長官会見要旨(令和7年9月17日)
会見日時等
令和7年9月17日 14時00分~14時55分
於:気象庁記者会見室
発言要旨
冒頭、私から、4点述べさせていただきます。
1点目は、ここ1ヶ月ほどの期間における大雨についてです。
まず、8月の前線や台風第15号などによる大雨や突風、その対応についてですが、はじめに、これらの大雨や突風等でお亡くなりになられた方々のご冥福をお祈りいたしますとともに、被災された方々に心よりお見舞いを申し上げます。
8月の前線による大雨については、6日から12日ごろにかけて、西日本から北日本の広い範囲で大雨となり、8日には鹿児島県で、11日には熊本県で大雨災害の危険度が非常に高くなったことにより、大雨特別警報を発表したところです。総降水量は多いところで600ミリを超え、平年の8月の月降水量の3倍以上となったところがあり、各地に甚大な被害ももたらしました。また、北日本においても記録的な大雨となり、特に秋田県では、8月20日から21日にかけて、また9月2日から3日にかけて、それぞれで24時間降水量が200ミリを超える記録的な大雨となりました。今日の朝も能代市で観測史上1位となる3時間雨量120.5ミリを記録しています。
さらに、9月には台風第15号や前線や上空の寒気により、各地で記録的な大雨となっただけではなく、5日には静岡県、茨城県、高知県で、11日には東京都で突風による甚大な被害が発生しました。静岡県の突風被害については、昨日16日に、私自身、被災現場に伺い、被害の大きさを目の当たりにしたところです。気象庁として、引き続き、適時適切な情報発表や現地調査を行うことについての重要性を再認識したところです。
気象庁では、これらの大雨や突風などについて、適時、防災気象情報の発表を行うとともに、各地の気象台から自治体へのホットラインやJETT(気象庁防災対応支援チーム)の派遣など、積極的に自治体の防災対応の支援を行うとともに、発生した突風については、9月6日から10日にかけて現地調査を行い、今回の突風被害が、国内で観測されたものの中では最大クラスの竜巻(日本版改良藤田スケールでJEF3)による被害であったことを確認し公表したところです。
今後も、引き続き台風や前線の影響を受けやすい季節となります。気象庁や各地の気象台が発表する最新の防災気象情報等に十分注意をいただいて、早めの対応、万全の対策をとっていただきたいと考えております。
なお、台風については、昨年度、令和6年9月から令和7年7月にかけて、外部有識者で構成される「台風情報の高度化に関する検討会」を開催しておりましたが、この8月29日に「台風情報の高度化に関する検討会 報告書」が取りまとめられました。これを受け、将来的な台風情報の高度化に向けた取組を着実に進めてまいります。
次に、2点目ですが、記録的な暑さについてですが、6月以降、本州付近への太平洋高気圧の張り出しが強く、晴れて高温になった日が多かったこと等により、日本の夏の平均気温は、基準値からの偏差が+2.36℃となり、統計を開始した1898年以降の夏として、最も高い記録を更新しました。8月5日には群馬県の伊勢崎市で最高気温41.8℃を記録し、猛暑日となった延べ観測地点数も最も多くなりました。
今後は、猛暑日クラスの暑さになる可能性は小さくなりますが、平年と比べて気温が高い状態は続き、真夏日となるところもある見込みです。まだ熱中症のリスクがある状況が続きますので、適切に熱中症対策を取っていただくようにお願いします。なお、気温が高いことも重要ですが、熱中症との関連としては湿度も重要です。屋外での作業、学校の部活動や福祉施設などで熱中症の対策を行う立場におられる方々に置かれては、是非気温と湿度を考慮した、暑さ指数の測定を現場で行うなどしていただき、その場所の実際の危険度を把握して対応をとっていただきたいと考えております。
9月5日には、異常気象分析検討会でも今夏の暑さは地球温暖化がなければ起こりえないレベルとの見解をいただいたところですが、3年連続で夏の気温が記録を更新したことになりまして、これについては私自身、率直に温暖化が速い速度で進行していると感じているところです。こうしたことから、暑さへの適応策等も準備を急ぐ必要があると考えています。気象庁としましては、日本の気候変動2025や、きめ細かな予測情報の提供を通じて、地球温暖化への適応策をとられる方々に情報やデータの提供を通じて支援を強化してまいりたいと考えています。
また、10年から20年の海洋の変動を捉えるための海洋気象観測は、近未来予測情報にもつながる大変重要な情報となりますので、引き続き、この分野の調査・研究をしっかり行い、情報発信に努めたいと考えています。
3点目は地震火山の基本的な知識の普及啓発についてです。
7月の会見の際に申し上げましたが、科学的根拠のない情報に振り回されないためには、そうした情報を見極めるための基本的な知識が必要となります。こうした基本的な知識の普及啓発について、気象庁としても発信の取組を強化してまいりたいと考えています。
まずは、地震や火山噴火の基本的な知識について、ホームページやSNSを用いて、広く知られているようで、実は適切な理解が広がっていない基本的な部分に対して、しっかりアプローチしていきたいと考えています。先般8月に実施した夏休み子ども見学デーで来場者の皆様から寄せられた疑問・質問なども参考にしてまいります。報道機関の皆様におかれても引き続き、普及啓発へのご協力をいただけましたら幸いです。
4点目は、令和8年度概算要求についてです。
8月26日に来年度の概算要求の内容について公表しました。
気象庁では、交通政策審議会気象分科会の提言「2030年の科学技術を見据えた気象業務のあり方」を中長期的な指針として、観測・予測精度向上に係る技術開発、気象情報・データの利活用促進を車の両輪とし、防災対応・支援の推進に取り組んでまいりました。さらに、本年6月には、近年の社会情勢の変化を踏まえて必要となる追加的な施策について、同提言の「補強」として取りまとめられました。
これに基づき、令和8年度予算の概算要求にあたっては、線状降水帯に関する予測精度向上と地域防災支援業務の強化の二つを最重要課題として着実に進めるとともに、提言の「補強」に掲げられた5つの施策すなわち、台風情報の高度化、先端AI、面情報への転換、気候変動対応、大規模地震・噴火に対応して、これらの重要施策の強化・推進に必要な内容を踏まえた予算、組織、人員の要求を盛り込んでいるところです。
今後、予算編成作業において、政府全体としての検討が進められますが、気象庁としては、必要な予算と人員の確保に向けて全力で取り組んでまいります。
私からは以上です。
質疑応答
Q:冒頭ご発言にもありましたが、この夏は、統計史上もっとも暑い夏になりました。あらためて気象庁長官としての受け止めをお願いします。
A:今夏の記録的猛暑の状況については、9月5日の異常気象分析検討会において、専門家の先生方に分析いただきましたが、この際、検討会会長の中村先生からは、近年の異常な暑さなどについて、「過去の常識は通用しない心持ちで過ごさないといけないと思う」といった所感もお示しいただいたところです。私も全く同感で、過去の気候とは異なる気候になっていることを前提に、社会として適応してゆく必要があると感じているところです。来年や再来年にまた記録的な暑さになるかどうかはわかりませんが、地球温暖化による長期的な気温上昇は、今後も続くと見込まれます。私自身、もしかしたら温暖化が予想していたよりも速い速度で進行しているかもしれないとこの夏、感じたところです。地球温暖化に対応しなければならない分野の方々は、適応する対策等を早めにおとりになることをお勧めしますし、その対応に必要な情報やデータも提供していくとともに、地球温暖化の変化に重なってくる海洋の変動の把握と近未来の予測情報などのきめ細かな提供などを通じて、関係する方々支援を進めていきたいと考えています。
Q: 今後気象庁として、熱中症警戒アラートなどによる呼びかけの他に新たな対策を検討する予定はありますか。
A:近年の異常な暑さを踏まえますと、夏の高温に関する予測精度の向上は重要であると実感しております。日本の夏の天候は、アジアの熱帯域における対流活動の変動と密接に関係していますので、この変動の予測技術を着実に向上してきているところですが、これを一層改善することで、著しい高温になる可能性を早い段階から精度よく予想することができます。また、そのためには、大気の流れに大きな影響を与える海洋の変動を正確に予測することも重要です。これにより「いつもの夏とは違う何らかのシグナル」を把握し、夏の天候に関する情報の発信につなげていくことが大切であると考えています。気象庁としましては、予測精度向上と現象の時間スケールに応じた情報提供体系について、考え直すところは考え直して、大気と海洋の相互作用の分析等を含む技術開発を進めてまいります。
Q: 今年も線状降水帯が各地で発生しました。県単位の線状降水帯・半日前予測の適中率は去年は約10%でしたが、今年8月29日時点では約20%と発表されています。現在の(最新の)適中率はどのくらいでしょうか。長官としてはどのように受け止められていますか。今後、改善に向けてどう対応されるのかもお願いします。
A:9月10日までの事例を集計したところでは、線状降水帯の半日前予測の適中率は14%、捕捉率は73%となっています。これらの値は昨年を上回っておりますが、近年、毎年のように全国各地で大雨の被害が数多く発生している中で、予測精度の向上は喫緊の課題であると考えています。また、半日前予測を行った際に、3時間100mm以上の大雨になった事例は、約62%となっており、半日前予測が出た際には線状降水帯が発生しない場合でも大雨となっている状況です。気象庁では、線状降水帯の予測精度向上を実現させるべく、逐次改善の取り組みを実施しています。たとえば、今年度は、線状降水帯の予測を行う際に、予報官が採用する数値予報資料を見直すなどの改善を行っています。また、数値予報モデルの改善や、観測データの高度利用、二重偏波気象レーダーや湿度計を付けたアメダスの整備なども着実に進めているところです。今後も引き続き、予測精度の向上に努めてまいります。
Q: 静岡県内の竜巻被害の関係でお伺いします。長官は昨日被災現場を視察されたということですけども、現状住民への注意喚起ですとか、予測であったりとか、そういった部分で、今後これを教訓に何か改善していくですとか、何か課題として見えてきている部分が現状あれば教えてください。
A:昨日現場を見させていただいて、広い範囲で竜巻の被害が起こっていて、被害の状況の広さ、規模の大きさを非常に感じております。情報自体については、まず雷注意報が出て、その後竜巻注意情報が出て、そして、マップの情報で竜巻発生の確度を示しております。そういう情報があることについて、現場で牧之原市の方ともお話したのですけども、実はなかなか知られてない部分もあると感じました。竜巻注意情報までで、それで全て対応しなきゃいけないようなお考えでおられる方もいらっしゃいましたので、もっとマップ情報で、竜巻発生の確度は示されているということ自体、もっと普及しなきゃいけないなと、今ある情報をしっかりと普及していくということが大事かなと考えております。それから、現地の調査というのが大事だなと感じました。被災した方々へのいろんな支援の指標となるような、何が起こって、その強さがどれぐらいだったかということを確認する現地調査の大切さというのを昨日視察してよくわかりました。そういう意味でも、今回非常に地点数が多く対応は大変ではありますが、そういう広い範囲で起こった被害を逐次、迅速かつ正確に調査する、そのためのいろんな見直しや、ツールの高度化など、そういうものも考えていかなければならないと感じたところでございます。
Q:2つの話題で伺いたいのですけれど、まず一つ目が極端な雨の関係で都市部においてですね、三重だと地下の駐車場が水没したり、都内で地下の店舗が水没したりした件があったかと思うのですけれども、改めてこの都心における地下水没のリスクについてどう考えたらいいのか、あるいはどう備えたらいいのかというご所感と、あと、まだ雨のシーズンが続きますのでその注意点とかポイントも踏まえた防災の呼びかけを改めてお願いします。
A:都市はやはり地下もかなりありますし、洪水そのものだけではなくて、その地域が排水機能をどれだけ持っているか、その排水能力を超えるような雨、要するに温暖化によって、強雨が増えてまいりますので、そうするとその排水能力を超えるような雨が、今後も増えていくと思われます。そういう意味で浸水に関する注意というのは、川のそばの洪水だけではなくて、川がそばにいなくても排水機能を超えるような大雨により浸水が起こるということをやっぱり注意を呼びかけていかなければいけないなと考えております。おそらく地下でいろいろ活動される方も、今回こんなことが起こるとは思っていらっしゃらなかったかもしれませんけれども、こういうことが実際起こりましたし、今後も増えていく可能性があると思いますので、こうしたことの防災について関係者と共々ですね、訴えていかなければいけないなと思っております。また、我々実際浸水の注意喚起を含む防災気象情報を出していきますので、それもしっかりと普及啓発してご利用いただけるように努めてまいりたいと考えております。雨のシーズンの呼びかけですけれども、今年は特にそうですが、例年のようないつもと同じような雨が降るとは限りません。今も、皆さんもお気づきの通り、秋雨前線も非常に活動が活発で、例年の9月の秋雨前線と同じように考えるとちょっと実際異なる場合もあります。そもそも今年は夏の高気圧が強く、前線の南側は湿度も気温も異常に高い状況ですが、今後、乾いた大陸性の高気圧が出てきていますが、そことの差が非常に大きくなってギャップが大きくなっています。そうすると中緯度の擾乱は温度差がエネルギーになりますので、特に前線による雨がいつも以上に、危険な大雨をもたらす可能性があるということを是非注意していただきたいと思います。また、9月でございますので、台風もこれからやってきます。これまでの季節も発生しておりますけども、季節上、西の方に進んでいくことが多くありましたけれども、これからは、日本の方に上がってくる台風も増えてくると思います。海水温が日本近海で非常に高くなっておりますので台風も、いつも以上に強い状態で来るかもしれません。そういう意味で、いつも通りと考えずに、防災気象情報もできる限り最新の情報を見ていただいて、対応していただければと考えております。
Q: あともう一点なのですけれども、ひまわり10号の打ち上げの遅れというのは先日発表がありました。これ線状降水帯のあるいは台風の予測精度向上に関しての切り札というふうに位置づけられていたかと思います。この1年遅れ、遅れてでも良いもので打ち上げたいという判断に至った理由とですね、あと求めている水準に本当に1年で達することができるのか、今どう見てらっしゃるのか改めてお願いいたします。
A:今度、新しい衛星に載せるその赤外サウンダというのは、特に静止気象衛星に載せるのは世界でも2番目になります。非常に最新の技術でございますので、なかなか製作が想定通りにいかないということはあるだろうと考えておりましたけども、実際そうなってしまったというところです。実際宇宙に打ち上げたらもう改善できませんので、ここはしっかりと作ってもらうことを最優先にしたということでございます。そうしますと予定している線状降水帯を市町村単位で出すとか、そういうものの期日に間に合わないということはありますけれども、先ほど申し上げた通り、線状降水帯の精度を上げる作業は、いろんなことを複数やっております。今年も3つも4つも、いろんな対策を立てて、精度向上に努力しております。それが積み重なっていきますので、当然今、県単位で出しているものを市町村単位に変えるだけの精度向上が見込めると考えておりますし、またそれを早めに実現しなければいけないと思っておりますので、それは予定通りやっていきたいと思います。今後衛星が上がって、赤外サウンダを使い始めてもですね、最初にデータを利用する段階で市町村単位の精度が一度上がりますけれども、観測データを数値シミュレーションに入れていくというのは、一度入れ始めても、またいろんな改良して、改善していくことになりますので1回いれて、そこで良くなるというよりは、逐次良くなっていくと私は考えております。そういう意味でも、精度の向上というのは、いろんなデータを入れながら逐次上がっていくものでございますので、どこかで階段的に上がるというものではないと思っています。市町村単位の線状降水帯の情報提供というのは、精度向上を随時行いながら、予定通り進めていくものと考えております。
Q:2014年の9月27日の御嶽山噴火災害から今月で11年となります。改めて、この火山災害の受け止めと、このことを受けて気象庁がこれまでに行ってきた火山監視体制の強化の取組、それから今後の課題などについて教えてください。
A:改めまして、平成26年、2014年の御嶽山噴火により亡くなられた方々のご冥福をお祈りするとともに、被災された方々に心からお見舞い申し上げます。
私もちょうど10年たった時に、長野地方気象台の台長とともに大滝村の慰霊碑のところで花をささげさせていただきましたけれども、亡くなられた方々のためにもしっかりと火山業務を改善していかないといけないと心に誓ったところでございます。この噴火における課題については、中央防災会議や火山噴火予知連絡会の検討会で検討がなされ、気象庁でも、観測体制や情報の発信・伝達等に関して指摘をいただきました。そして、火口周辺の観測体制の強化、火山監視・警報センターの設置、監視・評価体制の強化、人材の育成、「噴火速報」や「臨時」を付した「火山の状況に関する解説情報」の発表など情報の改善、伝達手段の強化を行ってまいりました。その後も気象庁では、火山業務の充実を図るため、火山活動評価の高度化と、最新の科学的知見を踏まえた噴火警戒レベル判定基準の精査及び公表というものを進めましたし、それから文部科学省による「次世代火山研究・人材育成総合プロジェクト」への協力や、同プロジェクトにより育成された火山専門人材の活用等を進めてまいりました。また、気象庁以外に関することでございますが、令和5年6月の活火山法の一部改正を受けまして、昨年、文部科学省に火山調査研究推進本部が設置されました。火山に関する観測・調査・研究を国として一元的に推進する体制が整いました。気象庁としましても本部の活動に積極的に参画しているところです。また、改正活火山法において、8月26日が「火山防災の日」と定められたことを受け、気象庁でも、講演会の開催、訓練への参画等を通じて、普及啓発に一層取り組んでいます。 残された課題としては、この11年間の取組により、例えば、火口周辺の観測体制強化をしたことで、火口周辺の微小な地震活動など、より細かい火山活動の変化を捉えられる事例が出てきました。しかし、観測開始から日が浅く、観測された変化を踏まえて、どの程度火山活動が高まっているかの評価につなげるには、今後もデータを蓄積していく必要があると考えております。観測を強化しましたが、火山の活動の時間的スケールを考えますと、何十年何百年とデータが必要ですが、まだ10年程度しか得られていない部分もありますので、そういうものの分析も踏まえて、火山の変化・活動のメカニズムというのを明らかにしてまいりたいと考えております。
Q:先ほどもありましたが、文科省が2016年度から10年計画で進めてきた「次世代火山研究・人材育成総合プロジェクト」では、若手人材の育成を進め、気象庁でも22人を採用しました。先日、文科省では概算要求でさらに10年間の事業継続の方針を明らかにしました。気象庁でも、御嶽山の噴火を受けて、火山業務に携わる職員の育成を進めていると思いますが、気象庁におけるこれまでの職員育成の取組の評価と今後の活用について伺います。
A:火山の担当者の人材育成にとりまして、この文部科学省による「次世代火山研究育成プログラム」は非常に重要な位置づけと考えております。この4月も含めて、22名でございますけれども、こうした職員は、本庁や地方官署で火山業務に従事しているほか、火山調査研究推進本部の事務局への出向を含めて、様々な部署で活躍しており、我が国の火山業務の発展に寄与していると考えています。また、気象庁では、御嶽山の噴火を受けまして、火山監視・警報センターを設置して、平成28年度に火山業務に係る定員を80人増員するなど、監視・評価体制の強化を図ってきました。火山の実務を担う職員に対しては、気象大学校における最新の火山観測技術等の専門知識を習得させることを目的とした研修を行うとともに、実地が大事ですので、多くの火山監視を担っている鹿児島地方気象台において、火山活動が活発な桜島にて現地研修も行っています。また、平成28年度から、我が国を代表する火山の専門家5人を「気象庁参与」に任命し、職員へ指導・助言いただいています。今後もこれらの人材育成にしっかりと取り組み、火山監視・警報センターをはじめ各地の気象官署で火山業務が適切に行われるよう努めてまいります。
Q:長官の冒頭であった地震や火山の知識の普及、基礎的な知識の発信に関して伺いたいのですけれども、これはいつから具体的にどういう形でやられる予定なのかというのを教えてもらえますか。
A:近日中に開始するべく、どういう質問が本当にふさわしいのかなど、テーマの設定など含めて、今、議論をしているところです。私としましては、通り一遍の教科書に載っているような知識だけではなくて、「そうなんだ!」という、もしかしたら地震火山の業務をしている人には当たり前かもしれないですけど、実は一般の皆様には全く伝わってないようなこともあろうかと思います。例えば、非常に基本的なことでは、地震は何で起こるのか、1H5Wですか、地震はどうやって起こるのか、なぜ起こるのか、どこで起こるのかなど、そういう基本的なことから入っていきたいと思います。どこでという点でも、震源というと1点で考えますけども、実は、地震が起こっているとこは点ではなくて、そのマグニチュードの大きさに比例して広がりがあります。マグニチュード9ぐらいになると約500キロにもなります。また、規模が大きいと割れるためには時間かかりますから、大きい地震ほどを全部エネルギー解放するまでに何分もかかるわけですよね、その中でも約3分で津波警報を出すというようなことをやっているのですけれど、そうした情報へのご理解も得られると思います。それから津波が起こるのは震源域が海の下であるっていうことも意外と知られてなくて、陸地の下で地震が起こっても大きい地震であれば、海も揺れるじゃないかという印象もありますが、それでは津波が起こらないですよね。そういう基本的なことを言いながらも、大事な部分を交えて説明していきたいなと考えています。手段としては、説明の多いものはホームページで行いながら、ワンポイントでXのようなSNSなどで発信して、シリーズ物的に、毎日だと読むほうが大変だと思うので、間隔をおいて発信していければと考えています。あと、この前の夏休み子供見学デーでいただいた質問、やはり子供たちが不思議に思うことの方が、多分素直な質問と考えられますし、大人にも役立つものが多いと思いますので、そういう発想もちょっといただきながら、テーマを決めていきたいなと思います。大筋決まっておりますが、良いものを追求したいと思いますのでちょっと時間かかっていますけれど、近日中に始めたいと思います。
Q:あとそれに関連してもう1点なのですけれども、今年の7月の例のデマなのですけれど、それはいわゆる海外にも広がったという面もあったと思うのですけれども、海外からの日本への航空便がキャンセルになって、噂との関連というのも指摘されていましたけれども、国外にいる人への発信ということに関してはどう考えていらっしゃるかということを教えていただけますか。
A:普及啓発については、基本的にはまず日本語でということでございますけれども、おっしゃるように、特に日本は地震に関して、いろいろと詳しい国ですから、そういう立場として、英訳して出すということも、アイディアとしてはいいと思いますので考えていきます。それからあのときもそうですけれども、ああいう問題が起こったときに、私も香港のテレビ会社の取材を受けましたけども、そういう言語圏の方々のご協力もいただいて発信していくことが非常に重要だなと思っていますので、今後またああいう問題が起こったら、外国の取材にも積極的に応じて情報発信していきたいと思っております。
Q: 今のデマとかに関連するところもありますけれども、地震ではなく、例えば大雨についてもですね、例えば熊本県で大雨があった際などに、気象兵器であるとか、あるいはソーラーパネルが直接的な大雨をもたらした原因だ、みたいな言説がSNSでも流れているのを見かけます。こういったものに対する御所感であったり情報発信であったり、あるいは機動的にやるのが難しいところもあるかもしれませんけれども、そこに対するお考えをお伺いできればと思います。
A:気象については、一般の方々でもかなりのことはご存知なので、なかなかそういうデマ的なものは出ないですけれど、いろいろ意見がわかれるという意味では地球温暖化とかですね。地球温暖化が起こるのか起こらないのかという議論、それから起こるけれども、それが人為的な原因なのかそうじゃないのかとかという議論などいろいろあると思います。そういうところについては、例えば温暖化につきましては、国際的に、各国政府もちゃんと入った上で、慎重に議論するIPCCというのがありますので、そういうところの知見をもとに、情報発信していくとか、しっかり客観的にやっていきます。我々も日本の気候変動2025のように日本の国内に対する気候変動に対しても、しっかり情報を作って発信していきます。まずは、情報をちゃんと発信していくということが重要だと思っております。そして、そういうものを読むにあたって、必要な基礎知識なども、先ほどの地震火山などと似たような普及啓発というのは確かに必要だと思います。気象庁という立場上、国民の方々が疑問に思うようなことはしっかり答えていかなければいけないと思いますのでホームページなど足りない部分は逐次加えて、かつそうした情報へのアクセス性も逐次見直しをしていきたいと思っております。それから、最近ソーラーパネルとかが、防災に対して影響を与えているというご指摘もあろうかと思いますけど、そこは土砂災害の危険性と構造物の関係などであると思いますので、そのことは我々は知見が詳しくありませんので、砂防部門とかそういうところにおまかせすることになるかと思っております。
Q:冒頭の豪雨とか、突風の現地調査の話なのですけれども、最近は従来からそういうのが起きやすかったところではないところも含めて、ある特定の時期にあっちでもこっちでもたくさん起きるというのでそれを現地調査、毎回出されてすごいなと思うのですけれども、これ対応、今後も増えていく中で続けるのはなかなか大変なことだと思うのですが、さっきちょっとその見直しもとおっしゃいましたけど、何を見直していけばいいのか、あるいは追加でどういうことをしていけば、そういう調査をきちっと今後もしていけるのかお聞かせいただければ。
A:昨日私が現地に行った目的の、大きく2つあるうちの1つは当然、被害の状況や現象の様子を見るということでございますが、もう1つは、やはり現地調査を、どういう対応を行ったのか、何が課題であったのか、調査を行った静岡地方気象台の人間に聞くということも一つの目的でございました。今回の場合はご案内の通り、非常に範囲が広くて、その被害の場所も非常に多かったので、一つの地方気象台で対応するには、対応数がオーバーしていまして、近隣の気象台である、名古屋地方気象台、横浜地方気象台からも支援を行いました。そういう広域応援を迅速に行うためにはどういう工夫が必要かとか、今後の検討課題にしたいと思います。それから現地調査を行うために、いろいろツールを持っておりますけれども、そのツールが十分であったのか、使いづらいとこなかったのかどうか、そういう改善なども振り返りを行って見直していきたいと思っています。昨日現地には静岡地方気象台の人間や地域を管轄する東京管区気象台の人間も来ていましたけれども管区の役割ももっと見直さなければいけない部分あるかもしれません。非常事態にどういう指示を出せばいいのか、そういうところも内部的には見直して対応していきたいと思っております。静岡県自体は牧之原市もそうですけれども、暖気が山にぶつかって積雲が立ちやすい場所でございますので、突風被害がある場所ではありますが、今回は牧之原市、吉田町、焼津市、ちょっと離れて伊東市など、範囲が広く、数も多い状況でしたが、そういうときにパパッと動けるような体制作りということをしっかりとやっていきたいと思っております。
Q:もう一つ猛暑についてなのですけれど、先ほどおっしゃったように猛暑日の地点数は過去最高ですし、猛暑日を超えて40度を超えた日も結構あったのですけれど、もう真夏日が当たり前になっていて、猛暑日がすごくたくさんあると、もう一段階やっぱり前も出たかもしれませんけれど、酷暑日みたいなものがあった方が、警戒感が高まっていいのではないかという、声が今まで以上にあっちこっちで聞くようになってはいるのですけれど、こういう、もう一段階の呼び方についてはいかがでしょうか。
A:やっぱりさすがにこの夏の気候を受けまして、担当も検討を始めたようでございます。ただ我々が使う用語っていうのは、気象の世界の言葉遣いにある程度影響を与える仕事となりますので、用語があってもわざと使わないようにしているものもございます。例えばゲリラ豪雨という言葉は、これはおそらく新聞記者の方が使い始めたのではないかと思いますし、爆弾低気圧とかもありますがこうした言葉は気象庁では使っていません。言葉については使うのが適切かどうかということも含めて、いろいろと検討していきたいと思います。候補といえば、おっしゃる候補が多分一番投票しても数が多いと思うのですけれども、もう少しお時間いただいてですね、いつ結論が出るかわからないですけれども、検討はしておりますので、決まったらというか変わったら、報告申し上げます。
Q:暑さについて2つお伺いします。一つ目は8月で記録的な猛暑になって、渇水の被害が農業では結構深刻になったのですけれど、この農業の被害を踏まえた今年の夏の天候の状況と今年の今後の予報について、何かお考えがあればお願いします。
A:少雨に関する情報というものがメニューとしてありますので、それを適切に出していくことが重要と思います。また、少雨に関する情報は実況を見ながら出しますので、情報が出るときには少雨の状況やそれによる問題が生じている状況もあります。今年は、6月の段階から高気圧に覆われて、そうした状況が長く続くということが精度よく事前に予測できれば、早めに少雨に関する情報を出すこともできるようになるかもしれません。課題としては、1か月レベルの予測の情報を用いて、2週間から1か月の範囲でどういう情報を出していくかということをしっかりと検討していくことが大事かなと思っています。実際、10年20年前と比べて、1か月程度の予測精度は上がってきていると思いますので、それに合わせた情報のあり方というのをもうちょっと考えてもいいかなと思っております。少雨の情報を早めに出すということも、その辺の情報を良くしていくことの一つの課題かなと思っております。
Q:ありがとうございます。あともう一点今後の暑さの見通しなのですけども、真夏日となるところもある見込みと冒頭でおっしゃっていたのですけど、どの範囲で、どのいつぐらいまで暑さが続く見通しなのか、何かお考えがあればお願いします。
A:(大気海洋部)最新の予報によりますと、目先1週間程度は大陸から高気圧が張り出してきて、平年程度の気温に戻りますけれども、その後は、また高温傾向が戻ってきまして、9月いっぱいか、10月初めにかけて、これ通常の年でも10月初めに真夏日クラスの暑さになることはさほど珍しいことでもなく、今年はこの後も高温傾向の予想ですので、10月初めぐらいまでは、真夏日が起こるような気象条件が続くとご理解いただければと考えています。範囲は東日本や西日本、沖縄・奄美中心というところです。また、日中の最高気温として30℃を超える真夏日のところがある見込みというところで、時期的にさすがに猛暑日が起こるような、そこまでの極端な高温ではないと考えています。
(以上)