気象業務はいま 2022

はじめに

気象庁の任務は、台風・集中豪雨等の気象、地震・津波、火山、さらに気候変動などに関する自然現象の観測・予報等と、その情報の利用促進を通じて、気象業務の健全な発達を図り、これにより安全、強靱で活力ある社会を実現することにあります。


いまだ収束をみせない新型コロナウイルス感染症へ配慮が必要な中、気象庁では、それぞれの現場での創意工夫により、その任務を全うしています。


一方で、昨年も、7月の熱海の土砂災害、8月の大雨などにより多くの被害が発生しました。また、福徳岡ノ場の噴火に伴う軽石被害やトンガの火山噴火に伴う潮位変化による被害も発生しました。災害により犠牲になられた方々のご冥福をお祈りするとともに、災害に遭われました皆様に心よりお見舞いを申し上げます。


気象庁では、これらの災害を受け、線状降水帯の予測精度向上を喫緊の課題ととらえ、産学官連携により観測体制や予測技術開発の強化に取り組んでいるところです。昨年6月から、線状降水帯が発生したことをお知らせする「顕著な大雨に関する気象情報」の提供を開始しました。今年からは発生の可能性に関する情報の提供を開始し、段階的に改善を図って参ります。このほか、トンガの火山噴火の際の潮位変化についてもメカニズムの解明に加え、情報を「どう伝えるのか」について有識者を交え、検討を進めているところです。


また、気象庁防災対応支援チーム(JETT)の派遣等を通じて地方自治体の防災対応をきめ細かく支援するとともに、地域の気象と防災に精通した「気象防災アドバイザー」の拡充・普及も含め、地域防災力のさらなる向上に貢献して参ります。


加えて、気象情報・データを活用した多様なサービスが生まれ、気象業務に関わる人々のネットワークも広がりつつあります。こうした背景を踏まえ、増大・多様化するニーズに産学官全体で対応するための取組を推進しています。


「気象業務はいま」は、災害の予防、交通安全の確保、産業の興隆等に寄与するための気象業務の全体像について広く知っていただくことを目的として、毎年 6 月 1 日の気象記念日に刊行しています。今回より、気象庁の取組をより知っていただくため、特集とトピックスに特化した構成としました。


今回は、静止気象衛星「ひまわり」のこれまでの歩みと後継衛星への期待について特集し、トピックスとして、地域防災支援、線状降水帯、気候変動に対する取組、社会や生活における気象情報の活用に加え、気象や地震・火山の情報改善に関する取組などについて取り上げています。また、今年で百周年を迎える気象大学校についても紹介しています。


多くの方々が本書に目を通され、気象業務への皆様のご理解が深まりますとともに、各分野で活用されることを期待しています。



 令和4年6月1日

気象庁長官 長谷川 直之

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