長官会見要旨(令和7年7月16日)
会見日時等
令和7年7月16日 14時00分~14時35分
於:気象庁記者会見室
発言要旨
冒頭、私から5点述べさせていただきます。
まず、1つ目は、トカラ列島近海の地震と、それから新燃岳の状況ですけれども、トカラ列島近海では6月21日から地震活動が継続しておりまして、これまでに震度1以上を観測した地震が2000回を超えております。7月3日には十島村の悪石島で最大震度6弱を観測する地震が発生しましたし、7月の5日、6日には最大震度5強を観測する地震が発生するなど、活発な地震活動が見られております。また、揺れの強かった地域では、家屋の倒壊や土砂災害などの危険性が高まっておりますので、当分の間は同程度、つまり震度6弱程度の地震に注意をお願いしたいと思います。また、霧島山の新燃岳でございますけれども、6月22日に噴火が発生しまして、噴火警戒レベルを2から3に引き上げました。噴火は断続的に継続しており、新燃岳火口からおおむね3キロの範囲では警戒を呼びかけております。そして本日、先ほど九州地方火山情報アドバイザリー会議が開かれまして議論が行われました。新燃岳につきましては、現時点では、概ね噴火シナリオに沿った活動となっていることを確認いたしました。気象庁といたしましては、会議でいただいたご助言をもとに、引き続き、地方公共団体や住民にとってわかりやすい情報提供について検討してまいりたいと思います。
次に2点目でございます。7月の気象等の注意喚起についてですけれども、これまでに西日本が梅雨明けをするなど、夏本番となってまいりました。これから台風の影響を受けやすい時期となってきますので、大雨や暴風等への備えが必要になってまいります。台風・大雨などに対して取るべき行動を自ら再点検し、身の回りの備えを確認するなど、防災意識を高めていただきたいと思っております。気象庁や各地の気象台からは、段階的な防災気象情報の発表等により警戒の呼びかけを行ってまいります。これらの情報を有効に利用していただいて、災害の防止・軽減をお願いしたいというふうに思っております。
3点目は7月、8月ですので、行楽シーズンへの注意喚起でございます。夏本番となってまいりますと、山や川など、屋外でレジャーを楽しむ方も多くなってくると思います。外出の際には、事前に気象情報を必ずご確認いただきたいと思います。また、現場に行った場合はですね、周りの空模様に注意することが重要だと思います。それから、山に登る方はですね、可能であれば、やはり天気図を描いてから登っていただきたいと思います。以前はですね、山に登る方は、天気図大体描けたのですけども、最近は描ける方がどれだけいらっしゃるかわかりませんけども、天気図を描くことで、天気の崩れ等々もわかるようになりますので、また人が示した天気図についても解釈力がついて参りますので、できれば天気図を描いてから登っていただきたいと思います。私自身も天気図、小学校のとき教えていただいたのは、山登りされる方から習いましたので、昔は山登りされる方が大体描けたのだと思いますけども、そういう意味で山の天候は急にも変わります。地上よりもずっと荒れますので、そういう意味でも、天気図などをしっかりと見て登っていただきたいと思います。それから夏になりますと、広い範囲での降水もありますけれども、積乱雲のように縦に発展する雲が多くなります。そうすると、自分のところで降ってなくても、ちょっと近くで降って自分のところで晴れているというような状況もございます。そうしますと、自分のいる河川のですね、小川や沢なんかでキャンプすることが多いと思うのですけども、急に水の量が増えていきます。私も動画など見たことありますけれども、順々に水位が上がるのではなくて、何か津波のように、上から水の塊が下りてくるというようなことで、水が来てから逃げるのは非常に難しいです。こうしたことから、山の中、なかなか周りを見渡すというのは難しいかもしれませんけれども、周りの状況、それからスマホなどで気象レーダーの画面を見れば近くで積乱雲が発達していることがわかりますので、沢などで水に流されないように、こうした情報にも注意をしていただければと思います。
さらに各地の火山では火山活動の活発化や噴気火山ガスの発生等により立ち入りを規制している場所がございます。まず、登る山が活火山かどうか確かめていただきその場合には、気象庁のホームページなどで噴火警戒レベル、今出ている噴火警戒レベルの数字、それから規制の範囲などをご確認いただきたいと思います。気象庁や地元の自治体が発表する最新の情報を活用して十分に注意の上で登山をしていただきたいと思います。
次に海のレジャーですけども、まずは熱中症にご注意いただくということ、それから高波やうねりにも注意をお願いいたします。海辺で泳ぐなり、それから岸壁で釣りをするなりあると思いますけれども、数分見ただけの波では高くないと感じる場合でも、特に台風などがある場合は、数分以上の周期で急に高い波がきます。頻度はすごく少ないのですけれども、うねりというものがあります。遠くからの波が、だんだん発達してきて非常に周期が長くて、高い波が突然やってくることがあります。岸壁で釣りをしている方が、うねりの波で被害に遭われるということがありますけども、そういった方も多分それまでは波が低いと感じる状況で、そこにおられたのだと思うのですけども、うねりにも十分ご注意いただきたいと思います。南海上に台風などございますと、天気予報でうねりに関する注意事項を呼びかけられると思いますので、そういうことも聞き流さず、しっかりと準備していただきたいと思います。また、天気図を見れば、南海上に台風もしくは熱帯低気圧があることがわかりますので、そういう点でもご活用いただきたいと思います。
それから地震・津波に関してですが、いつ大きな地震に見舞われるかわかりません。地震が海域で発生すると津波が起こる可能性もありますので、海の近くで強い揺れや、長時間のゆっくりした揺れを感じたとき、あるいは津波警報等を見聞きしたときには、直ちに海岸から離れ、より高いところへ避難していただくようお願いいたします。海水浴場などでは津波フラッグを導入しているところもございますので、津波フラッグが振られたり、掲げられたりした場合には、同様に、海岸から離れて高いところに避難をお願いいたします。
また、ひとつ、行楽に関して言えることは、行楽先では土地勘がないので注意が必要だと思います。アメリカにおいては洪水で多くの方が亡くなる痛ましい災害が発生しております。被害に遭われた方々には心よりお見舞い申し上げるところでございます。訪問先においては防災気象情報を取得するというのが、いつも住んでいる場所よりもずっと難しくなります。今回のテキサスの事例で痛感したところは、訪問先、行楽先で防災気象情報を得る難しさがあるとおもいますので、お出かけになるその先の情報入手をどうするのか、あらかじめよく調べておいていただきたいと思います。例えば、北海道など出かけられる方で、自分が訪れる街と天気予報の地方の名前の組み合わせがわからなくなることもあると思います。ですので、出かけられる先の天気予報が何地方に当たるのか、またどの地域の警報を聞けば自分がおられる場所の警報になるのかということなど、事前に確認していただければと思います。いずれにしましても、レジャーに出かけますと天気の急変だとか、地震とか津波の情報を受け取れるようにスマートフォンとかラジオを必ず携帯していただくようお願いしたいと思います。
それから4番目でございます。夏のイベントでございます。気象庁において夏休み期間のイベントとして、8月の6日と7日の2日間で夏休み子供見学デーを開催いたします。この虎ノ門庁舎を会場に、1階にある港区立みなと科学館と、合同でイベントを行います。夏休み中の子供たちや、親子で気象や地震・火山、気候の話などで楽しんでいただきたいと思います。体験展示コーナーなどもございます。事前に申し込みが必要なものもございますので、ホームページなどで確認していただきたいと思います。昭和基地との中継も予定しています。それから、熊本県から「くまモン」も来てくれることになりました。「はれるん」とともにステージショーをしてくれることになっております。詳細は気象庁ホームページご覧いただきたいと思います。あと、このようなイベントはここ本庁だけではなく、全国の気象台でも同様に行ってまいりますので、地元の気象台のホームページなどもご覧いただければと思います。
それからイベントの続きでございますけども、気象業務150周年の年に関連いたしまして、全国の気象台で、天気図の普及啓発キャンペーンを行ってまいりたいと思います。天気図の重要性は先ほども申し上げましたが、あとは一般的に防災の呼びかけをするときも、天気図上の例えば、今日の雨もそうですけども、高気圧のへりを南風が水蒸気を運んでくるといっても、「高気圧のへり」ということがわからないと意味が通じないと思います。また、「前線の南側の暖域内」とか言っても、天気図がわからないと多分伝わらないと思いますので、ぜひ、天気図の見方、書き方を覚えていただきたいと思います。お話した夏休みの子供見学デーにおいても、天気図に親しんでいただくイベントを設けますし、全国の気象台でも天気図の書き方教室なども開かれる予定でございますので、天気図の普及啓発のポータルサイトも作りますので、そういうところをご覧いただくなり、また天気図の教室の開催状況などは、各地の地元の気象台のホームページなどもご覧いただければと思います。
長くなって恐縮でが、最後に、5番目は地域における気象防災業務に関する検討会でございます。昨日15日に第2回検討会を開催しまして、各地の気象台が取り組む地域防災支援の充実改善に向けたご議論をいただきました。この中では都道府県を通じた市町村の支援、もしくはライフラインやインフラ関係等、社会基盤を担う様々な主体に対する支援、それから国の出先機関との連携強化などについて、多くの有益なご意見をいただいたということでございます。本件、本検討会における更なる議論に向けて近日中に、地域における気象防災業務の今後の方向性の中間取りまとめを出させていただきます。そして、その後も引き続き、検討会を進めていきたいと考えております。
私からは以上です。
質疑応答
Q:幹事社から2つ質問させていただきます。長官のご発言の中にも一部ありましたけれども、今年の梅雨について伺います。全国的に梅雨入りが遅かった一方で、梅雨明けはかなり早いという地域も多くなりました。歴代1位の早さとなった地域もありますけれども、こういう現象が起きた背景とですね、今後の注意点、渇水とか水不足等も含めて教えてください。
A:梅雨入りと梅雨明けの状況でございますけれども、今年はですね、沖縄地方や奄美地方よりも先に、九州南部が5月16日にかなり早い梅雨となりました。最後6月14日に東北北部まで梅雨入りした状況でございます。西日本から北日本では平年より遅い梅雨入りだった地方もありますが、特に顕著と言えるほどの遅さでもなかったと考えております。梅雨入りした後ですね、6月中旬以降偏西風が平年と比べてかなり北に偏って流れました。それに対応して6月末には、その前線の南側の太平洋高気圧に西日本が覆われて、梅雨前線が不明瞭となりました。平年の梅雨明け時期である7月後半にかけて、同じような状況で太平洋高気圧に覆われるという状況が続き、梅雨前線の影響を受ける可能性が小さいと予想されましたので、もう6月の段階でございましたが、6月27日に西日本の各地で、また7月4日には東海地方で梅雨明けしたとみられると判断いたしました。この梅雨明けが早かった要因としては、南アジアから東南アジアにかけての熱帯で積乱雲の活動が非常に活発になった影響で、偏西風が平年よりかなり北に位置を変えて流れたということが原因だと思っています。この偏西風の流れもしくは積乱雲の活動に関しましては、ひと夏の中でも強まったり弱まったり、また北に行ったりするということはあり得る変動でございますので、それ自体は特に異常なことではなく、また地球温暖化との直接的な関係はないと考えています。注意点についてですが、まずは太平洋高気圧に追われる日数が多くなっています。実際、熱中症に関する被害も多くなっていて、熱中症警戒アラートを出した回数ですけども、6月末時点で比較すると、昨年度は46回しかなかったのが、今年は97回になっていて、7月に入ってからも発表回数が多い状況が進んでいます。そういう意味で熱中症の搬送者数も増えていると聞いております。とにかく熱中症予防行動を例年以上にしっかりと取っていただきたいということでございます。また、梅雨が短かったという部分ありますので、雨が少ない状況もございます。まだ決定的な水不足っていう状況になってないと思いますけれども、この後、だんだん高気圧が西に張り出してきておりますので、この後、東日本も含めて晴れの日数が増えてくる場合もあると思います。そうしますと、少雨の影響も出てくると思いますので、我々としても、降水の状況について、注意深く見てまいりたいと思いますし、極端な状況であれば、少雨に関する情報を出して、注意を呼びかけていきたいと考えております。
Q:ありがとうございます。もう1つ別の話題なのですけれども、トカラ列島近海の地震の対応について伺います。島民の皆さんには心身の負担も大きくて、あともう一つの特徴として離れた地域の国民にとっても7月5日に災害が起きるといった予言の影響などもあってですね、社会的な関心も高まりました。その中で気象庁としては臨機応変に気象記者会見の場を設けるなど対応していただいたと思うのですけれども、原因とかですね、今後の見通しについてなかなかわからないと、見通せないというような回答も目立ちました。
こういった情報発信とか分析を踏まえてですね、国民の関心に十分応えられているとお考えでしょうか。また改善していく点があればどのようにしていきたいかを教えてください。
A:トカラ列島近海の活発な地震活動についてはもう2週間以上続いておりますので、島民の皆様の不安というのは非常に大きいものだと思っております。ストレスも相当たまっているのではないかと思っております。これまで気象庁からは、時点、時点で情報発表の基準になっていなくても、必要があれば、説明をしてまいりました。当然、皆様からは活動の原因と見通し、特に長くなっていますので、見通しについても聞かれましたけれども、今現在それを答えるための確固たる根拠については、まだ我々はつかんでおりませんので、「わからない」と率直に述べさせていただいているところでございます。これについては政府の見解として、地震本部の地震調査委員会においても、いろいろ調べて発表していただいていますけれども、そこでも結局同じ形で発表されております。非常に原因が難しい現象であることは確かでございますので、そこは大変申し訳ないのですけども、わからない部分が多いということでございます。
今後については、例えば地元の鹿児島大学がある島に地震計を新たに設置して状況を調べているというのを聞いております。また国土地理院は、GNSS観測も増加させるということで、他にもいろんな研究者がこれからいろいろ調べて成果が出てくると思います。そういう調査研究を注意深く我々も聞かせていただいて、その中から言えることがあれば申し上げていきたいと思っています。ただ、今毎日起こっている回数を見ていても、減る状況には見えませんので、何か落ち着いたということも言えませんし、引き続き、6弱程度の地震に注意していただくということしか今の段階では言えないということでございます。
Q:暑さの対策について1点伺いたいと思います。暑さによって田んぼでザリガニが大量に死んだというケースもあったのですけれども、それも踏まえて改めて農家の暑さの対策というのを教えてほしいのと、あと渇水についてもちょっと教えていただきたくて、九州の方では野菜が全滅するなどの被害も出ているので、ちょっとその辺の対策についても伺えればと思います。
A:農業の作業そのものについては、私も十分な知見がないのですが、まずは作業上気をつけていただきたいということを私から申し上げるとすると、やはり例年ですね、畑でお年寄りの方が1人で作業していて、倒れて、その発見が遅れるという状況を耳にします。
そういう意味では、もちろん一緒に付いて行かれる方がいないという状況も仕方ない部分あるのかもしれませんけども、特にお年を召した方は、長い間自分は大丈夫だったからという思いもあるのかもしれませんが、そこは、例えばご子息とかがですね、しっかり説明して、昔とは気候が違うよと、今は非常に暑くなるよということを、親御さんにしっかりと説明していただきたいなと思います。また、できれば、お互い畑行ってくるよと、近所で声を掛け合うとか、なかなかコミュニティ上、できるところと、できないところがあるかもしれませんけれども、そういうところを積極的に声かけながら、お互い危ない作業しているのだという自覚を持って、やっていただければなと思います。
それから渇水については私も全体を把握しているわけではないので何とも申し上げられませんが、今聞いている範囲では水源地においてはですね、それほど大きな水不足になっているような話は報道でも聞いておりませんが、実際の畑においては、いろいろ暑さなのか水不足なのかわからないですけども、被害が出ているという状況は伺っております。これからも雨が降らない状況が続く期間が多々あると思いますので、雨を降らせることは我々できませんけれども、降らない期間がどれぐらいあるかということについては、週間予報など少し長めの予報を見ながら、対策を立てていただければと思います。
Q:冒頭、台風が多い、それから大雨の多い季節というお話があったのですけれど、今年台風5号を見ていても日本の近くで、発生して急に北上して、北海道も縦断してしまうと、それとか今日の天気図を見ても、等圧線は確かに混んでいるのですけど、日本の真上にすごい低気圧があるわけじゃなくて、多分あんまり不慣れな人はあれを見て別にそんな大荒れにならないのではないかと思うような状況なのに、実際はすごい雨がザンザン降ると、なんかこういうちょっと普段と違うような感じもするのですけど、こういう年だからこその注意点というかですね、こういう中でわかりにくいとか、いつもと違うようなことがあるからこそ、こういうところに注意した方がいいのではないかということがあったら、お話いただければと思います。
A:私もここ2、3日、同じような話を周りとしていました。天気図を見ただけだと太平洋高気圧が張り出してきているので、何か夏の天気の良い日の天気図に見えたりするのですけれど、高気圧はいくつも効果ありますけど、1つは天気を良くするっていう効果ありますけども、もう1つは高気圧のへりを、高気圧の周りで大体時計と同じ方向に回っていますので、高気圧の西側でそのヘリを南から北に水蒸気を持ってくるという作用があります。なので、よくその梅雨前線の南に高気圧があって、等圧線上、南西から北東向かって、水蒸気を前線に供給して梅雨前線が非常に活発になるというようなことがございます。今回の場合はその後者の働きが非常に強く働いていると考えています。それで実は天気図だけではなくて、ひまわりの画像を見ていただけるとわかると思うのですけれども、ちょうどその日本の南ですね、マリアナとフィリピンの間ぐらいのところを見ていただくと非常に活発な対流活動が起こっていて、そういうところで対流活動がありますと水蒸気が空気中に供給されますよね。そこが上流になって先ほどの高気圧のへりの流れで、日本付近の東海地方のところにぶつかっているのですよね。ですので、高気圧の流れがあるだけじゃなくて、その上流で非常に活発な積乱雲の活動がありますので、そこで得られた湿った空気が日本の方に流れ込んでくるという状況になっています。そもそも日本の南側は亜熱帯の状態になっていて、積乱雲の活動が非常に活発になるときがあります。今は割と活発な状況です。そこで南から北に気流が流れると湿った空気が日本にやってきますので、そういうときには要注意であるということになります。これはちょっと天気図だけからわかりにくい部分ありますけども、天気予報で盛んに南から湿った空気がやってくるというようなことを繰り返しキャスターが言ってるようであれば、非常に大量の雨が降るという危険性がございますのでしっかり注意していただければと思います。
Q:ありがとうございます。あと熱中症警戒アラートの話で先ほど6月末時点で、昨年度46回、今年度97回という驚異的な回数だと思うのですけれど、去年も、46回の時ですら、なんていうか特別警戒アラートが出なくて、今年はその2倍のペースで熱中症警戒アラートは出ているのだけれど、特別警戒アラートにはならないということを考えると、なんかあんまり特別警戒アートって、やっぱり意味あるのかなという気もしてきてしまうのですが、これちょっと省庁の壁を越えてもし見解があれば、お願いします。
A:熱中症警戒アラートは暑さ指数が33の場所が予測される場合に出す、それで特別の方は35というなかなかでない数字が、その対象となる地域全部で出るような場合に出すもので、そういう状況ですので非常に発表の頻度が小さくなるのは当然だと思います。それは対象にしているのが、例えば外国の例で、熱波で多くの方々が亡くなるような状況を想定しているものです。そういうときには避難という形でクーラーの効いているところに避難できるような形で対策をとるというようなことを環境省は取っていると思いますので、本当にそういう特別な対応を取らなきゃいけない状況を想定しているのがこの情報です。ですので、そういう状況も今後はあり得るのかもしれませんので、そういう最悪の場合に備える仕組みっていうのは必要だと思います。一方、熱中症警戒アラートは33ですので、今回もかなり出ていますけども、実際本当に危ない状況で、熱中症でたくさん搬送される状況で出ますので、これは毎日本当に気をつけなきゃいけないものです。例えば、屋外でクラブ活動するかどうかとかですね。そういうときに非常に有効に働く情報でございますので、普段の生活で十分に活かしていただければと思います。今年の場合はとにかく6月という、日の高さが一番高いとき、例年だったら雲がかかっているから、気が付けませんけど6月は日差しが非常に強い時期ですので、そういうときに、晴れ間が広がっているということで、余計に危険な状態だったのだと思います。これからも今週末から東京の方でも晴れが続くような状況になるかもしれませんから、十分気をつけていただきたいと思います。昨日今日は涼しいからなんか安心して緊張がなくなっているかもしれませんが、改めて気をつけていただきたいと思います。
Q:7月5日を過ぎまして、先月もその前の月もあの言及されていましたけれども、あの予言なるものに、社会の一部が影響を受けたということについてその日付を過ぎた今、どんなふうに受け止めてらっしゃるでしょうか。
A:私自身は平常心で、普通の7月5日だったのですけれども、ただ非常に社会的に影響があったのは承知しております。それで改めて大事だなと思ったことが、5月にも申し上げたのですけれども、我々、気象庁の仕事もそうですが、自然現象を見るときには、まさに近代科学の考え方で、自然現象を見るときには、例えば観察するとか、実験するとか、いろいろ調査する、そういう自然現象に関するファクトをしっかりと捉えて、そしてその結果を数学とか論理的に正しいと言われている方法で分析して、初めてわかる、その方法をとってでさえ、わからないことも多いのですけれども、必ずそういう方法をとって調べましょうという考え方が近代科学の考え方で、ガリレオとかニュートンからずっと続いているものです。そういう考え方で多くのことが発見され、また今使っているスマホもそうですけど、科学技術によっていろんなものも生まれてきたということでございます。そういう時代であっても、自然現象を見るときに近代科学の考え方で、考えていただけない方が、いっぱいおられるのだなということは、ある意味で非常に心配になりました。というのは、また今後ですね、大きい地震が起こったときなどに、いろいろ科学に基づかない情報が出回ると思うのですけれども、そういう誤った情報を拡散したり、それを信じてしまって混乱するという危険性を感じたところです。実際今後も、我々日本の社会では南海トラフ地震などが発生するかもしれません。そういうときにちょっと混乱のもとになるかなという気がいたしました。それで私はですね、特に、小学校とか中学校で、理科を教えている先生方にぜひお願いしたいのは、その子供たちに理科を教えるときに、確かにリトマス紙の色がどうなるかということも大切ですが、それだけじゃなくて、自然現象を見るときには、ちゃんと実際観察したり実験したり、ちゃんと物を見て確かめて、それを、ちゃんとみんながいいねという方法で分析して、初めてわかるのだよということ、その近代科学の基礎的な部分、本当に根本的な部分っていうのを教えていただきたいと思います。そうすることによってウソの情報を見抜く力ができてくると思うのです。それは別に自然科学だけじゃなくて人文科学でも社会科学でも同じだと思うのですけども、やっぱり科学というのは、ウソを見抜く力だと思うので、そういう力をつけていただいて、今後いろんなことが起こっても、混乱しないような取り組みとして、ぜひ小学校、中学校の先生方にはお願いをしたいなというふうに思いました。
Q:関連で今後も科学的根拠のない、科学的事実に基づかない言説というものが出る可能性はやっぱりあるわけで、それを踏まえて、その当局としての情報提供の仕方とか発信の仕方、何か考えることってありますか。
A:我々自身は、しっかりと観測して、しっかりと分析してその結果のみ、お知らせしていますので、それはしっかりと守った上でやるということになりますけれども、おそらく今私が理科の先生方にお願いしたことは、我々自身もいろんな普及啓発という形で、気象や地震の仕組み、それから特に地震とか火山というのは地面の下で起こっていて、目に見えにくい部分があって、余計に不安を煽る部分があろうかと思いますので、そういう分野での本当に基本的な普及啓発というのも大事じゃないかなと思います。また、予知に関することについても、なかなか予知ができるかどうかっていうのは難しい問題で、今の科学技術ではできませんけども、そういうこともしっかり易しく説明をしていくということも大事かなというふうに思いました。
(以上)