令和8年夏を対象とした異常気象分析検討会の結果について

報道発表日

令和8年9月1日

概要

【天候】

  • 西日本の夏の平均気温は、第3位の高温となりました。7月下旬~8月初めと8月下旬半ばには、西日本を中心に厳しい暑さとなり、延べ36地点で酷暑日となりました。また、西日本を中心に、梅雨明け以降雨の少ない状態が続き、8月の九州北部地方の降水量は最も少ない記録となりました(記録はいずれも統計開始の昭和21年以降)。
  • 8月前半は、台風第15号が茨城県に上陸し、本州を西へ横断した後、令和8年8月千葉豪雨が発生し、千葉(千葉県)では日降水量の最も多い記録を更新しました。

【要因】

  • このような天候の背景には、上空の偏西風が日本付近で大きく蛇行し、日本の東海上では南北2つに分かれて流れたことがあります。
  • 西日本の高温・少雨は、偏西風の北への蛇行によって西日本付近に張り出した上層のチベット高気圧に伴う背の高い高気圧に覆われ、下降気流が卓越したことが影響しました。高温には、地球温暖化による大気全体の気温の上昇も影響しています。
  • 台風第15号の経路や令和8年8月千葉豪雨には、日本の南海上で形成されたモンスーンジャイアと、南に分かれた偏西風によって上層の寒冷渦が日本付近に南下したこと、および北に分かれた偏西風によって強まった日本の東海上の高気圧が寄与しました。
  • なお、夏の台風発生数が多かったのは、偏東風波動の活動が活発だったことが一因と考えられ、また、その背景には今年の顕著なエルニーニョ現象があったとみられます。

令和8年夏後半の特徴的な天候をもたらした大気の流れの模式図

令和8年夏後半の特徴的な天候をもたらした大気の流れの模式図

本文

令和8年夏の天候の特徴

 西日本の夏の平均気温は、昭和21年以降で第3位の高温となりました。7月下旬~8月初めは、東・西日本で厳しい暑さとなり、国内初の5日連続を含む酷暑日を記録しました。また、8月下旬半ばにも九州で酷暑日を記録し、延べ36地点と平成22年以降で最多となりました。さらに、西日本を中心に、梅雨明け以降雨の少ない状態が続き、8月の九州北部地方の降水量は、昭和21年以降で最も少ない記録となりました。

夏の大気の流れの特徴

 春からエルニーニョ現象が発生しているとみられ、7月の太平洋赤道域東部(監視海域)の海面水温の基準値からの差が+2.5℃と平成9年と並んで7月として過去最も大きい顕著なエルニーニョ現象となっています。熱帯域では、太平洋の中部から東部にかけて対流活動が活発、西部で不活発といった過去のエルニーニョ現象発生時と同様な特徴がみられました。一方、ユーラシア大陸の中緯度帯では、上空の偏西風が平年より北側を流れるなど、過去のエルニーニョ現象発生時にみられた傾向とは異なる特徴がみられました。さらに、ユーラシア大陸から連なる偏西風の大きな蛇行の影響で、日本列島が上空の高気圧に覆われた時期がありました。

高温・少雨をもたらした大気の流れの特徴と要因(地球温暖化の影響を含む)

 日本付近では、偏西風が蛇行して平年より北を流れ、背の高く暖かい高気圧が停滞したため、西日本を中心に晴れた日が続き、高温・少雨となりました。特に、7月下旬から8月初めにかけては、晴天による強い日射に加え、上層から下層まで高気圧に覆われて下降気流が卓越し、下降した空気が断熱圧縮されることで気温が上昇(断熱昇温)する効果が卓越しました。さらに、下層の太平洋高気圧の縁辺を回る暖かい空気が流れ込んだことも高温に寄与しました。
 また、イベント・アトリビューション解析の結果1、7月中旬~8月上旬の西日本の高温は、地球温暖化がなかったと仮定するとほぼ発生し得ないことが示されました。

1 文部科学省気候変動予測先端研究プログラムと気象庁気象研究所の合同研究チームが、現象の発生確率や強度を推定するイベント・アトリビューションのうち予測型という手法を用いて、地球温暖化の影響について、気候モデルによる再現実験を速報的に実施した結果。

台風第15号の経路や令和8年8月千葉豪雨の特徴について

  • 8月前半の大気の流れの特徴
    • 台風第13号を含む大きな低気圧が太平洋中部の熱帯域から強まりながら西北西進し2、日本の南海上に達した段階で、アジアモンスーンの強い西風に伴う水蒸気の流れを取り込み、モンスーントラフと一体化し、大規模な低気圧(モンスーンジャイア)となりました。一方、本州付近~日本の東海上では上空の偏西風が2つに分流し、一つは南に大きく蛇行して上層の寒冷渦を繰り返し南下させ、もう一つは北へ大きく蛇行し、日本の東海上に下層の優勢な高気圧が停滞しました。このような大規模な大気の流れにおいて、モンスーンジャイアと優勢な高気圧の間を、台風第15号が西進したのち、令和8年8月千葉豪雨をもたらした水蒸気が房総半島に向かって流れ込みました。
2 夏に時折みられる北半球夏季季節内変動という現象。


  • 令和8年夏の台風の特徴と台風第15号の特徴
    • 令和8年夏の台風の発生数は17個となり、平年値11.0個を大きく上回りました。これは、昭和26年の統計開始以降で3位タイの多さとなりました。この主な要因としては、7月~8月にかけて偏東風波動の活動が活発だったことが挙げられます。なお、8月前半を中心に日本の南に形成・維持されたモンスーンジャイアの周辺で発生した台風もありました。また、偏東風波動の活動度と夏の台風発生数には統計的に有意な相関があり、エルニーニョ現象が発生している夏には偏東風波動の活動が強まる傾向があることから、令和8年夏の台風発生数の多さには、今回の顕著なエルニーニョ現象が影響した可能性があります。
    • 8月上旬に発生した台風第15号は、日本の東の海上から茨城県に初めて上陸して本州を西に進むなど、過去あまり例のない経路をとりました。これは、北側の勢力の強い高気圧と南側のモンスーンジャイアの間の流れに沿ったことに加え、南下した複数の上層寒冷渦の影響も受けたことによるものです。

  • 令和8年8月千葉豪雨の特徴
    • 8月13日夕方から14日未明にかけて、千葉県で記録的な大雨となり、千葉で24時間降水量367mm、1時間降水量115mmを観測するなど、観測史上1位の値を更新しました。
    • 豪雨の発生環境場の特徴として、房総半島付近では東からの下層の暖湿気の流入が強まるとともに、上層では寒冷渦に伴う強い寒気の影響を受け、大気の状態が非常に不安定でした。関東内陸部では、日中の対流活動に伴う降水によって冷気層が形成・拡大し、その東端では、東から流入する暖湿気との間で徐々にシアーライン(局地的な前線)が形成されていきました。このシアーライン上で豪雨をもたらしたメソ対流システム(線状降水帯)が発生していました。メソ対流システムは、流入する暖湿気が冷気層に乗り上げることで、積乱雲が次々に発生・発達する構造となっていました。関東地方における過去の顕著な大雨事例と比較すると、本事例では下層の暖湿気の流入よりも上層の寒気の影響が強く、大気の不安定度が大きくなっていました。レーダーによる解析からも、積乱雲の上端が15kmを超えるなど、非常に発達していたことが示されました。
    • 現業数値予報モデルは、関東内陸での大雨の持続を予測したが、東京から千葉にかけての下層の冷気域や関連する風の収束を予測できなかったため、千葉県での線状降水帯を予測できませんでした。線状降水帯の発生位置の予測精度向上が引き続き重要課題であり、数値予報モデル等の改善に取り組む必要があります。

問合せ先

【天候の特徴・要因について】
気象庁大気海洋部気候情報課   藤川・経田  電話03-6758-3900(内線4547、4546)

【観測データについて】
気象庁大気海洋部観測整備計画課    白野  電話03-6758-3900(内線4270)

【台風の特徴について】
気象庁大気海洋部気象リスク対策課 アジア太平洋気象防災センター
                   福田  電話03-6758-3900(内線4232)

【令和8年8月千葉豪雨の概要について】
気象庁大気海洋部予報課        隈部  電話03-6758-3900(内線4353)

【数値予報に関することについて】
気象庁情報基盤部数値予報課      森安  電話03-6758-3900(内線3351)

【令和8年8月千葉豪雨の特徴・要因について】
気象研究所        井上・益子・足立  電話029-853-8536

資料本紙

資料別添

関連リンク

異常気象分析検討会について(資料掲載場所)
日本の天候