気象業務はいま 2023

はじめに

 気象庁の任務は、台風・集中豪雨等の気象、地震・津波、火山、さらに気候変動などに関する自然現象の観測・予報等と、その情報の利用促進を通じて、気象業務の健全な発達を図り、これにより安全、強靭で活力ある社会を実現することにあります。

 昨年も、8月には北日本を中心とする大雨、9月には台風第14号、第15号、12月には大雪による災害があるなど、多くの被害が発生しました。災害により犠牲になられた方々のご冥福をお祈りするとともに、災害に遭われました皆様に心よりお見舞いを申し上げます。

 気象庁では、これらの災害を受け、線状降水帯の予測精度向上を喫緊の課題ととらえ、産学官連携により観測体制や予測技術開発の強化に取り組んでいるところです。令和3年から提供を開始した「顕著な大雨に関する気象情報」を今年5月からは、予測技術を活用し、これまでより最大30分程度早く発表できるようになりました。引き続き情報改善に努めてまいります。

 また、地震分野においても長周期地震動に関する情報提供の強化や、「南海トラフ地震臨時情報」に加え「北海道・三陸沖後発地震注意情報」の提供を新たに開始するなど、巨大地震に備えるための情報提供にも取り組んでいます。

 加えて、地方自治体の防災対応をきめ細かく支援するため、気象庁防災対応支援チーム(JETT)としての職員派遣に加え、地域の気象と防災に精通した「気象防災アドバイザー」の拡充・普及をすすめ、地域防災力のさらなる向上に貢献して参ります。

 本書「気象業務はいま」は、災害の予防、交通安全の確保、産業の興隆等に寄与するための気象業務の全体像について広く知っていただくことを目的として、毎年 6 月 1 日の気象記念日に刊行しています。

 今年は、関東大震災から100年を迎えることから、「気象庁における巨大地震対策」について特集し、トピックスとして、地域防災支援、線状降水帯、気候変動に対する取組、気象や地震・火山の情報改善に関する取組に加え、気象情報が社会で活用されるための活動など気象庁の最近の動きについて取り上げます。また、今年で150周年を迎える世界気象機関についても紹介します。

 新型コロナウイルス感染症も徐々に収束し、日常を取り戻しつつあります。気象庁では、引き続き感染症対策を講じながら、それぞれの現場での創意工夫により、その任務を全うしていきます。

 多くの方々が本書に目を通され、気象業務への皆様のご理解が深まりますとともに、各分野で活用されることを期待しています。


令和5年6月1日

気象庁長官 大林 正典

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