気象業務はいま 2025

はじめに

 昨年は、元日に令和6年能登半島地震により甚大な被害が発生し、同じく能登半島で9月に記録的な大雨による災害がありました。また、7月には北日本を中心に大雨となり、8月には台風第10号によって大雨や突風の被害がもたらされました。さらに、今冬には北日本から西日本の日本海側を中心に各地で記録的な大雪となりました。

 これらの災害により犠牲になられた方々のご冥福をお祈りするとともに、災害に遭われましたすべての皆様に心よりお見舞いを申し上げます。

 気象庁の任務は、災害の予防、交通安全の確保、産業の興隆等に寄与するため、台風・集中豪雨等の気象、地震・津波・火山、さらに気候変動などに関する自然現象の観測・予報等と、その情報の利用促進を通じて、気象業務の健全な発達を図り、これにより安全、強靭で活力ある社会を実現することにあります。

 今年は、気象庁の前身にあたる東京気象台が、地震観測と気象観測を明治8年(1875年)に開始してから150周年を迎えます。気象業務はその開始当初から、最新の科学技術を用いて社会に情報を適確かつ迅速に届けることを基本としており、以降150年にわたって、社会情勢の変化や科学技術の進展を踏まえ、業務を着実に充実させてきました。

 近年は特に、多くの災害をもたらしている線状降水帯や台風等の予測精度向上のため、観測体制や予測技術開発の強化に注力するとともに、自治体の防災対応をきめ細かく支援するため、「気象庁防災対応支援チーム」(JETT)としての職員派遣に加え、地域の気象と防災に精通した「気象防災アドバイザー」の拡充・普及を推進しています。

 本書「気象業務はいま」は、このような気象業務の全体像について広く知っていただくことを目的として、毎年 6 月 1 日の気象記念日に刊行しています。

 今回は、気象業務150周年を特集として歴史や記念事業について紹介しています。また、トピックスとして、地域防災支援、線状降水帯や台風等による気象災害への対策、気候変動対策、地震・津波・火山災害に関する情報、国際的な業務に加えて、気象業務全般に係る技術開発や情報利活用促進の取組について紹介しています。

 多くの方々が本書に目を通され、気象業務への皆様のご理解が深まりますとともに、各分野で活用されることを期待しています。



 令和7年6月1日

気象庁長官 野村 竜一

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