南海トラフ地震関連解説情報について -最近の南海トラフ周辺の地殻活動-
気象庁では、大規模地震の切迫性が高いと指摘されている南海トラフ周辺の地震活動や地殻変動等の状況を定期的に評価するため、
南海トラフ沿いの地震に関する評価検討会、地震防災対策強化地域判定会を毎月開催しています。
本資料は本日開催した評価検討会、判定会で評価した調査結果を取りまとめたものです。
次回は12月7日を予定しています。
なお、下記調査結果は本日17時00分に「南海トラフ地震関連解説情報」として発表しています。
報道発表日
令和3年11月8日
概要
現在のところ、南海トラフ沿いの大規模地震の発生の可能性が平常時(注)と比べて相対的に高まったと考えられる特段の変化は観測されていません。
本文
最近の南海トラフ周辺の地殻活動
現在のところ、南海トラフ沿いの大規模地震の発生の可能性が平常時(注)と比べて相対的に高まったと考えられる特段の変化は観測されていません。
(注)南海トラフ沿いの大規模地震(M8~M9クラス)は、「平常時」においても今後30年以内に発生する確率が70~80%であり、昭和東南海地震・昭和南海地震の発生から既に70年以上が経過していることから切迫性の高い状態です。
1.地震の観測状況
(顕著な地震活動に関係する現象)
11月1日05時35分に和歌山県南方沖の深さ20kmを震源とするM5.0の地震が発生しました。この地震は、発震機構が南北方向に圧力軸を持つ逆断層型で、フィリピン海プレートと陸のプレートの境界で発生しました。
(ゆっくりすべりに関係する現象)
プレート境界付近を震源とする特に目立った深部低周波地震(微動)はありませんでした。
2.地殻変動の観測状況
(ゆっくりすべりに関係する現象)
GNSS観測によると、2019年春頃から四国中部でそれまでの傾向とは異なる地殻変動が観測されています。また、2020年夏頃から紀伊半島西部・四国東部でそれまでの傾向とは異なる地殻変動が観測されています。加えて、2020年夏頃から九州南部で観測されている、それまでの傾向とは異なる地殻変動は、2021年春頃に鈍化したまま、現在もその状態が続いているように見えます。
(長期的な地殻変動)
GNSS観測等によると、御前崎、潮岬及び室戸岬のそれぞれの周辺では長期的な沈降傾向が継続しています。
3.地殻活動の評価
(顕著な地震活動に関係する現象)
11月1日に発生した和歌山県南方沖の地震は、フィリピン海プレートと陸のプレートの境界で発生した地震で、その規模から南海トラフ沿いのプレート間の固着状態の特段の変化を示すものではないと考えられます。
(ゆっくりすべりに関係する現象)
2019年春頃からの四国中部の地殻変動、2020年夏頃からの紀伊半島西部・四国東部及び九州南部での地殻変動は、それぞれ四国中部周辺、紀伊水道周辺及び日向灘南部のプレート境界深部における長期的ゆっくりすべりに起因するものと推定しています。このうち、日向灘南部の長期的ゆっくりすべりは、2021年春頃に鈍化したまま、現在もその状態が続いています。
これらの長期的ゆっくりすべりは、それぞれ、従来からも繰り返し観測されてきた現象です。
(長期的な地殻変動)
御前崎、潮岬及び室戸岬のそれぞれの周辺で見られる長期的な沈降傾向はフィリピン海プレートの沈み込みに伴うもので、その傾向に大きな変化はありません。
上記観測結果を総合的に判断すると、南海トラフ地震の想定震源域ではプレート境界の固着状況に特段の変化を示すようなデータは得られておらず、南海トラフ沿いの大規模地震の発生の可能性が平常時と比べて相対的に高まったと考えられる特段の変化は観測されていません。
問合せ先
気象庁地震火山部地震火山技術・調査課大規模地震調査室 担当 重野
電話:03-6758-3900(内線5244)
資料全文
- 南海トラフ地震関連解説情報について -最近の南海トラフ周辺の地殻活動-[PDF形式:19.0MB]
[上記の資料は、気象庁、国土地理院及び防災科学技術研究所の資料から作成。
気象庁の資料には、防災科学技術研究所、産業技術総合研究所、東京大学、名古屋大学等のデータも使用。 ]
参考資料
- 第49回南海トラフ沿いの地震に関する評価検討会、第427回地震防災対策強化地域判定会 気象庁資料[PDF形式:17.0MB]
[気象庁の資料には、防災科学技術研究所、産業技術総合研究所、東京大学、名古屋大学等のデータも使用。]