長官会見要旨 (令和5年5月17日)

会見日時等

令和5年5月17日 14時00分~14時16分
於:気象庁会見室


発言要旨

 冒頭私から3点述べさせていただきます。
 1点目は、石川県能登地方の地震についてです。
 5月5日に石川県能登地方でマグニチュード6.5の地震が発生し、最大で震度6強を観測しました。今般の地震によって被害が出ております。お亡くなりになられた方のご冥福をお祈り申し上げますとともに、被災された方々に心よりお見舞いを申し上げます。
 石川県能登地方では、2020年12月から地震活動が活発になり始め、2021年7月頃からさらに活発になっており、現在もその状態が続いています。政府の地震調査委員会でも、これまでの地震活動及び地殻変動の状況を踏まえ、一連の地震活動は当分続くと考えられると評価されています。
 地元の皆様におかれましては、今後も家具の固定、重い物の落下・転倒防止を行うなど、引き続き強い揺れを伴う地震への注意をお願いいたします。また、海底で規模の大きな地震が発生した場合、津波に注意する必要があります。
 気象庁といたしましても、引き続き、地震活動を注意深く監視するとともに、適時適切な情報発信、自治体への支援を行ってまいります。
 2点目は、暑さへの備えについてです。
 本日から明日にかけて、西日本から東北地方では、高気圧に覆われて晴れ、暖かい空気が流入するため気温が高くなる見込みです。今日や明日の最高気温が35度以上の猛暑日を予想しているところもあります。この時期は多くの人が十分に暑さに慣れていない状況です。また気温の変化も大きくなっていますので、日々の最高気温や環境省のホームページで公開されている暑さ指数を参考に、暑さ対策を実施していただきたいと思います。
 3点目は、大雨の備えについてです。
 これから全国的に本格的な出水期を迎えます。先日報道発表いたしましたように、気象庁では、「顕著な大雨に関する気象情報」について、線状降水帯による大雨の危機感を少しでも早く伝えるため、予測技術を活用し、5月25日からこれまでより最大30分程度前倒しして発表いたします。これにより、より早い段階で線状降水帯による大雨災害発生の危険度の高まりを把握いただくことが可能となります。
 また気象庁では、このような大雨による災害のリスクの高まりを5段階で表示する「キキクル」を提供しています。「キキクル」につきましては、国民の皆様が土砂災害や洪水災害からの自主避難の判断に役立てていただくため、民間事業者に協力をいただき、危険度の高まりや警報等の発表をメールやスマホアプリによりプッシュ型で通知するサービスを実施しています。
 気象台や自治体からの情報、報道機関の皆様による報道に加えて、これらの民間のサービス等もご活用いただき、適時的確な防災行動、防災対応をとっていただきたいと考えております。
 私からは以上です。


質疑応答

Q:5月5日の石川県珠洲市の地震で震度6強が出ましたけれど、改めて能登地方の現在の実施の状況と今後の見通しについて教えてください。
A:石川県能登地方では、2年以上活発な地震活動が続いています。このような中、5月5日14時42分に最大震度6強を観測する地震が発生し、その後、同じ日の21時58分に最大震度5強を観測する地震が発生するなど、地震活動がさらに活発になっていました。その後、時間の経過とともに地震の発生数は減少しているものの、5月5日の地震発生前よりも活発な状況が継続しています。依然としてこの地域での地震活動は活発であり、この状況は当分継続すると考えられますので、改めて家具の固定、重い物の落下・転倒防止を行うなど、引き続き強い揺れを伴う地震への注意をお願いいたします。また、海底で規模の大きな地震が発生した場合、津波に注意する必要があります。気象庁としては、引き続き地震活動を注意深く監視するとともに、適時適切な情報発信や自治体への支援を行ってまいります。

Q:能登地方の地震に続きまして、5月11日には千葉県の木更津市で震度5強の地震がありました。ここのところ日本付近で全体的に地震活動が活発になっているように感じますが、長官の見解をお願いいたします。
A:5月に入り、5日の石川県能登地方の地震、11日の千葉県南部の地震、13日のトカラ列島近海の地震と、最大震度5弱以上の地震が短期間のうちに続けて発生したと感じられたと思います。それぞれの地震の震源は距離的に離れておりメカニズムも異なることから、これらの地震に直接の関連性はないと考えています。また、過去にも1ヶ月以内に震度5弱以上の地震が複数回発生した事例もあります。日本国内では、いつどこで強い揺れを伴う地震が発生してもおかしくありません。引き続き、日頃からの地震への備えをお願いしたいと思います。

Q:線状降水帯の新たな運用が始まることに関してお尋ねします。今回の30分前の予測をもって発生と扱うなど、これまでにはない情報の取り扱いをすることになります。科学官庁として大きな変化だと思いますが、長官ご自身の受け止めを教えてください。
A:「顕著な大雨に関する気象情報」は、「線状降水帯」というキーワードを用いて、非常に激しい雨が同じ場所で降り続いており、大雨による災害発生の危険度が急激に高まっていることをお知らせする情報です。これまでは実況で3時間雨量などの基準を満たした際に発表してきました。新たな運用では、線状降水帯による大雨に対する危機感を少しでも早くお伝えすることを重視して、予測技術をリアルタイム的に活用し、実況から30分先までの間に基準を満たした場合に情報を発表いたします。この運用により、これまでより最大30分程度前倒しして情報をお伝えすることができるようになり、より早い段階で線状降水帯による大雨災害発生の危険度の高まりを把握していただくことが可能となると考えています。

Q:今の質問に関連してですが、最大30分前倒しすることによって昨年までよりも今年は線状降水帯が4割程度増えるといった話があるかと思います。このことについて、年によって差が出ることについて長官はどのようにお考えでしょうか?
A:線状降水帯の基準については、防災上の観点から、あくまで「顕著な大雨に関する気象情報」を発表するための基準として設定しております。雨量のような気象学的な要素だけではなく、キキクルの危険度なども基準に取り込んでいます。今回、防災上の観点から少しでも早くお伝えすることを重視して運用を改善したということでございます。

Q:これから出水期を迎えるにあたって、「キキクル」の活用を気象庁は呼びかけていますが、「キキクル」を皆さんにどのように活用してほしいのかという点と、「キキクル」について今後改善していきたいといった点がありましたら教えてください。
A:気象警報等は市町村単位で発表していますが、「キキクル」は、その市町村の中でもより危険度が高いところを局地的なことも含めて把握していただける情報となっています。ですので、特に大雨の情報が発表されたとき、さらには警報が発表されたとき、自分のところの危険度がどの程度あるのかをしっかり把握していただけますので積極的に使っていただきたいと思っています。一方で、「キキクル」の危険度は実況だけでなくて予測の部分も含めて計算しており、予測を改善することが極めて重要だと思っております。そういう意味で、予測技術の改善にも継続的に取り組んでいかなければならないと思っています。

Q:暑さについてですが、今日は東京都心で今年初の真夏日、群馬でも35度近くまで気温が上がっているところがあります。この時期の暑さは異例の早さという印象なのか、また、暑さへの注意点についてお伺いできればと思います。
A:今日の気温の状況を見ますと、5月としての観測史上1位を観測したところもありますので、5月としては非常に気温が高くなっていると考えています。高温ということで、熱中症への備えが重要だというふうに思っております。特に、連休以降は気温が低い状況が続いていたところから今日一気に気温が高くなっており、気温の変動が非常に大きくなっています。体が暑さに慣れていない状況だと思いますので、日々の最高気温の予想や環境省のホームページの暑さ指数の実況や予測等にも気を配っていただきつつ、自分の体が暑さによって消耗しないように注意していただければと思います。

Q:暑さの今後の見通しをいただけたらと思います。
A:明日は、関東や東北地方で35度の予想になっていた地点があったと思います。それ以降の日曜から来週にかけては、この暑さは一旦収まる予想です。

Q:線状降水帯の予測をやっていく上で観測データを揃えることも大事なっていくと思うのですけども、線状降水帯は西日本で多いと思っていたのが実は東北地方など北の方でも結構発生するということが言われてきています。これを踏まえてマイクロ波放射計などをさらに展開していくといったお考えはありますか。
A:観測の整備拡充は非常に重要と考えておりまして、アメダスの湿度計を順次整備する、気象レーダーを二重偏波型の新しいレーダーに順次更新していくということを現在進めております。マイクロ波放射計につきましては西日本を中心に整備しておりますが、整備の状況や成果を十分見た上で、他の地方にも展開すべきかどうかについて検討していく必要があると思っております。また、昨年度末に次の静止気象衛星の製造について契約を結んだところでございまして、特に海上の水蒸気の分布を三次元的に把握する上で次期気象衛星には非常に期待しているところです。この衛星の整備は少し長いプロジェクトにはなりますが、着実に進めていきたいと思っております。


(以上)

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