長官会見要旨 (令和3年6月16日)

会見日時等

令和3年6月16日 14時00分~14時45分
於:気象庁会見室


発言要旨

  冒頭私から2つほどお話をさせていただきます。

  1点目ですが、今月の6日に東京大学名誉教授でいらっしゃいました茂木清夫先生がお亡くなりになりました。
  茂木先生には昭和52年から平成8年まで地震防災対策強化地域判定会、この前身であります東海地域判定会も含めて、19年という長い期間にわたって判定会の委員を務めていただきました。
  特に平成3年から5年間については会長という大変重たい責任をお願いしておりまして、大変お世話になった先生でございます。また、合わせて火山噴火予知連絡会の委員としても当庁の業務にご協力をいただいておりました。
  先生からは東海地域における観測監視体制や適切な情報発表のあり方について、様々なご意見をいただき、特にその後の気象庁の地震火山業務の高度化に生かすことができたと考えております。
  謹んでご冥福をお祈り申し上げます。

  2点目が大雨の備えについてでございます。
  大雨が心配される時期となっておりまして、これは梅雨が明けるまで続くものと考えています。
  最近でも、令和2年7月豪雨、平成30年7月豪雨それから平成29年九州北部豪雨があるなど梅雨期には甚大な大雨による災害がこれまでも繰り返されています。
  是非このことを思い出していただいて、改めて大雨に対する備えをお願いしたいと思っています。
  気象庁では先月公表させていただきましたとおり情報の改善を予定しており、また、いくつかについてはすでに改善しています。
  明日から、線状降水帯によって非常に激しい雨が同じ場所で降り続いていることを解説をする「顕著な大雨に関する情報」の運用を開始いたします。こういったものも含めて内閣府や国土交通省など、そして地方自治体としっかり連携をして、大雨への対応に全力を挙げていきたいとに考えています。住民の皆さんにおかれましても、ぜひご自身の命やご家族など大切な方々の命をご自身の手で守るという意識を持っていただきたいと思っています。
  大雨が降る前の平時から、ご自宅など普段いる場所にどんな危険があるのか、ハザードマップなどでもご確認いただきたいと思います。そしてどんなタイミングでどこへどのように避難をするのかについてをご自身でも考えて、ご家族や近所の方々とも相談をしておいていただけるとよろしいかと思います。
  それからもう一つ、大雨が来る前に「キキクル」(危険度分布)を1回でも2回でも、気象庁のホームページなどで観ていただいて、どんなものなのか、どう使えばいいのかということをご確認いただきたいと思っています。
  また民間事業者がこのキキクルのプッシュ型の通知のサービスを行っております。こういったサービスへの登録についてもご検討いただけるとよろしいのではないかと思います。
  そういった準備をしていただいた上で、いざ天気予報などで大雨が迫っているというような状況になりましたら、注意報や警報などの情報に注意していただくということはもちろんですが、このキキクルをぜひご利用いただいて、早め早めの対応をとっていただくようにお願いをしたいと思っています。キキクルの赤がレベル3、高齢者等避難の目安です。そして紫はレベル4、全員避難の目安です。
  自治体からもそれに応じて情報が出てくると思いますので、早め早めの対応をお願いしたいと思います。

  私からは以上です。

質疑応答

Q : 今の線状降水帯に関する情報がありましたけれども、これは大雨警戒レベル4相当以上の状況で発表されるということで、その他にも情報の改善がいくつかありますが、この線状降水帯の情報に関しては具体的にどういう行動を住民がとったらいいのかというのを改めて認識する必要があると思っているため、具体的な行動について長官の見解改めてお聞かせください。
A : 線状降水帯は、これまでも災害を繰り返しもたらしてきた危険な現象です。
この災害をもたらすような現象が発生しているということをお伝えするという情報ですので、ぜひ危機感を一段高めていただきたいと思っています。そしてこの情報が出るときはすでに避難指示などの情報が出ている状況だと思います。
 従いまして、もし避難を迷っているというようなことであれば、ぜひ一刻も早く決断をしていただきたいと思います。その避難も、いわゆる避難所に向かうことが安全であればそうしていただきたいと思いますけれども、それすらも危険である場合にはいわゆる安全確保ということで、命を守る最大限の行動をとっていただきたいと考えています。
 それから、非常に激しい雨が同じ場所で降り続くということで、危険度が急激に上がっていくという状況ですので、キキクルでまだ紫ではないとか赤ではないとかいう地域でも急激に危険度が増していきますので、早め早めの対応をお願いしたいと思います。また、自治体から出される避難情報を見聞きした際、早めの判断や早めの対応をお願いしたいと思っています。

Q : 東京オリンピック・パラリンピックが開催される場合、後一か月ちょっとということになりましたが、その場合の熱中症対策や防災気象情報提供の取組について改めてお聞かせ下さい。
A : 「東京2020に向けたアスリート・観客の暑さ対策に係る関係府省庁等連絡会議」などの会議があり、気象庁としても関係各所としっかり連携をして対策をとっているところです。
 まず、防災気象情報についてはホームページの多言語化等の対応を行っています。また、特に今回大きなテーマとなっています暑さ対策については、令和元年の6月に「2週間気温予報」を開始しています。これは2週間先までの気温の上がり下がりについて傾向をお知らせするものです。また、「気温分布予報」を令和2年3月に高解像度化しています。そして、昨年、関東甲信地方で先行実施していた「熱中症警戒アラート」は、今年、全国で運用開始となり、こういった情報の改善を行ってきています。それから一昨年の7月には東京2020のポータルサイトを作りました。ここでは、必要な情報、便利な情報をひとまとめにしてお伝えすることで、急な大雨や猛暑に備えていただき、安全な大会運営に貢献したいと考えています。
 これに加えまして、大会組織委員会と連携をして、大会の運営や選手、関係者の安全を守るということで、例えば競技会場の周辺の予測情報をお伝えすることについて、組織委員会と一緒に準備を進めている状況です。
 こういった形でしっかり円滑な大会の運営に貢献して参りたいと思っております。

Q : 明日から始まります「顕著な大雨に関する情報」の運用ですが、線状降水帯という名称を出さないで「顕著な大雨に関する情報」となった経緯・理由を改めてお願いします。
A : 線状降水帯という現象の発生をお伝えする情報ですが、災害の発生には、"線状降水帯"という現象そのものというよりも、"線状降水帯によってもたらされる大雨"が重要だということを関係各所からご指摘いただきまして、そういったご意見も踏まえて「顕著な大雨に関する気象情報」という名前にしたところです。

Q : 繰り返しになりますが、その上でもっと分かりやすいのは線状降水帯だったのではないかという意見も当然あったと思いますが、それでもこれにしたというのはやはり線状降水帯一つにこだわらないという意味合いでしょうか。
A : 検討の中では、将来的に、危険な大雨というのは、必ずしもすべてが線状降水帯によるものだけではなく、そういったものも将来的に包含することも必要ではないかというご示唆はいただいていますので、私たちもそういったことについては検討していきたいと思っています。

Q : 記録的短時間大雨情報の発表が相次いで発表されたり、50年に1度の大雨の情報や先日の沖縄の府県気象情報では線状降水帯が発生しているとみられるといったワードもすでに使いながら警戒を呼びかけている状況だと思いますが、現状でかなりその大雨に対する警戒感を我々も強めていかなければいけないのか、今の現状を長官はどのようにお考えになられているか、所感を教えていただけますでしょうか。
A : 特に西日本で梅雨入りが早く、梅雨入り直後の大雨に始まり、その後も何度か大雨が発生する事態になっています。おっしゃったとおり、昨日一昨日も局地的に非常に激しい雨が降っており、そういう意味では、必ずしも今年だけではないかもしれませんが、通常、梅雨末期に大雨というイメージを皆さんもお持ちだと思いますし、そういうことが確かに多いのかもしれませんが、その概念にとらわれず、梅雨時期はいつでも大雨があり得るということで、先ほど申し上げたような大雨が降る前の平時からの備えをぜひ早めにやっていただきたいと思います。

Q : 最初に触れられた茂木さんのことでお尋ねしたいと思います
判定会会長をやられて、任期満了で辞められた時に、当時の東海地震に関する警戒宣言しか出せないシステムに異を唱えられて、国や気象庁の見解と反対する形で辞められたということで大きなニュースになったと記憶しています。
 そのような経緯を経て、現在の南海トラフ巨大地震への注意喚起にも繋がっているかと思いますが、あれだけの地震研究者で居つつ、気象庁としても多分大変お世話になった一方で、最後にそういう形で辞められたという辺りも踏まえて、長官も多分その時の経緯をご存知だと思いますけれども、今思い返してその辺りいかがでしょうか。
A : おっしゃるとおり、茂木先生は、地震は起きるか起きないかではなくて確率的に可能性が高い低いという捉え方をされており、その当時で言うと"判定会を招集しました"という情報が出る以前に対応が必要なのではないかというお考えをお持ちだったと聞いています。
辞められた時の経緯は私も詳しく分からないのですけれども、そういった先生のご示唆があって、先生が判定会の会長やられていた時には間に合いませんでしたが、その後いわゆる「東海地域の地震・地殻活動に関する情報」という、判定会の招集の基準には満たないけれども変化が見られた時に発表する情報を作るようになり、これが平成10年ですから、先生が辞められてから2年ほどしてそういった成果が出たということでございます。これはまさに先生のご示唆をいただいて実現したものと考えています。

Q : 国や都の主導で、自衛官、警察、消防だったりと、危機管理担当者のワクチン接種が進んでいます。気象庁の職員の方も、特に現業の担当者・責任者の方は津波であったり大雨であったり、ある意味危機管理の担当されている方かと思いますが、ワクチン接種の見通しなどありましたら御説明をお願いいたします。
A : いわゆる職域接種のような形でやるということについては政府の方針に則り、現在、調整を進めているところですが、今この場でお話できるようなことはございません。

Q : 国や都に対して、優先的に、気象庁の職員も危機管理担当者として接種を受けられるようにしていくようなお考えはありますでしょうか。
A : もちろん私たちも危機管理の仕事をしていますので、そのことを踏まえて、政府の方針に則って調整を進めていきたいと思っています。

(以上)

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