長官会見要旨 (令和4年2月16日)

会見日時等

令和4年2月16日 14時00分~14時17分
於:気象庁会見室


発言要旨

   冒頭私から、3点述べさせていただきます。

   1点目は、トンガ沖の火山噴火による潮位変化を踏まえた当面の対応についてです。
   1月15日に発生した火山噴火による潮位変化につきまして、2つ課題があったと考えています。
   1つ目は、観測された潮位変化のメカニズムが分からなかったために、観測されてから津波警報の発表までに時間がかかったということ。
   2つ目は、噴火の発生から津波警報の発表までの間の情報発信に不十分な点があったということです。
   こういった課題につきまして、気象庁としての取組を先だって報道発表させていただいたところです。
   潮位変化のメカニズムの分析や、火山噴火に伴う潮位変化に対してどのように情報を発信するのかについて、有識者を交えた検討を行うということで、すでに一昨日に1回目の勉強会を開催しました。まずは、これらの検討をしっかりと進めていきたいと思っております。
   それから、これらの検討結果がまとまるまでの間の当面の対応を整理いたしました。具体的には、海外で大規模な火山噴火が発生した場合や、噴火の後、日本へ津波が伝わってくる経路上にある海外での観測点で潮位変化が観測された場合に、日本でも潮位変化が観測される可能性があるということをお知らせすることといたしました。このことにつきましては、本来は地震ではないものの、「遠地地震に関する情報」を使うこととしております。また、日本で潮位の変化が観測された場合には、その変化の大きさに応じて津波警報・注意報を発表することといたします。この津波警報・注意報の発表というのは実際に潮位の変化が観測されてからの発表ということになりますので、それらの情報よりも前に発表される「遠地地震に関する情報」が発表された場合には、気象庁から発表される情報に早い段階から注意をしていただきたいと思います。その後、津波警報・注意報が発表された場合には、自治体等の指示に従って避難などの対応をお願いしたいと思います。

   2点目は、季節予報の精度向上についてです。
   こちらも先週に報道発表を行っておりますが、気象庁では、季節予報の精度向上をさせることによって、生産性の向上や気候リスクの低減を図っていただきたいと考えておりまして、関連する技術開発をこれまで進めております。今回の改善は、季節予報に使っています「大気海洋結合モデル」という予測技術を刷新して精度を向上させたというもので、2月10日発表の「エルニーニョ監視速報」から、この新しいモデルを使っております。
   この「大気海洋結合モデル」とは、大気と海洋を一体として予測するもので、昨年ノーベル物理学賞を受賞した真鍋先生が1960年代にその基礎を築かれたもので、その後多くの研究者や開発者によって改良がされております。今回運用を開始した新しいモデルでは、大気や海洋の変化を従来よりもきめ細かく計算できるようにしたことなどによって、エルニーニョ現象やそれによる日本への天候の影響などを正確に予測することが可能になり、季節予報の精度を向上させることができるようになっております。様々な産業において季節予報の活用が進むことを期待しております。また、気象庁では引き続き技術開発を進めてまいります。

   3点目は、先ほど報道発表させていただきました、交通政策審議会気象分科会の開催についてです。
   気象分科会では、今後「DX社会に対応した気象サービスの推進」ということをテーマに審議を進めていく予定です。最初の審議を2月22日に開催します。
   近年のICTの発展により、観測・予測技術の高度化が急速に進んでいます。また、利用者のニーズも多様化しておりますし、気象データの利活用がさらに拡大しているといったように、気象庁や民間などによって行われている気象サービスを取り巻く社会環境が大きく変化しております。こうした状況の中で気象庁や民間の事業者等が行う気象サービスがどのようにあるべきかということについて、議論を行っていきたいと思っています。気象庁は、気象予報業務許可制度など、気象庁以外の方々が行う観測や予報に関する様々な制度を運用しております。こういった制度についても点検をしていきたいと考えております。

   私からは以上です。

質疑応答

Q : 特別警報の緊急速報メールの廃止の問題について伺います。去年の秋に国土交通大臣から再検討を促されてから、もう3、4ヶ月が経とうとしています。去年12月には自治体へのアンケートなども実施されているかと思いますが、現在の検討状況について教えていただけますでしょうか。
A : お話にございましたとおり、特別警報を緊急速報メールで配信するということについて、その配信の終了について、昨年10月の報道発表を受けて、避難に必要な情報が得られなくなるのではないかといった懸念の声があったことから、当初予定していた配信終了をいったん見送りました。
 その上で、気象庁としては、全国の市区町村を対象として、気象庁からの防災気象情報を受けて、自治体側の避難情報の発令を検討・判断する仕組みがどのように運用されているのか、避難情報や防災気象情報を適切な手段で住民に伝達するといった仕組みがどのように整備・運用されているのかについて、アンケートで調査・確認をしているところです。アンケートの回答につきましては、1741市区町村のうち現時点で1718の市区町村から回答いただいております。
 現在、気象庁においてこれらの回答を丁寧に確認しており、必要に応じてご回答いただいた市区町村に確認の問合わせなどを行っているところです。公表までには集計結果を分析・評価するといったようなことも必要だと思っており、一定の時間がかかるものと考えております。準備が整い次第公表したいと思いますので、もうしばらくお待ちいただければと思います。
 その後どうするのかについては、これまでの繰り返しになって恐縮ですけれども、アンケートの結果をしっかりと確認した上で判断していきたいと考えております。
 
Q : その後どうするのかについて、アンケートの結果や国土交通省からのさらなる追加の意見なども踏まえた上で、例年通り配信すると判断をされた場合に向けて、今年の大雨・台風シーズンでも例年通り配信できるように、システムの更新や整備を進めているのでしょうか。
A : 今後どうするのかについては、アンケートの結果を踏まえて検討することにしており、それまでの間は今の状態を続けたいと思います。

Q : 今夜以降の大雪についてですけども、既に情報でも「今シーズン一番の大雪のおそれ」という文言の呼びかけも出ていますけれども、防災上の注意点呼びかけについて長官からも言葉はいただけないでしょうか。
A : 上空の強い寒気や低気圧の影響で明日にかけて、北日本から西日本の日本海側を中心に大雪となる見込みです。特に近畿地方北部と東海地方、特に岐阜県、また北陸地方で降雪量が多くなる恐れがあります。大雪や路面の凍結などによる交通障害などに十分警戒をしていただきたいと思います。すでにこれまでに降った雪で平年を上回るような積雪になっている地域もあります。今後、最新の気象情報に加え、道路などの関係機関の情報にもご留意いただいて、雪への備えを十分にしていただきたいと思います。

Q : トンガの海底噴火による津波の研究や勉強会が進んでいますが、一方で文部科学省の方から東大の佐竹先生の研究チームなどに特別な研究費が補填されるという発表がありましたが、この特別な研究は気象庁の今後の改善に向けて寄与するものなのでしょうか。連携しているかという部分をお聞かせいただければと思います。
A : 火山噴火による潮位変化等に関する現象のメカニズム解明のためということで、気象庁の「津波予測技術に関する勉強会」の座長もやっていただいている東京大学の佐竹教授を研究代表者として研究の提案が行われて、今般、文部科学省においてその助成が決定されたという経緯だと承知しております。
 研究分担者には「津波予測技術に関する勉強会」の委員の方々も数名入っておりますし、私どもの気象研究所の研究官も入っております。
 この研究計画については、立案の段階から気象庁もしっかり連携をさせていただいておりまして、この研究で得られた成果を、私どもの有識者を交えた検討の場にもしっかり生かして参りたいと思っており、良い研究成果を期待しているところです。

Q : 首都圏の大雪について、このところなかなか思ったように降ったり、思ったほど降らなかったりということが続いたと思います。これは降雪の予報がすごく難しいのでやむを得ないし、どんどん情報を発信していっていただきたいと思うのですが、夜以降、時間が経つと雨から雪に変わり、気温が下がれば所によっては積もる可能性があるという情報が夜中になっても更新されずに伝わっていました。朝になっても凍結するかも知れませんと言っていました。また、実際には温度も上がっており雪にならないので凍結のおそれもそれほど大きくなくなっていても、前日の緊急発表の時の情報がずっと繰り返されていました。情報と同じ現象が本当に起きてれば、それが繰り返されることに意味がすごくありますが、ある程度リスクが小さくなっても同じ情報がずっと流れるというのは、なかなか受け止める側としては間違った受け止めになる可能性もあるので、情報のアップデートをもう少し上手く行うような考えはありませんか。
A : 関東南部の降雪については、気温のわずかな違いによって雨になるか雪になるかというところであり、その予報は大変難しいところですが、まずは予測精度の向上に努めていきたいと思います。それから、今おっしゃったように、予測精度を踏まえつつも、大雪が予想されるときにはしっかりと警戒を呼びかけるということも重要でございますので、気象庁は大雪が予想されるときには大雪警報・注意報を発表してまいります。また、最近では国土交通省の関係局と共同で緊急発表も行っており、こういった警戒の呼びかけも引き続きしっかりやっていきたいと思います。
 ご質問はそのような情報が出た後で、予想したことと現実とがだんだん異なってきた時にどうフォローするかという観点だと思います。2月の10日から11日と13日から14日にかけての2回について、予想に比べて気温が高くて雪にならなかった、あるいは降雪量が少なかったという事例がありました。例えば14日の事例では、東京都心で雪がほとんど積もっていないという状態でしたので、そういった時に何か情報をアップデートすることが可能かということについては少し考えてみたいと思います。

Q : 交通政策審議会気象分科会の説明の中で、気象庁以外が発表する予報に関する制度についても点検をしたいと発言ありましたが、これの意味するところは、予報の中身も多様化している中で、あまり予報が不正確にならないように、精度が良くないものは注意をするなどして精度を高めるようにある程度規制等を行う必要性があるという意味合いなのか、それともそうではなく、多様化したという前提で、皆で何か基準を考えられないかという意味合いなのかが分からなかったので教えていただけないでしょうか。
A : これから審議して検討していくところですので、予断をもってここで申し上げるのは控えたいと思います。私が今考えていることは、DX社会において、予報や気象データがこれまでより広い分野で今までとは違う使われ方をしており、これからさらに利活用を進めていってより良い社会にしなければいけないという文脈の中で、今の制度に何か課題があるかをしっかり点検するというのが今回の検討の趣旨だということです。

Q : 今まで前提としていた情報とは違うタイプの情報が出てきているので、それの中身や確からしさをどのように評価していくかなども含めて検討していくということでしょうか。
A : そういったことも含めて検討したいと思います。

(以上)

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