線状降水帯予測精度向上に向けた技術開発・研究の取組について

報道発表日

令和7年12月19日

概要

 本日、線状降水帯予測精度向上ワーキンググループ第11回会合を開催しました。今年度の線状降水帯が発生した気象場の特性や予測精度の検証結果について報告し、今後の改善方策等について学官連携の観点も含め意見交換を行いました。また、来年度運用開始する予定の新しい予測情報、観測・予測の強化に係る取組や線状降水帯の機構解明研究の成果についても報告および議論を行いました。

本文

 気象庁は、「線状降水帯予測精度向上ワーキンググループ」での検討等に基づき、線状降水帯の予測精度向上に向けて、大学や研究機関と連携した機構解明研究、数値予報技術開発を推進し、段階的な情報の改善に向けた検討を着実に進めています。
 本日開催された線状降水帯予測精度向上ワーキンググループ第11回会合での以下議論等を踏まえ、引き続き、気象庁で取り組んでいる観測・予測の強化や、大学・研究機関と連携した研究・技術開発等、線状降水帯予測精度向上につながる取組を一層推進します。

● 令和7年の半日前予測の検証結果

 令和7年の捕捉率は令和6年より大幅に改善し約71%でした。一方、適中率は当初の想定よりは低いものの令和6年よりやや改善し、約14%でした。それぞれ改善した要因は以下のとおり分析しております。

(捕捉率)

  • 規模の大きな前線や台風の接近・通過に伴って発生する事例があり、数値予報により比較的精度よく予測できた

(適中率)

  • 数値予報で発生可能性を予測する頻度が北日本・北陸地方を中心に増加したものの、予想降水域を参照して対象府県を絞り込み、ある程度空振りを抑えることができた
  • 「線状降水帯の発生形態に関する分類表」を活用することで、全国的にある程度空振りを抑えることができた

● 情報の改善

 令和8年出水期頃より、今後3時間以内に線状降水帯の発生により非常に激しい雨が降り続く可能性が高まった場合に、「気象防災速報(線状降水帯直前予測)」の発表を行う予定です。また、この情報を図形式で補足する「線状降水帯予測マップ」の提供も開始予定です。情報の具体は今後お知らせします。

● 観測・予測の強化

 線状降水帯予測に必要となる水蒸気等の観測を強化するため、以下の取組を進めています。

  • アメダスへの湿度観測の追加(今年度全地点で整備完了予定)
  • 函館レーダーを二重偏波レーダーへ更新し本年7月に運用開始
  • 日本海において機動的な観測を実施するなど洋上の水蒸気の観測の強化
  • 観測能力を強化した次期静止気象衛星「ひまわり10号」(令和12年度運用開始予定)の整備

 予測の強化に向けた取組として、今年度末に予定している局地モデルの高度化と局地アンサンブル予報システムの運用開始に向け開発を進めています。また、線状降水帯の予測精度向上のための数値予報技術の開発を加速化するため、 文部科学省・理化学研究所の協力により、世界トップレベルの性能を有するスーパーコンピュータ「富岳」を活用しており、本年6月2日から10月31日にかけて局地アンサンブル予報システムを用いたリアルタイムシミュレーション実験を実施しました。

● 線状降水帯の機構解明研究

 気象庁では、大学・研究機関と連携して線状降水帯のメカニズム解明のための研究を進めています。今年度は5月下旬から10月の期間に大気と海洋の双方をターゲットとする集中観測を実施しました。本観測で得られた成果を大学・研究機関と共有して線状降水帯のメカニズム解明等に資する知見の集約を図るなど、機構解明に向けた取組を推進します。

 これらの技術開発や研究の概要については、資料全文を参照ください。

問合せ先

総務部 企画課 橋口(全般に関すること)
 電話 03-6758-3900(内線 2232)

情報基盤部 数値予報課 荒波(数値予報技術の開発に関すること)
 電話 03-6758-3900(内線 3335)

大気海洋部 業務課 平井(検証結果と情報改善に関すること)
 電話 03-6758-3900(内線 4103)

気象研究所 企画室 小野(機構解明研究に関すること)
 電話 029-853-8536(内線 205)

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