選択する。Optimal Climate Normals
重回帰法 統計的手法の一つ。 例えば、地上の気温を予測するときにあらかじめ作成されている予測式に500hPa高度あるいは850hPa気温などの観測値を入力し予測する手法。