長官会見要旨 (令和3年9月15日)

会見日時等

令和3年9月15日 14時00分~14時35分
於:気象庁会見室


発言要旨

 冒頭私から3点ほどお話をさせていただきたいと思います。

 1点目は、8月の前線などに伴う大雨についてです。まず、この台風や前線による大雨でお亡くなりになられた方々のご冥福をお祈りいたしますとともに、被災された方々に心よりお見舞いを申し上げたいと思います。
 7月の下旬から8月の上旬にかけて3つ台風が近づきました。また8月中旬からは日本付近に前線が停滞して各地で大雨になりました。こうした一連の大雨につきまして、気象庁では各地の気象台から防災気象情報を発表しますとともに、自治体へのホットラインや災害対策本部などに気象台の職員を派遣するJETTなどを通じて、警戒を呼びかけてきたところでございます。
 特に8月中旬の九州北部地方や中国地方の前線に伴う大雨につきましては、4県に大雨特別警報を発表し、最大級の警戒を呼びかけたところでございます。この時も、これは昨年からもやっていることですけれども、河川管理者と合同で記者会見を行うなどして、住民の皆さんにも警戒を呼びかけたところです。こうした際に、報道の皆様にも大変ご協力をいただきました。ありがとうございました。
 このように、私どもとしては意図したとおりに対応し、きちんとした情報を皆さんにお届け出来たと考えているところでございます。一方で、今回の大雨による犠牲者が出ておりますし、また一部自治体では、発令基準となっている警戒レベル相当の情報が出ているけれども避難情報が発令されず、被害が起きているというようなことも課題とされております。こうしたことにつきまして、関係省庁や関係する自治体と協力をして振り返りを実施していきたいと考えております。
 現在台風14号がまもなく日本に近づく予想となってございます。これから台風のシーズンになります。引き続き気を引き締めて、適時的確な情報発信に努めてまいりたいと考えております。

 2点目は、気象庁のホームページの障害についてです。8月14日に、全国的に大雨になって、私たちが特別警報を発表し、最大級の警戒を呼びかけている中で、気象庁ホームページが閲覧しにくい状況となりました。この原因は気象庁ホームページのアクセスの増加に、システムもの処理が追いつかなくなったということによるものでした。
 気象庁のホームページは、キキクルの表示をはじめとしまして、気象庁自らが国民の皆様に情報提供するルートとして重要性が高まっているところです。従いまして、ホームページの安定運用は非常に重要だと認識をしていたところでありましたが、そうした中、今回のような障害が発生したということについて大変深刻に受け止めているところでございます。皆様にご迷惑をおかけした事、大変申し訳ありませんでした。
 この8月14日の障害を受けまして、気象庁では緊急的にシステムの増強を図るということと、webコンテンツを軽量化するということ、そしてシステム
 の設定を見直すということでシステムの負荷を軽減する措置をとってまいりました。これによって今回と同様のアクセス集中については耐えうる処理能力 を確保したと考えております。また、現在、さらにこれを上回るようなアクセス集中があった場合に、必要な情報提供が継続できるよう、軽量版のコンテンツの準備を進めているところです。9月中には、最も利用の多い「雨雲の動き」の軽量版コンテンツの運用を開始したいと考えており、その後も順次対応する予定としております。
 それから、9月2日には、私どもがホームページの運用で利用しておりますアマゾンウェブサービスのネットワーク障害がございまして、この影響で気象庁ホームページの更新が遅れるということがございました。この事案にも、ホームページによる情報提供が、クラウドサービスの障害というようなことによっても遅れたり途切れたりすることがないように、至急、対策を検討しているところでございます。
 こうしたことで気象庁のホームページの安定的な運用にこれからも努めてまいりたいと考えております。

 3点目は、概算要求についてです。8月26日に来年度の概算要求の内容について公表したところでございます。今般の要求では、線状降水帯の予測、地震火山の監視体制の確保、気候変動に関連性する監視予測の充実という三つを柱にした予算要求を行っているところです。この中でも特に、線状降水帯の予測精度の向上、その取り組みの強化・加速化が非常に重要なものだと考えておりまして、今年度も含めて行っている気象レーダーの二重偏波気象レーダーへの更新、アメダスの湿度計の整備、海洋気象観測船の代船の建造、こういったものに加えまして、今回は次世代スーパーコンピューターの整備や気象防災アドバイザー育成事業などを盛り込んでいるところでございます。
 定員につきましても、線状降水帯の予測精度の向上に必要な技術開発や、線状降水帯を含めた防災情報をきちんと住民にお届けするための地域防災の支援に必要な要求をさせていただいているところでございます。
 繰り返しになりますが、線状降水帯予測精度の向上というのは、我が国の大雨の防災において大変重要な課題だと考えておりまして、これから政府全体の予算編成が行われるわけですけれども、その過程の中でこうした取り組みをしっかり強化・加速できるように最大限努めてまいりたいと考えているところでございます。

 私からは以上です。

質疑応答

Q : 今回、地元開催の東京2020オリンピック・パラリンピックに気象庁が情報提供、人材の提供、さらにはポータルサイトの開設など積極的に関わったわけですけども、大会が終了いたしましての気象庁の取り組みへの総括をいただきたいのですがよろしくお願い致します。
A : 東京オリンピック・パラリンピック競技大会の安全で円滑な開催ということのためには気象の情報が欠かせないということで、ポータルサイトを通じた多言語での情報提供、暑さ対策のための情報提供、また大会組織委員会との密接な連携、こういった取り組みをしてまいりました。大会期間中も台風が接近したり、暑い日が続いたりということがあったわけですけれども、こうした取り組みを通じて国民や組織委員会、その他の大会関係者の皆さんにしっかりと情報提供ができたのではないか、そのような意味で気象庁としての役割を果たすことができたのではないかと考えています。

Q : ホームページ障害への今後の対応で、9月から「雨雲の動き」軽量版の運用を始めるとのことでしたが詳しく教えてください。
A : 現在、「雨雲の動き」のページは拡大縮小や地域の移動が、閲覧者の好みに合わせてスムーズに表示できるようになっています。この操作によって負荷がかかっていることがありますので、申し訳ありませんが、この部分を少し自由度が制約されて特定の地域に限定したような地図の出し方にすることで負荷を減らしていこうという考えです。このような対応をしても必要なデータはきちんと見えます。

Q : ナウキャストの「雨雲の動き」でしょうか。
A : その通り、高解像度降水ナウキャストです。

Q : 軽量版はパソコンや携帯でも同様に見られるのでしょうか。
A : その通りです。日頃から軽量版の方もご覧いただけるようにはしていきますが、特にアクセスが集中しているような時には、通常のものではなく軽量版をご覧いただくというような仕組みにしたいと考えております。

Q : 自由度が制約されるというのは、例えば関東の人は関東のボタンをクリックすると関東地方の地図が出てくるという事でしょうか。
A : その通りです。ご自身の見たい場所が見えない、ということではありませんが、動き方が通常版と少し違うというところです。情報基盤部から補足があればお願いします。
(情報基盤部担当)長官が発言したとおり、表示される場所について、関東地方なら関東地方を選択してご覧いただく形になります。

Q : 「キキクル」とかその他のコンテンツは対応してないのか
A : (情報基盤部担当)まず「雨雲の動き」について、軽量版の運用を9月中に始めて、今後、キキクル等についても同様の軽量版を検討していきたいと思っています。

Q : 大雨の関連で、一部自治体では避難情報が発令されていない中で犠牲者が出たということについて、関係省庁と協力して振り返りを実施したいということですが、今まで必ずしも協力できていなかったところも含めてどういった所と協力してみるとか、どういうところを振り返りたいのか、具体的に教えていただきたい。
A : まだ、どういう所とどういう振り返りをしていくという具体的な予定はありませんが、内閣府が作った避難情報のガイドラインこれに沿って、気象台などが発表する相当情報と自治体が発令する避難情報とがうまく結び付けられているのかというところが一つの観点になろうかと思います。特に、気象台が情報を発表するだけではなくて、ホットライン等いろいろな形で危機感を伝えようという取り組みをやっていますので、これがどういう効果を生んでいるのかというところを気象庁としては関心を持って振り返っていきたいと思います。

Q : 内閣府のガイドラインそのものの中身も検討していくというような方向に発展するのでしょうか。
A : 振り返りの結果によっては、そういうことがないというわけではありませんが、気象庁の視点としては、今の仕組みがどのようにその力を発揮したのかというところをしっかり振り返るということが大事だろうと思います。

Q : 「顕著な大雨に関する情報」が7月、8月も数多く発表されました。まだまだこれから9月、10月といった台風シーズンなどで発表されることもあるかと思いますが、これまでを振り返って、情報の発信の仕方や世の中への認知度、また、避難に結びついたかというところの所感を教えてください。
A : 今年から始めた「顕著な大雨に関する情報」は線状降水帯が発生したことが分かったときに発表する情報ですが、9つの事例について17回の発表がありました。いずれについても、気象庁が意図した通り、線状降水帯をいち早く検知してそれを情報の形にしてお伝えするということは円滑にできたと考えております。また、報道機関の皆様にもご協力をいただいて線状降水帯が発生しているということをメディアでもお伝えいただいたので、相当なインパクトはあっただろうとは考えていますが、実際どのように住民のみなさんが受け止めたのか、防災上どういう効果があったのかということについては、今後しっかり調査をしていきたいと考えています。

Q : 導入前の記者説明でもありましたけれども、「大雨特別警報」が発表される前に「顕著な大雨に関する情報」が発表されるパターンもあれば、雨の降り方によっては特別警報が出ている最中に発表されるという場合もありました。後者についてはもう少し強く呼び掛けたり、丁寧に説明したほうがいいのではという声もあると思いますが、そのあたりいかがでしょうか。
A : 「大雨特別警報」は、警戒レベルが5に上がるという相当情報であります。一方で、線状降水帯ができたという「顕著な大雨に関する情報」の発表は、警戒レベルに言及するという情報ではなく、どういう危険が起こっているのかという危機感を高めていただくというのが一番大きな目的の情報だと考えています。「大雨特別警報」が後か先かということで、受け取り方というのは違ってくるのかもしれませんが、これから調査をやっていくにあたっては、そういった危機感を高めるという効果がどうだったかということが大事な視点だと思います。

Q : ホームページの件ですが、大雨あるいは災害が迫っている時にはなるべく障害がない、あるいは先ほど説明があったようなスポットに絞るということではなく、なるべく自由度が高くするというのが筋だと思いますが、それを災害のときに限って、使える機能を絞ったりというのは本来の趣旨から外れるのではないかと思いますが、予算を求めたり、お金がかかってもシステムを増強したりはしないのでしょうか。
A : 今回の措置をもう少し正確に申し上げると、アクセスが多くなり、このままでは見えるべきものが見えなくなってしまうという時に、軽量版をご覧いただくことで負荷を減らしていこうというものでございます。その意味では、まさに大雨時に見えなくなってしまうことを防ぐために軽量版をご覧いただくという発想です。それだけで良いということではなく、おっしゃるように、そのような時こそ見やすい形で見えるというのが本来の姿ですので、必要なシステムの増強などについてはしっかりと予算を要求して整理整備をしたいと考えています。それまでの間の緊急的な措置として軽量版を考えたというところでございます。

Q : 今回、ホームページが止まってしまったとき、大雨となっていたのは西日本が主だったと思いますが、例えば関東でこれから台風なり大雨になるとなった場合にアクセスがさらに増えるということ、あるいは全国的に大雨になったりしたときにアクセスがかなり増えるということは考えられると思いますが、具体的にどのくらいのアクセスまで耐えられるとかそういったところはお聞かせいただけるのでしょうか。
A : システムのセキュリティのことがありますので、アクセス数がいくつということはお話できませんが、今回のようなアクセス数であっても大丈夫というところまでは増強が進んでいます。

Q : 大雨に関する振り返りについてですが、振り返った成果を公表するなり、ホームページに掲載する等の計画はありますか。
A : 特に、防災気象情報について、去年までは「防災気象情報の伝え方に関する検討会」で有識者の方々と一緒に考えてきました。今回、検討会自体は新しいものにしますが、引き続き検討の場を用意して、情報の改善について議論いただきたいと思っています。振り返りの成果は、この検討会での検討の材料としていくことを予定しており、検討会での議論の内容はとともに、ホームページへ公表していくものと考えています。

Q : 今回のホームページの障害については、赤羽大臣からも増強に関してきっちりと予算編成するというお話があったと聞いていますが、これは国交省またはデジタル庁のどちらの予算の方で組み込まれるのか。
A : いわゆるシステムの整備運用ということだとデジタル庁の方の予算になろうかと思います。しかし、ホームページ運用全体を見渡したときには、すべてデジタル庁ということではないと思います。

Q : 「雨雲の動き」の軽量版は9月から始めるということですが、その他の軽量版のスケジュール的なものは見えていたりしますか。
A : 「雨雲の動き」が一番アクセス数が多いので、まずそこを優先して行ったということです。その後のスケジュールについて情報基盤部から補足はありますか。
(情報基盤部担当)長官からの話のように、一番負荷が大きいものについてまずは緊急的にやらせていただいて、その後についてはどういう形でやるのか、どういう見せ方をするかなども検討した上で順次やっていくということを検討しております。具体的なスケジュールについて申し上げられませんが、順次進めていきたいと考えております。

Q : 先日、菅総理が総裁選不出馬ということで退任されると表明されました。総理自身は線状降水帯の予測技術の向上や加速化を推し進めようと動かれていたわけですが、改めて菅総理が退任されることへの受け止めと線状降水帯の今後の予測技術の向上、加速化への影響等、懸念される点があるか、もしくは今後の政権が変わった時に求めていくことなどあればお伺いできればと思います。
A : お話ありましたように、菅総理からは線状降水帯の予測精度の向上を思い切って前倒しするようにと言われています。そのようなことも踏まえて、今回予算要求もさせていただいていますし、今後の予算編成過程の中でしっかり必要な予算を確保していきたいと考えているところです。予測精度を上げることによって線状降水帯による被害を小さくしていくということは、気象庁にとって極めて重要で喫緊の課題と考えておりまして、これに取り組むための予算というのは当然最大限の努力を払って確保していきたいと考えています。

Q : 概算要求の人員について、地域防災支援体制の強化で100人要求されておりました。業務の集約化で地方気象台から中枢に人を集めていたというのが経緯と伺っていますが、今回再び地方に人を戻すのかという見方もできるのではないかと考えています。これをどう捉えたらいいのかということと、増やすとしたらそういう人たちはどういう業務に当たるのでしょうか。
A : これまでは、予報を発表したり警報を発表したりする作業、いわゆる情報発表のための仕事について、地方予報中枢官署と呼ばれている地方気象台と管区気象台などとの連携を強めることで効率的な人員配置を行い、その分を地方気象台等における地域防災支援への取り組みに当てていこうという考えで、これまでに人員配置の変更をしてきました。今回はそれをさらに増強して、地域防災の支援のための人員を増員して配置していこうという考えです。

Q : 台風に関する今の状況として、停滞する台風14号が東シナ海にあって、まもなく接近して温帯低気圧化も見込まれています。そういうタイミングでもありますので長官としてメッセージ等あればいただけないでしょうか。
A : 台風14号は現在東シナ海にございます。これが17日(金)18日(土)にかけて日本に接近します。金曜日の9時までには温帯低気圧に変わると今お伝えしているところですが、誤解していただきたくないのは温帯低気圧になれば安心だということでは決してないということです。むしろ温帯低気圧になって、風の吹き方や雨の降り方も台風そのものとは変わってきますので、最新の気象情報に注意して、住民の皆さんご自身が住んでいるところにどういう危険があるのかをしっかりご理解いただいて対応していただきたいと思います。もう間もなく明後日には接近してくるという事ですので、残された時間は短いですけれどもその間に、台風あるいはそれから変わった温帯低気圧への備えということをしっかりとやっていただきたいと思います。

(以上)

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