長官会見要旨 (令和4年5月18日)

会見日時等

令和4年5月18日 14時00分~14時25分
於:気象庁会見室


発言要旨

   よろしくお願いいたします。
   冒頭、私から2点述べさせていただきます。

   1点目は、大雨への備えについてです。
   すでに沖縄・奄美では梅雨に入っておりますし、その他の地域でも梅雨の季節が近づいております。大雨のシーズンに備えて、気象庁では昨年まで開催していた「防災気象情報の伝え方に関する検討会」の報告や現在開催している「防災気象情報に関する検討会」における議論を踏まえて、今日午前中に発表いたしましたとおり、防災気象情報の改善を実施いたします。
   その中から主なものとして二つお話しさせていただきます。
   一つ目は、線状降水帯による大雨の可能性を半日程度前からお伝えするというものです。線状降水帯については、昨年の6月からこれによる大雨が確認された時点で発表する「顕著な大雨に関する気象情報」の運用を開始したところですが、今年からはそのような状況になる可能性が高まってきた場合に半日程度前から気象情報によりその旨をお知らせして警戒を呼びかけます。私どもとしてはこれを線状降水帯の予測の第一歩と捉えており、現時点の精度を踏まえ、地方予報区と私どもは言っておりますが、全国を11のブロックに分けた地域の単位で発表いたします。この情報が発表された場合には、大雨災害に対する危機感を高く持っていただいて、例えばキキクルのこまめなチェック、ハザードマップや避難場所、避難経路の確認など、災害に備えていただきたいと思います。線状降水帯というのは同じ場所で非常に激しい雨が数時間にわたって降り続くというもので、急激に危険度が高くなるというものです。そうした可能性があるということを踏まえて警戒をしていただければと考えております。
   二つ目は、キキクルについてです。キキクルは現在、警戒レベル4相当に濃い紫と薄い紫を用いて運用していますが、これを紫に統一を致します。これは昨年に避難指示・避難勧告を避難指示に一本化したことに対応するものです。そして新たに警戒レベル5相当として黒の表示を追加いたします。これによって警戒レベル相当の情報とキキクルとの対応がわかりやすくなり、皆さんが行動をとる際の判断に、より一層活用していただけるものと考えています。このほか、国土交通省とも連携し、いくつかの防災気象情報の改善を予定しております。これから出水期に入っていきますが、こうした情報をぜひご活用頂いて、しっかりと防災行動をとっていただくようにお願いをしたいと思います。

   2点目は、「気象業務はいま」という刊行物についてです。6月1日は気象記念日です。気象記念日は明治8年、1875年の6月1日に気象庁の前身となる東京気象台で観測を開始したことを記念するもので、今年は147回目の記念日となります。気象庁では毎年この記念日に合わせ「気象業務はいま」という刊行物を作成しております。これは気象庁の最新の取り組みや今後の展望などについて取りまとめて、気象業務の全体像について広く知っていただくために刊行しているものです。今回から、特集とトピックスに特化した構成としております。皆様にも是非ご覧頂ければと思います

   私からは以上です

質疑応答

Q : 線状降水帯の半日前予測ですが、予測情報の第1歩として一般の方々や自治体等の災害対応にどう活かしてほしいと思っているのでしょうか。また、この情報を発表することで防災上どのような効果を期待されているのでしょうか。
A : 線状降水帯は同じ場所で非常に激しい雨が数時間降り続いて、急激に危険度が悪化する現象です。この情報が発表された時には、住民の方々には、危機感を高く持っていただきたいと思います。こまめにキキクルをチェックして状況を把握していただくほか、避難をしなければならない状況になった時にすぐに避難ができるように、ハザードマップや避難場所、避難経路をご確認いただきたいと思います。また、自治体の防災担当の方々には、例えば避難場所の開設手順の確認や水防体制の確認を行っていただいて、いつでも防災対応が取れるように準備をしていただきたいと思います。加えて報道機関の皆様には、ぜひとも災害を多くもたらしている線状降水帯という言葉をキーワードとして使って、早めの警戒を呼びかけるようにお願いをしたいと思います。

Q : 線状降水帯の半日前予測の情報発表について、予測精度の課題がまだ完全には解決しないままでの開始ということになりますが、それなりに外れたりすることがありそうだというなかで、運用面でどういうことを心掛けていきたいとお考えでしょうか、あるいは、大雨が降るという点において、線状降水帯の有無に関係なく防災上しっかりと備えてほしい等のメッセージがありましたらお願いします。
A : おっしゃる通り、線状降水帯の発生を正確に予測することはまだ難しいです。そういった精度を踏まえて、先ほど説明させていただいた情報発表の仕方を今年は行うと決めたところです。この情報を発表しても線状降水帯が発生しない「空振り」はもちろんあり得ますが、線状降水帯はひとたび発生すれば非常に大きな災害に結びつくという特徴がございます。そういった意味では、空振りだと言って油断することなくしっかりと警戒をして欲しいと思います。また、線状にはならなくても線状降水帯の基準の一つとしているような大雨には6割ぐらいの確率でなっていますので、空振りがあることはもちろん認めざるを得ませんが、だからと言って油断をしていただきたくないということが一つです。もう一つはその裏返しで、線状降水帯の発生の可能性が予測できなかった場合でも実際には発生してしまう「見逃し」も考えられます。また、大雨の災害は必ずしも線状降水帯が発生しなくても十分起こり得ますので、これまで通り大雨警報や土砂災害警戒情報あるいはキキクルといった情報を活用して、自治体からの避難情報に従って防災対応をとり、命を守っていただきたいと思います。
 
Q : 今夏の暑さの見通しなども徐々に出始めていますが、熱中症対策とそれに伴う気象庁の発信について、去年と同様あるいは異なるか、また、現時点で備えておくべきこととがあれば長官からお願いします。
A : 今年の夏はこれまでに発表された季節予報でも、沖縄・奄美では「平年並か高い」、その他の地域では「平年より高い」となっております。今年の夏も暑くなる可能性が高いので熱中症への対策を十分にとっていただきたいと思います。昨年全国で発表を始めた「熱中症警戒アラート」ですが、暑さ指数が33以上になると予想される場合に環境省と共同で発表するものです。今年はすでに4月27日から運用開始しております。この情報が出た時には暑さ対策をぜひとも徹底していただきたいと思います。今年はまだこの情報は発表されておりませんが、この情報が発表されていないから何もしなくていいということではありませんので、日頃から、環境省のホームページに掲載されている暑さ指数や気象庁の天気予報もご覧いただいて熱中症対策を取っていただきたいと思います。これから梅雨の時期になりますが、梅雨の期間でも暑くなる日がもちろんあり、急激に気温が高くなることもあります。体が暑さに慣れてないこともありますので、こういった点にも十分ご留意いただきたいと思います。

Q : 線状降水帯に関する情報の説明を受け、当初は半日前を目途に出すとしていたのが、今回は半日前から6時間程度前までという幅を持たせた形になりました。この目途をどう捉えるかにもよると思いますが、6時間もあれば東京から九州ぐらいまでは新幹線で行けてしまうわけであり、当初の明るいうちから早めの避難というコンセプトから逸脱してしまう気もしますが、長官のお考えはいかがでしょうか。
A : おっしゃる通り、明け方に発生することの多い線状降水帯について、前の日の夕方、明るいうちから備えを始めていただくことが大きな目的の一つであり、半日前というのが目標となっていました。一方、その精度はまだまだ改善の余地のあるところで、半日前には分からないもののさらに時間が経った段階で可能性が出てくるということがあり、その時にもう半日前を過ぎてしまったので何もしないということではなく、分かった時点でお伝えして、少し時間は遅くなりますが、同じように十分な警戒をしていただきたいということで発表するものです。
 
Q : 担当者の説明によると、6時間前だともう警報のリードタイムに差し掛かるので、12時間前の情報との性質が違うということを認めていらっしゃいましたが、このことについてはどうお考えでしょうか。
A : 12時間前から6時間前までの間は、その可能性をお伝えし、前もって危機感を高めていただくということに大きな意味があると思います。6時間前を過ぎると、すでに時間的な余裕がなくなりますので、危機感を高めるというよりも具体的な行動に移っていただきたいと思います。そういった意味で情報の発表の仕方も変わってきて、6時間前を過ぎたときからは可能性についての情報を出すのではなく、これまでも皆さんにお使いいただいている大雨警報やキキクルといったものをご活用いただいて防災行動につなげていただきたいと考えています。
 
Q : 私が取材している中では、情報の出し方がなかなか決まらず、直前まで何時間前まで情報を出せ得るのかといった検討を行った末、現在の出し方に落ち着いたイメージですが、今年から始まる情報として当初の想定通り、問題はないと考えられているのでしょうか。
A : 半日前を目標とすることについて、当初から、半日前では予想できなくとも、もう少し経ったら分かることもあることは認識していました。そのような精度のものを、どういう形で具体的に運用するかということについては、最後まで細かく検討・調整していました。

Q : 線状降水帯の情報に関してですが、的中率が地方単位ですと25%、見逃し率が67%にも及ぶというように、精度が担保できていないなかで、なぜこうした情報を始めるのかについてご説明をよろしくお願いします。
A : これまでの技術開発や様々な取組の目標として、今年から線状降水帯の予測を始めようと頑張ってきました。その予測の能力がどれぐらいあるのかを検証した結果、的中率が4分の1くらい、捕捉率、つまり見逃しでないものが3分の1くらいであることが確かめられました。もちろんさらなる改善が必要だということはもちろんですが、現在の精度であっても役立てていただくことができる数字だと判断をしました。情報発表が地方予報区の単位であることやこのような精度であることをご理解いただき、それに見合う対策として、皆さんにはまず危機感を高めていただいて、その後の情報をチェックして、いつでも逃げられるように準備をしていただくという対策が最も役に立つ使い方だろうと考え、この情報の提供を始めることを決めました。

Q : 今現在の的中率・見逃し率ですと空振りもあれば見逃しもある、それが続いてしまうと防災機関として気象庁としての信頼が揺らぎかねないという危機感や議論は庁内であったのでしょうか。
A : 線状降水帯は非常にインパクトの強いキーワードであるので、それが繰り返し空振りすることでキーワードを使う効果が薄れてしまわないようにしないといけないことは私どもも考えておりましたし、「防災情報に関する検討会」でもそのようなご指摘をいただいています。的中率は4分の1ですが、先ほど申しましたように、半分以上の事例で、線状降水帯にはならないものの、3時間で150ミリという災害をもたらしかねないような大雨になっていたことが確かめられています。技術的にはかなりチャレンジングですが、そういったことをご理解いただくようにすれば、キーワードとしての効果が薄れることはないだろうと判断をして予測を始めることとしました。
 
Q : 予測精度を上げていく上でマイクロ波放射計などの観測機器の設置がなかなか進んでいない実情があると思いますが、設置を加速していくようなお考えはありますか。
A : これ以上加速ができるかどうか分かりませんが、今はとにかく全速力で整備を進めているところです。この出水期中にも整備が進んでいく予定であり、新しく得られるようになった観測データについては、できるだけ早く予測の中に取り込めるような準備もしているところです。そういった意味で全速力でやっているというのが現状です。

Q : 線状降水帯について、これまでも民間の気象会社の中には線状降水帯が発生すると彼らなりの判断でその旨の情報を出しているのですが、今回気象庁がしっかりとしたルールに基づいて予測を出すことに伴って民間から情報を出すことはやめるように要請をされるのでしょうか。
A : 今のところ気象庁がやるから民間にやめるよう申し上げるつもりはございません。民間でそういった情報を出す場合には、それぞれの会社が、それぞれのやり方でその会社で判断した情報とわかるような形で公表されていると思います。そういう意味で、今のところ、気象庁が始めるからといって何か民間の会社にお願いをすることを予定してはおりません。

Q : 何か協力・連携してより良くしていく可能性はありますか。
A : それは十分考えていきたいと思います。例えば情報をすり合わせて同じものを出そうといったことは難しいと思います。どういったことができるかは白紙の状態でございますが、連携を強めていくことは方向性としては十分考えられます。

Q : 大雨特別警報の緊急速報メールについて、去年の秋に一旦、白紙・撤回をされてからもう間もなく大雨シーズンとなりますが、去年届いていた住民には今年も届くという理解でよろしいでしょうか。
A : 現状はそのようになっています。

(以上)

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