(参考)航空機の離着陸時における風との関わり

 航空機は、大気と機体との速度差によって飛行に必要な揚力を得ています。このため、「風向や風速の急変(ウィンドシアー)」は航空機の運航に大きな影響を与えます。特に、離着陸時の航空機にとっては重大な事故にも繋がりかねない危険な現象です。
 ウィンドシアーは様々な原因によって発生し、航空機の離着陸に大きな影響を及ぼします。ここでは、水平方向と鉛直方向のウィンドシアーが航空機の離着陸に与える影響についてそれぞれ説明します。


(1)水平方向のウィンドシアーの影響

①ダウンバースト

 「ダウンバースト」は、積乱雲からの下降気流が途中で弱まることなく地表付近まで降下し、放射状に広がって、強く吹き出す風を起こす現象です。一般的にダウンバーストは、風向・風速の広がりから「マイクロバースト(広がりが4km未満)」と「マクロバースト(広がりが4km以上)」に分類され、マイクロバーストの方が強い風を伴うことが多いと言われています。

ダウンバーストによるケース説明図


②マイクロバースト

 発達した積乱雲から生じた下降気流が水平方向に広がることにより、航空機は向かい風の増加によって揚力が大きくなり、上昇します。また、下降気流によって高度が下がるとともに、追い風によって揚力が減少して高度がさらに下がってしまいます。このため進入コースから外れてしまう危険が大きくなります。

③シアーライン

 風向・風速(どちらか一方でも良い)が急に変化しているところを結んだ線を「シアーライン」と呼びます。積乱雲に伴って発生するシアーラインでは、積乱雲から吹き出す風と積乱雲周辺の風が線状にぶつかり合っています。航空機はシアーラインを通過する際に、向かい風が増加または減少するため、揚力が変化して進入コースから外れてしまう危険が大きくなります。

シアーラインによるケース説明図


④ガストフロント

 ガストフロントもマイクロバーストと同様に、積乱雲の下降気流から生じます。向かい風の急な増加やガストフロントの先端の上昇気流によって進入コースを外れたり、乱気流に遭遇する危険があります。

ガストフロントによるケース説明図


⑤地形の影響

 地形の影響によって風速に変化が生じる場合があります。谷を吹き抜けるような風は、周囲の風との風速差が大きくなります。この風速差は航空機のスピードに変化を与えるため、揚力の変化によって進入コースから外れやすくなります。また風速差によって生じる乱気流に遭遇する危険があります。

地形影響によるケース説明図



(2)鉛直方向のウィンドシアーの影響

①下層ほど風が弱い場合 ②下層ほど風が強い場合
下層ほど弱い 下層ほど強い
③上層ほど風が弱い場合または追い風になる場合 ④上層ほど風が強い場合
上層ほど弱いまたは追い風 上層ほど強い

①下層ほど風が弱い場合(着陸時)

 高度が下がるほど向かい風が弱くなり、航空機の揚力が減少します。このようなときは、進入コースよりも高度が下がってしまいます。

②下層ほど風が強い場合(着陸時)

 高度が下がるほど向かい風が強くなり、航空機の揚力が増加します。このようなときは、進入コースよりも高度が上がってしまいます。

③上層ほど風が弱い場合または追い風になる場合(離陸時)

 上昇するほど向かい風が弱くなり、航空機の揚力が減少します。このようなときは、計画した出発コースよりも高度が下がってしまいます。

④上層ほど風が強い場合(離陸時)

 上昇するほど向かい風が強くなり、航空機の揚力が増加します。このようなときは、計画した出発コースよりも高度が上がってしまいます。

このページのトップへ

>