令和7年夏の記録的な高温と7月の少雨の特徴およびその要因等について
~ 異常気象分析検討会による分析結果の公表 ~
報道発表日
令和7年9月5日
概要
令和7年夏(6~8月)の記録的な高温と7月の少雨の特徴は以下の通りです。
- 日本の夏平均気温偏差は、昨年、一昨年の記録を大幅に上回り、3年連続で最も高い記録となった。
- 歴代最高気温を観測し、猛暑日や40℃以上の延べ地点数の記録も更新した。
- 多くの地方で過去最も早い梅雨明けとなるなど季節進行が早く、7月は北陸地方を中心に記録的な少雨となった。
これらの天候をもたらしたと考えられる要因は以下の通りです。
- 太平洋熱帯域の西部で海水温が高く、アジアモンスーン域の積乱雲の活動が早くから活発だった。
- この影響により、6月以降、上空の偏西風が平年より大幅に北を流れ、上空のチベット高気圧が日本付近に張り出した。また、フィリピン東海上の積乱雲の活動が極めて活発で、日本付近への太平洋高気圧の張り出しを強めた。
- 日本付近は、チベット高気圧と太平洋高気圧が重なった背の高い暖かい高気圧に覆われ、下降気流が卓越して晴れて気温が上がった。
- 地球温暖化の影響に加え、北半球中緯度帯の海面水温がここ数年顕著に高いことも日本を含む中緯度帯の気温が高いことに寄与した可能性がある。
本文
- 今夏の天候の主な特徴(地域毎の統計は1946年以降)# 日本の天候の詳細は、関連リンクの報道発表や気象庁ホームページを参照願います。
- 北・東・西日本では6月と7月、および夏として歴代1位の高温となり、日本の夏平均気温偏差は+2.36℃と、昨年、一昨年の記録である+1.76℃を大幅に上回り、3年連続で最も高い値を記録した。
- 群馬県伊勢崎で国内の歴代最高気温となる41.8℃を観測したほか、夏の猛暑日や日最高気温40℃以上の延べ地点数の記録も更新した。
- 多くの地方で早い梅雨入りに続き、過去最も早い梅雨明けとなり、季節進行が早かった。7月は少雨が顕著となり、北陸地方では少雨の記録を更新した。
- 北陸地方と九州地方では、8月前半に記録的な大雨となったところがあった。
令和7年夏の顕著な高温と少雨をもたらした大規模な大気の流れの模式図
- 今夏の顕著な高温と7月の少雨の要因(模式図参照)
- 地球温暖化に伴って対流圏の気温が高く、ここ数年、特に中緯度で高い状態が続いている。
- 太平洋熱帯域の西部で海水温が平年より高く、南アジアからフィリピンの東海上にかけてのアジアモンスーン域において積乱雲の活動が早くから活発だった。
- アジアモンスーンの活動が早くから活発になった影響で、ユーラシア大陸から日本周辺にかけて上空の偏西風(亜熱帯ジェット気流)が6月以降平年より大幅に北側を流れる状況が続いた。
- 偏西風の北偏に伴って、上空のチベット高気圧の日本付近への張り出しが顕著に強まり、背の高い暖かな高気圧に覆われ続けるとともに、偏西風のさらなる北への蛇行が繰り返し起こって高気圧が強まり、記録的に早い梅雨明けをもたらし、連日40℃を超える顕著な高温の期間が現れた。
- フィリピン東方の太平洋上では、海水温が高かったことや太平洋中部から西進した上空の寒冷渦の影響で積乱雲の発達が促され、下層の低気圧性循環が強化され、台風も多く発生した。それに伴い、下層の太平洋高気圧が日本付近へ強く張り出す状態(太平洋・日本パターン(PJパターン))が持続し、高気圧圏内での強い下降気流や日射の影響で気温が上昇した。
- 日本近海から北太平洋中緯度にかけて顕著に高かった海面水温も、偏西風の北偏を維持させる効果を通じて、対流圏中緯度の気温が顕著に高い状態が続いたことに寄与した可能性がある。
- 8月前半の大雨をもたらした大規模な大気の流れの特徴
- ヨーロッパ方面から上空の偏西風の大きな蛇行が伝わったため、東アジアで偏西風が一時的に南へ蛇行するとともに、アジアモンスーン域からの水蒸気が流れ込んで、中国大陸から日本付近にかけて停滞前線が形成された。
- フィリピンの東海上で積乱雲の活動が弱まった影響で、太平洋高気圧の張り出しの中心が沖縄方面となったことから、高気圧の縁辺をまわって大量の水蒸気が東シナ海から日本海に流れ込み、前線の活動が活発化した。
- 今夏の高温と大雨に対する地球温暖化の影響等
- 文部科学省気候変動予測先端研究プログラムと気象庁気象研究所の合同研究チームによる速報的な評価は以下の通り。
- 地球温暖化が無いと仮定した場合、今夏の高温はほぼ発生し得ない。
- すでに温暖化が進行している2025年現在においても、今夏の高温は数十年に一度の発生頻度である。
- 熊本県を中心とした8月前半の大雨の事例では、地球温暖化の影響による降水量の増加が明確に示された。
- 地球温暖化を背景として上昇してきた気温の上昇率が近年増加している。日本の夏平均気温偏差は、2023、2024、2025年の3年連続で過去最も高い記録となり、その偏差は、直近30年(1995~2024年)の上昇率を当てはめた数値を大きく上回っている。
- 文部科学省気候変動予測先端研究プログラムと気象庁気象研究所の合同研究チームによる速報的な評価は以下の通り。
以上は概要であり、これらの特徴や要因および分析の詳細は別紙をご覧ください。
問合せ先
(天候の特徴・要因に関すること)
気象庁大気海洋部気候情報課 及川、藤川 電話:03-6758-3900(内線4548、4541)
(観測データに関すること)
気象庁大気海洋部観測整備計画課 梶田 電話:03-6758-3900(内線4270)
資料本紙
資料別紙
関連リンク
異常気象分析検討会について(資料掲載場所)
報道発表:2025年の梅雨入り・明け及び夏(6~8月)の記録的高温について
日本の天候