環境緊急対応地区特別気象センターについて

当庁は、環境緊急対応(Environmental Emergency Response: EER)地区特別気象センター(Regional Specialized Meteorological Center: RSMC)として、原子力発電所の事故等発生時に、国際原子力機関(IAEA)等の要請に応じて、大気中に放出された有害物質の拡散予測情報を提供しています。

IAEA等の要請により作成した放射性物質拡散のシミュレーション資料について

気象庁の作成する資料について

当庁は、IAEA等からの要請に基づき、以下の3種類の資料を作成しています。

  • 流跡線ある地点から放出された物質が、大気の流れに沿ってどのように流されるかを推定し、一定時間間隔でその位置を記入し結んだもの。単位はありません。
  • 地上から標高500メートルまでの大気中の濃度分布
    ある地点を通過する放射性物質の濃度について、24時間間隔で72時間先まで時間積分し、同じ値となる地点を結んだもの。単位は、放出の想定にあわせ、仮にBq・s/m3(ベクレル秒毎立方メートル)としています。
  • 地上への降下量
    事故発生時から最終予報時刻までに大気の流れによって運ばれた放射性物質が雨や風によって地表面へ降下する量を計算し、同じ値となる地点を結んだもの。単位は、放出の想定にあわせ、仮にBq/m2(ベクレル毎平方メートル)としています。

※ 当庁は、同業務における計算の分解能を約50km四方の格子を一単位としています。

《資料を参照する上での注意事項》

  • これらの計算結果は、IAEA等の指定する放出条件に基づいて計算したものであり、実際に観測された放射線量等は反映されていません。
  • 原子力規制委員会による原子力災害発生時の防護措置の考え方では拡散予測の信頼性がなく、その情報によって避難行動を混乱させ、被ばくの危険性を増大させること、さらに避難行動中に避難先や経路を状況の変化に応じて変えることが困難であることから、放射性物質の放出前の避難については、同心円的に事前に決められた方法で行います。
  • 国内の緊急時モニタリングに係る制度については原子力規制委員会HPをご覧ください。

シミュレーション資料の日本語訳サンプル

<参考>

過去に作成したシミュレーション資料

作成する予測資料について

IAEA等の仮定する計算方法や放射性物質の放出条件に基づき、各RSMCが持つ気象データを用いて、放射性物質に関する大まかな予測情報を作成します。 また、その上で、近隣のRSMC(アジアの場合には日本、中国、ロシア)が共同して、それぞれのRSMCの予測資料に関する説明文書を作成します。

<参考>

IAEA等が指定する放出に関する条件:

  • 対象とする放射性核種
  • 放射性物質の放出場所(緯度・経度・高度)
  • 放出の想定時間
  • 放出量

EERの枠組みについて

環境緊急対応RSMC業務は、世界気象機関(WMO)の「全球データ処理・予報システムに関するマニュアル」に基づき実施する業務です。 同マニュアルは、WMO条約第8条(d)に基づき、各国が行う気象データ処理・予報の技術的な標準について、WMO総会が定めるものです。

IAEA等における原子力事故対策を支援するため、あらかじめ指定されたWMOの環境緊急対応RSMCが、その気象データ等を使って大気の流れの予測情報等を提供します。 これは、チョルノービリ原子力発電所事故(1986年4月26日)における対応を受けて提案されたもので、当庁は、平成9年(1997年)7月より同RSMC業務を開始しました。

IAEA等が必要と考えた場合に放出源に関する情報を示してRSMCに計算を要請し、各RSMCはそれに従って、あらかじめ決められた方法で大気中の放射性物質の動向を計算し、その結果を要請元に回答します。 IAEA等の要請には、放射性物質の放出条件が仮定(放出期間中は常に同じ割合で放射性物質の放出が継続するなど)されており、当庁はそれに基づいて72時間分の拡散を予測しています。

<参考>

  • 環境緊急対応RSMC:原子力発電所の事故等発生時における放射性物質の拡散の予測資料等を作成するWMOの主要計算センター。アジア地区には、東京(日本)、北京(中国)、オブニンスク(ロシア)が登録されているほか、世界には、エクセター(英国)、トゥールーズ(仏)、ワシントン(米)、モントリオール(カナダ)、メルボルン(豪)、オッフェンバッハ(独)、ウィーン(オーストリア)があります。