長官会見要旨 (令和4年4月20日)

会見日時等

令和4年4月20日 14時00分~14時24分
於:気象庁会見室


発言要旨

   新年度になりました。改めてどうぞよろしくお願いいたします。
   冒頭、私から3点述べさせていただきます。

   1点目は、先月発生した福島県沖の地震についてです。
   3月16日に福島県沖でマグニチュード7.4の地震が発生し、宮城県と福島県で最大震度6強を観測しました。この地震によって東北新幹線が脱線する等の大きな被害が出ております。今般の地震により、お亡くなりになられた方々のご冥福をお祈り申し上げますとともに、被災された方々に心よりお見舞いを申し上げます。
   今回の地震は、「平成23 年(2011年)東北地方太平洋沖地震」の余震域で発生したものです。この地域は依然として東北地方太平洋沖地震の前と比べて地震活動が活発で、この状況が当分の間続くと考えられます。
   また、東北地方はもともと地震の多いところであり、地震の発生確率が高いと評価されていることから、強い揺れや大きな津波に見舞われる可能性があるので、日頃からの地震への備えをお願いしたいと思います。

   2点目は、トンガ諸島火山噴火による潮位変化に関連することについてです。
   今年1月15日に発生した、フンガ・トンガ-フンガ・ハアパイ火山の噴火による潮位変化については、気象庁では津波警報等の枠組みを用いて情報発信を行いましたが、それには課題もありました。
   このため、気象庁では、まず、潮位変化のメカニズム等に関して、「津波予測技術に関する勉強会」において分析を行い、その結果を先日公表しました。噴火に伴う大気の波動が最初の潮位変化をもたらしたことがわかりましたが、その要因は複合的で、潮位変化が大きくなった原因などの全体を解明するには、引き続き調査・研究が必要で、大学等とも連携して進めていきたいと思っています。
   また、気象庁では、1月の事例を受け、海外の火山の大規模噴火の際に、日本でも潮位変化が生じる可能性がある旨、「遠地地震に関する情報」にて情報提供することとしました。その高さや到達時刻については不明とせざるを得なかったのですが、これについて、今回の分析を受け、最も早く潮位変化が到達する場合の時刻をお知らせするように改善を行いました。高さについては引き続き、不明とせざるを得ないと考えております。
   今後は、情報発信のあり方を議論するための検討会を開催し、その議論を踏まえてさらなる情報の改善を検討してまいります。
   これまでもお伝えしているとおり、火山噴火に伴う潮位変化に関する津波警報・注意報の発表は、原則、国内で実際に潮位変化が観測されてからの発表になります。海外火山の大規模噴火に関する情報が発表された際には、その後の気象庁から発表される情報に早い段階から十分注意してください。その後、津波警報・注意報が発表された場合には、地元自治体の指示等に従って避難などの対応をお願いします。

   3点目は、熱中症についてです。
   昨日、報道発表させていただきましたが、環境省と連携して発表する「熱中症警戒アラート」について、本年は4月27日より提供を開始いたします。
   「熱中症警戒アラート」は、熱中症の危険性が極めて高くなると予測される場合に、国民の皆様に、予防行動を効果的に促すことを目的とするもので、令和2年に関東甲信地方で試行し、昨年より全国に対象を広げて発表しております。
   今年の夏の気温につきましては、全国的に高めの予報となっております。「熱中症警戒アラート」や、環境省と気象庁から提供している暑さ指数や気温等に関する情報をご活用いただいて、熱中症の予防をお願いしたいと考えております。
   また、今週末から広い範囲で気温が高くなるという予想となっています。本格的な夏を迎える前の時期でも、多くの人が十分に暑さに慣れていない状況で気温が上昇する場合には、熱中症に注意が必要です。「熱中症警戒アラート」が発表されていない場合でも、日々の最高気温や暑さ指数等を参考に、油断することなく暑さ対策を実施していただきたいと思います。

   私からは以上です

質疑応答

Q : 線状降水帯の半日前の警戒を呼びかける取り組みを今年度の出水期から始められる件についてお伺いします。今年度の出水期から始められるということでしたが、先月の「防災気象情報に関する検討会」では予測精度に関して、昨年度の出水期の「顕著な大雨に関する気象情報」が発表されるような場合に予測できるのかということについて、「顕著な大雨に関する気象情報」が発表された9事例のうち、現状の予測精度では一部の事例しか予測できないという報告が、先月の「防災気象情報に関する検討会」でなされました。予測精度の課題は今後もあると思いますが、今年度から運用するにあたって、どのように呼びかけていくのか、どういったところを工夫して呼びかけていきたいのかということと、予測精度の検証はどのように行っていきたいかについて見解を伺いたいと思います。
A : 今年から線状降水帯の予測に関する情報を発表いたしますが、これは、これまで全く予測が困難であったものについて、最初の一歩を踏み出すものと考えております。「九州北部」といった地域単位で、線状降水帯が発生する可能性について情報を提供いたします。精度について、気象の予測はどの類のものであっても、空振りを減らそうとすれば見逃しが増え、予測する時間が長くなると精度が低下するため、最終的にどのような基準で情報を提供して、その結果どのような精度になるのか、最終的な調整を行っている段階です。このことが明らかになりましたら、発表した情報をどのように使っていただきたいのかという点も含めて、改めてご案内させていただきたいと思います。
 
Q : 運用するにあたり、事前の呼びかけの時間が短くなるという場合もあると思いますが、今年度は半日前の予測を行うにあたり、詳細の調整は今後進めていくと思われますが、今年度実際に予測への一歩を踏み出す際に、どのように検証や振り返りを行う予定ですか。
A : 予測を始めた後は、気象現象としてどうであったか、例えば、線状降水帯が観測されたときに発表する基準を満たしていたかといった観点での検証を行います。また、発表を始めた後でなくとも、過去のデータを使ってできる検証もありますので、これも含めて検証していきたいと思います。このような検証手法を使って、予測技術を高めるための指標として使っていきたいと考えています。一方で、我々の情報は精度に限界があるものなので、社会にどう役に立ったのかという観点での検証もおこなう必要があると考えています。
 
Q : 「防災気象情報に関する検討会」の話に関連して、検討会の中で、そもそも防災情報とは何かということについて、改めてその大枠を考える必要があるのではないかという議論がありました。また、情報の種類が非常に細かくなっているが、そのすべてを気象庁が担うのはなかなか難しいので、もっと民間の力を使えば良いのではないかという話もありました。これらについて、考えを伺いたいと思います。
A : まさにそれらは、今開催している「防災気象情報に関する検討会」の大きなテーマだと考えています。まず、防災気象情報だけで人々が避難するわけではなく、様々な取組や協力体制が必要という大きな視点がございました。そのような大きな視点で、防災気象情報や気象庁の役割をしっかり見つめ直して、検討を進めるべきというご意見が多数出されたと認識しています。次の検討会に向けて、気象庁の中で整理をしています。そういったことをしっかりと踏まえた上で、具体的に情報をどうしていくのかを考えていくことになろうかと思います。
 
Q : 最終的に結論を待って整理していくことは大事だと思いますが、その間にも様々なことが今年も起きると思っています。そういう中で、先取りして取り組んでいけるような事があれば教えていただけますか。
A : 私たちが「防災気象情報に関する検討会」でお示ししている一つの考え方は、警戒レベルを軸とし、それとの相対的な関係をしっかり意識しながら情報の全体を組み立てていこうというものです。
 
Q : 今年の来月と再来月などに何か具体的に工夫できることはありますか。先ほどのお話はコンセプトについてでしたが、具体的な事がわかるのはもう少し先になるのでしょうか。
A : 「防災気象情報に関する検討会」を立ち上げる前の「防災気象情報の伝え方の検討会」の結論の中にも、「中長期的に腰を据えて検討していくべきである」という文言があり、先ほど申し上げた大局的なものの見方から出発してやっていくべきということです。すぐに出来る事を次々とやってきた結果として今の状態がありますので、そういったことを踏まえてのご認識を皆さんがお持ちだったということです。私たちとしてもそのように考えていますので、まさに腰を据えた検討を考えています。
 
Q : 「熱中症警戒アラート」の開始に関連して、去年も何度か発表されましたけども実際、そんなに警戒しているように見えませんでしたが、警戒アラートをより一層、本当に警戒してもらうようにするためには何を訴えていけばいいでしょうか。
A : 「熱中症警戒アラート」だけではないと思いますが、そういったものを使って対応を取っていただくことが政府としても大きな目標になっており、この情報を発表する立場の気象庁はもちろんですが、一緒に発表している環境省などとも連携をして、まずは周知を図り、そして行動を促していくという日頃の取り組みが重要になってくると思います。

Q : 「熱中症警戒アラート」があまり警戒されていないのではないかという指摘が出ている件についてですが、北海道から沖縄まで一律の33以上という基準があります。当初の導入段階から、暑さが全然違う地域でも基準が同じで良いのかという指摘があったと思うのですが、そこに関して今年も33以上という一律の基準で行かれるということで、ここについては検証がされた上での一律の基準ということでしょうか。
A : 「熱中症警戒アラート」について、色々とご助言をいただいている気象庁と環境省で共同開催している検討会がございます。そこで昨年度の実績を評価していただいて、33という指数が妥当だというご意見をいただきつつも、地域による違いを検討していく必要があるのではないかというご意見もいただいています。私どもとしては、「熱中症警戒アラート」は始まったばかりでございますので、複数年の経験を経てデータも蓄積した上で地域ごとの差をどう考えるかを分析していきたいと思っています。指数が一律33というのは分かりやすくて良いというご意見もあったところで、そういった意味で今年については昨年と同様の基準で運用していきたいと考えています。
 
Q : 線状降水帯の半日前の予測について、今のところ府県気象情報の中で解説的に情報を発表されると検討会の中でもご発言ありましたが、府県気象情報は一般の人にはほとんど馴染みがないような、直接閲覧するようなことがないような情報だと思います。この情報を発表するときの何らかの報道対応や記者会見の開催の必要性について、長官はどのようにお考えでしょうか。
A : 線状降水帯の発生の可能性について気象情報の中に書き込んでいくような状況の中には、相当数の記者会見が必要なような状況が含まれていると思います。ただし、この情報を発表したことをもって自動的に記者会見を開催するといったことを考えているわけではありません。特に報道機関の方や報道機関に関連されている気象予報士さんは気象情報をよくご覧になっていると思いますので、報道機関の皆さんのご協力にも期待しているところです。
 
Q : 長官のおっしゃっているとおり、今回の取組は困難とされている線状降水帯の予測の第一歩というところですが、半日前の予測が住民にとってどのようなものになってほしいかであったり、半日前の予測に対する長官の期待のようなものがあればお聞かせください。
A : 先ほど精度について最後の調整をしているというお話をさせていただきました。それとも関連しますので、最終的にはこういった情報になるのでこういうことをしてくださいということを改めてお伝えしたいと思いますけれども、現段階で考えると住民の皆さんにはとにかく危機感を高めていただくことが非常に大事だと思っています。線状降水帯はひとたび発生しますと急激に状況が悪化して、「キキクル」で言いますと今まで赤色や黄色だったものが急に紫色になっていくという変化が想定されます。そういうことが起こり得るということなので、とにかく警戒を高めていただくことが第一だと思っています。もう少し精度の評価や情報の組み立てができたところでもう一度改めてお伝えしたいと思います。
 
Q : 2021年度が終わりましたが、気象庁のホームページの広告に関して、いくらの利益があったとか、何かそういったようなものを受けて、例えばこういう方針にするといった報告はありますか。
A : 新しい年度になりましたが、昨年度と同様の広告の掲載を続けていきたいと考えており、今もすでに続けているという状況でございます。

Q : 効果がどれぐらいあったとか、それによって予算がどうなるということは公表されないのでしょうか。
A : 今年度については、気象庁と契約の上で広告を掲載してくださる事業者さんが、1年間で1200万円分のホームページの運用経費を広告で得て、それを運用費に当てていただくことになっています。

Q : 1200万というのは実績と今後の目標のどちらですか。
A : 今年度の契約での金額です。

Q : 昨年度の実績から何か変化はあったのか。
A : 情報基盤部で答えられますか。(情報基盤部)昨年度は7月から3月までの広告掲載でおよそ800万円が運用経費に当てられております。これは、先ほど長官が今年度は1200万円と申しましたが、月額にするとほぼ同額ということになります。

Q : 800万円の収益があったということで、広告掲載してなかった時期がありますので、1月あたり100万円程度になるという実績が昨年度あったということでしょうか。
A : (情報基盤部)おっしゃるとおりです。仕組みについて補足しますと、年度当初に提案された額で一度確定されますが、途中広告停止があったりした分などにつきましては、後々差し引かれるという仕組みになっております。

Q : 最近、3月、4月になって有感地震が多いと思うのですが、それに対しての受け止めと今後の備えについて改めて注意喚起をお伺いしたく思います。
A : 3月、4月は地震が多いように感じられていると思いますが、実際に調べてみますと大きな地震の後で引き続いているものや特定の地域で多くなっているものを除くとそれほど全国的に増えているということではなく、異常なことが起こっていると私どもとしては考えておりません。一方で、日本はどこでいつ大きな地震があってもおかしくない国でございますので、そういうことに関わらず、常日頃からの地震への備えを怠らずに行っていただきたいと考えています。

(以上)

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