南海トラフ地震関連解説情報について -最近の南海トラフ周辺の地殻活動-
気象庁では、大規模地震の切迫性が高いと指摘されている南海トラフ周辺の地震活動や地殻変動等の状況を定期的に評価するため、
南海トラフ沿いの地震に関する評価検討会、地震防災対策強化地域判定会を毎月開催しています。
本資料は今回開催した評価検討会、判定会で評価した調査結果を取りまとめたものです。
次回は5月12日を予定しています。
なお、下記調査結果は本日17時00分に「南海トラフ地震関連解説情報」として発表しています。
報道発表日
令和2年4月7日
概要
現在のところ、南海トラフ沿いの大規模地震の発生の可能性が平常時(注)と比べて相対的に高まったと考えられる特段の変化は観測されていません。
本文
最近の南海トラフ周辺の地殻活動
現在のところ、南海トラフ沿いの大規模地震の発生の可能性が平常時(注)と比べて相対的に高まったと考えられる特段の変化は観測されていません。
(注)南海トラフ沿いの大規模地震(M8~M9クラス)は、「平常時」においても今後30年以内に発生する確率が70~80%であり、昭和東南海地震・昭和南海地震の発生から既に70年以上が経過していることから切迫性の高い状態です。
1.地震の観測状況
(顕著な地震活動に関係する現象)
南海トラフ周辺では、特に目立った地震活動はありませんでした。
(ゆっくりすべりに関係する現象)
プレート境界付近を震源とする深部低周波地震(微動)のうち、主なものは以下のとおりです。
(1)四国中部から西部:2月10日から3月9日
(2)紀伊半島北部から西部:3月7日から3月23日
2.地殻変動の観測状況
(ゆっくりすべりに関係する現象)
上記(1)、(2)の深部低周波地震(微動)とほぼ同期して、周辺に設置されている複数のひずみ計でわずかな地殻変動を観測しました。また、周辺の傾斜データでも、わずかな変化が見られています。
GNSS観測によると、2019年春頃から紀伊半島西部・四国東部で観測されている、それまでの傾向とは異なる地殻変動は、2020年初頭から鈍化しています。
(長期的な地殻変動)
GNSS観測等によると、御前崎、潮岬及び室戸岬のそれぞれの周辺では長期的な沈降傾向が継続しています。
3.地殻活動の評価
(ゆっくりすべりに関係する現象)
上記(1)、(2)の深部低周波地震(微動)と地殻変動は、想定震源域のプレート境界深部において発生した短期的ゆっくりすべりに起因するものと推定しています。
2019年春頃からの紀伊半島西部・四国東部の地殻変動は、紀伊水道周辺のプレート境界深部における長期的ゆっくりすべりに起因するものと推定しています。
これらの深部低周波地震(微動)、短期的ゆっくりすべり、及び長期的ゆっくりすべりは、それぞれ、従来からも繰り返し観測されてきた現象です。
(長期的な地殻変動)
御前崎、潮岬及び室戸岬のそれぞれの周辺で見られる長期的な沈降傾向はフィリピン海プレートの沈み込みに伴うもので、その傾向に大きな変化はありません。
上記観測結果を総合的に判断すると、南海トラフ地震の想定震源域ではプレート境界の固着状況に特段の変化を示すようなデータは得られておらず、南海トラフ沿いの大規模地震の発生の可能性が平常時と比べて相対的に高まったと考えられる特段の変化は観測されていません。
問い合わせ先
地震火山部地震予知情報課 担当 宮岡
電話:03-3212-8341(内線4576) FAX 03-3212-2807
資料全文
- 南海トラフ地震関連解説情報について -最近の南海トラフ周辺の地殻活動(1)-[PDF形式:7.4MB]
- 南海トラフ地震関連解説情報について -最近の南海トラフ周辺の地殻活動(2)-[PDF形式:4.8MB]
[※上記の資料のうち、国土地理院のゆっくりすべりに関する資料の一部に修正等があります。
詳しくは、国土地理院HPに掲載されている「ゆっくりすべり(SSE)の地震モーメント推定の修正について」をご参照ください。(2022年1月5日追記)]
[上記の資料は、気象庁、国土地理院、防災科学技術研究所及び産業技術総合研究所の資料から作成。
気象庁の資料には、防災科学技術研究所、産業技術総合研究所、東京大学、名古屋大学等のデータも使用。産業技術総合研究所の資料には、防災科学技術研究所及び気象庁のデータも使用。]
参考資料
- 第30回南海トラフ沿いの地震に関する評価検討会、第408回地震防災対策強化地域判定会 気象庁資料(1)[PDF形式:6.2MB]
- 第30回南海トラフ沿いの地震に関する評価検討会、第408回地震防災対策強化地域判定会 気象庁資料(2)[PDF形式:8.7MB]
[気象庁の資料には、防災科学技術研究所、産業技術総合研究所、東京大学、名古屋大学等のデータも使用。]