大気二酸化炭素・大気メタンの観測

分析計

大気二酸化炭素および大気メタン濃度の観測には、波長スキャンキャビティリングダウン(WS-CRDS)方式の分析計(Picarro社製G-2301)を用いています(図1参照)。 気象庁では、綾里と南鳥島にて観測を実施しています。

二酸化炭素/メタン分析計

図1 二酸化炭素/メタン分析計

大気試料の採取及び分析

各観測地点では、地上約20mの高さにある取入口(一酸化二窒素、及び一酸化炭素と共用)から採取した大気試料を、一定の流量を保ちながら分析部へ導入しています。大気試料の二酸化炭素およびメタン濃度を測定する合間に、濃度の異なる4本の観測用標準ガスの濃度を測定しています。

濃度の決定方法

観測用標準ガスは、気象庁本庁にある較正装置によりあらかじめ濃度が正確に決められています(「二酸化炭素観測に関する較正」「メタン観測に関する較正」参照)。 これらの既知濃度とそれに対応した出力値から検量線を求め、大気試料の出力値を濃度に換算します。 分析計の応答が時間変化することによる誤差を最小にするため、1つの大気試料出力値について、観測時刻前後の検量線からそれぞれ濃度値を計算し、それらを時間内挿して濃度値を得ています。

さらに、時間経過とともにみられる観測用標準ガスのボンベ内でのガス濃度の変化(濃度ドリフト)について、使用前後に気象庁本庁で実施する較正によって確認し、濃度ドリフトが検出された場合にはドリフト量に応じて補正を行い、最終的な濃度値を決定します。

このようにして求めた気象庁の各観測地点における濃度値は、気象庁の標準ガスが世界気象機関(WMO)標準にトレーサブルであるため、同様にWMO標準にトレーサブルな各国の観測地点の濃度値と直接比較することができます。

バックグランドデータの選別及び統計値の算出

観測された濃度値には、数時間の間でも大きな変動がみられることがあります。これは、気象状況によって生じる、人間活動や植物活動などの影響がもたらす地表付近(接地境界層内)の局地的な変動と考えられます。境界層内の広い水平空間を代表する平均的な濃度と考えることのできる大気のバックグランドデータを求めるためには、局地的な濃度変動を取り除いたデータを選び出す必要があります。局地的影響を受けた空気塊は、その空間規模が小さいため、観測値の時間的変動が大きいと考えられます。信頼性の高いバックグランドデータを求めるためには、この影響を受けていないデータを選別しなければなりません。一方で、できるだけ多くのデータを選び出すことも望まれます。これらのことから気象庁では、以下の手順で二酸化炭素・メタン濃度のバックグランドデータの選別を実施して、統計値を算出しています。

  • 測器の点検、故障時などを除いた、全ての観測値を1時間平均して時別値を求める。
  • 時別値について、算出に用いる観測値が求められうる個数の半数未満の場合は棄却する。
  • 時別値について、算出時の標準偏差がある値(Aとする)を超えた場合は棄却する。
  • 時別値について、その前後の時別値との差が両方ともある値(Bとする)を超えた場合は棄却する。
  • 上記の手順により残った時別値を、バックグランドデータとする。
  • 日別値は、バックグランドデータとして選択された時別値を日平均する。
  • 月別値は、バックグランドデータとして選択された時別値を月平均する。
  • 年平均濃度は月別値の年平均値である。

値A及び値Bは、観測地点ごとに、過去の観測値を検証して局地的な影響を受けているとみられる濃度データを取り除きながら、バックグランドデータを数多く残すことができるように決めています。二酸化炭素およびメタンにおけるデータ選別のしきい値は表1、2のとおりです。

表1 二酸化炭素のバックグランドデータ選別しきい値

観測地点 期間 値A 値B
綾里 1987年1月 - 0.6 ppm 0.6 ppm
南鳥島 1993年3月 - 0.3 ppm 0.3 ppm
与那国島 1997年1月 - 2024年3月 0.6 ppm 0.3 ppm

表2 メタンのバックグランドデータ選別しきい値

観測地点 期間 値A 値B
綾里 1996年2月 - 2008年12月 7 ppb 6 ppb
2009年1月 - 2024年3月 6 ppb 6 ppb
2024年4月 - 4 ppb 6 ppb
南鳥島 1994年1月 - 2009年12月 6 ppb 6 ppb
2010年1月 - 2024年3月 4 ppb 6 ppb
2024年4月 - 3 ppb 6 ppb
与那国島 1998年1月 - 2007年12月 7 ppb 6 ppb
2008年1月 - 2024年3月 6 ppb 6 ppb

観測結果におけるバックグランドデータの取得状況については「温室効果ガス等のバックグランドデータ」をご参照ください。

観測データが蓄積された後、しきい値を変更する場合があります。

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