南海トラフ地震に関連する情報(定例)について -最近の南海トラフ周辺の地殻活動-
気象庁では、大規模地震の切迫性が高いと指摘されている南海トラフ周辺の地震活動や地殻変動等の状況を定期的に評価するため、
南海トラフ沿いの地震に関する評価検討会、地震防災対策強化地域判定会を毎月開催しています。
本資料は本日開催した評価検討会、判定会で評価した調査結果を取りまとめたものです。
次回は5月13日を予定しています。
なお、下記調査結果は本日17時00分に「南海トラフ地震に関連する情報(定例)」として発表しています。
報道発表日
平成31年4月5日
概要
現在のところ、南海トラフ沿いの大規模地震の発生の可能性が平常時(注)と比べて相対的に高まったと考えられる特段の変化は観測されていません。
本文
最近の南海トラフ周辺の地殻活動
現在のところ、南海トラフ沿いの大規模地震の発生の可能性が平常時(注)と比べて相対的に高まったと考えられる特段の変化は観測されていません。
1.地震の観測状況
3月13日に紀伊水道の深さ43kmを震源とするM5.3の地震が発生しました。この地震は、発震機構が東西方向に張力軸を持つ横ずれ断層型で、フィリピン海プレート内で発生しました。
3月27日に日向灘を震源とするM5.4の地震が2回発生しました。これらの地震は、発震機構が西北西・東南東方向に圧力軸を持つ逆断層型で、フィリピン海プレートと陸のプレートの
境界で発生しました。
プレート境界付近を震源とする深部低周波地震(微動)のうち、主なものは以下のとおりです。
(1) 紀伊半島北部:2月26日から3月3日まで
(2) 四国中部:3月1日から3月16日まで
(3) 四国西部:3月3日から3月22日まで
(4) 紀伊半島西部:3月29日から4月2日まで
2.地殻変動の観測状況
上記(1)から(4)の深部低周波地震(微動)とほぼ同期して、周辺に設置されている複数のひずみ計でわずかな地殻変動を観測しました。また、周辺の傾斜データでも、
わずかな変化が見られています。さらに、上記(2)、(3)の期間に同地域及びその周辺のGNSSのデータでも、わずかな地殻変動を観測しています。
GNSS観測等によると、御前崎、潮岬及び室戸岬のそれぞれの周辺では長期的な沈降傾向が継続しています。
2018年春頃から九州北部のGNSS観測で、また、2018年秋頃から四国西部のGNSS観測及びひずみ観測で、これまでの傾向とは異なる地殻変動を観測しています。
3.地殻活動の評価
上記(1)から(4)の深部低周波地震(微動)と地殻変動は、想定震源域のプレート境界深部において発生した短期的ゆっくりすべりに起因するものと推定しています。
2018年春頃からの九州北部の地殻変動及び2018年秋頃からの四国西部の地殻変動は、日向灘北部及び豊後水道周辺のプレート境界深部における長期的ゆっくりすべりに
起因するものと推定しています。2018年12月以降は、豊後水道のすべりが顕著です。
今回観測された深部低周波地震(微動)、短期的ゆっくりすべり、および長期的ゆっくりすべりは、それぞれ、従来からも繰り返し観測されてきた現象です。
また、3月13日に発生した紀伊水道の地震、3月27日に発生した日向灘の2回の地震は、その規模等から南海トラフ沿いのプレート間の固着状態の特段の変化を
示す現象ではないと考えられます。
上記観測結果を総合的に判断すると、南海トラフ地震の想定震源域ではプレート境界の固着状況に特段の変化を示すようなデータは今のところ得られておらず、
南海トラフ沿いの大規模地震の発生の可能性が平常時と比べて相対的に高まったと考えられる特段の変化は観測されていないと考えられます。
(注)南海トラフ沿いの大規模地震(M8~M9クラス)は、「平常時」においても今後30年以内に発生する確率が70~80%であり、昭和東南海地震・昭和南海地震の発生から既に70年以上が経過していることから切迫性の高い状態です。
問い合わせ先
地震火山部地震予知情報課 担当 宮岡
電話:03-3212-8341(内線4576) FAX 03-3212-2807
資料全文
- 南海トラフ地震に関連する情報(定例)について -最近の南海トラフ周辺の地殻活動-(1)[PDF形式:5.3MB]
- 南海トラフ地震に関連する情報(定例)について -最近の南海トラフ周辺の地殻活動-(2)[PDF形式:8.3MB]
- 南海トラフ地震に関連する情報(定例)について -最近の南海トラフ周辺の地殻活動-(3)[PDF形式:7.8MB]
- 南海トラフ地震に関連する情報(定例)について -最近の南海トラフ周辺の地殻活動-(4)[PDF形式:3.1MB]
[上記の資料は、気象庁、国土地理院、防災科学技術研究所及び産業技術総合研究所の資料から作成。
気象庁の資料には、防災科学技術研究所、産業技術総合研究所、東京大学、名古屋大学等のデータも使用。産業技術総合研究所の資料には、防災科学技術研究所及び気象庁のデータも使用。]
参考資料
- 第18回南海トラフ沿いの地震に関する評価検討会、第396回地震防災対策強化地域判定会 気象庁資料(1)[PDF形式:8.9MB]
- 第18回南海トラフ沿いの地震に関する評価検討会、第396回地震防災対策強化地域判定会 気象庁資料(2)[PDF形式:7.6MB]
[気象庁の資料には、防災科学技術研究所、産業技術総合研究所、東京大学、名古屋大学等のデータも使用。]