長官会見要旨(令和7年11月19日)
会見日時等
令和7年11月19日 14時00分~14時30分
於:気象庁記者会見室
発言要旨
1点目は、気象業務法の改正についてです。
11月11日に、「気象業務法及び水防法の一部を改正する法律案」が閣議決定され、国会へ提出されました。本法案は、豪雨等の自然災害が頻発化・激甚化する中で、防災気象情報である予報・警報を高度化・適正化するため、「洪水の特別警報」や「高潮の共同予報・警報」の創設、「外国法人等による正確でない予報業務に関する規制の強化」などを行うものです。今後も引き続き、国会における法案成立に向けて対応を進めていく予定でございます。
2点目は、11月及びこの冬の気象等の注意喚起についてです。
この秋は、10月後半以降、北日本を中心に寒気が流れ込んだ時期がありましたが、概ね平年より気温が高い状態で経過しています。11月も後半となり、今週の初めは暖かかった一方、本日は全国的に寒気が流れ込んで気温が低下しています。今後は、このように周期的な天気の変化を繰り返しながら本格的な冬に向かってまいります。
これから冬を迎えますが、地球温暖化に伴い地球全体としては気温が高い状態が続くものの、今現在、熱帯の海洋と大気がラニーニャ現象時に近い状況、つまり熱帯域の太平洋海域の西側で対流活動が活発となっているという状況なっているため、日本付近には大陸から寒気が流れ込みやすい時期があると予想しています。強い寒気が流れ込むと日本海側では大雪となり、交通障害が発生することがあります。また、除雪作業中の事故等も多く報告されています。
気象庁では、日本海側で大雪の可能性が高まっている場合には、1~2週間前から早期天候情報等を段階的に発表して注意を呼び掛けていますので、最新の気象情報をご覧いただいて、大雪に備えていただくようお願いします。
また、これからの季節、冬型の気圧配置になりやすいということですので、そうしますと太平洋側では乾燥することが多いと予想されますので、火の取り扱いには十分ご注意いただきたいと思います。
3点目は、今週から開始しております、気象科学館における天気図企画展の開催についてです。
7月の定例会見でお話ししましたが、気象業務150周年に関連しまして、今年度、本庁や全国の気象台で、天気図の普及啓発キャンペーンを行ってまいりました。天気図を読み解くことで、天気の推移をおおよそ把握することができるようになります。例えば、これからの時期ですと、有名なところでは西高東低の冬型の気圧配置という言葉を用いて、天気予報で解説があったりしますが、こうした解説への理解が進むことはもちろんですが、風の強さや大雪の大まかな地域などを読み取ることができます。
気象庁では、こうした天気図に関する知識の普及啓発に一層取り組むため、今回の企画展では、実際に天気図を書いてみる体験ができる仕組みを設けています。来年令和8年5月10日(日)まで実施する予定です。気象予報士の資格を持った解説員も常駐しておりますので、是非、この機会に、一度天気図を書いて、そこに含まれている情報に触れていただき、天気図の読み解きを始めるひとつのきっかけとしていただければ幸いです。
4点目は地震・火山に関する基本的な知識の普及啓発についてです。
先月の会見でも申し上げましたとおり、気象庁は、科学的根拠に基づく情報とそうでない情報を見極めるための、基本的な知識の普及啓発を強化する取組を進めております。今般、地震・津波・火山噴火の基本的な知識、気象庁の防災情報を活用いただくうえで重要となる知識について、体系的に学習することができるコンテンツを、本日19日、気象庁ホームページにて公開いたしました。今回公開したのは、まずは、地震や火山噴火を理解する上で前提となる「地球と大地の動き」についての「地球内部の構造」についてです。この中では、例えば、実は、地震や火山現象は地球のごく表面で起きているといったことなども含めて、図やイラストも交えて解説しております。
今後も、地震のメカニズムに加え、津波や火山噴火の仕組み等のコンテンツも順次公開し、充実していく予定でございますので、是非多くの方にご覧いただければと考えております。報道機関の皆様におかれても引き続き、普及啓発へのご協力をお願い申し上げます。
5点目は、「巨大地震対策オンライン講演会」についてです。
気象庁では、地震や津波について理解を深めていただくとともに、気象庁が発表する情報を最大限活用して身の安全を守っていただくため、来月12月6日の土曜日に「巨大地震対策オンライン講演会」を開催いたします。
本講演会では、これまで残されてきた観測記録から過去の巨大地震や災害を知り、未来の世代へと伝え残す取組について、第一線の専門家に解説いただきます。また、気象庁の情報をより一層利活用いただくきっかけとなるよう、機械の自動制御や列車の緊急停止等に緊急地震速報等の情報を活用している事業者の方にその取組をご紹介いただきます。加えて、南海トラフ沿いや日本海溝・千島海溝沿いで想定される巨大地震に対する被害軽減のため、地震・津波に関する情報や防災対応等について内閣府及び気象庁より紹介いたします。
本講演会はオンラインで開催し、また後日アーカイブの配信も行います。来年は、1946年の昭和南海地震から80年を迎える節目の年でもあります。この機会に多くの方にご参加・ご視聴いただき、地震や津波への備えに役立てていただきたいと考えております。報道機関の皆様にも周知へのご協力をお願いいたします。
私からは以上です。
質疑応答
Q:11月に入っても西日本では夏日になるなど残暑が長引いているところかと思いますが、予報では冬らしい寒さになると予想されているところです。残暑からの本格的な冬への移り変わりとなりますが、改めましてこの時期留意する点や寒さや雪などへの備えについて呼びかけをお願いします。
A:北日本では10月後半には雪が降り始め、11月に入り、北日本では氷点下や降雪となる日もあり、東日本や西日本でも最低気温が10度を下回る日が増えてまいりました。これから本格的な雪のシーズンを迎えることとなります。
雪下ろしや除雪等における事故、交通障害、さらに冬山での遭難事故などを防ぐためにも、早めに冬装備の準備を終えておくことが重要です。残暑が続いたことから、冬の備えが遅れている方もいらっしゃると思います。そういう部分でしっかりと準備をしていただきたいと思います。
また、気象台が発表する大雪や暴風雪等に関する気象情報や、注意報や警報等、段階的に発表する防災気象情報にご留意いただきたいと思います。雨については、気象庁ホームページにて、「雨雲の動き」や「今後の雨」などのコンテンツがあり、広く活用されていると思いますが、雪につきましても「今後の雪」というコンテンツがございますので、面的な雪の状況の把握にご活用いただければと思います。こうした情報を活用することで、大雪や風雪への万全の対策・対応をとっていただきたいと思います。
Q:ひまわり9号について、今回の障害では、ひまわり8号での代替観測が最長となったところです。こうした状況を踏まえて、改めて、運用上の対策や今回の障害に関する長官の受け止めをお願いします。
A:ひまわり8号によるバックアップ運用は、ひまわり9号で障害の発生した10月12日から本日11月19日に至るまで、38日間継続しているところです。これは、障害対応に関する詳細な記録の残っているひまわり6号以降で、待機衛星によるバックアップの運用期間として最も長いものとなりました。
このようなひまわり8号によるバックアップ運用により、日々の監視や予測が通常通り実施できているところであり、静止気象衛星の2機体制による運用の重要さを改めて実感しているところでございます。
ひまわり9号については、昨日11月18日に報道発表したとおり、原因調査結果を踏まえた再発時の対策方法を整えたうえで、来週には再び運用に戻す予定です。この機会に、しっかりと状況を確認しまして、そのうえで、切替判断に至ったところです。
従いまして、ひまわり9号については今後も安定した運用が可能であると考えておりますし、万が一、障害が発生した際には、速やかに復旧手順を実施するとともに、必要に応じてひまわり8号への切替を行うことによって、衛星観測ができないことによる影響を最小限とすることが重要と考えています。
当庁としては、今後も、静止気象衛星2機による切れ目のない安定観測体制を維持するため、現在進めている次期静止気象衛星ひまわり10号の製作などに、引き続きしっかりと取り組んでまいります。
Q:2点質問させてください。1点目が11月9日に三陸沖でマグニチュード6.9の地震があり、モーメントマグニチュードだと6.7というところで、今回は後発地震情報には繋がらなかったと思うのですけれど、改めてその呼びかけ自体には地震には注意を続けてくださいというのがある中で、もし出た場合は、また1週間備えるというところで、改めて我々がこの情報とどう向き合うべきかを、受け止めの方をお願いします。
A:先日の地震に関して、マグニチュードが基準の7.0にも達しませんでしたので、後発地震注意情報については出しませんでしたけれども、もし出た場合には、おっしゃる通り、1週間程度、地震に対する対策、南海トラフ地震で言えば臨時情報(巨大地震注意)に当たるような取り組みをしていただくということになったと思います。その点は今現在も、この認知率が低い、あまりご存知ない方もいらっしゃいますので、そういうところは特に北海道とか東北地方の気象台などから、地元への普及啓発を特に強めているところでございます。今回の地震も、たまたま基準には達しませんでしたけども、これを機会に、その情報が出た場合にはどうすればいいのか、すぐに対応がとれるような準備をしていただくということになりますけども、それがどういうことなのか地元の自治体などとも協力して、普及啓発に努めてまいりたいと思っております。
Q:特に先ほども触れておられましたが、寒くなってきて雪なども大雪の場所も出てきている中で、冬にもしこうしたケースがあった場合の避難について改めて注意する点などもありましたら教えてください。
A:冬の大雪の影響というのはいろいろございます。我々が特に最近危ないと思っておりますのは、もちろん大雪で家が潰れるということもありますけども、道路で自動車の交通がスタックしてしまって、そこに閉じ込められて運転されている方、乗車されている方が非常に危険な状況になると、こういうことをぜひ防がないと、ということですね。実際そういうことも何度かありましたので、関係機関とも十分話しまして対策を立てております。例えば、共同会見では道路関係の事業者やそれを管轄する地方整備局の方などとも共同して呼びかけています。我々は天気に関する情報を呼びかけ、また彼らから、自動車で出かける前のいろんな準備、もしくは急用じゃない場合には控えてください等々の呼びかけも一緒に行うことで、そのような大雪により道路交通がスタックする、止まるということを防いでいきたいと思っております。また、大雪でなだれ等が起こって、去年も福島でありましたが、旅館で孤立するようなこともございました。そういうことが起こった場合に適切に対応できるよう、現地の気象台等でしっかり支援したいと思いますし、また、なだれなどがあるような場合には、しっかりと情報を出していきたいと考えています。大雨と比べて大雪に関する情報は、なかなか伝わりにくい部分もございますので、先ほども申し上げましたけども、面的情報も出たりしておりますので、そういう新しい情報などを、しっかりと普及啓発して、皆さんに備えていただけるようお願いしていきたいと考えております。
Q:あと最後に大分市で昨夜火事があり、火事がひどくなりまして、乾燥と風というところが、より数を拡大させた要因とされていますが、改めてこの季節のこうした火災への注意喚起の方お願いいたします。
A:初めにも申し上げました通り、特にこの冬の場合は冬型の気圧配置が多く出ると予測しております。降水量の予測についても3ヶ月予報では太平洋側で平年より少なめになるだろうと予測しています。そうしますと、太平洋側で冬型の気圧配置で乾燥し、かつ風が強いという状況が出てくると思いますので、火の取り扱いには十分に注意していただきたいと思います。また、火災の防災関係の方々も、そういう状況であることを認識していただきたいと思いますし、また気象台も、気象の状況、少雨などございましたら消防関係機関などとも情報共有することにしておりますので、しっかりと対応に協力していきたいと考えております。
Q:クマの被害がかなりちょっと相次いでいるのですけれども、例えば気象観測施設への影響ですとか、施設の保守管理の点で何か職員への注意呼びかけ等々は行っているのでしょうか。もしありましたらお聞かせください。
A:例えば、火山の観測装置の点検ですとか、アメダスの点検などで、山林近くに入ることがございますので、一般的な注意として、こういう状況でもありますので、注意するようにということで鈴などを持つなど気をつけるようにしております。特別に気象台ならではの注意ということはしておりませんけども、一般的な注意を同じようにして業務をしているということでございます。
Q:海外事業者による不適切な国内向けの天気予報への対策について3点ほど伺います。まず1点目ですけれども、気象業務法改正案が閣議決定されて、外国人等による予報業務に関する規制強化が盛り込まれたかと思いますけれども、海外製の携帯電話にデフォルトで搭載されているアプリの予報があまり当たらないといった問題は以前から指摘されてきたことかと思います。なぜ、今このタイミングで対策が検討されたのかという経緯について教えていただければと思います。
A:基本的なお話として、日本国内で予報業務を行う場合には、許可が必要であるという仕組みになっております。一方、予報業務は海外でも行われていて、ご案内の通り海外の気象会社も海外で予報業務を行っています。以前はですね、そういう形で、海外で海外向けに行われておりましたので、これは最初に申し上げた許可の対象ではなかったのですけれども、最近はアプリで、日本語で日本人向けに予報業務を行っているという実態が増えてまいりました。そうしますと、やはり国内の予報業者と同じように、しっかりルールに従って不適切な情報があれば、その改善をこちらから申し入れるということをしなければなりませんけども、事務所がこちらでないので、やはりちゃんと連絡できるように、国内に代理人かもしくは代表者をしっかり置いてくださいと、そう指導できるようにするためにいくつかの規定を設けさせていただいたということでございます。
Q:2点目、関連して伺います。特に海外事業者に関しては監視の目が行き届きにくい現状があると思いますけれども、海外事業者に対する規制強化等、一方で内外の不差別を定める貿易に関する多国間協定GATSとの考え関連について考え方を教えていただければと思います。
A:そういう意味ではこの気象業務だけ飛び抜けて、何か規制を強化するというものではございません。ほかにも海外の業者が日本で業務を行う際にしっかりと指導できるような形を定めたものが他にもございます。そういうものとあわせてやっておりますので、何か非常に特別に規制強化をしているということはないかと思っているところでございます。
Q:3点目最後になりますけれども、海外事業者の中には地名表記について日本政府の認めていない不適切なものを使用している例が散見されます。これについて政府のしかるべき担当官庁と連携する、連携して対応するお考えはおありでしょうか。
A:地名につきましては日本で行う際には日本の皆さんがご覧になるわけですから、しっかりと我々が認識できる、我々が正しいと考えられる地名にしていただくことは当然だと思っております。もし我々が認識していない地名で書かれているようであれば、それは注意することになろうかと思います。
Q:先ほど海外事業者の関連で、気象庁として日本語の日本人向けのあたりですけれども、どういったこのケースをまずその確認、いつ頃からどういった規制が必要だなって感じるような、どういうケースが散見されたりしたのでしょうか。何か具体例あれば、何点か教えていただければ。
A:いつからというのは言いにくいですけれども、例えば、我々日本の民間気象業者には、我々が出している警報など防災気象情報や特に警報でございますけども、正しく利用者に伝えてくださいと申し上げておりますけれども、例えば警報がでているのに、それが表示されてなかったり、出ていないのに出ているように表示されていたり、皆さんもご覧になったことあるかもしれませんが、聞いたことないような名前の注意報が表示されていたりとか、そういうものが出てきておりますので、やはり防災気象情報は国民の安全安心を守るため、命を守るために最も重要だと考えておりますので、そういう不適切なものがいくつか見られたというのはございます。
Q:関連して、それは一社だけなのでしょうか、特定の事業者がそうやっているのですか、それともいろんなアプリがある中で複数の社がそういうふうに出しているというふうなのが今確認されているのでしょうか。
A:我々もこの法案を出すにあたりいろいろと見ましたけど、一社ではなく複数確認されました。
Q:複数というともう100社ぐらいあるとかでしょうか。
A:そんなにはないです。
(総務部)補足いたします。我々も普段監督をしてございますが、その中で見つけたものについては適宜指導しておるところでございます。例示として挙げさせていただいたように警報を不適切に通知している事例などいくつか確認をしてございます。それから経済協定との話のご質問がありましたけれども、今回の規制の強化でございますけれども、国内事業者と同様に我々の方でしっかり指導監督できるようにというところで代表者を置かせるものでございまして、外国法人に対して国内事業者と異なる対応をとっているものではございませんので、当然国内のルールにのっとってやっていただくという範囲でやっておるものでございます。
Q:最後に1点だけ、その事業者の確認されたときに事業者にもう今注意とかはしたりしているのでしょうか。それともケースを見ているだけで、まだ何も声をかけるというか、そういうやったりはしてないのでしょうか。
A:(総務部)先ほど申し上げました通り我々の方でそういう者を把握した場合は当然問い合わせをしたりですとか、調査をしたり必要に応じて許可を取得するように呼びかけて対応はしておるところでございます。
Q:N-netのデータ活用が明日から始まりますけれども、特に津波防災への貢献これについて気象庁として現時点でどんなことを思っていらっしゃるか教えてください。
A:新たに四国の南側の海底に設置された地震計それから津波計が活用できるようになります。ご案内の通り、この地域は南海トラフ地震の想定震源域でございます。その確率もかなり高い確率がでておりますので、我々十分に警戒しなければならないところです。まずは地震が観測されることで緊急地震速報が相当早く出せるようになりますし、それから津波の状況をわかるようになりますので、地震の規模を推定して警報を出しますけども、津波の観測値を見ることでそれを改善することが途中でできますので、沿岸の津波対策にとっても大きな効果があると考えております。
Q:特に南海トラフ地震を考えた場合にその想定震源域の西側が一種、この津波観測体制における空白域のようなところがあったところが埋まるっていう部分でも、どんなふうにお考えでしょうか。
A:おっしゃる通り、東日本の震災があったあと東北沖にS-netが展開されまして、紀伊半島沖にも海底の地震計津波計が設置されていて、今おっしゃっていただいた通り、四国沖は空白地域でございましたけども、これで南海トラフ地震の想定震源域全体で地震計、津波計が設置されましたので、南海トラフ地震対策としても万全なものになったと考えております。
(以上)




