長官会見要旨(令和8年6月17日)
会見日時等
令和8年6月17日 14時00分~15時00分
於:気象庁記者会見室
発言要旨
冒頭、私からいくつか述べさせていただきます。
昨日16日、19時46分ごろに発生した茨城県南部の地震により、群馬県、埼玉県で最大震度5弱の揺れを観測いたしました。揺れの強かった地域では、地震発生から1週間程度、最大震度5弱程度の地震に注意してください。特に今後2、3日程度は規模の大きな地震が発生することが多くありますので、今後の地震活動に注意をお願いいたします。
次に台風第6号の対応についてです。台風第6号は、新たな防災気象情報の運用開始後、初めてのレベル5特別警報やレベル4危険警報を発表する事象となりましたが、「避難行動との関係がわかりやすくなった」との声をいただくなど、円滑に運用を開始できたと認識しております。一方、これらの情報が実際どのように受け止められ、どのように防災行動に活用されたのか確認していくことが必要であるとも認識しているところでございます。 また、6月2日には線状降水帯の情報提供ができなくなるシステムの不具合が発生しました。今後、同様の事案が発生しないよう、検証や確認を徹底し、確実な運用に努めてまいります。翌3日の復旧までの期間、本来と異なる代替手段を用いた、我々からの情報提供となってしまいましたが、受け手の報道の皆様には、国民の皆様に的確に情報を発信していただきました。本当にありがとうございました。
次に、梅雨末期の大雨に向けた備えについてです。これから1ヶ月余りの期間は、1年のうちでも大雨の危険度が最も高まる時期でございます。これまでにも梅雨末期にかけては、多くの方が亡くなるような甚大な災害をもたらす豪雨が多く発生しております。皆様には特に天気予報で大雨の可能性について確認していただくとともに、実際に大雨となった際には、取るべき行動がわかりやすくなった「レベル4危険警報」、状況によっては、高齢者等の皆様にとっては「レベル3警報」や自治体から発令される避難情報によって、しっかりと命を守る行動をとっていただければと思います。避難というのは非常に大変だと思います。決心するまでに時間がかかったりしますけれども、外で大雨が降っているだけでも避難しにくくなりますが、水が増してきて、膝上まで水が来るような状態ですと、もうほとんど避難できなくなります。そうなる前にぜひ避難行動をとっていただきたいと思います。 また、台風への備えについて、今年はフィリピンの東などで対流活動が平年よりも活発な状態であるため、平年よりも早いペースですでに6個の台風が発生しており、先ほども述べた通り、台風第6号においては、沖縄地方に接近した後、西日本から東日本の太平洋沿岸を進み、各地に大雨などをもたらしました。今後もフィリピンの東の対流活動は平年より活発な状態が続くと予測しており、この領域で台風の発生が多くなる可能性があります。台風情報を適宜確認いただき、日本に接近する場合には早めに備えていただきたいと思います。 一方、暑さについても引き続き注意が必要です。1ヶ月予報によりますと、この先も西日本、東日本、北日本では気温が高くなると予想しております。これから夏にかけて本格的に気温が高くなる時期を迎えます。気象庁が発表する気温に関する情報や、環境省が発表する暑さ指数、また、環境省と気象庁が共同で発表している熱中症警戒アラートなどを毎日確認いただき、皆様が置かれている状況に応じて、適切な熱中症の予防対策をとっていただきたいと考えております。
3点目、気象防災アドバイザーについてです。地域の気象と防災に精通した気象防災アドバイザーを、より多くの自治体で活用いただけるよう、令和8年度も240名の気象予報士を対象とした気象防災アドバイザー育成研修を実施いたします。地域防災に貢献していただける意欲ある気象予報士の方に奮ってご応募いただきたいと考えておりますので、よろしくお願いいたします。
4点目、世界気象機関(WMO)執行理事会第80回会合についてです。世界気象機関(WMO)の執行理事会第80回会合が、来週22日月曜から26日金曜にかけてスイスのジュネーブで開催され、私は執行理事として出席予定でございます。WMOは気象業務に関する国際的な調整を行う国連の専門機関で、今回の会合では2027年に開催予定のWMO総会、一般にWMO総会は4年に1回開かれますが、その総会の次の4年間の予算や事業計画等の重要議題の審議が行われる予定でございます。私としましては、我が国の防災業務に関する先駆的知見も活用しつつ、欧米等の主要国と協力してWMOの運営方針や政策課題に関する重要な議論をリードしてまいりたいと考えています。
5点目は数値予報技術開発重点計画についてです。気象庁における数値予報モデル開発は、平成30年10月に策定した「2030年に向けた数値予報技術開発重点計画」に基づき取り組んでいるところですが、この重点計画について、気象庁では、近年の社会動向や日々進展する先端AI技術等の活用を数値予報分野において強力に推進するため、「数値予報技術開発重点計画の補強」の策定に向けて検討を進めてまいりました。先週11日には第11回の数値予報モデル開発懇談会を開催し、委員の皆様から、AI技術の急速な進展にしっかりと対応していくことが必要とか、極端現象などの予測には、従来の物理法則に基づく数値シミュレーションの高度化もまた不可欠など、忌憚のないご意見を多数賜りました。取りまとめが出来ましたら、改めて皆さんにお知らせいたします。今回の数値予報モデルに関するこの計画ですけれども、やはり大きな特徴はAI技術です。これまでは昭和34年から始めた物理モデルを、物理法則に基づく数値予報シミュレーションを発展させてきて、今の予報精度に達しているわけですけれども、やはり世界の趨勢はAIの取り込みは早くやっております。そういう意味で、これから大きく変わる部分でもございますので、この計画にご注目いただければと思います。
最後は交通政策審議会気象分科会に関することです。近年先端AI技術は急速に進展しており、社会の様々な場面で活用されるようになってきています。気象分科会が昨年6月に取りまとめた『「2030年の科学技術を見据えた気象業務のあり方」の補強』を踏まえ、気象庁では先端AI技術の活用を追加的に講じるべき施策と位置づけ、現在、AIの活用にかかる体制の整備を図りつつ、先行的にAI気象モデルの開発等を進めているところです。気象モデルをはじめ、観測、解析、情報作成などの気象庁の業務全般への先端AI技術の活用方策について検討するとともに、情報・データの収集、提供、利活用の促進を行っている気象庁が、逆にどのようにAI社会に貢献できるかについても検討していくということです。つまり、我々がAI技術を使うこともそうですし、ビッグデータを使っていますから、世間、AI社会について貢献していく方策というのもあるかと思います。この二つをテーマにして、専門家の先生に集まっていただき、気象庁がどう対応すべきかを検討していただくことになります。6月30日に開催することとなります。開催に関する詳細については、この1週間前に報道発表いたしますので、またその時にお問い合わせください。
質疑応答
Q:新しい防災気象情報について伺います。5月下旬に新しい防災気象情報の運用が始まり、6月の初旬には台風6号が日本に上陸して初めての本格的な運用になったと受け止めています。そこで新しい防災気象情報というのが自治体や住民にとって、どれほどスムーズに受け止められたのかということと、一方で伝達や理解の面で新しく見えてきた課題などがあれば、現時点での長官の所感をお聞かせください。
A:冒頭でも述べましたけれども、台風第6号の事例等において、今年から新たに開始した「レベル5氾濫特別警報」を初めて発表したほか、情報の名称にレベルの数字を付した新しい防災気象情報を発表しました。これまでの運用全体を振り返ってみますと、概ね大きな混乱はなく、新情報の運用を開始できたのではないかと考えております。一方で、すでに一部でも報道されておりますけれども、いくつか反響をいただいております。例えば、「防災気象情報にレベルの数字がついて、危険度や取るべき対応との関係がわかりやすくなり、行動が取りやすくなった」とか、「避難情報の発令の判断をやりやすくなった」といった肯定的な声をいただいております。
他方、「レベル2注意報からレベル3警報を経ずに急にレベル4危険警報の発表となり、対応に戸惑う面も一部見られた」、「レベル4危険警報の発表後、自治体から避難指示がまだ発令されていない場合に、住民の方から避難指示の発令の有無についての問い合わせがこれまでよりも多くあった」という声も聞いております。このように様々な声をいただいているところですが、総じて「防災気象情報については分かりやすくなり、行動が取りやすくなった」との前向きな声を比較的多くいただいており、今般の情報改善については概ね肯定的に捉えていただいていると考えております。
いずれにしましても、まだ運用が始まったばかりですので、これからも大雨シーズンが続いてまいります。今後も引き続き、情報利用者の皆様の声を丁寧に聞きながら、確認と検証を行っていきたいと思います。すぐにできる検証もあれば、しっかり準備をして行うアンケートなどの検証もあります。そういうタイムスケールに応じた検証もやっていきたいと思います。
一番大事なのは、この情報を自治体の皆様が避難指示の発令等にどのように使われたのかという点です。我々はレベル4、レベル3の相当の情報を出しますけれども、避難指示等を出されるのは自治体の方です。そういう方々が使いやすかったのかということを、一緒にいろいろと相談したり、よりうまく使っていただくために、例えばワークショップ、これは役割分担して行うロールプレイングみたいなものですけれども、自治体の役割の人が、例えば防災気象情報のシナリオが示された時に、いつのタイミングでどういう情報を出すかという練習するんですけれども、そういうことを一緒にやりながら、より有効的に活用していただくようにしたいと考えているところです。
Q:先ほど少しお話ありました、レベル2から4に急激に上がる事例について、例えば土砂に関しては、現状7割ぐらいはいきなりレベル2からレベル4になっているように手元で集計していますけれども、こういったところも含めて、その情報のあり方の検証だとか、改善に向けた動きについて、改めてどういうふうに進められるかというのをお伺いできればと思います。
A:今回、土砂に関する警報の基準というのをかなり多く変えました。以前のものですと、レベル3に相当する大雨警報(土砂災害)が出ても、レベル4に相当する土砂災害警戒情報が出なかったというような情報が非常に多くありまして、一種の空振り感というのは非常に強く、信頼感を失うんじゃないかという課題が指摘されておりましたので、そこを変えて、レベル4になると予測される場合の、そのリードタイムで、レベル4とレベル3の基準を決めるというやり方になりました。これがうまく余裕を持って活用できない例として、一つは、急激に雨が降って、レベル3の状態からすぐレベル4の状態に土壌雨量指数が変わるということです。急激な変化の場合には、やっぱりどうしてもここは時間が短くなってしまうと思います。前提として、レベル4の状態になるまでの時間差でやっていますから、あらかじめリードタイムだとか、その余裕を持って予報ができてないといけないということです。予報精度を上げて、何時間余裕を持ってこれが起こるということを予測できるようにならなきゃいけないということで、精度を上げていくということも必要かと思います。
前の基準よりは良くはなっているとは思いますけれども、今回の台風の事例、それから今後は前線による雨も降るでしょう、それから夏になると局地的な雨もあるかと思います。いろいろなパターンにおいて、この土砂に関する警報の出方、またその自治体のみなさんの避難指示等への活用の仕方、受け止め方、そういうものをいろいろと聞きながら、急にまた変えると混乱しますので、どういうことがいいのか検討する材料集めを、これからしっかり行っていきたいと思っております。
Q:これも冒頭ご発言ありましたけれども、線状降水帯の直前予測と発生については、6月2日ですね、正常に発表されないというトラブルがあったかと思います。改めて受け止めと、再発防止、今後のその検証も含めてですね、どういう姿勢で取り組むかというところをお伺いできればと思います。
A:システムを変えて最初の、システムが動くべき時に動かなかったというのは、非常に申し訳ないと思っています。また、代替策として我々からマニュアルで情報を発信しまして、通常と異なる形のファイルというか電文でお送りしたにもかかわらず、報道の皆様、その情報を用いて、線状降水帯の直前予測、発生情報を、的確に国民の皆様にお伝えいただいたと、おそらくマニュアルで全部やっていただいたんだと思います。そのことについて本当に感謝申し上げたいと思います。
翌日には復旧したけれども、原因は、システムを構成するソフトウェアの一部に不具合があったということです。事前に何度も試験はしていたんですけれども、本番のシステムというのはいろいろつながっているから、そこではテストできずに、試験用のシステムで実験するんですけれども、そういうところでは見つからなかったエラーだったということで、エラーの発見に至らずに申し訳なかったと思います。
今回の事例を踏まえ、同じようなことが起こらないように、他のシステムについても、チェックの指示を出して確認もしたところでございます。今後、このようなことがないようにいたしたいと思います。
Q:それともう一点、直前予測についてですけれども、3時間以内に予測される場合に出すというところで、実際には40分先から3時間の間までは出得るということだと思うんですけれども、今のところ、結構1時間くらいのタイミングで出るところも多くて、3時間以内とご説明をずっとしてもらっているものの、1時間くらいで出るというところの説明というものは、きちんとされてこなかったような気もしていて、3時間くらいあるというふうなミスリードにもつながりかねない面もあるかと思うんですけれども、改めてここのあたりについて、お考えと言いましょうか、情報の性質も含めてお伺いできればと思います。
A:2時間から3時間という言い方をして、今まで普及啓発してきました。ただ、予測精度の関係もあって、直前予測の基準に達する状況というのはかなり雨雲が発達している状況です。それが2、3時間後に線状になるのか、1時間後になるのかというのは非常に難しい予測でございます。2、3時間後に発生する可能性が高まっている時というのは、1時間後でも発生する可能性が高まっています。その辺のところを、もう少し説明を丁寧にしていくべきかなと思っております。これからもまた梅雨の期間中、何度か発表されると思いますけれども、それを受け止めた住民の皆様、もしくは関係者の皆様の声も聞きながら、どのようにご理解いただければいいのか、また、実際、我々が出した予測について、何時間後に線状降水帯が出たのかというところもしっかり検証しながら、皆さんにこの情報の特性というものも、しっかりと説明してまいりたいと思います。
Q:新しい防災気象情報の関連でお尋ねいたします。冒頭発言の中でも、今回あった6月の台風6号の中で、どのように住民の避難行動につながっていたのか、あるいは自治体がどのように活用していったのかということを検証していきたいという趣旨のご発言があったと思うんですが、この検証というのを具体的にどういうふうに進めていかれるのか、ヒアリング等含めてというところと、その検証の結果、何らかの知見が得られた場合には、それをどういった形で場合によっては公表されていくのか、あるいは制度の改善等ですね、どういったスケジュールで進めていくのかといったところ、現時点で見えているものがあればお願いいたします。
A:今すぐということではないんですけれども、実は台風の後もですね、警報を発表したような自治体さんには一応聞いております。それから、防災情報の専門家の方々にも、課題がないか、問題がないかということも聞いております。
それは、いつもの関係で聞かせていただきましたけれども、やはり少し時間を置いて、それからあと、この出水期、いろいろな事例がまたあろうかと思います。そういうのが終わった後で、しっかり計画立てて、警報等が出たような大雨が降った地域を中心に、実際に皆様のところに伺って、いろいろ話を聞きたいと思います。
また、その調査方法をこれから詰めていきます。質問事項もどういう風にすればいいかとか、いろいろな事例によって、聞くことは変わってくるかと思いますけれども、これから、検証の仕方を構築しながら、出水期終わった頃から、聞いてまいりたいと思います。
それから、我々1年に1回アンケート調査、例えば天気予報などのいろいろな情報について、周知の度合いを調査するということを、毎年テーマを変えながらやっております。行政評価の一環としてやっておりますけれども、今年は、やっぱり、この情報が出た年でもありますので、この情報をテーマに1年かけて、多分アンケートの専門の会社などの助けも借りながらやることになろうかと思いますけれども、そういうものも実施していきたいと思っております。
Q:エルニーニョ現象が発生しているという発表もあったかと思うんですけれど、その中で、気象庁としては、強さに段階というのは、言及されてないというか、発生したか、していないかという指数だと思うんですけれど、一方で海外の機関だと、それをスーパーエルニーニョと表現をされたりとか、度合いによって影響の強さみたいなのを表現されていることもあるかと思うんですけれど、気象庁として今後そういうことを検討していくようなことは見据えられていたりするのかを教えていただきたいです。
A:エルニーニョの情報を我々も出していて、その資料の中にグラフが多分あって、あの海域の指標である温度差、それをプロットしたものがあると思うんですけれど、実はピークは夏ではなくて、秋から冬にかけてピークを迎え、エルニーニョの度合いが一番強くなるのはその時だと思います。
ただし、今年は我々の予測でも、アメリカの気象局の予測でも同じですけど、上がり方が案外強いです。我々の予測でも、夏の段階でも2℃ぐらいの数字が出ています。この2℃というのを超えた事例は、これまで我々の記憶の中でも5例しかないので、そういう意味でもその勢力は強いと言えると思います。私も最初、相当数字が上がるのは秋から冬にかけてかと思ったのですけれど、今回の新しい資料を見ると、我々の予測でも、夏終わりですけれども、夏の段階で2℃ということです。
エルニーニョといえば冷夏じゃないかって言われるかもしれませんけれども、今回そのエルニーニョに移っていますけれど、そうすると暖かいエリアがあの赤道付近の太平洋では東の方に行くはず、積雲の対流の地域も東の方に行くはずなのですけれど、まだフィリピンの近辺で対流活動が活発で、これは夏にかけてもそのままそういうふうになると予測しています。ですので、エルニーニョになっても、夏が暑くなるパターンというのが、この太平洋の西側、それか北西側で起こっている、もしくは起こると予測されておりますので、今年の夏はエルニーニョは強いけれど、暑くなるだろうと予測しているところです。
Q:単語として、「スーパーエルニーニョ」は注意する上でわかりやすいということもあったりします。
A:「スーパーエルニーニョ」という単語は、私も知りません。ニュースで聞いていますし、アメリカもちょっと海域が違いますけど、監視しているエリアの海水温の温度差が1.5℃以上だと「ストロング」、2.0℃以上だと「ベリーストロング」、それしか彼らは言ってないはずで、その「ストロング」以上をどなたかが「スーパー」って言っているのではないかと思いますけれども、我々はあまり煽る感じの言葉はあまり使いません。ただ、アメリカが「ストロング」というのを予測しているのは確かでございます。我々の結果とも共通していると思います。
Q:5点目の発表項目にあった数値予報とAIの件で伺いたいのですが、特にあの台風予測に関しての進路に関しては、AIがかなり精度が高くて、強度は物理予測の方が良いなんていう話もちょっと聞いたことがあるんですが、この台風予測へのAIの活用への期待というのはどんなものがありますでしょうか。
A:気象の予測もいろいろございますけれども、低気圧の位置だとか雨域だとか、その物理の方も、シミュレーションと同じように予測できますけれども、いろいろな各国の状況を見ていると、その台風のコースというのは非常に得意みたいです。今後、我々も、そこでの活用というのを狙ってやっていく、もちろんそれ以外も開発を全般的にやっていきたいと思います。
ただ、やるにあたっては、相当の体制も必要ですので、そこを強めながら、しっかりと開発を行っていきたいと思います。私自身の考えですけれども、AIって、実際使えるものはあるんですけれども、そのブラックボックスのものを使うのではなく、我々自身で、中身が分かった上で開発をしていきたい。そういう大方針でやっていきたいと思いまして、若干時間はかかるのですけれども、逆に、具合を中でちゃんと我々が解析してすぐ直せるような、そういうような開発、それから運用を行っていきたいと思っています。
Q:新たな防災気象情報の関係でのお尋ねなのですが、台風6号の防災対応の際に、この新たな防災気象情報の発表を住民に伝えるシステムの改修というものが間に合わなかった自治体が複数あったという状況があります。気象庁として、こうした事例を把握していらっしゃるかというところと、この新たな防災気象情報に関しては、検討会の最終の取りまとめから、約2年ほど経っての実施というふうになっていると思うのですけれども、こうしたところも踏まえまして、住民への周知だったりとか、システムの改修の対応の期間として十分だったかどうかというところをお聞かせください。
A:ご質問の通り、自治体それぞれの防災情報を扱うシステムの更新時期は、それぞれでございます。我々もシステム使っていますので、更新するとき、計画的に、何年に一度システムを更新するという形になります。その途中でも、関係の深い機関が情報を変えたということで、じゃあどうするかということですけれど、予算に余裕があればプラスして、システムは変えないけれどプログラムを改修するという方法があります。ただ、これはやっぱりプラスできる予算がある場合で、基本的には次に更新するときに新しいプログラムにしましょうということになるのがほとんどだと思います。
そうしますと、例えば今回、令和8年度に我々は新しい情報に切り替えましたけれど、令和7年度とか6年度が更新の時期だった人たちは、多分、新しいものを入れられずに、古いままのプログラムで機械を変えてしまった。逆にタイミングが合ったところは変えられたし、それから来年度とか再来年度が更新の時期の自治体は1、2年待たなきゃいけない。すべてが合うということは多分不可能だと思います。
ですので、我々もこういう情報を更新する時必ず、我々電文って言いますけれど、この送り出す情報の形式で対応できるような、古いままの情報、フォーマットで受けられるように、移行措置として古い形のものを一緒に出すようにしています。ただ、中身は新しい、例えば、土砂災害警戒情報という情報の番号で送って、受け取った方は中身を読めば、レベル4の土砂災害危険警報というふうに見えると、そういうような移行期間というのがあります。今回もそういう移行措置というのをしっかりやってですね、相手のシステムが拒否しないように、情報を拒否しないようにという取り組みもしています。それから、我々の情報を更新するちょっと手前のところでシステムを変えるような方々にとっては、早めに言ってあげれば、機械を入れ替える時に新しいプログラムに変えられますので、そういう意味で、我々、できる限り早めに、丁寧に、自治体の皆様などには説明をしてきたつもりでございます。
ただ、間に合わない方が出てきてしまうのは、私も自分の経験から、仕方ない部分があるかなと思います。そうしますと、この間に合わなかった自治体の住民の方々はどうなのかということが大きな問題だと思いますけれども、そういう場合には、申し訳ないですけれど、代替の、我々のホームページもそうですし、多くの住民の方は、テレビとかラジオであの情報を得ると思うのですけれども、そういうところから防災気象情報を入手していただきたいと思います。
最後はその自治体が出す避難指示、これが一番重要でございますので、これはおそらく的確に発信されていると思いますので、自治体の発する情報をしっかり聞いていただくということが大事かと思います。
2年という数字についてご質問ありましたけれども、私自身の考えでは、やはり今回の検討会の先生方の提言というのは、「情報をわかりやすくする」という、やるべきことだと思いますので、これを2年超えて3年も4年も実施まで時間がかかるというのは、それはそれで問題があると思います。一方で受け手側の準備という意味も含めると、あと我々も法律を変えなきゃいけないとかいろいろありました。その2年というのは、おそらく落ち着く時間だったのではないかと思っております。
Q:もう一点、先ほど長官からも言及ありましたが、今回、その台風6号の際にですね、防災気象情報と、それから自治体が出す避難情報、混同してしまって自治体に問い合わせたという事例があったというところで、改めてにはなるんですけれども、こういったことが起こったということについての、気象庁としての受け止めだったりとか、先ほど、ワークショップを開いたりというお話もありましたけれども、改めて周知のためにどういうふうに取り組んでいかれるかをお聞かせください。
A:私も先月この場で、「今回の情報改善で一番伝えたいことは何かって言われたら、やっぱりレベル4危険警報と聞いた段階で、その情報が避難に一番繋がっている、レベル5を待たないでほしい」ということを申し上げました。それが非常に伝わったというのもあったのかもしれませんけれども、我々の「レベル4危険警報」という言葉を聞いた時に、じゃあ、もうすぐ逃げなきゃいけないのかと、理想的な場合は、その警戒レベルの相当情報である「レベル4危険警報」が出たら、自治体がまさに警戒レベルそのものである避難指示を発令し、危ない地域というのは自治体がわかっていますから、その地域に対して出すわけです。そして、その地域の住民の方が逃げる、というのがまず理想形だと思います。
ただし、これまで私もいろいろ災害を見てきたり、反省もしてきたりした中で、いろいろな事例を見ていると、例えば世の中では、必ずしもうまくいかない場合があると、それから我々も情報をたくさん出して、自治体の方も混乱する場合もあると、そういう時には、やっぱりその後にいろいろな専門家の方々のコメントを聞くと、一般の住民の方も、公助だけではなく、自助、共助という考え方で情報を見て、逃げていただきたいというようなこともあります。
最初に申し上げた理想形で行くのであれば、我々の防災気象情報は自治体だけに渡せばいいはずなんです。そして、自治体が必要な情報を住民の皆様に提供する。けれども、我々、実際は国民の皆様にも提供している。それはなぜかというと、やはり住民の皆さんの自主的な避難が大事だという考え方に基づいてやっているというところなんです。そういう意味では、うまくやるには、やはり我々と自治体が非常に連携をうまくやって、我々の相当情報で彼らが警戒レベル情報、避難指示をうまく出せるようにするということが一番ですので、先ほど申し上げた通り、ワークショップもやりながら、訓練もしっかりやりながら、そこはスムーズに行くようにしていきたいというふうに考えております。
また、我々は相当情報を出して、自治体が危険な地域を指定して避難指示を出すという、この形式もですね、周知広報の中身にしっかりと入れていきたいというふうには思います。
Q:気象防災アドバイザーについて伺います。今、600人以上いる気象防災アドバイザーですけれども、令和6年度での任用実績を見ると、80人にとどまっているという数字があります。このアドバイザーの活躍の場を広げていくために、どのような取り組みをしていきたいのかというところ、お考えをお聞かせいただけますでしょうか。
A:まさにおっしゃるところは課題だと思っております。で、実際活用いただいている自治体、80というのは、全体からすれば少ないと見えるかもしれませんが、かなりの数だと思っています。そういうところに聞くと、非常にいいと、来てもらってよかったというふうに思っておられる。このアドバイザーと一緒に仕事やっていくことのメリットというのが、おそらくほかの自治体には伝わってないんじゃないかと思っております。ですので、活躍の場をYouTubeなどで配信してこういうことをやっているんです、役所に常駐してコメントをしたりするという場合もあるし、普及啓発の場として、自治体の一つなんていうんですかね、伝道師のような形で、いろいろなところで話をするという、そういうパターンもある、いろいろなやり方があるということも伝わっていないので、それを具体的なビデオにしてお知らせします。それからあと、どういう方がいらっしゃるのかというのもわかんないといけないので、実はここまでオープンにしたってすごいと思うんですけど、アドバイザーの方々、もちろんご本人たちの了解を得た上で、外に出してもいいって方は、その紹介のページというのもできまして、実際に皆さんがどういう人を採ればいいか、またどういう人たちがもともといるんだということが分かるようにしています。
ただ、そういうものを作ったということは、まだ広まっていないでしょうから、そこのところも一生懸命普及啓発していきたいと思います。それでもどれだけ増加するか分かりませんので、常に検証しながら、対策を打っていきたいと思っています。
Q:先ほど質問がありました、システム更新が間に合わない自治体があったことに加えて、気象庁側でも、線状降水帯の直前予測のシステムの不具合であったり、また一部の河川氾濫の電文についても、当初の想定とは異なる形で配信されるということがあったと思います。そういった意味でも、当初から指摘があったように、新しい情報のあの配信の仕組みが決まってから運用が始まるまでのスケジュールが、やはり十分ではなかったのかなと考えてしまうんですけれども、その点についてはどのようにお考えでしょうか。
A:情報をこういうふうに変えていくときに、いろいろな観点で、どれぐらいの年数が必要かというのはあろうかと思います。全般的に言えば、先ほど申し上げた通り、提言を受けてから3年、4年置いておくというのは、これはよろしくないと思っております。
ですので、早い段階で技術情報をしっかりと出して、間違いが起こらないようにしていくということが大事なんだと思います。我々自身としてはしっかりやったつもりでしたけれども、ただ、どうも私も細かくこう聞いていると、こういう形のものを発するという情報提供だけではダメで、例えば警報ですと、注意報から警報が出て、切り替えるような、そのまた他の警報も出たり、解除してどんどん戻っていくとかですね、いろいろなパターンに全部こう対応するというようなことも、システムが追いついていけるかどうかというのを見なきゃいけない。そういうシナリオ的な疑似データのようなものを提供するとか、もう少し早くやっておけばよかったかなというところはあるかなとは思いました。
そういういろいろな意味で事前の準備というのが、今回、特に変更する量が非常に多かったので、うまくいったかどうか、そこはしっかりと振り返りたいとは思っています。次にまたこういう大きな変更もまたあるかもしれません。今回しっかりと何がまずかったかというところは、見ていきたいと思います。
Q:ちょっと確認にもなりますけれども、その、新情報の振り返りとか検証というのは、スケジュール感、タイミングとしては、現状、台風6号とかですね、聞いているものもあるけれども、何かを変えるとしたら、出水期より後というイメージで今お考えだということなんでしょうか。
A:情報の体系を変える、これはさすがにないと思います。変えるにしても、数年活用して、いろいろな現象に対応して、また受け手の声も聞きながら変えていく、かつ、我々だけで考えるのではなく、専門家の方の話も聞いて、今回のようなサイクルを一通りやるにも、その検討会から最後実施まで数年かかりますので、そういう作業はやっぱり感覚的に10年に1回でも多いのかなとは思っています。
一方で検証というか振り返りというのは、いろいろなレベルのものがあろうかと思います。今回まず1回目だったということもあり、繰り返し申し上げますけれども、防災気象情報の専門家の方々にも、それぞれ意見を聞いてみました。それから警報が出ているところの自治体の防災担当者にも、深くではないですけれども、どうだったかということは聞いております。ただ、もう少しまとめて、あと何を聞くかということをもう少し練った上で、もう1回聞く必要があろうかと思います。特に自治体の方々で、それは、一通り出水期の経験が全部済んでからの方がいいんではないかなと思っております。もちろん最初は、いろいろなシステムのトラブルもありましたから、そういうのはすぐに改善し、残りの出水期に対応しなきゃいけませんけれども、やはりいろいろなことを踏まえなきゃいけないと思いますので、そこはあの出水期が終わったところで、出水期の間に何を聞くのかを詰めた上で、早ければ、準備ができれば、夏ぐらいにそういうことはやれるかなとは思っております。
Q:本格的な検証は、シーズンが終わってからになるということでしょうか。
A:そうですね。
Q:数値予報モデルの開発について伺います。先日の懇談会では物理モデルとAIモデルの開発を両輪で行うという方向性が示されました。改めて、物理とAIの両方を開発するメリット、狙いを教えてください。
A:まず、AIモデルを運用するには何が必要かということになりますけれども、大量の予測結果と、それから観測データが必要となります。そのためには、毎日毎日、物理モデルでいう数値予報モデルを走らせて解析結果というのを作っていかないといけません。それから今までまさに再解析データというので、これまで過去何年間、何十年のデータというのを取ります。そういうふうに数値予報技術を用いて、AIの運用のための元データを作るということが必要となってきます。そういう意味ではAIモデルを作りながらも、数値予報モデルというのは必要と思っています。
将来AI技術が進んで、そういうデータも、観測データも自分で貯めていって、成長していくということもあろうかと思います。ただ、そうは言っても、AIモデルにできること、できないこともあるでしょうし、また、数値予報モデル、物理モデルで培ってきたいろいろな蓄積というのもあります。
特に極端現象を調べるためにですね、我々がこう蓄積してきたものというのは、非常に大きいものがあろうと思います。AIモデルはこれまでの経験値をもとに情報を出しますので、これまで経験してなかったようなことを予測するのは、なかなかまだ難しいんじゃないかと思います。
いずれにしても、まだ我々、AIの予測モデルを全く作っておりませんので、おそらくご質問にあったようなことを本気で検討するのは、AIモデルがしっかりとできて運用もとりあえず軌道に乗って、ある程度いったところで、我々が培ってきた物理モデルと比較するという、多分その段階にならないとなかなかこの答えというのは言えないかなと思いますけれど、今とりあえず感じるところを申し上げると、そんなところです。
Q:防災気象情報の見直しと受け止めみたいなものはまた出水期ということはあるかと思うんですけど、一方で今回の台風だと、都内で結構河川の情報でレベル4が出つつも、自治体としては慣れていることもあって、避難情報等が出ていなかったところも多いかと思っています。レベル4がこう紐付いたことで、だんだんこうレベル4でも避難情報が出ないみたいな認識が広がるのも一つ問題かなとも思っていまして、そのあたり、今後どういうふうに、情報と引き続き向き合うしかないと思うんですけど、水位を例えば検討し直すとか、そういうことを検討するなども受け止めとしてはあるのでしょうか。
A:私も当日、東京都のこの区から出ないなって思っていました。私も詳しくは、その状況について把握していないですけれども、なぜ出なかったのかというのは、よく見ておく必要があるかなと思います。本当に出さなくてよかったのかどうかとか、もちろんそれは自治体の所管でございますので、どうこう言うつもりはないんですけれども、我々の情報がその避難指示等にもし不足なのであれば、どこが不足しているのかということもお聞きしたいなとは思っています。
一方、和歌山の事例につきましては、レベル5、もしくはレベル4の氾濫の危険警報が出て、それから迅速に、避難指示が2つの自治体から出されました。そういう意味では、我々の相当情報と避難指示はきちっとリンクしなきゃいけないなと思います。それぞれですね、全く違う状況の、地形とかも違うのかもしれませんけれども、ご指摘の点はですね、私個人としても興味関心がありますので、しっかりと見ていきたいと思います。
Q:今具体の事例等も含めてご紹介いただきましたけれども、改めて、長官のご所感として、ここは非常にうまくいっていると、逆にあの、新しい情報についてですけれども、ここについてはもうちょっと検証が必要だ、あるいは検討が必要だというように思っていらっしゃるところ、具体的にあれば、お伺いしたいと思います。
A:今回、警戒レベル相当として、その行動がわかりやすいようにレベルを付して、かつ避難に資する相当情報として、危険警報という名前もつけまして、情報を出しました。対応について非常に使いやすくなったという声を聞いておりますので、そういう意味では、総論的には良いスタートを切ったのではないかという風に考えます。
しかしながら、実際、例えば急激な大雨で、川の水位が急激に上がって、レベル3、4、5とすごいスピードで移るというところも見させていただきました。また、土砂に関しましても、レベル3の警報、レベル4の危険警報という、非常に早く移行するという状況も見ています。住民の方々からですね、我々の相当情報と避難指示、どちらが避難に必要なのかわかりにくいという声もいただきました。そういう個々の状況、早速1例目でいろいろ見えてまいりました。早い段階で見えてまいりましたので、その辺どうすれば良いかということ、また、今後、普及啓発なり、ワークショップなり、自治体の方々との相談なり、早い段階でできることはしっかり取り組んで、今の情報そのものの活用を、より良くしていきたいというふうに考えているところです。
(以上)




