南海トラフ地震関連解説情報について -最近の南海トラフ周辺の地殻活動-

気象庁では、大規模地震の切迫性が高いと指摘されている南海トラフ周辺の地震活動や地殻変動等の状況を定期的に評価するため、 南海トラフ沿いの地震に関する評価検討会、地震防災対策強化地域判定会を毎月開催しています。 本資料は本日開催した評価検討会、判定会で評価した調査結果を取りまとめたものです。 次回は7月5日を予定しています。
なお、下記調査結果は本日17時00分に「南海トラフ地震関連解説情報」として発表しています。

報道発表日

令和元年6月7日

概要

現在のところ、南海トラフ沿いの大規模地震の発生の可能性が平常時(注)と比べて相対的に高まったと考えられる特段の変化は観測されていません。

本文

最近の南海トラフ周辺の地殻活動

現在のところ、南海トラフ沿いの大規模地震の発生の可能性が平常時(注)と比べて相対的に高まったと考えられる特段の変化は観測されていません。

(注)南海トラフ沿いの大規模地震(M8~M9クラス)は、「平常時」においても今後30年以内に発生する確率が70~80%であり、昭和東南海地震・昭和南海地震の発生から既に70年以上が経過していることから切迫性の高い状態です。



1.地震の観測状況
(顕著な地震活動に関係する現象)
 5月10日08時48分に日向灘の深さ25kmを震源とするM6.3の地震が発生しました。また、この地震発生前の同日07時43分にほぼ同じ場所でM5.6の地震が発生しました。これらの地震は、発震機構が西北西・東南東方向に圧力軸を持つ逆断層型で、フィリピン海プレートと陸のプレートの境界で発生しました。
 5月11日08時59分に、日向灘の深さ36kmを震源とするM5.0の地震が発生しました。この地震は、発震機構が東西方向に張力軸を持つ正断層型で、フィリピン海プレート内部で発生しました。

(ゆっくりすべりに関係する現象)
 プレート境界付近を震源とする深部低周波地震(微動)のうち、主なものは以下のとおりです。
 (1)四国中部から東部:5月1日から12日
 (2)東海:5月5日から10日
 (3)四国中部:5月11日から24日
 (4)四国西部:5月11日から21日



2.地殻変動の観測状況
(顕著な地震活動に関係する現象)
 5月10日の日向灘の地震に伴い、GNSS観測で小さな地殻変動を観測しています。

(ゆっくりすべりに関係する現象)
 上記(1)から(4)の深部低周波地震(微動)とほぼ同期して、周辺に設置されている複数のひずみ計でわずかな地殻変動を観測しました。
 2018年春頃から九州北部のGNSS観測で、また、2018年秋頃から四国西部のGNSS観測及びひずみ観測で、それまでの傾向とは異なる地殻変動を観測しています。

(長期的な地殻変動)
 GNSS観測等によると、御前崎、潮岬及び室戸岬のそれぞれの周辺では長期的な沈降傾向が継続しています。

(その他の現象)
 これらとは別に、5月10日から12日にかけて四国西部に設置されているひずみ計でごくわずかな変化を観測しました。



3.地殻活動の評価
(顕著な地震活動に関係する現象)
 5月10日に発生した日向灘の2回の地震、5月11日に発生した日向灘の地震は、その規模等から南海トラフ沿いのプレート間の固着状態の特段の変化を示す現象ではないと考えられます。

(ゆっくりすべりに関係する現象)
 上記(1)から(4)の深部低周波地震(微動)と地殻変動は、想定震源域のプレート境界深部において発生した短期的ゆっくりすべりに起因するものと推定しています。
 2018年春頃からの九州北部の地殻変動及び2018年秋頃からの四国西部の地殻変動は、日向灘北部及び豊後水道周辺のプレート境界深部における長期的ゆっくりすべりに起因するものと推定しています。
 これらの深部低周波地震(微動)、短期的ゆっくりすべり、および長期的ゆっくりすべりは、それぞれ、従来からも繰り返し観測されてきた現象です。

(長期的な地殻変動)
 御前崎、潮岬及び室戸岬のそれぞれの周辺で見られる長期的な沈降傾向はフィリピン海プレートの沈み込みに伴うもので、その傾向に大きな変化はありません。

(その他の現象)
 5月10日から12日にかけて四国西部のひずみ計で観測されたごくわずかな変化は、地震の揺れによって生じる観測点周辺の地下の状態変化(例えば地下水流動の変化)に起因するものであったと考えられます。



上記観測結果を総合的に判断すると、南海トラフ地震の想定震源域ではプレート境界の固着状況に特段の変化を示すようなデータは今のところ得られておらず、南海トラフ沿いの大規模地震の発生の可能性が平常時と比べて相対的に高まったと考えられる特段の変化は観測されていないと考えられます。


過去の調査結果へ->

南海トラフ地震についてへ->

問い合わせ先

地震火山部地震予知情報課 担当 宮岡
電話:03-3212-8341(内線4576) FAX 03-3212-2807

資料全文

参考資料


Adobe Reader

このサイトには、Adobe社Adobe Readerが必要なページがあります。
お持ちでない方は左のアイコンよりダウンロードをお願いいたします。

このページのトップへ