長官会見要旨 (令和3年12月15日)

会見日時等

令和3年12月15日 14時00分~14時26分
於:気象庁会見室


発言要旨

   冒頭私から1点述べさせていただきます。

   先月報道発表させていただきましたが、令和3年度の補正予算案に、線状降水帯の予測精度向上のための予算として、大変大きな額が盛り込まれたところでございます。
   線状降水帯は、毎年のように発生して大きな被害をもたらすような現象ですが、現状では事前の予測が難しく、発生後の情報提供にとどまっているところです。この線状降水帯の予測を早期に実現するための予算が盛り込まれました。このことは、何とかして線状降水帯の予想し、それを防災・減災につなげていかなければいけないという政府全体の決意の表れだと思いますし、私たち気象庁への大きな期待の表れだとも感じており、大変身の引き締まる思いでございます。
   気象庁といたしましては、補正予算が国会で認められましたら、大学や研究機関あるいは関係省庁との連携をして、線状降水帯の予測を行う上で重要とされている水蒸気の観測や、スーパーコンピュータの強化などの機器の整備、加えてスーパーコンピュータで運用していく数値予報モデルの高度化のための技術開発に取り組んで、線状降水帯の予測を早期に実現し、住民の皆さんの早期避難につながる情報提供を実現するために総力を挙げて取り組んでいきたいと考えているところです。

   私からは以上です。

質疑応答

Q : 今年最後の長官会見ということで、気象災害、地震、火山噴火など、今年もさまざまありましたが、この1年を振り返って、長官の所見を聞かせてください。
A : この1年を振り返ってみますと、まず、ここ数年、毎年のように大変な風水害が発生している中、今年もまた、特に線状降水帯が原因となるような大雨被害がたびたび発生をしました。
 また、地震の分野についても、今年2月に最大震度6強を観測した福島県沖の地震がありましたが、その他にも度々大きな地震が発生したところです。火山の分野についても、時折活動がやや活発になるというようなこともあり、8月には福徳岡ノ場で火山の噴火がありました。これによる軽石が漂流して、船舶の運航や漁業などに影響が生じているというところです。
 こうした中で気象庁といたしまして、今年一年というのはちょうどこの虎ノ門の新庁舎で業務を実施した最初の一年であり、気象庁だけではありませんが、新型コロナ感染症への対応しながらの業務となった一年でしたが、今申し上げたような大雨、地震、火山に関する情報発表については概ね適切に対応ができたのではないか、国民の皆さんの安全・安心な暮らしを守るというような私たちの仕事については、着実に行えたのではないかと、少なくとも私たちとしては、意図した通りの仕事ができたと考えているところです。今後も引き続き、職員一同、皆さんの期待に応えていけるように、この一年で明らかになった課題に一つ一つ解決策を見つけながら着実に仕事をしていきたいと思っています。
 今後、仕事の改善ということに関しては、今年も線状降水帯による被害が発生したこともあり、その予測精度向上が喫緊の課題だと改めて認識したところでございます。これに関連して、8月にIPCCの第6次報告書というのが公表されました。この中で、極端な現象がこれからますます強くなっていくことが指摘されています。線状降水帯の予測精度向上は、そういった変化の中での適応策の一つと捉えることも出来ると考えております。
 冒頭お話しさせていただいた補正予算をお認めいただき、これを活用することで、技術開発などにしっかり取り組んでいきたいと考えております。これに限らず、台風などの風水害、地震、火山や気候変動の情報提供についても、関連する技術開発も含めてしっかり取り組んでいきたいと考えております。また、地域防災の支援についても、近年力を入れているところであり、改善できるところはしっかり取り組んでいきたいと考えているところです。
 
Q : 緊急速報メールの廃止の検討について、自治体へのアンケート調査を行っていると思いますが、その進捗とこれからのスケジュールについて改めてお聞かせください。
A : 10月12日に緊急速報メールによる特別警報の配信を終了するという報道発表の後、避難に必要な情報が得られなくなるのではないかといった懸念の声が出てきたということで、当初の終了の予定を一旦見送って、現在、全国の市区町村で気象庁の情報に基づいて住民の避難を促す情報提供の発令やその伝達の状況について改めて調査確認をすることとして、アンケートを実施しているというところでございます。
 このアンケートについて、12月10日までにご回答をお願いしていたところで、現時点で1500を超える市町村から回答がございました。私どもとしてはより多くの市区町村からの回答をお願いしたいと考えているので、引き続き残りの市区町村に回答をお願いしている状況でございます。
 アンケートの結果の公表は来年早々を目指して作業を進めていますが、公表までには実際の集計作業に加えて、一部解答について事実関係の確認といったことも丁寧に行う必要があると考えております。また、集計結果を分析・評価するためにも一定の時間をいただくことになると思いますので、もうしばらくお待ちいただければと思っております。
 その後、特別警報の緊急速報メールでの配信機能をどうするかということについては、今回のアンケートの結果を見て検討していきたいと考えているところです。
 
Q : 冒頭でもご発言ありましたが、線状降水帯の予測について質問です。今、国会で補正予算について審議中ではございますけれども、少なくとも来年度には、半日前に広域での予測を開始するというスケジュール感が示されております。前回の発表後から、情報のあり方・どのような発表の仕方をするかについて具体的なものが出てきているのか、発表するとすればどのようなスケジュール感になるのかを教えていただければと思います。
A : 来年度は、予測の第一歩として、広域を対象に半日先までについて線状降水帯の発生の可能性がどの程度あるのかということを予測できるようになるだろうと考えています。将来的には、対象範囲を絞り込むというような精度向上を進めたいと考えていますが、来年度にはいわゆる地方単位、例えば、九州北部や四国などの範囲のどこかで線状降水帯が発生する可能性がどのくらいあるかといった予測を目指しているところです。これをどのような形で情報提供して、どのような防災対応をお願いしていくことが有効なのかについては、今の時点で具体案はございませんが、有識者の皆さんや地方自治体あるいは関係省庁ともしっかり協力をして検討をしていきたいと思っているところです。
 
Q : 防災科学技術研究所が管理している日本海溝海底地震津波観測網(S-net)について、青森沖もしくは北海道の十勝沖あたりで不具合が生じているという件につきまして、先週に報道発表があってから一定期間経過していますが、長官としての受け止めと今後の見通しについてお伺いしたいと思っております。
A : 先週12月8日にS-net内の釧路・青森沖の観測点において障害が発生しました。この影響で、緊急地震速報の発表に最大で15秒程度の遅れが出る可能性が見込まれているということ、津波警報や注意報の切り上げ等において一定の迅速性が失われることが見込まれるところでございます。現在、防災科学技術研究所において早期復旧に努めていると聞いております。防災科学技術研究所とは緊密に連絡を取り合っており、復旧次第すぐにデータを緊急地震速報等へ活用できるように気象庁として準備を進めているところでございます。
 

Q : 今のS-netの関連で防災科学技術研究所と緊密に連絡を取り合っているということですが、何か現時点でわかっている原因や復旧までにどれくらいかかりそうかといった情報が入っていれば教えていただきたい。
A : 防災科学技術研究所の方から、青森県八戸にある陸上局内での不具合が原因と聞いており、現在、修理に向けて手配中と伺っているところです。

Q : 予算のことで、線状降水帯に257億の補正予算措置で過去最多となった一方で、線状降水帯の予測情報も早いもので来年度から開始、その後も一部は前倒しで始めるということですが、スケジュールありきで技術開発をしていくようにも見えており、その予測精度を伴ったものかが重要かと思いますが、それに関して何か不安な点等ありましたら教えていただきたい。
A : 例えば、半日後までの数値予報について条件を少しずつ変えてたくさんの計算をするというアンサンブル予報という手法を導入したり、過去の予測事例などを基にしたアルゴリズムを適用したりすることで、一定の成果が出ることは確かであると思っています。その後、例えば計算するきめの細かさなどの改善により精度向上が見込めることなど、順次精度を向上する計画を立てています。このような計画を実現していくためには、様々な開発をして行く必要がありますので、リスクがないと申し上げるつもりはありませんが、開発体制の強化も含めて、計画に従ってしっかりやっていきたいと思っています。
 
Q : 半日先の広域での予測が来年度からということで、直近はそこを目指したいとのことですが、広域での予測についての全体像はいつ頃明らかになりそうですか。
A : 精度がどれぐらいかということを踏まえて、情報のあり方や活用方法を検討する必要があると思っております。この予測情報は、次の出水期が始まるまでに提供を始めたいと考えており、それに向けて様々な関係機関と連携・協力を進めるとともに、有識者の方々のご意見を聞いて全体像を固めていきたいと考えています。
 
Q : 熱中症警戒アラートについてお尋ねします。昨日、有識者との検討会で、委員の中から、全国一律で33という指数ではなく、地域事情に応じて指数を変えたらどうかという声があがったようですが、長官の受け止めいかがでしょうか。
A : 熱中症警戒アラートは、現在、暑さ指数33という全国一律の基準を使って発表しています。この基準は、全国を調査して、おおむね適当だろうというご意見が多かったと聞いています。一方、地域によってはもっと低い暑さ指数で搬送者数が増えている様子も見られるので、今後考えていくべきではないかというご意見を頂戴したと聞いているところです。まずは、このアラート情報や暑さ指数33度以上になったら警戒しなければならないことをしっかり定着させて、その後に地域ごとの差を考えた基準を検討していくべきだというご意見を頂戴したと聞いています。これらを踏まえて、気象庁と環境省でどうしていくべきか考えていきたいと思っています。
 
Q : 例えば、大雨特別警報の基準や土砂災害警戒情報の基準も全国一律ではなく、地域事情に応じて基準を運用しているかと思いますが、長官が今おっしゃった「その後に地域ごとの差を考えた基準」とは、そういった事情を踏まえてということでよろしいでしょうか。
A : 実態として、地域によって低い指数でも搬送者数が増えているのであれば、そのことを考慮した方が良いだろうと思っています。雨の場合、地域によって少ない雨量でも土砂災害が発生しているケースもあるため、考え方が同じかと言われれば同じなのかも知れません。地域の実態を踏まえていくことで、よりよい情報になる可能性があるとご示唆をいただいたと思っています。
 
Q : 7月に広告を再開した気象庁のホームページについてですが、最近見ても広告枠募集中という表示がまだ目立っていると感じており、長官はどう感じていらっしゃるか、また、今年度末までの広告収入の見通しに変化はあったりするのでしょうか。
A : 広告の出し方については、7月に再開する前に庁内で検討して、今のやり方になっています。収入について、特に大きな変化はなく、概ね当初見込んだ通りだと聞いています。
(企画課)実際の広告の収入については、然るべきタイミングで業者から報告を受けることになると認識しております。いずれにしましても、ホームページの広告掲載については、持続的・安定的にホームページによる情報提供を効率的に維持・推進していけるよう、引き続き、皆様の声に耳を傾けながら運用していくという考えに変わりありません。
 
Q : 今のところ、広告の出し方含めて特に変更等を検討している段階ではないということですね。
A : 考え方に特に変更はありません。
 
Q : 緊急速報メールの件でお伺いします。2021年にNTTドコモのモバイル社会研究所が行った調査結果によると、緊急速報メールを使って災害情報を得ている人がおよそ半数にもおよび、一方でスマホのアプリを使って情報を得ている人は25%弱という状況であり、高齢者ほど緊急速報メールから災害情報を得ている場合が多いと発表されています。この点について率直なご所見をよろしくお願いいたします。
A : その調査結果は把握しておりませんでした。そのような事実関係があるのであれば、現在行っている調査を踏まえた検討の中で、必要に応じてその点についても考慮していきたいと思います。

Q : 今回、気象庁が自治体向けに行っているアンケートは、あくまで自治体向けのみですが、このような住民に対するアンケートの結果も判断に活用されるということでよろしいでしょうか。
A : 私たちが現在行っている調査・確認は、まずは地方自治体の現状についてきちんと把握することが目的です。その後については、この調査結果を踏まえて検討することになります。いろいろな事実関係あると思いますので、その中で活用できるものは活用していきたいと思います。

(以上)

このページのトップへ