世界気候研究計画(WCRP)※1再解析国際会議(第6回)の開催について
報道発表日
令和6年10月22日
概要
「地球沸騰化の時代」とも言われる今日、長期間にわたり気象の状態を同じ品質で精度よく再現するデータがより一層求められています。そのデータ「再解析」の作成や利活用などを議論するために、世界 30 以上の国や地域から 200 名以上の専門家が参加する国際会議を開催します(10/28~11/1)。再解析データは、再生可能エネルギー分野や人工知能(AI)の機械学習等での活用が期待されます。
本文
1.再解析国際会議について
最新の数値予報技術を活用し、過去の気象状態(気温、風等)を再現する技術である「再解析」データは、気候変動の監視・分析などに不可欠なデータであるとともに、近年、気象予測分野でも活用が広がりつつある AI の機械学習における学習データに利用されています。
再解析国際会議は、世界各国の再解析に関する専門家や再解析データの利用者の会合として、約5年おきに欧州、米国、日本で開催されてきました。
気象庁は、気象庁第3次長期再解析(JRA-3Q)データを作成し(図1)、異常気象分析等に活用している他、学術研究や社会における利活用を推進しています。一方、今後の気象災害リスク増大への対策には、高品質・高解像度な「領域再解析」データが不可欠であり、産学官が参画する「地域気象データと先端学術による戦略的社会共創拠点(ClimCORE)※2」は、日本域の気象状態を高品質・高解像度で再現する「日本域気象再解析データ」を作成し幅広い利活用を進めています。これら技術的知見の蓄積をふまえて、平成 20 年(2008 年)の第3回以来、16年ぶりに再解析国際会議を日本で開催します。

図1 長期再解析 JRA-3Q によって解析可能となった事例(1947 年 9 月 14 日 15時(日本時間)の台風第 9 号(カスリーン台風))。黒線が海面気圧の等圧線、赤矢印はカスリーン台風を示している。左図の陰影は前 6 時間降水量[mm]、黒矢印は風の強さ[m/s]と向きを表す。
2.会議の内容について
今回の会議は、気象庁、ClimCORE、東京大学および WCRP の産学官が連携して共催します。過去5回の会議には設けられていない「領域再解析」についてのセッションが初めて設けられるとともに、再生可能エネルギー分野等、再解析データの応用利用について議論も行われます。世界 30 以上の国や地域から 200 名以上の専門家の参加を予定しており、JRA3Q や日本域気象再解析の作成・活用をはじめ、再解析作成に関する最新の技術的知見を交換するとともに、近年急速に発展するAI の機械学習での再解析データの利用等についても議論が行われ、再解析の現状や今後の課題や将来展望について共有されます。
会議の成果は、今後の気象業務および国際的な気象・気候研究の進展に資するとともに、再生可能エネルギー分野、AI での機械学習を含め、再解析データの利用を通じた産学官のさらなる連携促進につながるものと期待されます。
3.会議概要
- 期間:令和 6 年 10 月 28 日(月)10 時~11 月 1 日(金)12 時 45 分
- 会場:東京大学 伊藤国際学術研究センター伊藤謝恩ホール(東京都文京区本郷)
- URL:https://icr6.climcore.org/jp/
- 主催:世界気候研究計画(WCRP)、気象庁、地域気象データと先端学術による戦略的社会共創拠点(ClimCORE)、東京大学
- 後援:日本気象学会、科学技術振興機構、日本地球惑星科学連合、日本海洋学会
- 協賛:WCRP Earth System Modelling and Observations、ソフトバンク株式会社
- プログラム:別紙に掲げる7つのセッション(口頭・ポスター発表)及びパネルディスカッション
- 取材方法:本会議の取材は、会場の記者席でカメラ撮影や傍聴が可能です。取材を希望される報道機関は、10 月 24 日(木)17 時までに、下記フォームからお申し込みください。
https://forms.office.com/r/5kSQmAyYih
※1 世界気候研究計画(World Climate Research Programme:WCRP)
WCRP は、世界気象機関(WMO)、ユネスコ政府間海洋学委員会(IOC)、国際学術会議(ISC)の出資により運営され、気候予測研究、気候システムの科学的理解の促進を目的としています。
URL(英語):https://www.wcrp-climate.org/
※2 地域気象データと先端学術による戦略的社会共創拠点(ClimCORE)
ClimCORE(プロジェクトリーダー:東京大学先端科学技術研究センター 中村尚教授)は、観測データと数値モデルを活用し地域的大気場を再現する「日本域気象再解析」の作成とその活用体制の構築を目指す、科学技術振興機構共創の場形成支援プログラム(JST COI-NEXT)のプロジェクト拠点です。気象学のみならず様々な研究分野の先端学術研究を融合して地域気象ビッグデータを整備し、安全・安心で恵みのある未来社会の実現のために社会や産業など広い分野で利活用できる場を産官学公連携で共創します。
URL:https://climcore.rcast.u-tokyo.ac.jp/
問合せ先
(会議に関すること)
気象庁情報基盤部数値予報課 佐藤 電話:03-6758-3900(内線3354)
(取材に関すること)
気象庁総務部総務課広報室 山本 電話:03-6758-3900(内線2184)