長官会見要旨(令和7年5月21日)
会見日時等
令和7年5月21日 14時00分~14時35分
於:気象庁記者会見室
発言要旨
暑い季節になりましたので、クールビズで失礼いたします。
冒頭、私から、3点述べさせていただきます。
1点目は、大雨の備えについてです。
今月16日に九州南部で梅雨入りするなど、これから全国的に本格的な出水期を迎えます。例年7月ごろにかけて、梅雨の時期となり、梅雨末期にかけては、甚大な災害をもたらすような豪雨がこれまでも多く発生しています。
大雨による水や土砂に関する災害は大変恐ろしく、家の中やアンダーパスでの浸水では溺れてしまいますし、いつも優しく流れる川も大雨時には木や岩を含む強力な濁流となり、人や家までも流してしまいます。また、土砂災害は瞬時に家屋をつぶしてしまうこともあります。ご自身は大丈夫とは思わずに、平時からご自身のお住まいの地域などにどういう危険があるのかを「ハザードマップ」などで確認するとともに、どの様な避難行動が必要か、どのような行動が危険か、また、どういうタイミングで避難することが良いのか、ご自身やご家族の防災行動を時間で追ったタイムラインとして考えていただければと思います。避難というのは誰でも簡単にできると思うかもしれませんが、これは入念に考えてできるものですので、簡単に考えずに、しっかりと心の準備、事前の準備をお願いしたいと思います。
大雨で命を奪われないためには、この時期は天気予報に特に気をつけていただければと思います。もし天気予報において、大雨に関する情報が呼びかけられた場合などは、気象台から発表される気象情報や注意報及び警報に御留意いただくとともに、図情報として、土砂災害、浸水害、洪水災害それぞれの危険度の高まりを面的に確認できるキキクルというものがございますが、これもぜひご活用いただいて、しっかりと防災行動をとっていただくようお願いをしたいと思います。
また、気象庁では非常に大きな災害をもたらす線状降水帯の予測精度向上に向けた取り組みを今年度も進めております。まず観測については、二重偏波気象レーダーデータの有効活用を行うことによって、解析雨量と降水短時間予報の改善を行います。そして、気象庁の海洋気象観測船による水蒸気観測を日本海でも実施します。また、予報に関しては、その作業において、情報発表にいたる手順の見直しを行ったり、予報にどの資料を優先して用いるか、その優先度を変更するなどして、予報精度の向上に努めます。また、予報の基礎資料である数値予報モデルについては、改良版の運用を開始したところでございます。このように精度向上に努めている線状降水帯による大雨の可能性の半日程度前からの呼びかけや、実際に線状降水帯が発生する際に発表する「顕著な大雨に関する情報」等を、大雨災害を回避するためにご活用ください。
次に2点目は、面的気象情報についてです。
気象庁では、アメダスや震度の情報など、観測点ごとのデータをご活用いただいていましたけれども、これでは観測点と観測点の間の値がわかりません。それを格子状に隙間なく解析して、面的にした推計気象分布や推計震度分布など任意の場所の情報をご確認いただけるような取り組みを今進めております。この取り組みの一環として、先月から、デジタルアメダスアプリを全国で運用開始しました。このアプリは、面的気象情報から知りたい場所の気象データを表示できる基本的な機能のみ搭載したものでございます。この取り組みを通じて皆様にこの面的な気象情報の利便性を感じていただき、社会で一層活用されるよう、民間事業者とも連携して取り組んでいきたいと思います。
3点目です。6月1日は気象記念日です。これは明治8年、1875年、6月1日に、気象庁の前身となる東京気象台で観測を開始したことを記念するもので、今年は150回目の記念日となります。これについて記念式典の実施を予定しております。現在準備を進めているところで、詳細については来週公表予定です。
また、記念日に合わせまして、気象業務の150年間の歴史をまとめた「気象百五十年史」を刊行します。
気象業務は、150年間にわたって一貫して時代、時代の社会情勢を踏まえ、最新の技術を取り入れながら、観測の強化、予測精度の向上、情報の内容や伝え方の改善に取り組んできました。
「気象百五十年史」は、そのような歩みをとりまとめることで、次の50年、100年に向けた気象業務の更なる発展の基礎資料とすることを図っています。
冒頭には、気象業務全体の歴史を概観した「通史」を設け、一般の方にも通読いただけるように記述しています。6月2日に気象庁ホームページにて公表する予定ですので、ぜひご覧いただきたいと思います。
さらに、「気象業務はいま」も併せて刊行します。これは、毎年この記念日に合わせて、気象庁の最新の取組や、今後の展望などについてとりまとめて、気象業務について広く皆様に知っていただくために刊行しているものです。
今年は、気象業務150周年を特集として、歴史の概要や関連するイベントについて紹介しているほか、地域防災の取組、線状降水帯や台風等による災害への対策、気候変動対策、地震火山災害への対策などに関して、気象庁の取組の最新情報を紹介しています。
こちらも6月2日に気象庁ホームページにて公表する予定ですので、ぜひご覧ください。
最後に、先月の会見時の冒頭発言でも申しましたが、来週5月28日に、気象業務150周年記念切手が発行されます。この図柄でございますが、新旧の気象業務の対比や各種業務を採用しております。気象庁ホームページや日本郵便のホームページにもそれが掲載されていますので、ご関心のある方は、是非一度ご覧ください。
私からは以上です。
質疑応答
Q:今長官も触れてらっしゃいましたけれども、来月から出水期に入ります。情報発信の面からですね、気象庁としての備え、それから昨年の情報発信、先ほど線状降水帯の半日位程度呼びかけについての言及もありましたけれども、昨年出てきた課題も含めまして改めて伺います。
A:冒頭でもお話しましたけれども、今月16日に九州南部で梅雨入りするなど、これから全国的に本格的な出水期を迎えます。出水期に向けて各地の気象台では、情報発表に係るいろんな基準の点検や見直し、それから訓練やマニュアル等の更新を行って、着実に情報発信を行えるように備えているところでございます。また、各地の気象台では、できる限り出水期前に市町村長を訪ねまして、非常時の連絡が円滑に進むよう、関係作りに努めているところでございます。一方、ご質問にありました線状降水帯による大雨、昨年度の予測精度が想定を下回るものでございました。いろいろな観点、先ほど申し上げた通り、観測においても予報作業においても、それから基礎資料である数値予報モデルについても、それぞれ改良を重ねまして、少しずつではございますけども、今までできたものは、この出水期前に導入をしているところでございます。この出水期の成績を見ながら、また引き続き他の開発もしておりますので順次改善に努めてまいりたいと思っております。
Q:ありがとうございました。もう1問伺います。気象庁がですね、AIによる気象予測導入を検討していると伝えられております。検討の現状とですね、AI導入の意義について、何かお話できる範囲でお聞かせください。
A:近年、社会において最新のAI技術の利用が急速に進んでおりまして、効果は甚大であるということは認識されております。我々の気象業務というものはデータ社会でもございますので、一定の効果があるとは考えております。また、他の外国の気象機関でも、実験的にAIを活用した予報を発表しているところもございます。ということで、一通り気象業務にAIは貢献すると考えております。ただどういうものであるか、また、どの程度効果があるのか、また運用についてそれぞれどんなものか、やはりいろいろ調べないといけません。まずは、今年度はいろいろ調べたり、それをもとにどのように今後開発体制を強化していくかということを検討することになります。それから、AIは事前にデータの準備をいろいろしなければならないのですけれども、その準備などを行う体制というのは整えました。それを踏まえまして、今後より一層、現実化するそのためには開発も行わなきゃいけない。必要な体制をこれから検討していきたいと考えております。
Q:2点あるのですけれども、まず、気温の関係で今日先ほど岐阜県の飛騨市で35度を超えたようなのですけれども、改めてこの時期から暑いことに対する熱中症等への呼びかけをお願いします。
A:ここ連日気温の高い状況が続いております。今ご紹介ありました35℃というのは非常に高い気温でございますが、この時期は、ついこの間まで涼しかった時期でもございますので、体が暑さに慣れてない状況でございます。一方、天気図を見ますと、南の方から暖かく湿った空気が日本付近にどんどん入ってきております。ご存知の通り、熱中症とは気温もですが、湿度が非常に影響を及ぼします。日が出てなくても室内でも、湿度が高いところで運動などを行いますと非常に体にこたえるというところもございます。熱中症に関しましては、熱中症警戒アラートを出しておりますけれども、今日八重山地方で出ています。今後、各地でも出てくると思います。そういう意味で、体に無理がかかるような気象状況が今後数多く出てくると思いますので、そのような情報が出ているか、熱中症警戒アラートが出ているかどうか、また気温の予想、それから、もしできましたら天気図などをご覧いただいて、日本付近に暖湿気が入りやすい状況かどうかなど、天気予報の解説でおそらく聞いていれば出てくると思いますので、そういう熱中症の被害に遭わないように、気象情報に一段と関心を傾けていただければと思います。また、実際、暑い中で活動しなければならない方々もいらっしゃると思います。そういう対策についても、いろいろとアイデアが出てきていると伺っておりますので、対策もしっかりと取っていただければと思います。
Q:自然現象とデマに関する関係で伺います。最近、香港で「日本で近いうちに大地震が起こる」という情報があって、実際に定期便が減便になったりするような事例もあったようです。内閣府の方では日時、場所を特定しての予知はできないというようなことを、改めてXで発信したりした経緯がありますけれども、気象庁としてはこういった自然現象に関する誤情報に対しての発信とか訂正について、どのように取り組む予定でしょうか。
A:まず、この香港の話は私も報道で知っているところでございます。この点に関しましては、皆さんもご案内だと思いますけども、今地震予知についてですね、場所、それから時間、規模を指定して、地震が起こるとか、起こらないというようなことは、現在の科学では不可能でございます。ですので、そのような言及があれば、それはもう完全にデマであり、嘘でありますので、ご注意いただければと思います。地震の発生というのは目に見えない現象でございます。地震に限らず、人間というのは見えないものについて不安を覚えて、そういう不安に思うような対象について、何か断定的に述べることに、すがる傾向があろうかと思います。そこで、そのような情報を出すっていうことについては、非常に遺憾だと思います。我々は、そういう意味では地震を扱う省庁でもございますので、ホームページなどで地震の予知に関する可能性、不可能性についてもしっかりと述べていきたいと思いますし、このようにご質問を受けたら、はっきりとコメント申し上げていくということにしていきたいと思います。
Q:今の質問に関連して、そういった予知の情報はデマであるというところで、国内でも「予言されている日は休もうかな」などと言っているような声も聞かれますけれども、国民に対してどういうふうにデマに対して対応をとってほしいかなど呼びかけがあればお願いします。
A:繰り返しにはなりますけれども、日時とか場所・規模を指定して、地震が起こる、起こらないということは今の科学では不可能とされております。今言えることは、世界の中でも日本も含めた太平洋を囲むような地域とか、それからヒマラヤの南だとか、地中海の周辺だとか、割と限られたところで地震というのは起こります。日本がそういう地域にあるということは確実でございますので、一般的に地震については、いつ起こってもおかしくないということで、常に対策は考えておいていただきたいと思います。逆に、日時を指定して来る、来ないというような情報には、ぜひ、振り回されないでいただきたいと思います。一定の対処をしっかりして、いつ地震が起こっても対処できるようにしていただきつつ、不安に駆られて不合理な行動はとらないようにしていただきたいと強く申し上げたいと思います。そういう意味でホームページ、それからいろいろな機会を使って、この点ご関心が高いと今伺って再認識しましたので、そういうことは進めていきたいと思っております。
Q:熱中症警戒アラートの関連でお伺いします。昨日ですけれども熱中症警戒アラートが特に出ていないというような状況で、都内でも12人の方が搬送されたり、愛知では熱中症とみられる死者というのが出たりというような状況になっています。熱中症警戒アラートは環境省と気象庁さんと共同で発表されているものではありますが、こうしたことが起きたことに対する長官のご所感というところをお伺いしたいのと、あとこうしたことが起きてくると、熱中症への警戒が警戒アラートを基準として警戒するのではちょっと不十分なんじゃないかというようなところもあると思うのですが、今後我々は何を見て、例えば屋外の活動を控えようとか、そういった検討の基準にしていけばいいのかというところを改めて教えていただければと思います。
A:まず、熱中症警戒アラートの目的、それから取り扱いについて私から申し上げたいのは、そもそもこの情報ができる前、熱中症に関する情報はございませんでした。どうしてこの情報を作ったかといいますと、熱中症に関して、例えば、被害を直接救助するような救急車を扱っている方々で出動が増えたり、それから例えば、被害が出やすい老人ホームなどで熱中症の被害が増えたりするような状況に対して、暑さ指数というもので閾値を決めたものです。暑さ指数というのは、気温と湿度と輻射熱で求めており、指数に占める割合の7割程度が気温と湿度といった性質のものとなっています。この暑さ指数が33以上になりますと例えば救急車の出動が急に増えるといったことがあり、そのように閾値を決めています。ですけども、その手前でも熱中症は起こっております。ですので、熱中症警戒アラートについては、どちらかと言うと、熱中症が出たときにそれに対処しなければならない方々に、その日は何か被害が出る可能性が高いですよということをお伝えする情報です。その手前でも、例えば、体弱っている時や、非常に強い運動される方、それから季節的に暑さに慣れてないときなどは、被害が出ます。ですので、警戒アラートが出る手前の暑さ指数のときでも、暑さ指数の発表が環境省のホームページなどで行われますので、我々は気温の発表になりますけれども、そういう暑さ指数と気温の状況を見ていただいて、可能性が高まっていることはご認識いただきたいなと思います。また、天気予報などでは、その暑さ指数33に行かなくても、その手前の状況も何段階か色分けして発表しているようなところもございますので、そういう情報などをご覧いただいて、あとご自身の体の状況にも応じて対応していただければと思います。
Q:今回高齢者だけではなくて、若者も搬送されたりというようなことがあり、警戒アラートが出なくても、少し手前で何か活動に関しては控えていったりとかしていった方がいいのでしょうか。
A:繰り返しになりますけども、逆に熱中症警戒アラートが出るようなときにはですね、救急車の搬送がたくさん出るような、多くの方が熱中症になる状況でございます。その手前、暑さ指数が31とか30にいかない数字であっても、人によっては熱中症になるような状況でございますので、その辺のところは、暑さ指数などの情報をご覧になって、対策を立てていただければと思います。そういうときには天気予報で気温高くなりますという呼びかけがされておりますので、熱中症警戒アラートが出る手前であっても、例えば、学校の生徒さんを扱うような場合は、その時により暑さに強い生徒さん、弱い生徒さんがいるわけですから、そういう団体を扱う場合など、もっと手前の暑さ指数のところで対応取られていると思いますけども、そういう工夫が必要と思います。
Q:冒頭のご発言の中で、海洋気象観測船による水蒸気観測、これを日本海でも実施というお話がありました。これの狙いと、実施計画の概要などについてもし差し支えなかったら教えてください。
A:まず狙いでございますけれども、当然、暖湿気、水蒸気は南から入ってくるものでございますので、どちらかというと太平洋側とか東シナ海の辺りで観測を重点化するというのは合理的だと思いますけども、梅雨の末期になってまいりますと、太平洋高気圧が北上して、そのへりを回ってくる水蒸気が日本海に入って、山陰だとか、北陸、それから東北地方の南部などに入ってきます。昨年も酒田のあたりで線状降水帯ができたり、それから輪島の付近で線状降水帯ができたりしておりました。そういう意味で、日本海でも線状降水帯ができやすい状況が進んでおりましたので、水蒸気の動きを日本海で見る必要があろうということで船を回すことにいたしました。船の計画について担当から補足ありますか。
(大気海洋部)線状降水帯が発生しやすいと思われる出水期にかけては、気象庁の海洋気象観測船のうち、少なくとも1隻を東シナ海から気象の状況に応じて日本海側も含めて、いつでも出動できるような体制をとっておりまして、今年度は日本海側も含めてその観測海域を増やすというところで今計画を組んでございます。いつ頃、どの船をというところは気象の状況とそのときの船の配置により決める形となります。
Q:これに関連してもう一つ、今お話ありましたけれども、能登とか酒田を襲った昨年の豪雨だけでなくて、おしなべて北陸それから東北地方の日本海側などを含めて線状降水帯の適中率、それから捕捉率、いずれも極めて低い状況がある中で、そのあたりも重く見てらっしゃるのか。そのあたりをお聞かせください。
A:適中率の低さが場所によって偏るという認識はあまりございませんが、輪島の線状降水帯も、それから酒田は1日2回特別警報がありましたけど、昨年度は全般的に適中率が低い状況と認識しています。一昨年は非常に良かったのですけども、それは大きいスケールの現象が多くて、去年は悪く、小さいスケールの現象が多かったと分析されております。また、やはり日本海でも強い水蒸気が入ってくるということが実際起こっておりましたので、観測を強化するということでございます。
Q:偏り少ないとおっしゃられましたが、東北に関しては3年間の運用で、適中も補足もゼロですよ。それは偏りがないとは言えないのではないですか。
A:ご指摘の点も含めて、引き続き、詳しく調べていきたいと思います。
Q:梅雨入りに関してなのですけども、九州南部の方で梅雨入りが早まっている影響で、特に鹿児島県では作業ができなくて困っているとの声が現場ではあります。そのような状況を受けてその農家に対して梅雨の時期、どういうことが重要なのかということを呼びかけがあればお願いします。
A:私も農作業に関しては詳しくございませんが、おそらくご質問の主旨は雨の日が増えることによって農機具を畑に入れることが難しくなるなどの状況もあってのことかと思います。私が言えることは気象の話となりますが、梅雨入りが早まったことは早まりましたけども、入ってからずっと雨が続くかどうかまだわかりません。ですので、天気予報、週間予報等をご覧いただいて、晴れ間のある、日が出てくる日、そのような時期もしっかり把握していただいて作業の計画を、天気に合わせたものにしていただければと思います。ただ、どの程度降ったりとか、降らない日が続けば、何ができるようになるかというところは申し上げられませんが、それはおそらく農家の方がプロだと思いますので、しっかりと天気予報をご活用いただければというふうに思います。
Q:8月にかけて平年に比べて高温になる見通しっていうのがあると思うのですけれども、8月は特に農業にとっては稲の登熟期など重要な時期になります。特にその農家に対して夏に向けて注意するべき点、どのような対応をとればいいのかというところもあれば教えてください。
A:ここ2、3年、夏も非常に気温が高くて、ニュースなどでも、畑で作業中にお亡くなりになる農家の方がいらっしゃるという状況については、非常に残念に拝見しているところでございます。特に高齢の方がですね、1人で農作業を畑でしていて倒れても誰も気づかないということも、残念ですけども拝見させていただいております。今年も夏暑くなり、また太平洋高気圧の影響で暖湿気、湿った暖かい空気が日本列島に入りやすいということで熱中症にかかりやすい状況のある夏だと思います。そういう意味でも、いつも以上に、またこれまでは大丈夫ではあったかもしれませんが、今年の夏はわかりませんので、畑仕事をされる場合には対策を十分にとっていただき、できればおひとりで人目のないところで作業を続けるのは、私はあまり安全ではないなと思っておりますので、そこは現実的にいろいろ難しい問題あるかと思いますけども、できる限り、例えば農作業行ってくるというようなことを、家の方に言っていただくなど、気をつけていただければと思います。また、お年寄りの方は、「今まで大丈夫だったから大丈夫、大丈夫」っておっしゃる方も多いですけども、もしご子息の方でいろいろ天気予報を見ることができれば、例えば田舎のご両親に、今日は非常に暑くなるから気をつけてくれというような連絡をしていただくとかですね、ご親戚、ご家族で協力してお年寄りが農作業で亡くならないように、熱中症で亡くならないようにご配慮いただけるといいかなと思っております。
Q:気象業務150年を6月に迎えるということで、長官として改めて、この150年という歴史がどういったもの、業務の歴史はどういったもので、さらにこの150年の先、今後の向けた意気込みじゃないですけれども、お考えとかそういう所信といいますか、お伺いできればと思います。
A:150年史をまとめる作業は私自身が作業したわけではないですけれども、横から見ていて思ったのが、やはり、明治の最初から戦争が起こるまで、また戦後、それぞれの期間で非常に発達したのだなと感じています。まずは発足当時、1875年ですので、明治になってからたった8年しか経っておりませんから、私自身はもっと発足当時は原始的な仕事をしていたのかなというふうに想像していたのですけれども、実はもう外国では電信といいますか、通信の技術もできていて、そういうものを導入して後は温度計にしろ、気圧計にしろ、もう既にそれより前にヨーロッパなどでは完成しておりましたので、非常に正確な値を取り、そして驚くべきことに、各測候所からちゃんと電信で情報集めて、天気図に書いて、等圧線を書いて、天気を予測するというような、まずは発足当時非常に高度な状態で始めたのだなという感想がございました。それから厳しい中で、大正、それから戦時中に至るまで、ほとんどの今ある気象業務の基礎は出来上がっていたということで、先人の努力というのは非常にすごかったと思います。また戦時中は、残念ながらいろんな理由で天気の情報が国民に示されませんでしたけども、ただ気象台の人間は何もしていなかったわけではなくて、非常に厳しい中、実際沖縄などではかなりの職員が亡くなってしまい、4名だけとなったという状況もございました。そういう厳しい状況で、気象業務を継続させるために頑張っていただいたということで、我々の今の状況からすると想像を絶するような状況で気象業務を継続した、その先輩たちには非常に敬意を持ちたいと思っています。また戦後、カスリーン台風とか非常に災害が増えて、洞爺丸台風だとか伊勢湾台風、そんな中で気象業務の近代化を図ったということは非常に素晴らしいと思っています。気象レーダーを始め、災害対策基本法もそのころ伊勢湾台風を受けてできましたけども、富士山レーダーも含め、それから1970年代にかかりますけれども、アメダス、それから気象衛星、そういうものもどんどん発達して、今の近代的な電子通信技術を用いた近代的な気象業務というものがこの時期発展してきた、最先端の方法を取り入れて近代化した先輩たちは、非常に素晴らしいなと思います。また実は平成になってから非常に災害が多いというのは皆さんご存知だと思いますけども、そういう災害が多い中で、実際に避難に通じるような有効な情報は何かということを情報改善にも努めてまいりました。そういう努力があって今日の気象業務があると思っています。ただ我々どちらかというと、ルーチン業務が多い世界でございますので、「これまでの通り」という習性もあったりします。そういう意味でこの150年を機に、今までこれでいいやと思ってやってきたことも、改善すべきこと、変えるべきところは変えていって、次の100年の人たちに引き継いでいきたいと思っております。
(以上)