「令和2年7月豪雨」の特徴と関連する大気の流れについて(速報)

報道発表日

令和2年7月31日

概要

「令和2年7月豪雨」は、7月3日から14日までの総降水量が九州を中心に年降水量平年値の半分以上となるところがあるなど、西日本から東日本の広範囲にわたる長期間の大雨となりました。その要因は、偏西風の蛇行の持続により本州付近に停滞した梅雨前線に沿って西から流れこんだ水蒸気と、日本の南で南西に張り出した太平洋高気圧の縁辺を回る南からの水蒸気が、西・東日本に大量に集まりやすい状態が継続したこと、気圧の谷の影響で上昇流が強化されたことです。特に顕著な大雨となった3日から8日にかけては、線状降水帯が九州で多数発生し、総降水量に対する線状降水帯による降水量の割合が「平成30年7月豪雨」より大きいといった特徴が見られました。

本文

西日本から東日本にかけての広い範囲に長期間の大雨をもたらした「令和2年7月豪雨」の観測記録や特徴、関連する大気の流れや線状降水帯等の特徴を、本報告では速報として、特に広範囲で大雨が続いた7月3日から14日までの期間を対象として、以下のとおりとりまとめました。

観測データからみた大雨の特徴

  • 西日本・東日本を中心に広い範囲で大雨となり、7月3日から14日までの総降水量が九州を中心に7月の月降水量平年値の3倍を超える地点や、年降水量平年値の半分以上となる地点がありました。
  • 1時間から72時間降水量の観測史上1位の値を更新した地点は、九州や岐阜県・長野県に集中していました。

長期間にわたり大雨をもたらした大気の流れの特徴

  • 長期間の大雨の要因は、偏西風がほぼ同じ位置で蛇行を続けたことにより梅雨前線が本州付近に停滞し、梅雨前線に沿って西から流れこんだ水蒸気と日本の南で南西に張り出し続けた太平洋高気圧の縁辺を回る南からの水蒸気が九州を中心に西日本・東日本に大量に集まりやすく、その状態が継続したことです。
  • また、日本付近では上空の気圧の谷の影響で上昇流が強まり、梅雨前線の活動が強化されたとみられます。
  • 日本付近で偏西風の蛇行が持続したのは、西方のユーラシア大陸上空で偏西風の蛇行が強化された影響によるものと考えられます。また、日本の南海上で高気圧が南西方向に張り出したことには、インドネシア付近からインド洋の海面水温が高く、積雲対流活動が活発であったことが影響していると考えられます。

線状降水帯等の特徴

  • 3~4日の熊本県を中心とした大雨は、大量の下層の水蒸気が流入し、風上側で次々と発生した積乱雲が組織化した線状降水帯によりもたらされ、6日の九州北部地方の大雨は、複数の線状降水帯が形成されたことによりもたらされました。
  • 特に顕著な大雨となった3日から8日かけて、線状降水帯が九州で多数発生し、総降水量に対する線状降水帯による降水量の割合(寄与率)が高く70%を超えた所もあり、一部で50%を超えた程度の「平成30年7月豪雨」よりも大きくなりました。

本報告は気象庁本庁、気象研究所及び気象大学校が共同で作成しました。また、大規模な大気の流れの特徴の分析にあたり、異常気象分析検討会委員の協力を頂きました。

問い合わせ先

観測部 計画課 情報管理室 道城、松本(観測データの特徴に関すること)
電話 03-3212-8341(内線4154) FAX 03-3217-3615


地球環境・海洋部 気候情報課 中三川、石崎、佐藤(大気の流れの特徴に関すること)
電話03-3212-8341(内線3166、3158) FAX 03-3211-8406


予報部 予報課 杉本、平野(線状降水帯等の特徴に関すること)
電話 03-3212-8341(内線3127、2240) FAX 03-3211-8303

資料全文


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