長官会見要旨(令和7年4月16日)

会見日時等

令和7年4月16日 14時00分~14時30分

於:気象庁記者会見室

発言要旨

 新年度になりまして、幹部を含む体制も新たになりまして、就任の際に申し上げた重点事項などを中心に、今年度もしっかりと業務を進めてまいりたいと思います。よろしくお願いいたします。
 冒頭私から4点述べさせていただきたいと思います。
 初めに奈良県奈良市で発生した落雷事故についてでございます。4月10日、奈良市で起きた落雷事故につきまして、事故に遭われました皆様に、お見舞い申し上げますとともに、一刻も早い回復をお祈り申し上げます。
 これから内陸を中心に雷が増えてくる季節となりますので、改めて屋外で活動する際の雷への備えをお願いしたいと思います。
 我々が発表する雷に関する情報でございますけども、特に屋外で活動をする、しないを、決める責任を持った方々にお願いしたいのですけれども、前日の夕方や当日の朝においては、天気予報をしっかりと見ていただきたいと思います。
 その際、雷や突風に関する注意が呼びかけられているようであれば、大気が不安定になる可能性が高いということですので、まずそこで危ないということを気づいていただければと思います。
 また、前日夕方、当日朝にそのような天気予報が述べられた場合には、活動する前に、雷注意報が地元の気象台から発表されているかどうか、これも必ず確認していただきたいと思います。
 活動中はですね、雷注意報が発表されている場合には活動に十分注意していただきたいと思いますけれども、雷が近くまで来ているかどうかを確かめるためには、降水ナウキャストの中に雷ナウキャストという情報がございます。気象庁のホームページで閲覧することができます。雷が今実際どこに落ちているか、今後一時間程度の間に、どの辺りで雷の活動が活発になるかということもわかります。このような情報をしっかりと見ていただいて、事故を防いでいただきたいと考えております。
 ちなみに4月10日の雷につきましては、前日の9日に全般気象情報が出ております。規模が大きい現象の場合には本庁から全般気象情報が出ます。雷と突風および降雹に関する全般気象情報第1号というのが前日16時45分に出ておりますし、また当該の地方もしくは府県については、当日朝に近畿地方気象情報もしくは奈良県気象情報という形で呼びかけられています。
 確実にそういう情報をご覧になりたい方は、ホームページにありますので、ご活用いただければと思います。
 2点目は、4月の気象に関することでございますけれども、やはり暑い日が増えてきております。ついこの間まで寒さに震えていたところですけれども、もう早速、20度を超える日々が続いております。昨今では、4月でも30度以上の真夏日高温となるときがあるなど、本格的な夏を迎える前の時期でも、多くの人が十分に暑さに慣れていない状況で気温が上昇することがあるため、この時期から熱中症に注意が必要でございます。そういう意味で、熱中症警戒アラートをご活用いただければと思います。なお、熱中症警戒アラートの提供開始は4月23日でございますけれども、その前であっても、顕著な高温が見込まれる場合には、必要に応じて報道発表なり、SNSで呼びかけを行いたいと思いますので、そういう情報にも気をつけていただければと思います。
 それから3点目が、気象防災アドバイザーについてでございます。気象防災アドバイザーは、地域の気象と防災に精通した上で、自治体にアドバイスを行うスペシャリストでございます。先日、4月1日に新たに110名に委嘱を行いまして、これで、全国で378名となりました。令和7年度もより多くの自治体のご要望に応えられますよう、気象予報士を対象として研修を行います。昨年度よりも大幅に拡充して実施する計画でございます。この研修の募集の準備が整い次第、改めてご案内いたしますので、地域防災に貢献していただける、意欲ある気象予報士の方に奮ってご応募いただきたいというふうに思っているところでございます。また今年度は、この制度の活用をより進めるために、全国で5つの自治体にご協力いただいて、その自治体にアドバイザーが行う支援策の有効性をご理解いただくためのプロジェクトを行います。それをまた全国の自治体にお知らせすることによって、アドバイザーがより広まっていくように、考えていきたいと思っております。5つの市町は、青森県の八戸市、宮城県の蔵王町、栃木県の上三川町、鳥取県の日野町、福岡県のみやま市と、この5つの市町村でこのような取り組みを行いたいというふうに考えております。
 最後に気象業務150周年の関連でございまして、2点をお知らせいたします。ひとつは記念切手の発行についてでございます。日本郵便と連携いたしまして、令和7年5月28日に気象業務150周年記念切手の発行を行います。新旧の対比や各種気象業務を切手の図柄に採用したもので、気象庁ホームページや日本郵便のホームページにて確認できますのでぜひご覧いただければと思います。もうひとつは、この庁舎内の2階にあります、気象科学館の新しい大型展示の公開についてでございます。ひとつは、「はれるんランド」、もうひとつは「大雨災害サバイバル」と、こういう名前の展示物でございます。まず、「はれるんランド」についてはですね、気象庁の業務や防災気象情報を、ゲームで遊びながら知っていただくというコンセプトの展示でございます。一方、「大雨災害サバイバル」は大雨災害の危険性が高まっている架空の町で、様々な防災情報を活用して、命を守る行動をとってもらう体験型の展示となっております。どちらも先日3月27日より運営開始しておりますので、ご家族連れや学生の皆様など、ぜひ体験いただいて、災害と防災情報の関係や活用の仕方について学んでいただければと思います。
 私からは以上でございます。

質疑応答

Q:幹事社からは2点あります。1点目が、昨年は本格的な暑さが始まる前の4月から全国的に気温が高くなりましたが、今後の暑さの見込みと備えについて教えてください。また、4月下旬から5月初旬の田植えを控える農家に対し、暑さ対策や作業時に注意することを教えてください。

A:まず1点目でございますけれども、今後の向こう1ヶ月の気温については、北日本や東日本では高いと、それから西日本では平年並み沖縄奄美では平年並みか低いと予想しております。また、その先の期間でございますけれども、夏にかけては、変化を繰り返しながら全国的に気温が高くなるという予報となっているところです。これに関する注意事項ですが、春は非常に寒暖差が大きいです。まだ日本付近に寒気がある中で、南から暖湿気が入ってきますので、寒気が入ったり、暖湿気が入ったりしますので、寒暖差が大きく、多くの人が十分に暑さに慣れていない時期です。急な暑さとなるときには熱中症に注意していただければと思います。また、屋外で農作業にあたられる際には、できるだけ暑い時間帯や強い日差しを避けていただくとともに、こまめな休憩と水分補給、帽子や送風機などのアイテムを活用するといった積極的な暑さ対策をお願いいたします。また、体調が悪いときには無理をしないこと、2人以上で時間を決めて声を掛け合ったり、異常がないか確認し合ったりするように注意していただければと思います。

Q:気象防災アドバイザーの件なのですけれども、5つの自治体を挙げられましたが、この5つの自治体を選んだまず理由を教えていただきたいのと、あとはいつからですね、こういった実験的なこの取り組みを行うのか。もう少し内容を具体的に教えてください。

A:まずこの自治体については、募集を行い、その中から選んだわけでございますが、地域を分散させるという観点、それからその地域に気象防災アドバイザーがいなければいけませんので、そういう条件を掛け合わせて、この5つの市町村になったということでございます。具体的にどういうアドバイザーの仕事を見ていただくのかということでございますけれども、まず八戸市の場合は、地域住民の方を対象とした研修会を実施するというアドバイザーの役割を見ていただくというものです。それから蔵王町ではですね、地域住民向けのワークショップ、これはロールプレイングのようなことでございますけども、そういうところで災害リスクの読み解き方を学んでいただく、そういうことを教えるという仕事を見ていただくということ。それから栃木県上三川町の例では、職員向けの勉強会の講師、その自治体の職員に、気象に関する防災教育を行うアドバイザーの仕事を見ていただく。それから日野町では、自治体の防災マニュアルの作成支援や職員向けの研修会の講師というアドバイザーの仕事を見ていただくということ。それから福岡県のみやま市に関しましては、職員向けの訓練のシナリオの作成支援というアドバイザーの仕事を見ていただく、このような内容のプロジェクトとなります。アドバイザーのいろんな仕事の一部を実際やってみるという取り組みでございます。

Q:それはいつから行うのかというのと、狙いとしては、こういった制度はあって、貴重な役割を担っているかと思うのですけれども、なかなかその自治体側がどのようにアドバイザーという制度使っていいかわからないというところがあって、それをやっぱり使ってもらうためには、メリットを自治体の方にわかってもらいたいという、そういう皆さん側の仕掛けがあるのでしょうか。

A:もちろんそういう狙いで、実際見ていただかないと、いくら口頭で説明してもわかりませんので、アドバイザーの意味、その市町村においてどういう役割が必要なのだということを実感していただくための取り組みとして、具体的にこういう取り組みを行うものです。

Q:その期間はいつからいつで、それぞれバラバラなのか例えば1年間とか半年なのかとか、そのあたりはわかりますか。

A:(総務部)実施期間は、昨年度末から開始し、今年度いっぱいをかけて5つの自治体で実施していこうと考えております。年度末には取りまとめを公表するということを計画しております。

Q:関連してお伺いしたいのですけれど、お話の中で気象防災アドバイザーですね、今年度は大幅に増やしたいということをおっしゃったかと思うのですけども、例えば目標としてどのぐらいの規模にしたいとかっていうものはあるのでしょうか。

A:(総務部)大幅拡充なのですけれども、昨年度でしたら80名程度の規模で育成を行っていたのですけれども、今年度はその3倍、240名を育成するということで計画してございます。将来的な目標につきましては、まだ検討中という段階で、今年度につきましては、アドバイザーの総数580名といったところを一つの目標としていく方向で進めています。

Q:暑さの関係で2点あるのですけれども、先ほど農家さんのお話は出ましたが、特に注意してほしい年代であったり、ゴールデンウィークもあるので注意してほしい場面があれば、お話いただければと思います。

A:もちろん暑さに弱いという意味では、お年を召した方が熱中症の被害に遭うということは非常に多いので、より一層気をつけていただきたいですが、やはり暑さに接する機会が多いという意味では、学校の生徒さんたちとか、学校の生徒さんたちも自分では外に出ていいかどうかっていうのは決められないと思いますので、指導者の方々には十分注意していただきたいと思います。あとは、当然その道路とか建築現場で働くような方々も過酷な状況になっております。現場では最近はその作業服においても熱中症を考えられたものが出ていると聞いておりまして、かつ現場監督の方も熱中症に関しては非常に注意をされているとは聞いておりますけれども、気象情報をご覧になって、確実に対策をとっていただければと思っているところです。

Q:あともう1点なのですけれども、この4月下旬からゴールデンウィーク頃にかけて暑くなるというのは、最近のトレンドかと思うのですけれども、この背景というか温暖化ということなのかもしれないのですけれども、もう少し詳しく教えてください。

A:昔からゴールデンウィークというのは季節の変わり目で、それまで涼しかった状況が急に暑くなったりする、非常に体的にはきつい時期になります。また、行楽に出ていたり、屋外で活動する機会も多いということでございますので、季節の変わり目と、屋外での活動の多さで見れば、環境が変わりますので、より一層気をつけていただきたいと思っております。また、屋内においても、これまで暖房を入れていたような状況から、今度冷房が必要な時期にもなってまいります。暑くなっていざというときに、空調機使えなかったりすることもあると思いますので、そういう暑さに対する、屋内でも屋外でも、準備をしっかりしていただければと思っています。

Q:2つあるのですけれども、1つは先ほど雷の関係で注意の呼びかけ方として、今割とその定着しているのが、空が急に真っ黒になって、冷たい風が吹いて、遠くで雷鳴が聞こえるような形になったら注意しましょうと言うのですけれども、実際はそんな暗くならないうちに、もう急に近くに雷が落ちるとか、冷たい風なんか全然感じないときに被害が起きたりということが起きてきていると思うのですね。にもかかわらず、ずっと紋切型の注意、普及というのが一般的になっていることについて、長官のお考え、その際の伝え方ということでお考えがあれば、伺いたいと思います。

A:日常行う呼びかけについては必要があれば、適宜見直しをしていく必要があると思いますけれども、やはり発達した積乱雲が近づいてきた場合はですね、上昇流とともに激しい下降気流が起きますので、冷たい風を感じたり、暗くなったときには注意していただくということは呼びかけるべきだと思います。ただ、おっしゃる通り、また昨今は先ほど申し上げた通り、気象レーダーの画像の中で、雷の地点も表示されますが、私も去年の夏、都内で雷が多く発生した際に、見ておりますと積乱雲の雨域が来る前のところにも、雷は落ちますので、そういう意味では、雨が降ってからとか、音が聞こえてからでなくとも、十分雷に遭うことはあることについてご注意いただきたいと思います。また、雷については、皆さんの中で、自分は大丈夫という正常化の原理からの気持ちや、雷を軽視する文化もあるのではないかと思います。しかし、それは間違いであって、雷は非常に恐ろしい、大電流・大電圧で落ちてくるもので非常に激しい現象です。しっかりと怖がっていただいて、先ほど申し上げた通り、雷注意報や雷ナウキャストで状況はわかりますので、正しく恐れて避難していただきたいと思います。こんなものは大丈夫と思うようなことはやめていただきまして、しっかり考え方を変えていただければなと思うところです。

Q:2つ目なのですけれど、アメリカの気象関係のデータを集めているところとか、気候とか環境系のところで職員がかなり大幅にカットされて、実際業務の一部観測の頻度が減ったり、データの提供が滞ったりということもあるように聞いているのですけども、これはどんどんひどくなる一方の中で、実際にお互いのデータを使うような場面などで、支障が出始めているのかどうか、あるいは、もし出てなくても今後、これ世界全体での共有データをどう使うかということにも影響してくると思うのでそういう負の影響を最低限に抑えるため、日本として何ができるのか、お考えがあればお聞かせください。

A:今、ニュースなどを見ていまして、今言われたような人員削減等が行われているということは承知しておりますが、ただ、我々と関係するような気象機関の部分について、実際にそのようなことになっているとか、それから国際会議に出てこないとかという状況はまだ聞いておりません。ただ、その恐れもあるのかもしれません。我々気象に関しては、国際的な取り組み、WMO世界気象機関というのがございます。その中で協力しながら、国境を越えたいろんな大気の観測なり、予測なり、いろんな情報の交換ということを行っているわけで、それが止まらないようにですね、そういう国際機関の会議でも、しっかりと御意見を申し上げるとともに、各国の代表と会ったときには協力して、その活動が止まらないように訴えていきたいと思います。私自身も、先日長官の交代に伴う必要な手続きを経て、世界気象機関の執行理事になりました。おそらく予定ですと、6月に執行理事会がジュネーブで行われると聞いておりますので、そういう機会に、各国の代表、それからWMOの事務局職員等々とディスカッションしながら、そういう国際的な気象データの交換、気象に関する研究、そういうものが止まらないようにしっかりと訴えて取り組んでいきたいと考えております。

Q:雷のことでお伺いします。いろいろな情報がある中で、雷注意報というもの自体がかなり軽視されるような傾向にあるのではないかと思っています。改めて、まず長官はその雷注意報が軽視されていることについてどのようにご覧になっているかというのをお伺いしたいのと、改めて雷注意報が出ているときにはどのようにすべきなのかということについて教えていただければと思います。

A:雷注意報が軽視される、そもそも雷自体の恐ろしさを軽視する傾向もあると思うのですけれども、もう一つは、雷は狭い範囲で起こる現象であるのに対して、雷注意報が呼びかけられるのは、市町村単位の広さがあって、空振り感というものもあるのかもしれません。ただ、不安定な状況は市町村単位というよりも、大きいスケールですが、その中でどこにカミナリ雲がかかるかは非常に難しい問題ですので、雷注意報をもっと狭い範囲で出すということは、今の段階では難しいと思います。ただ、逆に言うと、雷注意報が出ている間は、先ほど申し上げたような降水ナウキャストだとか雷ナウキャストを見ていただいて、実際雷がどこで落ちているかという具体的な場所はそれでわかりますし、1時間先であればかなりの精度があると思いますのでそれぐらいの単位で実際の場所を確認していただければと思います。

(以上)