数値予報による大気状態の予測

強い竜巻やダウンバーストは、雲の中に低気圧性の回転(メソサイクロンと呼ばれる)を持つ特殊な積乱雲から発生します。このような積乱雲の発達には、大気の状態が不安定であること、鉛直方向の風向・風速の変化が大きいことが必要となります。

通常の天気予報で利用する数値予報という技術では、数百キロの規模を持つ低気圧や台風の予測は可能ですが、百メートル前後と非常に規模の小さな竜巻を直接予測することはできません。しかし、前記のような竜巻を発生させやすい積乱雲が発生する大気状態となることは予測できます。

気象庁では、数値予報で予測された上空の風や気温などの分布から、竜巻などの激しい突風の発生に関連の深い指数(ここでは「突風関連指数」と呼ぶ)を計算して、竜巻などの激しい突風の予測に利用しています。次の図は、平成21年10月8日に千葉県から茨城県にかけて竜巻が発生した事例について、当日の地上天気図と1日前から予測した突風関連指数です(突風関連指数は数種類計算しますが、ここではEHI(Energy Helicity Index)と呼ばれる指数を示しています)。

突風関連指数の一つ(EHI)の予測例

丸印は竜巻による被害が確認された場所を示しています。台風の東側では台風から離れた地域でも竜巻が発生しやすいことが知られていますが、突風関連指数は東海地方に上陸した台風から東に離れた関東地方で高く予想され、この事例では実際に竜巻が発生しました。

このように、竜巻などの激しい突風が発生しやすい気象状況が予想される場合には、半日~1日程度前に発表する気象情報の中で、「竜巻などの激しい突風」に対する注意を呼びかけます。