長官会見要旨 (令和4年3月16日)

会見日時等

令和4年3月16日 14時00分~14時22分
於:気象庁会見室


発言要旨

   冒頭私から、2点、述べさせていただきます。

   1点目は、今年の冬の天候についてです。
   先日、報道発表もさせていただきましたが、3月11日に異常気象分析検討会を開催しまして、今年の冬の天候の特徴とその要因について見解をまとめたところです。
   今年の冬の降雪量は、豪雪地帯全体としては平年と同程度でしたが、北日本から西日本の日本海側を中心にしばしば大雪となりまして、平年値を上回る降雪量となった地点が多く見られました。特に西日本では平年値の2倍を超えたところがありました。また、気温は12月下旬以降、平年を下回る傾向が続き、東日本・西日本で寒冬になりました。
   先日の検討会では、これは、ラニーニャ現象の影響などにより、日本付近で偏西風が南へ蛇行する状態が続いて日本列島に寒気が入りやすくなったためと分析をしました。
   気象庁や各地の気象台では、特に大雪に関して、気象情報や注意報、警報などの情報発表に加えて、関係機関と連携した緊急発表などにより、大雪に対する注意警戒を呼びかけたところですが、今後、関係機関と振り返りを実施して今後の情報発信の改善に活かしていきたいと思いますし、あわせて雪の予報精度の向上にも努めてまいりたいと考えています。

   2点目は、来週3月23日の「世界気象デー」についてです。
   こちらも先週報道発表させていただきましたが、1950年3月23日に世界気象機関WMO条約が発効したということで、WMOが毎年この日を「世界気象デー」としております。
   皆さんご承知のことだと思いますが、大気には国境がありませんので、気象業務は一つの国だけでは行えません。例えば、気象観測データを全ての国同士、リアルタイムで交換するといった国際協力が不可欠です。また、気象庁のひまわりのデータや台風の予測などをアジアの各国に提供するといった協力も行っています。こうした多国間の協力の調整などを行っているのがWMOです。
   このWMOでは、毎年3月23日の世界気象デーにテーマを決めて広報活動をしており、今年のテーマは「早めの警戒、早めの行動」となっております。先日のIPCCの報告にもありましたように、近年、気候変動の影響によって大雨などの極端な現象が増えており、早期警戒情報や早めの避難の必要性・重要性の高まりということが、世界的にも認識されるようになったことが背景になっているものだと思います。
   気象庁としても、こうした国際協力体制の下、国内の関係機関や自治体などともしっかり連携をして、住民の皆さんの早めの避難につながるような情報の改善に取り組んでまいります。
   国民の皆さんには、早めの防災行動をお願いするのはもちろんですが、この機会にぜひ、気象業務には国際協力が欠かせず、そのためにWMOを通じた様々な協力が行われていることも広く知っていただければと思っています。

   私からは以上です

質疑応答

Q : 3月8日にパプア・ニューギニアで大規模な噴火がありました。トンガの噴火による津波を受けて気象庁では当面の処置をとられているかと思いますが、今回の対応についての評価あるいは長官として感じられたことがありましたらお願いします。
A : 結論から申しますと、皆さんにお伝えしていた通りのことができており、特段新たに課題となるようなことはなかったと思っています。トンガの時の課題を受けまして、2月8日に報道発表させていただいたことを当面の方策として行いました。
 具体的に申しますと、3月8日の18時50分頃にパプア・ニューギニアのマナム火山が噴火し、噴煙が約1万5千メートルに到達しました。気象庁では、この情報をダーウィン航空路火山灰情報センターから入手して、同日の19時50分に大規模噴火が発生したという情報を発表しています。次に23時02分にはその火山から日本に向かう津波の経路上にある海外の観測点で潮位の変化が観測されていない旨の情報を発表しました。その後、国内の潮位観測点でも潮位変化が観測されなかったということで、翌日午前02時00分に日本への津波の影響がない旨の情報を発表しました。すでにお伝えしていた通りですが、これらの情報はすべて、地震ではないものの「遠地地震に関する情報」という形でご提供しました。最初の2回の情報発表に伴いまして、21時20分と23時30分にそれぞれ報道発表をしています。
 冒頭で申し上げましたように、今回は新たな課題というのはありませんが、トンガのことを受けて、勉強会で現在行っているメカニズムの分析や、情報のあり方の検討を引き続き行ってまいりたいと思っています。
 
Q : 津波予測技術に関する勉強会の中でも触れられていましたが、今回のパプアの事例は報告書にどれほど盛り込まれるのか、あるいは参考とされるとお考えでしょうか。
A : 報告書にどのように書かれるかについては、これから座長等と相談しながら決めていきます。情報をどのように発表したという事実について言及をしても良いのではないかと私は思いますが、これから相談していくことかと思います。
 
Q : パプアの事例に関連してお聞きします。津波の被害の心配なしという情報を午前02時に発表するための判断基準・材料について、実況を見ながら慎重に判断されたと思いますが、先日のトンガのケースを踏まえた上で情報発表のタイミングを見極めることはマニュアルにないような世界だったと思いますが、このことについてもし分かれば詳しく聞かせてください。
A : トンガの事例で何時頃どのようなことが起こっていたという経験があることと、普通の津波であれば何時頃に潮位の変化が現れるはずだという知見がありましたので、この時間までに潮位変化がなければもう今後はないだろうと判断し、それぞれの観測点で潮位の変化がないということを確認した上で、今回の情報を発表しました。
(地震火山部管理課)長官が申し上げたように、国内と海外の潮位観測を実況で監視しておりましたし、トンガの事例では気圧変化が観測されていたため、並行して、国内の気圧変化がないということも確認しておりました。その上で、最終的に日本への津波の影響はないという情報を発表して終了したという形になります。
 
Q : 当面講じる対応策をこのまま続けるということで、特に過不足なく対応できたという手応えで間違いないでしょうか。
A : その通りです。
 
Q : トンガの件やパプア・ニューギニアの件に関連して、噴煙が1万5千メートルを超えるような噴火になったら監視を始めるなどの基準があり、そのような運用を当面の間続けるということで間違いないでしょうか。
A : 噴煙が1万5千メートルを超えるような大規模な噴火のときにトンガの時のような現象が起こり得ると考えて、現在、それを判断基準として火山の噴火に伴う情報を発表することとしています。
 
Q : その運用を当面の間続けるということでしょうか。
A : その通りです。
 
Q : 来年度は、線状降水帯に関する情報を発表できる場合は、半日前に発表するという話だったと記憶しています。年度が替わる時期になってきて、先日の「防災気象情報に関する検討会」で発表する情報の内容についても話があったと思うのですが、その内容について、いつぐらいに運用が始まるかについてもう少し具体的なスケジュールを教えていただきたいです。
A : 線状降水帯の予測はこれまで難しかったわけですが、次の出水期からその予測についての情報提供の第一歩を踏み出します。府県気象情報や地方気象情報と呼ばれている情報があり、これらは報道機関や自治体などにもご覧いている情報です。先日の「防災気象情報に関する検討会」でお話させていただいたのは、線状降水帯の発生の可能性がある場合には、これらの情報にそのことを付け加えてお伝えするという形をご提案させていただき、おおむね了解をいただいたものと思っています。これからさらに詳細をしっかり詰めていきたいと思います。時期的には出水期が始まる前までに提供を開始したいと思っています。
 
Q : 梅雨入り前でしょうか。
A : その通りです。
 
Q : 5月とかでしょうか。
A : 細かい日付までは決められていません。少し大雑把な言い方になりますが、出水期までには開始したいと考えています。
 
Q : 線状降水帯の予測についてですが、出水期までに運用開始予定ではあるものの、一定の周知の期間を設けて、どのように活用してほしいという趣旨で伝えていく必要はあるかと思っています。今回開始する予定のものは、半日前から広域でという形ではありますが、現在、長官としてこの情報が出た際にどのように住民の皆さんなどに活用してほしいかについてお聞かせ願えますでしょうか。
A : 線状降水帯の予測についての情報提供の第一歩を踏み出すのですが、残念ながら、いつどこで起きるのかを事前に予測するというレベルには至らず、私どもが地方予報区と呼んでいる、例えば「九州北部」や「四国」といった広い範囲のどこかで線状降水帯が発生する可能性があることが予測できるようになります。そのため、すぐにその情報を一人一人の皆さんの避難行動などまでに結びつけることはなかなか難しいと思っており、どちらかと言うと危機感を高めるためにご活用いただきたいと思います。また、線状降水帯の一つの特徴である、雨が降り始めてからその激しい雨が降り続き、危険度が急激に上がっていくということを、知っていただいて備えていただくということになろうかと思います。なお、出水期より前に、新たな情報をどのような形で発表して、皆さんにどのようにお使いいただきたいかについては、改めてお知らせをしたいと思います。

Q : 御嶽山についてお聞きします。先月の2月に噴火警戒レベルを1から2に上げました。以降の推移を見ますと、火山性地震の数は少ないものの続いており、火山性微動も収まっていません。長官としてそうした火山活動をどのように評価しておりますでしょうか。また、あわせて引き続き今どのような警戒注意を呼びかけていきたいかお考えをお聞かせ願います。
A : お話いただいたように、2月23日に火山性の地震が多発したため噴火警戒レベルを2に上げ、現在も23日以前に比べて火山性の地震や微動の活動が高い状態が続いています。このため、火口からおおむね1キロの範囲に影響を及ぼすような噴火の発生する可能性があるので、その範囲に入らないといった警戒が必要です。

Q : 安全はもちろんのことだと思いますが、ふもとの自治体からは真夏の誘客への影響を懸念する声もあります。安全第一であることはもちろんですが、現時点で噴火警戒レベル1に引き下げる検討をしているのか、また、いつまでに検討する予定かについて現時点での考えをお聞かせください。
A : 火山の噴火警戒レベルの引き下げについては、様々な社会的な事情があるにせよ、火山の活動状況をみて判断するものなので、現時点でいつ頃という見通しは立っていません。

Q : トンガの噴火とパプアの噴火に関連してお聞きします。トンガの海底火山の噴火が起きたことによって、気象庁として特に海外の噴火をどのように速やかに覚知し情報収集をするかという課題があると思っています。火山の防災ということで、気象との関係性は薄いとは思いますが、まさに世界気象デーのテーマが国際機関の連携というところで、改めて国際的に海外の噴火の発生状況など、迅速な情報の把握や連携について、どのようにお考えになっているか伺いたいと思っています。
A : 火山の噴火そのものは、先ほど世界気象デーでご紹介したWMOの守備範囲を少し超えているのですが、航空機のための気象情報の枠組みで火山の噴煙についての情報を世界で協力して作っていく仕組みがあります。この仕組みの中で火山灰情報の地域センターになっている各国がそれぞれ監視をしており、その情報が交換されています。

Q : そういった適切な運用をして火山の噴火などの情報を捉えていくということでしょうか。
A : 気象庁の中でも、気象衛星ひまわりで見えるものもありますが、それに加えてそうした外国からの情報も、監視に役立てているという状況です。

(以上)

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