長官会見要旨 (令和3年7月21日)

会見日時等

令和3年7月21日 15時00分~15時45分
於:気象庁会見室


発言要旨

 冒頭私から3点のお話をさせていただきます。

 まず1点目は、梅雨前線の大雨でございます。
 熱海市の土石流被害によってお亡くなりになられた方々のご冥福をお祈りいたしますとともに、広く全国の大雨による災害で被災された方々に心よりお見舞いを申し上げたいと思います。
 梅雨前線は6月の末から7月の上旬にかけて日本付近に停滞して日本の各地で大雨になりました。
 気象庁ではこうした一連の大雨について、各地の気象台から防災気象情報を発表したり、自治体へのホットラインによる解説を行ったり、あるいは自治体の災害対策本部などに気象台の職員を派遣する「JETT(ジェット)」と私ども呼んでおりますが、こういったことを通じて、しっかり警戒を呼びかけてきたところでございます。
 特に先日10日の九州南部の大雨については、大雨特別警報を発表したところであり、この時も本庁、管区気象台そして地方気象台のそれぞれで会見を行ったり、これは昨年から行っていますが、大雨特別警報を大雨警報に切り替えるときに、その後も河川の氾濫などには警戒が必要だという事をしっかりと訴えるための、河川管理者と合同で記者会見を行うという取り組みもしっかり行えたと考えております。
 今年から始めました線状降水帯が発生した時の情報についても、意図したとおりに運用ができたと考えております。報道の皆様にも、線状降水帯についての警戒の呼びかけをしっかりご協力いただき、どうもありがとうございました。
 梅雨は明けましたけれども、台風シーズンはこれからですし、今も先島諸島に向かって台風が接近している状況でございます。引き続き全力で、的確な防災気象情報の発表などによる警戒の呼びかけをやっていきたいと思います。報道の皆様にもご協力をお願いしたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

 次に2点目は、東京オリンピック・パラリンピック競技大会への貢献でございます。
 明後日はオリンピックの開会式でございまして、それから8月24日からはパラリンピックが始まります。この競技大会の円滑な運用のためには、気象の情報が欠かせないということで、私どもとしても安全で円滑な大会の開催に貢献して参りたいと考えています。
 まずは暑さ対策です。これは従前から「2週間気温予報」の発表開始ですとか、「気温分布予報」の高解像度化ですとか、さらに、昨年は関東甲信地方で、今年から全国で始めたことですけれども、環境省と一緒にやらせていただいている「熱中症警戒アラート」の発表を通して暑さ対策に貢献していきたいと考えています。
 それから、気象庁のホームページにポータルサイトを作って、大会に関連する気象情報を一か所に集めたサイトを日本語と英語の両方で情報提供しているところでございます。それから防災気象情報については15言語での情報提供を行っております。
 もう一つは、大会組織委員会と連携を密にしており、組織委員会での円滑な大会運営のために必要な情報をこちらから提供しているということです。例えば競技場付近の気象の予測情報を提供しているほか、雷をもたらすような積乱雲の急激な発達というものをしっかり監視できるように「ひまわり」の機能を最大限に使い、首都圏だけを集中的に30秒に1回という高頻度で観測をして、そのデータを組織委員会に提供しています。こうしたことを通じて円滑な大会運営に貢献していきたいと考えています。
 それから、「国土交通省2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会準備本部」というのがあり、一昨日その本部が開かれました。赤羽大臣のもと、国土交通省で一丸となって大会の成功に貢献すべく取り組んでいるところであり、私どもの取り組みもその一環でやらせていただいております。

 それから3点目は、熱中症についてでございます。先ほど3か月予報の発表があったところですけれども、これから一年で一番暑い季節になりますし、全国的に気温が高めの予報になっておりますので、ぜひ熱中症への備えを万全にしていただきたいと考えています。
 先ほど申し上げた「熱中症警戒アラート」をはじめ、様々な気温に関する情報を気象庁は提供していますので、こういった情報をご覧いただきたいと考えています。また環境省のホームページには暑さ指数の情報が掲載されていて、これは熱中症との対応が非常に良いということで「熱中症警戒アラート」でも使っている指数ですので、こういったものも参照していただいて、みなさまが置かれている状況によって違いますが、例えば不要不急の外出を避けるとか、昼夜を問わずエアコンをしっかり使っていただいて体調を整えていくとか、喉が渇く前に水分をこまめに補給する、といった熱中症対策を各自の状況に応じて対策をとっていただきたいと思います。

 私からは以上です。

質疑応答

Q : 最初に大雨について言及がありましたが、特に熱海市の土石流は今も不明者の方もいらっしゃる状況です。この時の対応を振り返って、災害が起こる前に、気象庁として自治体にどのような支援をされたのかという具体的な対応と、それを振り返った上で、何か今後解決すべき課題というのが見えていましたら併せて教えてください。
A : 気象庁では、気象台から防災気象情報を発表するということ、それからホットラインと呼んでいますが、直接自治体の方に電話等で気象の状況をご説明するといったことを通じて、その気象台が持っている危機感をしっかり自治体にお伝えするというのが役目だと考えています。今回の熱海市では、前日2日の6時29分に大雨警報を発表しています。また、レベル4に相当する情報となっている土砂災害警戒情報については、同日の12時30分に発表して、合わせて厳重な警戒を呼びかけています。これに加えて前日の2日から当日の3日にかけて、計3回、熱海市に気象台からホットラインで気象の状況をお伝えして厳重な警戒を呼び掛けました。このように、私たちが危機感をお伝えするためにやろうと思っていた事は、その通りに適切にできたのではないかと考えております。
 一方で、あのような痛ましい災害が発生したということも事実でございますので、これから熱海市を含めて自治体関係機関としっかり連携して、当時の様子振り返っていきたいと思いますし、その成果を今後につなげていきたいと考えているところです。

Q : 関連で、3回にわたり熱海市に警戒を呼びかけたということについて、例えば土砂災害警戒情報を発表する前に連絡するなど、ある種、ルール上かけるものと、特別に対応するものと、対応が別れるものと思われますが、そのあたりの対応について、現時点で分かれば教えてください。
A : 最初が、土砂災害発生前日の7時40分頃に、土砂災害警戒情報発表について今後の見通しを解説しました。次に、12時29分には、まもなく土砂災害警戒情報を発表する予定である旨をお伝えして、これがレベル4相当だということで、避難情報の発令について検討が必要だということをお伝えしました。それから翌朝9時過ぎに、「雨は弱まりつつあるがこれは一時的なものであり、すでにこれまでの大雨により土砂災害の危険性が高い状況であるため、今後再び雨が降る予想であることから、引き続き厳重な警戒をお願いします。」とお伝えしたところです。

Q : ホームページへの広告掲載が再開されましたが、中断もあって本来想定の収入も予想より落ちています。また、防災情報を伝える場所で広告掲載するのはどうかという声もあるかと思います。こういう状況で広告掲載を続ける狙いというのを改めて教えてください。
A : 気象庁としての考え方はこれまでお話ししてきた通り、広告を掲載することで国民の皆さんへの負担を増やすことなくホームページの運用を効率的に維持・推進するという取り組みとして進めているものでございます。広告の掲載にあたりましては、防災情報の視認性や速報性が低下しないように十分配慮をして、見直すべきところは見直してまいりました。おっしゃられたように、広告については、疑問の声や批判の声というのがあることは承知しておりますが、一方でご理解いただいている方々もいらっしゃいます。私どもの考えは今申し上げた通りですので、疑問を持たれる方などに対してこの考え方をしっかりご説明して、ご理解を得ていきたいと考えております。収入については、広告の掲載方法を変えたことで、かなり少なくなりましたが、それを以て、今すぐに評価、判断していくという段階では無いと考えています。また、視認性については、様々なご意見や改善案などの声をいただいており、その声には耳を傾けて柔軟に対応を考えていきたいと考えています。

Q : 菅総理が熱海市をご視察した際に、一連の梅雨前線における線状降水帯について、今は線状降水帯の発生情報だが、予測に関して前倒しをして推進していく、という発言ありました。これについて、気象庁ですでに動き始めているようなものや、今後をこういうところを前倒ししていくという計画がありましたらお聞かせください。
A : 線状降水帯の予測については、現時点では非常に難しいというのが現状です。この予測精度を向上させるために、例えば、今年から海上保安庁とも連携をして、洋上の水蒸気観測を行っています。線状降水帯の予測には、水蒸気を正しく把握するということが非常に重要だということが分かってきていますので、このような取り組みを行っています。また、予測精度の向上のためには、数値予報におけるスーパーコンピュータを使った予測技術の高度化が欠かせないため、大学や研究機関の先生方とも共同で行うようワーキンググループを立ち上げ、一緒に開発を進めているところです。総理からもそのようなご指示がございましたので、私たちとしても少しでも早く予測の精度を上げていきたいと考えており、今まさに、鋭意どういった形で加速ができるのか、前倒しができるのか、取り組みの強化ができるのか、ということを検討しているというのが今の段階です。

Q : それにはお金のかかることですので、予算編成やそういうもののバックアップも政府がしてくれるようにあの発言で想像しますが、そのあたりはいかがでしょうか。
A : これから私たちが必要なものを要求していくことになるのだと思います。

Q : 熱海の土石流の後も、長官が総理官邸に何度も入られていますが、総理からはそのあたりについて、どういったご発言がありましたでしょうか。
A : 官邸には大雨の状況についてご報告に行きました。そのご報告の中で、総理からも線状降水帯の予測についてお話があり、熱海で仰ったことと同じことですが、思い切って前倒しができないかということを言われました。

Q : そこで、必要な人員であったり予算であったり、そういった要望はされていないのでしょうか。
A : 特に、その場において、そのような具体的な話はしていません。

Q : 熱海の土石流の際に計3回ほど事前にホットラインをされていたということについて、特に発生当日の午前9時の段階でも引き続き厳重警戒をと呼び掛けられたということですが、結果的に自治体が避難指示を出していないことについて、どのように受け止めていますか。
A : 避難指示を出すということについては、熱海市のご判断になります。現時点ではそのご判断等がどのようになされたかは分かりませんが、先ほど申し上げたように、これから振り返りをしっかり行い、避難情報が出なかったことについて、その背景や考え方を一緒に考えていくことになると考えています。

Q : 土砂災害警戒情報については、適中率が低いと指摘する専門家もいらっしゃる一方で、危険度分布、キキクルではずっと濃い紫になっており、土壌雨量指数も高い状態が続いていました。そういう観点から、避難指示を出さなかったことについて、相当情報を出す気象庁としてはどのようにお考えでしょうか。
A : それについても、どういうご判断、どういうお考えだったのか、きちんと確認しながら評価していくことになると考えています。

Q : 熱海市役所へのホットラインの件ですが、災害が発生した7月3日の午前3時前後、色別の表示で土砂災害の危険度が薄い紫から濃い紫になりました。さらに危険度が上がって最高の危険度を示す濃い紫になった時点でなぜホットラインをしなかったのでしょうか。つまり、土砂災害警戒情報が出ている自治体は熱海市以外にもあり、また、濃い紫のエリアも広く、該当するのが熱海市だけではないため、気象台の方も多方に電話するなど非常に大変だったと思いますが、危険度が一つ上がり一番濃い紫、最高の土砂災害の危険度になった時に、あと一押ししないのであれば、何のためのホットラインなのかと思うところがあります。そこは長官としてはどうお考えでしょうか。
A : どのタイミングでどうようなホットラインを行うか、その時のやり取りや気象台の見通しや状況判断などについても、気象台も含めて、しっかりこれから検証していきたいと考えています。熱海市は、情報を見て、あるいは私たちのホットラインを聞いて、ご判断をすることになります。このため、私たちのホットラインなどについて、熱海市での受け止められ方等についてもしっかり検証評価することになると考えています。その中でホットラインのタイミングについても改善の余地があるのか、評価の対象になると思っています。

Q : つまり今回のホットラインのかけ方についても、適切だったかをこれから検証していくということでしょうか。
A : おっしゃるとおりです。

Q : 熱海市側がどのようにそれを受け止めたのかも含め、検証していくということですか。
A : おっしゃるとおりです。

Q : 先ほど長官は、気象台の危機感を伝えることは適切にできたのではないかと仰りましたが、もっとできた事があったのではないか、適切じゃなかったのではないか、という点も含めて、適切だったかはこれから検証するということでよろしいでしょうか。
A : 伝える側として、防災気象情報の発表やホットラインをかけるということについて、やるべきことはやったと考えていますが、その結果や効果がどうだったのかということについて検証したいと考えています。

Q : 危険度が一つ上がったときには、ホットラインでもう一押し、声掛けをすべきではないか、という声を気象庁の内外で聞かれます。ホットラインをかける基準が気象台によって若干違うようなお話を聞きましたが、一定の統一された基準でランクが上がったら背中を押すということの方が大事ではないかと思います。むしろ基準がそうなっていないのであれば、そういう基準を作り、最終的に判断するのは自治体であったとしても、気象庁としてホットラインで背中を押す言葉をかけることが必要ではないでしょうか。
A : おっしゃることはよく分かりますが、今私たちが確認した時系列の情報から、そのような統一的な基準を設けるのがよいという結論を直ちに導き出すのは難しいと思います。何が伝わって何が伝わらなかったのか、どのタイミングでどういう状況だったのか、しっかり検証したいと思います。

Q : 熱海市の話では「雨が一時的というか、雨のピークは過ぎている、という判断もあった。」という話がありましたが、先ほどの長官のご説明では、熱海市からの「これで雨がピークか。」「ピークはもう過ぎたのか。」という問い合わせに対して、「弱まったのは一時的である。」という説明をはっきりとされたということでよろしいでしょうか。
A : 相手がどのように聞いたかというところまで詳しい情報がないのですが、こちらからお伝えしたことは、雨が弱まりつつあるものの一時的なものであり、引き続き厳重な警戒が必要だということです。

Q : 熱海の雨量を見ると、確かに短時間の量としてはあまり大した事が無くて、せいぜい1時間27mmという雨量ですが、これは網代の数字ですよね。その雨量から山の一番降りやすい危険な所の状態を想像するのはなかなか難しいと思いますが、一番雨が降っている場所の雨量がすぐに分かるような手段というか、それを分からせる方法は無いでしょうか。
A : 気象庁が保有しているデータとしては解析雨量が該当すると思います。現時点で、その時系列の値を私自身が確認していないので、網代のデータと比べてコメントすることは今出来ませんが、当庁が保有しているデータとしては、レーダーで空間的に補完された雨量のデータが既にあります。

Q : 熱海市へ説明をする際は、その解析雨量を基に一番危ない状態や現在のリスクについて、説明をされているという認識でよろしいでしょうか。
A : 確認してみないと分かりません。

Q : 緊急時、現場は混迷していると思われるため、雨量計の観測値だけを見て安心するようなことがあると思うので、解析雨量を基に解説等の注意喚起をやられたらいいのかなと思っています。
A : ありがとうございます。

Q : 昨日、全国知事会の黒岩神奈川県知事が棚橋防災担当大臣を尋ねられ、防災について色々な要望をお伝えしたようですが、その中で「顕著な大雨に関する情報がレベルと紐づいていない。また、名称の変更も含めて検証してほしい。」という項目があったのですが、長官がもしお聞きになっていれば、知事会の要望への受け止めなどをお聞かせいただけたらと思います。
A : すみません。私はその情報を把握しておりませんでした。情報の名称については、この場でもいくつかご質問があったように記憶しています。線状降水帯が発生したことをお伝えする情報ですが、線状降水帯による大雨に対する警戒の呼びかけをご理解いただくためにも、「顕著な大雨に関する気象情報」という形でお伝えすることが私たちの考え方ですので、ご理解いただくように努めていきます。

Q : 熱海の関係で、今後避難情報のあり方などの検証というご発言がありましたが、このあたりは官房長官や防災大臣も同じようなことをおっしゃっており、今後検証などしていきたいというお話でした。熱海はまだ救助活動が続いている状況なので現場はまだ落ち着かないと思いますが、具体的にどのような検証の仕組みで、いつぐらいまでにこのようにやっていきたい等、分かればお願いします。
A : 申し訳ございませんが、今の時点で検証をいつまでにどのような形でという具体について、申し上げられることがありません。

Q : 気象庁が危機感を伝える行動をとられてきた一方で、結果的に熱海市が警戒レベル4に上げなかったり、県内ではレベル4に上げた地域もあったりと、対応が分かれていたようですが、熱海市の取った判断というのが結果的に気象庁の危機感が伝わらなかったという受け止め方、評価をされているのでしょうか。
A : そこが、私たちにとって一番の評価検証のポイントだと思っています。私たちがお伝えしたいことがしっかり伝わった上でのご判断なのか、それともコミュニケーションの問題でしっかりと伝わらなかったのか、今後どうしていくべきかということについても非常に大きな意味を持ってくると思いますので、そのようなことを中心に評価をしていきたいと思っています。

Q : 率直に伺いますが、熱海の件に関しては避難指示を出すべきだ、出した方がよいのではないか、という思いでホットラインをされていたのか、そういった危機感を気象庁がお持ちだったのかについてお伺いします。
A : 土砂災害警戒情報を発表した段階で、基本的には避難指示を検討いただく段階です。ホットラインでもそのことはお伝えしています。

Q : さらに薄い紫から濃い紫の段階に土壌雨量指数の値も上がっていました。その点についてはどう受け止めていらっしゃいますか。
A : 危険度分布、キキクル等を見て、危険が高まっていることをご認識いただけるよう、地域全体で防災の取り組みを進めていくべきだと思っています。

Q : 気象庁としてはレベル4に匹敵するものだという危機感でホットラインをされていたということですね。
A : はい、そのように報告を受けています。

Q : 広告の件について、熱海の土石流が起きたときの気象状況だと、広告を停止する基準にあてはまりません。今後、秋にかけて同じような大雨になった場合、引き続き広告を掲載し続けるというご判断になるのでしょうか。
A : 今回、熱海市における情報発表の状況だけを切り取ると広告を中止する基準には当てはまりませんが、実際にはその2日前に「顕著な大雨に関する情報」が発表され、その後も大雨が続いている状況なので、全体としてみれば広告は停止することになっていたと思います。また、中止する基準には、社会的な状況を勘案し、判断して止めることもあるとしています。このような事象が発生した場合は、それに応じて適切な判断をしていくことになります。

Q : 当時のように、危険度分布、キキクルでも濃い紫のエリアが広く表示され、各地で避難指示が出されるようなケースでは、広告を停止するということも検討されるということでしょうか。
A : その状況によって判断することになると思います。基準は基準として個別にありますが、それに当てはまらないような、社会的な状況から考えてこれは止めた方がいいのではないかという判断ができる余地を残しているということです。

Q : 「顕著な大雨に関する情報」について、先ほど冒頭で、今回は意図した通りに運用できたという評価をされておりましたが、「顕著な大雨に関する情報」の発表有無に関係なく、被害が出たり出なかったりします。また、情報が出ても、赤の楕円の位置について、実際に見ると消えたり、激しい雨雲の雨域とずれていたりなど、必ずしもその情報が直接避難行動や雨の状況に一致しないようなところもあるかと思います。その辺については、梅雨を終えてどうお考えでしょうか。
A : 先ほど申し上げましたのは、情報の運用として意図したとおりに発表ができたというところまでで、この情報が防災上どのような効果があったのかということについては、先ほどの件と同じですけれども、しっかり検証したいと思います。私たちの意図としては、危機感を一段上げて、迷っておられる方への後押しをする効果を狙っていますので、実際の情報でどのような効果があったのかということは、これからしっかり調べていきたいと思います。

Q : その危機感を一段上げるという部分の考え方について確認させてください。危機感を上げるということは、「○○県にこの情報が発表されました」ということで、その県全体に危機感を上げてほしいということなのか、それとも実際その線状降水帯が発生しているところに対して危機感を上げてほしいのか、危機感の範囲のようなものをどう考えてらっしゃるのでしょうか。
A : 「顕著な大雨に関する情報」に限ることではありませんが、情報はある地域に対して出されるものですので、情報に気づいて欲しい人はどこかというとその地域全体です。私たちは、このような情報が出されたときに、加えてキキクルを確認してほしいということを申し上げています。キキクルでは、確認している地域で、今は赤でもすぐに紫になったりすることもあり、そのような場合は急激に危険度が高まっているんだということを知っていただきたいと思っています。

Q : 今回の熱海の件で、土砂災害の原因として盛土という要素があり、いわゆる一般的な土砂崩れとは違った要素があると思いますが、こういった新たに出てきた要素に関して、気象庁として伝え方などで改善するなど考えていらっしゃるのでしょうか。
A : 当時は、土砂災害警戒情報も発表されている状況であり、またキキクルも濃い紫でした。従って、盛土の問題があってもなくても、土砂災害がいつ起こってもおかしくない状況だったということが、気象庁の立場から言えることです。盛土の影響については、気象庁からは評価がしづらいので、今ここでコメントするということは控えたいと思います。

Q : 8月はオリンピック期間になりますが、実際に今、海外の選手や関係者の方がかなり多く来ていると思いますが、その人たちに対して暑さの警戒を気象庁としてどう届けるのか工夫などあったりしますか。
A : お届けする工夫としては、先ほどお話ししましたポータルサイトなどを日本語・英語で立ち上げたり、防災気象情報を15言語で公開したりしています。こういったものをぜひ活用していただきたいと思います。加えて、大会関係者や組織委員会の下で動いているような方々については、組織委員会の方でしかるべく対応がなされており、気象庁としてもしっかり協力をしている状況です。

Q : オリンピック・パラリンピックについて、冒頭のご発言の中で、首都圏を中心に組織委員会へ情報提供されているとお聞きしましたが、他の開催地域でも、例えば北海道では、競歩やマラソンなど外にいる時間が長い競技も開催されます。こういったところに対する気象情報の提供というのはどのように考えていらっしゃいますか。
A : 先ほどは首都圏を中心にと申し上げましたが、競技全体について気象庁と組織委員会とでしっかり連携しています。先ほど申し上げた円滑な大会運営に必要な情報という中には、首都圏以外の場所ももちろん入っています。

Q : 競技が行われる地域に関しては、すべて気象情報を提供するということですね。
A : はい。

Q : 競技に適さない暑さになる可能性もあると思われますが、この場合には気象庁としての見解も含めてお伝えする予定でしょうか。
A : 競技を開催するかどうかについて、気象庁からご意見を申し上げることは予定していません。こちらから気象の情報をしっかりお伝えをした上で、ご判断は組織委員会の方でなされると思っています。

Q : 熱海の件について、検証の方向性についてですが、市長の会見を紐解いていくと、言った・言わないの議論になってしまうと思います。「私はこう聞いていた。」「そうは聞いていない。」、このようなやり取りが検証のポイントではなく、例えば、今般避難勧告が無くなり避難指示に一本化されたことの重みや、避難勧告の時点で出さなければいけなくなったというガイドラインの事実誤認などが垣間見え、理解されていない節があります。これは多分に熱海市だけではなく日本中たくさんある可能性があります。そこをどう是正していけば人の命が救えるのか。そして、理解していないかもしれない担当者に対して気象庁や気象台は何ができるのか、そういったことを検証していただくような方向で考えていただきたいという意見になります。
A : 市長のご発言は報道でも聞いています。そのようなことも含めて、気象台と熱海市だけではなく関係機関と連携して、この一連の出来事をしっかり検証したいと思っています。

(以上)

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