第4部 最近の気象・地震・火山・地球環境の状況

1章 気象災害、台風など

1節 平成28年(2016年)のまとめ

 平成28年は、気象庁の統計開始(1951年)以来初めて、北海道へ3つの台風が上陸し、また、東北太平洋側へも台風が上陸しました。これらの影響で、北日本では記録的な大雨となりました。その後、9月には台風第16号が強い勢力で鹿児島県大隅半島に上陸して東に進んだ影響で東日本から西日本にかけて大雨や暴風となりました。

 また、6月上旬から7月中旬にかけて、梅雨前線が沖縄・奄美から本州付近に停滞した影響で、西日本を中心に大雨になりました。

平成28年(2016年)に発生した主な気象災害

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2節 平成28年(2016年)の主な気象災害

・平成28年台風第7号・第9号・第10号・第11号及び前線による8月16日から8月31日にかけての大雨及び暴風

 平成28年8月16日から8月31日にかけて、台風第7号、第11号、第9号、第10号が相次いで上陸し、東日本から北日本を中心に大雨や暴風となりました。

 8月16日から8月17日にかけては、台風第7号が関東地方から東北地方の太平洋沿岸を北へ進み、北海道襟裳岬付近に上陸し、オホーツク海で温帯低気圧に変わりました。

 8月21日には、台風第11号が三陸沖を北へ進み、北海道釧路市付近に上陸しました。また、8月21日から8月23日にかけては、台風第9号が伊豆諸島近海を北へ進み、千葉県館山市付近に上陸した後、北海道日高地方に再上陸しました。(北海道に年間2個、再上陸も含めて3個の台風が上陸したのは1951年の統計開始以来、ともに初めてです。)

 8月21日に四国の南海上で発生した台風第10号は、8月30日に岩手県大船渡市付近に上陸し、8月31日に日本海で温帯低気圧に変わりました。(東北太平洋側への台風上陸は1951年の統計開始以来、初めてです。)また、8月17日から8月23日にかけて北日本に、8月26日から8月27日にかけては本州付近に前線が停滞しました。また、8月22日には千葉県及び東北地方で、竜巻等の突風が発生しました。

 これらの影響で、東日本から北日本を中心に大雨や暴風となり、河川の氾濫、浸水害、土砂災害等が発生し、甚大な被害となりました。

 特に、8月20日頃から8月23日頃にかけての台風第11号、第9号及び前線等による大雨では北海道や神奈川県で死者計2名、8月26日頃から8月31日頃にかけての台風第10号、前線及び低気圧等による大雨では北海道や岩手県で死者計22名の人的被害が生じたほか、住家被害、ライフライン、公共施設、農地等への被害及び交通障害が発生しました。(※)

北海道南富良野町落合付近(国道38号等)の被害(北海道開発局協力のもと気象台が撮影)

※大雨や暴風による被害状況は以下のとりまとめによる。

・内閣府

 平成28年台風第7号による被害状況等について(平成28年11月16日現在)

 平成28年台風第11号及び第9号による被害状況等について(平成28年11月16日現在)

 平成28年台風10号による被害状況等について(平成28年11月16日現在)

・国土交通省

 台風第7号による被害状況等について(平成28年11月16日現在)

 8月20日から続く大雨等による被害状況等について(平成28年11月16日現在)

 台風第10号による被害状況等について(平成28年11月16日現在)

平成28年8月16日から8月31日までの総降水量分布図

・平成28年台風第16号及び前線による9月17日から9月20日にかけての大雨及び暴風

 平成28年台風第16号は、9月17日に沖縄県与那国島付近を北上した後に東シナ海を北東へ進み、9月20日0時過ぎに強い勢力で鹿児島県大隅半島に上陸しました。その後、台風は四国沖を北東へ進み、9月20日13時半頃に和歌山県田辺市付近に再上陸し、更に17時過ぎに愛知県常滑市付近に再上陸した後、21時に東海道沖で温帯低気圧となりました。

 台風第16号や台風から変わった温帯低気圧、日本付近に停滞した前線の影響で、西日本の太平洋側を中心に猛烈な雨を観測し、9月17日から9月20日にかけての降水量は多い所で600ミリを超えるなど、南西諸島から東日本にかけての広い範囲で大雨となったほか、南西諸島や九州南部を中心に暴風となりました。また、9月19日には宮崎県で、9月20日には三重県で、竜巻等の突風が発生しました。

 大雨により土砂災害や浸水害等が発生して甚大な被害となり、住家被害、ライフライン、公共施設、農地等への被害及び交通障害が発生しました。(※)

鹿児島県垂水市牛根地区の国道220号線、磯脇川の磯脇橋が流出(提供:垂水市)

※大雨や暴風による被害状況は以下のとりまとめによる。

・内閣府

 平成28年(2016年)台風第16号による被害状況等について(平成28年11月16日現在)

・国土交通省

 台風第16号による被害状況等について(平成28年11月16日現在)

平成28年9月17日から20日までの総降水量分布図

平成28年9月17日から9月20日までの最大1時間降水量分布図

3節 平成28年(2016年)の台風

 平成28年(2016年)の台風の発生数は平年並の26個(平年25.6個)でした。台風第1号の発生は7月3日で、台風の統計を開始した1951年以降、1998年の7月9日に次いで2番目に遅くなりましたが、7月以降は平年よりも多くの台風が発生し、年間の発生数としては平年並となりました。

 日本への接近数は平年並の11個(平年11.4個)でした。上陸数は、第7号、第8号、第10号、第11号、第12号、第16号の6個(平年値2.7個)で、統計開始以降、2004年の10個に次いで1990年、1993年と並んで2番目に多くなりました。

平成28年(2016年)に発生した台風の経路

平成28年(2016年)に発生した台風の一覧

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2章 天候、異常気象など

1節 日本の天候

 平成28年(2016年)は、北日本の秋を除き、全国的に高温傾向が続きました。年平均気温は東・西日本、沖縄・奄美でかなり高く、北日本で高くなりました。東日本では、平年差+1.0℃と1946年の統計開始以降で2004年と並び、最も高くなりました。

 各地域それぞれに降水量がかなり多くなる季節があり、西日本と沖縄・奄美では、2015/16年冬に低気圧の影響を受けやすく、降水量がかなり多くなりました。北日本では、8月に台風第7号、第11号、第9号、第10号が相次いで上陸し、大雨や暴風になったことなどから、夏の降水量がかなり多くなりました。西日本では、秋に低気圧や前線、台風の影響を受け、降水量がかなり多くなりました。これらの影響で、年降水量は、北日本太平洋側、西日本、沖縄・奄美でかなり多く、北日本日本海側で多くなりました。東日本は平年並でした。

 日照時間は、春はほぼ全国的に多くなりましたが、秋は西日本中心にほぼ全国的に少なくなりました。年間日照時間は、西日本では少なくなりましたが、北日本と東日本日本海側では多くなりました。東日本太平洋側と沖縄・奄美は平年並でした。


平成28年(2016年)の各季節の特徴は以下のとおりです。

① 冬(平成27年12月~平成28年2月)は、強い寒気の南下は一時的で、冬型の気圧配置は長続きしなかったため、全国的に気温が高く暖冬となりました。特に、東・西日本の冬の平均気温はかなり高くなりました。日本海側の冬の降雪量は、ほぼ全国的に少なくなりましたが、1月下旬の強い寒気の影響で、九州北部地方ではかなり多くなりました。低気圧や前線の影響で、全国的に降水量が多く、西日本と沖縄・奄美ではかなり多くなりました。特に沖縄・奄美では、冬の降水量が平年比188%となり、1947年の統計開始以降で最も多くなりました。

② 春(3~5月)は、日本の南と日本の東で高気圧が強く、南から暖かい空気が流れ込んだため、春の平均気温は全国的にかなり高くなりました。春の降水量は、4月に低気圧や前線の影響を受けやすかった西日本太平洋側と沖縄・奄美では多くなりました。一方、3月と5月に移動性高気圧に覆われて晴れる日が多かった北日本太平洋側では少なく、東日本日本海側ではかなり少なくなりました。また、春の日照時間は、東日本日本海側ではかなり多く、北・西日本で多くなりました。

③ 夏(6~8月)は、日本付近は暖かい空気に覆われやすく、全国的に夏の平均気温は高くなりました。特に、沖縄・奄美では、日照時間が多く強い日射を受けて、夏の平均気温は平年差+1.1℃と1946年の統計開始以降、最も高くなりました。北日本では、6月は低気圧の影響を受けやすく、8月は台風が相次いで接近・上陸したほか前線や湿った気流の影響を受けやすかったことから、夏の降水量がかなり多くなりました。特に、北日本太平洋側では平年比163%となり、1946年の統計開始以降最も多くなりました。台風は、第7号、第11号、第9号が相次いで北海道に上陸し、第10号が岩手県に上陸しました。台風の影響で、東日本から北日本を中心に、大雨や暴風となり、特に北海道と岩手県では記録的な大雨となり、河川の氾濫、浸水害、土砂災害などが発生しました。夏をとおして、平均的には日本付近は高気圧に覆われやすかったため、夏の日照時間は、ほぼ全国的に多くなりました。

④ 秋(9~11月)は、西日本と沖縄・奄美では寒気の影響が弱く、南から暖かい空気が流れ込んだため、秋の平均気温はかなり高くなりました。沖縄・奄美では平年差+1.3℃、西日本では平年差+1.2℃となり、統計を開始した1946年以降で最も高い記録となりました。一方、北日本では9月は高温となりましたが、10月からは断続的に大陸からの強い寒気が流れ込んだため、秋の平均気温は2002年以来14年ぶりに低くなりました。全国的に低気圧や前線の影響で、秋の日照時間が少なく、特に、西日本日本海側では平年比74%、西日本太平洋側では平年比82%となり、いずれも1946年の統計開始以降で最も少なくなりました。西日本では、台風の影響もあり、秋の降水量はかなり多く、西日本日本海側では平年比173%となり、1946年の統計開始年以降で最も多くなりました。

地域平均気温平年差の経過

2節 世界の主な異常気象

平成28年(2016年)の世界の異常気象と気象災害

 平成28年(2016年)は、世界の広い範囲で異常高温となる月が多く、特に低緯度域ではほぼ年間を通じて異常高温が持続しました(図中④⑤⑧⑫⑮⑯⑰⑱⑲㉑㉒㉔㉕㉖㉗㉘㉚)。ノルウェー北部のスバールバル諸島では2月の月平均気温が-5.6℃(平年差+8.0℃)、サウジアラビア西部のメッカでは3月の月平均気温が31.5℃(平年差+4.1℃)、ブラジル東部のバラドコルダでは2~8月の7か月平均気温が28.1℃(平年差+2.3℃)でした。

 フランス南西部からスペイン北東部で7~8、10、12月に、ブラジル東部で2~5月に異常少雨となりました(図中⑭㉕)。フランスの7~8月の2か月降水量は1959年以降で最も少なく(フランス気象局)、フランス南西部のグールドンでは7~8月の2か月降水量が13mm(平年比10%)でした。ブラジル東部のビトリアダコンキスタでは2~5月の4か月降水量が32mm(平年比9%)でした。

 ヨーロッパ南東部で2~3、5~6、10月に、米国中西部から南部で3~4、7~8月に、オーストラリア南東部で1、6、9月に異常多雨となりました(図中⑬⑳㉙)。ルーマニアのブカレストでは10月の月降水量が128mm(平年比259%)、米国テキサス州サンアントニオでは4月の月降水量が157mm(平年比295%)でした。オーストラリアの6月の月降水量は、1900年以降で2番目に多く(オーストラリア気象局)、キャンベラでは6月の月降水量が144mm(平年比333%)でした。

 中国では、4~7月に南東部から南部を中心にたびたび大雨に見舞われ、長江流域の大雨等の影響により、合計で490人以上が死亡したと伝えられました(図中③)。ハイチ及び米国南東部では、10月に発生したハリケーン「MATTHEW」により大きな被害が発生し、ハイチで540人以上(国連人道問題調整事務所)、米国南東部で40人以上(米国政府)が死亡したと伝えられました(図中㉓)。

 なお、災害の記述は、米国国際開発庁海外災害援助局とルーベンカトリック大学災害疫学研究所(ベルギー)が共同で運用する災害データベース(EM-DAT)や各国の政府機関、国連機関の発表等に基づき、人的被害や経済的損失の大きさ、地理的広がりを考慮して取り上げています。


3節 平均気温

 平成28年(2016年)の世界の年平均気温の昭和56年(1981年)~平成22年(2010年)の30年平均を基準とした偏差(図の注参照)は+0.45℃(20 世紀平均を基準とした偏差は+0.81℃)で、明治24年(1891年)以降最も高い値となり、3年連続で最高値を更新しました。世界の年平均気温は、長期的には100年当たり約0.72℃の割合で上昇しており、特に1990年代半ば以降、高温となる年が頻出しています。

 平成28年(2016年)の日本の年平均気温の昭和56年(1981年)~平成22年(2010年)の30年平均を基準とした偏差は+0.88℃(20世紀平均を基準とした偏差は+1.48℃)で、明治31年(1898年)以降、最も高い値となりました。日本の年平均気温は、長期的には100年当たり約1.19℃の割合で上昇しており、特に1990年代以降、高温となる年が頻出しています。

世界と日本の年平均気温偏差

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4節 大気中の二酸化炭素

 二酸化炭素は、人為起源の温室効果ガスの中で地球温暖化に最も大きな影響を与えます。大気中の二酸化炭素の濃度は、工業化(18世紀後半)以前の過去約2000年間は280ppm程度でしたが、その後の産業活動などによる化石燃料の消費や森林破壊などの人間活動に伴って、世界的に増加の一途をたどっています。平成27年(2015年)の二酸化炭素の世界平均濃度は400.0ppmでこれまでの最高値を更新し、平成17年(2005年)から平成27年(2015年)までの10年間で、世界平均濃度は1年あたり約2.1ppm増加しています。緯度帯別の二酸化炭素月平均濃度の経年変化を見ると、北半球の中・高緯度帯の方が南半球よりも大きな季節変動をしており、また年平均濃度も高くなっています。これは、二酸化炭素の吸収源(森林など)・放出源(化石燃料消費など)のどちらも北半球に多く存在するためです。

緯度帯別の大気中の二酸化炭素濃度の経年変化

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5節 温室効果ガスとしてのハロカーボン類

 塩素などを含む炭素化合物の総称であるハロカーボン類は、強い温室効果を持ち、冷媒や溶剤として20世紀中頃から大量に生産・消費されてきました。大気中の濃度はとても低いものの、物質によっては同濃度の二酸化炭素の数千倍を超える温室効果をもたらします。その中でも、オゾン層破壊物質でもあるクロロフルオロカーボン類(いわゆるフロン類:CFC-11,CFC-12,CFC-113)、四塩化炭素(CCl4)、トリクロロエタン(CH3CCl3)は、1987年に採択されたモントリオール議定書による生産等の規制の効果により、大気中の濃度は近年減少傾向にあります。

ハロカーボン類の世界平均濃度の経年変化

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 一方で、代替フロンとして使用が増加しているハイドロクロロフルオロカーボン類(HCFCs)やハイドロフルオロカーボン類(HFCs)は、今のところ量は少ないものの急速に増えつつあります。


6節 海面水温

 平成28年(2016年)の世界の年平均海面水温の平年差(昭和56年(1981年)~平成22年(2010年)までの30 年平均値からの差)は+0.33℃で、統計を開始した明治24年(1891年)以降、最も高い値となりました。世界の年平均海面水温は、数年から数十年に及ぶ時間スケールの海洋・大気の変動や地球温暖化等の影響が重なりながら変化していますが、長期的には100 年あたり0.53℃の割合で上昇しています。数年から数十年の時間スケールでは、1970年代半ばから2000 年前後にかけて顕著な上昇が見られた後、2010年代前半までは停滞していましたが、平成28年(2016年)は、平成26年(2014年)と平成27年(2015年)に続いて3年連続で統計開始以降の最高記録を更新しました。

世界の年平均海面水温

 平成26年(2014年)の夏に発生したエルニーニョ現象は、平成27年(2015年)11~12月に最盛期となり、平成28年(2016年)春に終息しました。世界の年平均海面水温の平年差の最高記録更新には、この平成26年(2014年)から平成28年(2016年)にかけて発生したエルニーニョ現象も影響したと考えられます。

 平成28年の日本近海の海面水温は、オホーツク海南部、千島近海を除いて概ね平年より高く、釧路沖では10月まで平年よりかなり高くなっていました。常磐沖では5月まで平年より低くなっていました。5~6月はオホーツク海南部、千島近海で平年より低くなっていました。8月は日本海、東シナ海、沖縄の南、四国沖、沖縄の東で平年よりかなり高く、関東南東方、父島近海、南鳥島近海では平年より低くなっていました。10~12月は東シナ海南部、沖縄の南で平年よりかなり高くなっていました。11~12月は、北海道西方、オホーツク海南部、千島近海で平年より低くなっていました。

エルニーニョ監視海域の海面水温の変化

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7節 海洋中の二酸化炭素

 海洋は、人間活動により放出された二酸化炭素の約3分の1を吸収していると見積もられており、地球温暖化の進行を緩和しています。気象庁の海洋気象観測船「凌風丸」と「啓風丸」は、昭和59年(1984年)から30年以上にわたって北西太平洋で表面海水中と大気中の二酸化炭素濃度を観測しています。東経137度線に沿った日本の南から赤道域までの海域においては、毎年冬季(1~2月)に表面海水中の二酸化炭素濃度が大気中の濃度より低いことが観測されており、海洋が大気中の二酸化炭素を吸収しています。また、北緯7度から33度で平均した二酸化炭素濃度は、昭和59年(1984年)から平成28年(2016年)まででみて、大気中で1年に1.8ppm、表面海水中で1年に1.7ppmの割合で増加しています。

冬季の東経137度線に沿った表面海水中と大気中の二酸化炭素濃度(北緯7度~33度での平均)の経年変化

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8節 オホーツク海の海氷

 平成28年(2016年)から平成29年(2017年)のオホーツク海の海氷域面積は、平成28年12月から平成29年1月上旬までを除き、平年並か平年より小さく推移し、シーズンの最大海氷域面積は93.57万平方キロメートルで平年の80%でした。

 一方、オホーツク海南部では、海氷域は1月半ばまでは平年より早く南下しました。網走の流氷初日(海岸から流氷が観測された最初の日)は平年より10日遅い1月31日、網走の流氷接岸初日は平年と同じ2月2日でした。稚内の流氷初日は平年より19日早い1月25日、流氷終日は平年より45日早い1月26日でした。網走の海明け(海氷の占める割合が5割以下になり船舶の航行が可能になった最初の日)は平年より14日早い3月6日、流氷終日は平年より13日遅い4月24日でした。なお、釧路では3月22日に9年ぶりに流氷初日を観測しました。これは平年より22日遅く、昭和21年(1946年)の統計開始から、流氷初日を観測した中で最も遅い記録でした。

 オホーツク海の海氷域面積は年ごとに大きく変動していますが、最大海氷域面積は昭和46年(1971年)の統計開始以来、10年当たり6.7万平方キロメートル(オホーツク海の全面積の4.3%に相当)の割合で減少しています。

平成29年2月5日(最も面積が大きかった日)の海氷域

3章 地震活動

1節 日本及びその周辺の地震活動

 平成28年(2016年)に震度5弱以上を観測した地震は33回(平成27年は10回)、震度1以上を観測した地震は6,587回(平成27年は1,842回)でした。「平成28年(2016年)熊本地震」をはじめ、国内で被害を伴った地震は7※1回(平成26年は6回)でした。また、日本及びその周辺で発生した地震でマグニチュード6.0以上の地震は27回(平成27年は18回)でした。

 主な地震活動は下図及び次ページの表のとおりです。

※1 4月14日以降に、熊本県から大分県にかけて発生した一連の地震活動(「平成28年(2016年)熊本地震」)により生じた被害については1回として扱った。

平成28年に起きた地震のうち「マグニチュード6.0以上」、「国内で被害を伴った」、「震度5弱以上を観測した」、「津波を観測した」のいずれかに該当する地震の震央分布

平成28年に起きた地震のうち「マグニチュード6.0以上」、「国内で被害を伴った」、「震度5弱以上を観測した」、「津波を観測した」のいずれかに該当する地震

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2節 世界の地震活動

 平成28年(2016年)に発生したマグニチュード7.0以上または死者(行方不明者を含む)を伴った地震は28回(平成27年は27回)でした。また、マグニチュード8.0以上の地震はありません(平成27年は2回)でした。最も規模の大きかった地震は、12月17日にパプアニューギニア、ニューアイルランドで発生したMw7.9の地震でした。海外の地震により日本で津波を観測した地震はありませんでした。

主な地震活動は表のとおりです。

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4章 火山活動

 平成28年(2016年)の日本の主な火山活動は以下のとおりです。そのほかの最新の火山活動のとりまとめについては、気象庁ホームページに掲載している火山活動解説資料をご覧ください(http://www.data.jma.go.jp/svd/vois/data/tokyo/STOCK/monthly_v-act_doc/monthly_vact.htmまたは、「気象庁火山活動解説資料」を検索)。

○雌阿寒岳(北海道)

 雌阿寒岳では、ポンマチネシリ96-1火口の噴煙量が平成27年6月頃からやや多くなっていましたが、平成28年5月頃から低下しています。6月及び9月に実施した現地調査では、ポンマチネシリ96-1火口の噴煙は、平成27年11月の調査と比較して勢いが低下しており、また、平成27年に拡大がみられたポンマチネシリ第3火口及び第4火口の地熱域は消散していることを確認しました。地震活動は、ポンマチネシリ火口付近の浅い所を震源とする火山性地震が5月から6月にかけて一時的にやや増加しましたが、それ以外の期間は低調に経過しました。GNSS観測では、浅部の膨張は収縮に転じている可能性があり、やや深部の膨張は停滞した可能性があります。

○十勝岳(北海道)

 十勝岳では、ここ数年、山体浅部の膨張や大正火口の噴煙量増加および地震増加、火山性微動の発生、発光現象などが観測されており、火山活動に高まりがみられています。62-2火口周辺では、引き続き熱活動が活発な状態が継続しています。地震活動は、62-2火口付近のごく浅い所(海抜0km以浅)を震源とする火山性地震が一時的にやや増加する日がありましたが、1日あたり概ね10回以下と低調に経過しました。GNSS連続及び繰り返し観測では、平成18年以降、62-2火口直下浅部の膨張を示すと考えられる変動が引き続き認められています。

○倶多楽(北海道)

 倶多楽では、2月4日18時から6日にかけて倶多楽の西側を震源とする地震が増加しました。地震増加時にその他の観測データに特段の変化はなく、それ以外の期間については、地震活動は低調に経過しました。また、倶多楽では、11月5日から大正地獄において小規模な熱湯噴出が発生しました。11月6日及び7日に実施した現地調査では、大正地獄で熱湯の噴出が断続的に発生しており、一時的に高さが最大6~7mまで上がっているのを確認し、また、大正地獄周辺約30mの範囲には噴出に伴うと考えられる泥が飛散した痕跡を確認しました。11月15日まで断続的に小規模な熱湯噴出が発生しましたが、11月16日以降収まり、その後は12 月19日に一時的にみられたのみでした。

○吾妻山(福島県)

 吾妻山では、3月から4月にかけて火山性地震が多い状態となりましたが、そのほかの期間、地震活動は低調に経過しました。5月及び7月の現地調査では、大穴火口北西で新たに複数の弱い噴気や地温の高い領域を確認しましたが、9月及び10月の調査では特段の変化は認められませんでした。地殻変動観測では、一切経山付近の緩やかな収縮または停滞の傾向で経過しました。これらのことから、吾妻山では大穴火口周辺に影響を及ぼす噴火の兆候は認められなくなったと判断し、10月18日15時00分に噴火予報を発表し、噴火警戒レベルを2(火口周辺規制)から1(活火山であることに留意)に引き下げました。その後、大穴火口付近の熱活動は継続していますが、地震活動は低調に経過し、地殻変動にも特段の変化はみられていません。

○草津白根山(群馬県)

 草津白根山では、火山性地震が概ね少ない状態で経過しました。地殻変動観測によると、平成26年4月頃から湯釜付近の膨張を示す変動が認められていましたが、平成27年11月頃より停滞しています。湯釜火口の北から北東内壁及び水釜火口の北から北東側にかけての斜面での熱活動や、北側噴気地帯での活発な噴気活動が継続しており、東京工業大学によると、北側噴気地帯のガス組成と湯釜湖水の化学成分には火山活動の活発化を示す変化が引き続きみられています。これらのことから、草津白根山では、噴火警戒レベル2(火口周辺規制)を継続しました。

○浅間山(長野県、群馬県)

 浅間山では、平成27年6月19日を最後に、噴火は観測されていません。山頂火口からの噴煙は白色で、火口縁上概ね500m以下で経過しました。山頂火口で、夜間に高感度の監視カメラで観測できる程度の微弱な火映が1月及び6月以降時々観測されました。5月23日(群馬県の協力による)、5月31日(陸上自衛隊東部方面航空隊の協力による)の上空からの観測では、これまでの観測と比較して、火口内の地形に大きな変化はありませんでしたが、火口底中央部の火孔付近の高温領域が縮小しているのが認められました。山頂火口からの火山ガス(二酸化硫黄)の放出量は、1月は1日あたり700~900トンとやや多い状態で、その後減少しましたが、12月16日には1,000トンと再び多い状態となりました。山頂火口直下のごく浅い所を震源とする体に感じない火山性地震は、概ねやや多い状態で経過しました。これらのことから、浅間山では、噴火警戒レベル2(火口周辺規制)を継続しました。

○新潟焼山(新潟県、長野県)

 新潟焼山では、平成27年夏頃から山頂部東側斜面の噴煙がやや高く上がる傾向が認められ、平成27年12月からは噴煙量も多くなっていました。GNSS連続観測では、平成28年1月頃から新潟焼山を南北に挟む基線で伸びがみられました。新潟県及び新潟県警察の協力により実施した上空からの観測、並びに高谷池ヒュッテ及び妙高火山研究所からの通報によると、4月15日と5月6日に、山頂東側斜面の噴気孔の近傍にわずかな降灰を、また、7月21日には山頂から南南東およそ1.5km付近でわずかな火山灰が堆積しているのを確認しました。5月1日以降、振幅の小さな火山性地震がやや増加し、5月4日以降は低周波地震も時々発生しました。山頂の北4kmに設置しているカラサワ観測点の傾斜計では、地震の増加に先行して、4月30日頃から5月1日頃にかけて山頂方向上がりの変化がみられました。秋以降、噴煙高度は低下していますが、平成27年夏以前と比べてやや高い状態が続いています。火山性地震は次第に減少しています。GNSSによる地殻変動観測では、夏以降は停滞傾向が認められています。

○御嶽山(岐阜県、長野県)

 御嶽山では、平成26年10月以降噴火の発生はなく、火山活動は緩やかに低下していますが、火口列からの噴煙活動や地震活動が続いています。噴煙活動は、緩やかに低下しているものの、平成26年8月以前の状況には戻っていません。山頂直下付近の地震活動も継続しています。5月19日、9月27日、10月10日、11月19日に振幅が小さく、継続時間の短い火山性微動を観測しました。そのうち9月27日の火山性微動では、微動に伴って、山頂方向上がりのわずかな傾斜変化が観測されました。これらのことから、御嶽山では、噴火警戒レベル2(火口周辺規制)を継続しました。

○西之島(東京都)

 西之島では、平成25年11月以降続いていた噴火や溶岩の流出は、平成27年11月下旬以降はいずれも確認されていません。平成27年12月以降は地表面温度が低下した状態が継続しています。平成28年5月頃から地殻変動観測で火口周辺の沈降と考えられる変動がみられており、6月には火山ガスの放出量の低下も確認されました。 このように、火山活動に明らかな低下が認められ、島内の広い範囲で警戒が必要な噴火が発生する可能性は低下したと考えられたことから、8月17日15時00分に火口周辺警報(入山危険)を火口周辺警報(火口周辺危険)に引き下げ、警戒が必要な範囲を火口から概ね1.5kmから概ね500mに縮小し、併せて火山現象に関する海上警報を解除しました。9月以降の海上保安庁による観測では、第7火口及び付近からの噴気放出等は確認されていません。

○硫黄島(東京都)

 硫黄島では、11月3日から4日にかけて、一時的に火山性地震が増加しました。これに伴い、GNSS連続観測で島の南部が膨張源とみられる地殻変動が観測されました。GNSS連続観測によると、地殻変動は長期的に隆起・停滞を繰り返しています。国立研究開発法人防災科学技術研究所によると、8月31日から9月1日の間に、阿蘇台陥没孔でごく小規模な噴火が発生したと推定されます。10月及び12月に阿蘇台陥没孔西の海岸(沈船陥没孔付近)から概ね30m以下の噴気が上がっているのが確認されました。

○阿蘇山(熊本県)

 阿蘇山の中岳第一火口では、2月17日、18日、3月4日、4月16日、5月1日、10月7日に噴火が発生し、10月8日01時46分には爆発的噴火が発生しました。10月7日21時52分の噴火では、火口から西側700mの中岳西山腹観測点で最大振幅118μm/sの火山性微動を観測し、火口から南西側1.2kmの古坊中観測点で27Paの空振を観測しました。その後、翌8日01時46分に爆発的噴火が発生し、中岳西山腹観測点で最大振幅1,870μm/sの爆発地震を観測、南阿蘇村中松で震度2を観測しました。また、古坊中観測点で189Paの空振を観測しました。気象衛星ひまわり8号による観測では、8日の爆発的噴火で海抜高度11,000mの噴煙が解析されました。この噴火により、01時55分に火口周辺警報を発表し、噴火警戒レベルを2(火口周辺規制)から3(入山規制)に引き上げました。同日実施した現地調査及び電話による聞き取り調査では、阿蘇山の北東側で降灰の量が3,800g/㎡に達する等の多量の降灰となったほか、熊本県、大分県、愛媛県、香川県、岡山県で降灰を確認しました。また、中岳第一火口から北東側約4kmの国立阿蘇青少年交流の家で長径7cmの小さな噴石を確認したほか、北東側約20kmの大分県竹田市でも直径数mmの小さな噴石を確認しました。熊本大学教育学部、京都大学火山研究センター、産業技術総合研究所及び気象庁が実施した調査では、8日の爆発的噴火に伴う噴出物の総量は60~65万トン程度と見積もられています。

阿蘇山噴火警戒レベル2、3の警戒が必要な範囲(中岳第一火口から概ね1~4kmの範囲)

○霧島山(新燃岳)(宮崎県、鹿児島県)

 新燃岳では、噴火は発生しませんでしたが、白色の噴煙を時々観測しました。また、火山性地震は1月から7月にかけてやや増加しました。地震回数は750回で、前年(平成27年:529回)よりやや増加しました。震源は、主に新燃岳付近のごく浅い海抜下2kmに分布しました。GNSS連続観測によると、新燃岳の北西数㎞の地下深くにあると考えられるマグマだまりの膨張を示す地殻変動は、平成25年12月頃から伸びの傾向が見られていましたが、平成27年1月頃から停滞しています。また、新燃岳周辺の一部の基線では、5月頃からわずかに伸びの傾向がみられていましたが、10月頃から停滞しています。これらのことから、霧島山(新燃岳)では、噴火警戒レベル2(火口周辺規制)を継続しました。

○霧島山(えびの高原(硫黄山)周辺)(宮崎県、鹿児島県)

 えびの高原(硫黄山)周辺では、2月28日、えびの高原(硫黄山)周辺の浅いところを震源とする火山性地震が53回発生したことから、火山活動が活発化し、小規模な噴火が発生する可能性が高いと判断し、11時00分に火口周辺警報(火口周辺危険)を発表しました。2月29日以降、火山性地震は少ない状態で経過し、噴気の状態にも特段の変化は認められなかったことから、火山活動は低下し、硫黄山周辺に影響を及ぼす噴火の兆候は認められなくなったと判断して、3月29日10時00分に噴火予報を発表し、火口周辺警報(火口周辺危険)を解除しました。12月12日、えびの高原(硫黄山)周辺の浅いところを震源とする火山性地震が70回発生し、火山性微動や山体の隆起を示す傾斜変動が観測されました。これらのことから、火山活動が高まり、小規模な噴火が発生する可能性があると判断して、11時40分に火口周辺警報(噴火警戒レベル2)を発表しました。同日以降、火口周辺では噴気の量がやや多くなり、噴気活動が活発な状態となりました。

○桜島(鹿児島県)

 桜島の昭和火口では、2月から7月までは活発な噴火活動がみられましたが、8月以降は活動が低下しました。7月27日以降は昭和火口及び南岳山頂火口ともに小規模以上の噴火は観測されていません。平成28年の噴火回数は142回(2015年:1250回)で、そのうち爆発的噴火の回数は47回(平成27年:737回)と前年に比べ減少しました。2月5日18時56分には昭和火口で爆発的噴火が発生し、弾道を描いて飛散する大きな噴石が3合目まで達するとともに、噴煙の高さは火口縁上 2,200mまで上がりました。この爆発的噴火により、同日、19時13分に火口周辺警報を発表し、噴火警戒レベル2(火口周辺規制)から3(入山規制)へ引き上げました。また、7月26日00時02分の爆発的噴火では、噴煙が火口縁上5,000mまで上がり、桜島島内の西側から南西側でやや多量の降灰(1平方メートル当たりの最大で334g)が観測されたほか、鹿児島市から日置市にかけての広い範囲で降灰を確認しました。南岳山頂火口では、3月から6月にかけて小規模な噴火が時々発生しました。噴火の回数は3月6回、4月1回、5月3回、6月1回でした。このうち、噴煙の高さが最も高かったのは、5月13日16時38分の噴火で、噴煙は3,700mまで上がりました。桜島島内の傾斜計、伸縮計による観測では、平成27年8月の急激な変動以降、顕著な山体膨張を示す地殻変動はみられていません。GNSS連続観測では、姶良カルデラ(鹿児島湾奥部)の地下のマグマだまりの膨張が続いており、平成27年1月頃から地殻変動の膨張速度がやや増大しています。島内では、平成27年8月の急激な山体膨張の変動以降、山体の収縮傾向がみられていましたが、平成28年1月頃から停滞しています。

○口永良部島(鹿児島県)

 口永良部島では、平成27年6月19日のごく小規模な噴火の後、噴火は観測されていません。新岳火口の噴煙活動には特段の変化はなく、白色の噴煙が火口縁上200~400mの高さ(最高高度は1,000m)で経過しました。現地調査では、火口周辺の地形や噴気等の状況に変化は認められていません。3月11日(陸上自衛隊第8師団と鹿児島県の協力による)、5月26日及び31日(海上自衛隊第1航空群の協力による)の上空からの観測では、新岳火口の火口底からわずかに噴気が上がっているのを確認し、火口西側の割れ目付近からも噴気が上がっているのを確認しましたが、平成27年11月3日の観測と比較すると、新岳火口及び火口周辺の形状や噴煙の状況に特段の変化は認められませんでした。火山性地震は、概ね少ない状態で経過しましたが、11月頃からやや増加しました。年回数は435回と前年(1,490回)より減少しました。GNSS連続観測では、火口を挟む基線で平成28年1月頃から縮みの傾向が認められており、平成27年5月の噴火前から続いていた新岳の膨張状態が収縮に転じていました。期間中に東京大学大学院理学系研究科、京都大学防災研究所、産業技術総合研究所、屋久島町及び気象庁が実施した観測では、火山ガス(二酸化硫黄)の放出量は、1日あたり50~500トンと平成27年5月の噴火前後より大幅に減少した値で経過していましたが、平成26年8月3日の噴火前よりは多い状態が続いています。これらのことから、口永良部島では、噴火警戒レベル3(入山規制)を継続しました。

○諏訪之瀬島(鹿児島県)

 諏訪之瀬島の御岳火口では、噴火が時々発生しました。そのうち爆発的噴火は77回で、活発な火山活動が継続しました(平成27年:107回)。これらの爆発的噴火に伴い、監視カメラで火口付近に飛散する噴石を時々確認しました。噴火に伴う灰白色の噴煙は、概ね火口縁上1,000m以下で経過しました。8月1日7時44分に発生した噴火では、15時00分に灰白色の噴煙が火口縁上2,700mまで上がり(前年の最高1,700m)、平成15年の観測開始以降の最高となりました。ほぼ年間を通して夜間に高感度の監視カメラで火映を観測しました。十島村役場諏訪之瀬島出張所によると、御岳の南南西約4kmの集落や切石港(御岳の南約3.5km)で降灰を確認した日数は20日(平成27年:9日)でした。5月26日及び31日の上空からの観測(海上自衛隊第1航空群の協力による)では、31 日に御岳火口内からは白色噴煙が火口縁上400m上がっているのを確認しました。これらのことから、諏訪之瀬島では、噴火警戒レベル2(火口周辺規制)を継続しました。


5章 黄砂、紫外線など

1節 黄砂

 気象庁では、国内59か所(平成29年(2017年)3月31日現在)の気象台や測候所で、職員が目視により大気現象として黄砂を観測しています。統計を開始した昭和42年(1967年)から平成28年(2016年)までに黄砂観測日数が最も多かったのは、平成14年(2002年)の47日です。平成28年(2016年)の黄砂観測日数は11日(平年は24.2日)でした。黄砂観測日数は、昭和42年(1967年)から平成28年(2016年)の統計期間では増加傾向が見られますが、年ごとの変動が大きく、長期的な変化傾向を確実に捉えるには今後の観測データの蓄積が必要です。

日本における年別の黄砂観測日数(昭和42年(1967年)~平成28年(2016年))

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 日本への黄砂の飛来は、例年3月~5月に集中しています。この時期は、①黄砂発生源となっている地域で砂を覆う積雪がなくなる一方、まだ植物が芽吹いていないため乾燥した裸地となっており、砂じんが舞い上がりやすい状態であること、②砂を舞い上げ、運ぶ強風の原因となる低気圧が通る頻度の高い季節であることから、黄砂が多く飛来します。この時期以外にも、黄砂発生源が乾燥していて上空の風が日本へ向いて吹いているなどの条件がそろえば、日本に黄砂が飛来します。

 平成28年(2016年)の月別黄砂観測日数は、4月は平年と同じでしたが、その他の月は平年を下回りました。

平成28年(2016年)の月別黄砂観測日数

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2節 オゾン層・紫外線

 国内のオゾン全量は、1980年代を中心に札幌、つくばで減少が進みましたが、1990年代半ば以降、国内では緩やかな増加傾向がみられます(第1部3章3節「環境気象情報の発表」参照)。また、南極域では1980年代初め頃からオゾンホールが観測されており、平成28年(2016年)のオゾンホールは、9月28日にこの年の最大面積である2,270万平方キロメートル(南極大陸の面積の約1.6倍)まで発達し、11月中旬に消滅しました。オゾンホールの最大面積は、最近10年間の平均値と同程度であり、依然として規模の大きい状態が続いています。

南極オゾンホール

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 国内の紅斑(こうはん)紫外線量は、観測を開始した1990年代はじめから緩やかな増加傾向がみられます。一般に、上空のオゾン量の減少に伴って地表に到達する紫外線は増加しますが、この期間、国内ではオゾン量の減少は観測されていません。紫外線を散乱・吸収する大気中の微粒子の減少や天候の変化(雲量の減少)などが紅斑紫外線量の増加の原因と考えられています。

日本国内の紅斑紫外線量年積算値の経年変化

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3節 日射と赤外放射

 気象庁では、日射と赤外放射について地球環境や気候への影響を把握するため国内5地点(札幌、つくば、福岡、南鳥島、石垣島)で精密な日射放射観測を行い、全天日射、直達日射、散乱日射および下向き赤外放射の経年変化を監視しています。

 世界の多くの地域における全天日射量は、1960年頃から1980年代後半まで減少し、1980年代後半から2000年頃まで急激に増加し、その後は大きな変化が見られないという傾向が報告されています。

 日本における変化傾向(国内5地点平均)を見ると、1970年代後半から1990年頃にかけて急激に減少し、1990年頃から2000年代初めにかけて急激に増加し、その後は大きな変化は見られません。これは、世界的な変化傾向とほぼ整合しています。

全天日射量の経年変化

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