長官会見要旨 (令和3年5月19日)

会見日時等

令和3年5月19日 14時00分~14時40分
於:気象庁会見室


発言要旨

   冒頭私から2つほどお話をさせていただきます。

   1点目は大雨への備えについてでございます。
   皆さんご承知の通りで、今年は梅雨入りが早く、16日の日曜日までに東海地方まで梅雨に入って、関東甲信、北陸、東北南部と北部を残す状態になっています。
   これから6、7月にかけて全国的に本格的な出水期を迎えます。
   従って皆さんには大雨への備えを万全にしていただきたいということでございますが、先月もお話しましたけど、気象庁では「防災気象情報の伝え方に関する検討会」の報告などを踏まえまして、この出水期にいくつか情報について改善を実施することとしております。
   いくつかある中で一つは、先月お話しましたけれども、線状降水帯に関連するもので、「顕著な大雨に関する情報」の提供を開始いたします。
   これは大雨による災害の発生の危険度が急激に高まっている中で、線状の降水帯により非常に激しい雨が同じ場所で降り続いているという状況を、線状降水帯というキーワードを使って解説をする情報でございます。
   それから、昨年の台風の時に、特別警報級の台風という言葉を使ったり、特別警報の発表の可能性が小さくなりましたが引き続き警戒をしてくださいといった呼びかけを行ったりした場合に、大雨や暴風でどういう災害が想定されるのかが分かりづらいという御指摘がございました。
   これについて、どんな災害が想定されているのかがわかるように解説を強化していくところでございます。
   このほかに、一昨年度の伝え方の検討会の提言なども踏まえまして、記録的短時間大雨情報の改善、危険度分布通知サービスの細分化、高潮警報の改善や、国土交通省と連携しているものですけれども指定河川洪水予報の予報時間の延長について、今年の出水期から実施をする予定にしています。
   この具体につきましては今月の末に詳しくお話をさせていただく予定にしております。
   こういったことで、防災気象情報を見聞きした住民のみなさんが危機感を正しくもって少しでも大雨災害の被害軽減につなげられるよう、私どももしっかり取り組んでまいりたいと思っています。
   2点目が「気象業務はいま」の2021年版の刊行についてでございます。
   これも皆さんご承知だと思いますけれども、6月1日が気象記念日でございます。
   これは明治8年の6月1日に気象庁の前身である東京気象台が観測を開始した日ということでございまして、毎年気象庁ではこの日に「気象業務はいま」という刊行物を刊行しておりまして、気象庁の最新の取り組みや今後の展望などを取りまとめて1冊にしたものでございます。
   今年につきましては、先ほど申し上げた線状降水帯の予測の精度向上をはじめとする技術開発の取り組みや産学官の連携の取り組みなどについて特集を組んでいるところでございます。
   こういった全体を俯瞰するようなものでございますので、皆さんに広く読んでいただいて気象業務について知っていただきたいという気持ちを込めて刊行するものございます。
   6月1日の気象記念日は例年ですと式典を行いますが、昨年に引き続きまして今年も感染症の状況に鑑みて式典については中止することとしております。

   私からは以上です。

質疑応答

Q : 熊本などでは梅雨入り直後からすでに記録的な大雨が降っていたり、行方不明者も出ています。
 そういった中で明日も非常に大雨の予想が出ていますが、梅雨入り直後の大雨について注意点についてご発言などありましたらよろしくお願いします。
A : おっしゃる通りで今年は梅雨入りが例年より早いということに加えて、入った途端に九州をはじめ大雨になっています。
 明日、明後日も大雨が見込まれておりますので、まだ梅雨の始まったばかりだからとか通常の年であればまだ梅雨じゃないのだからということで油断することなく、しっかり情報に耳を傾けて身を守っていただきたいと思います。

Q : ホームページへの広告掲載についてお伺いします。
 梅雨入りした中ではありますが夏ごろからまた再びホームページに広告を掲載する予定と伺っています。これはいろいろ批判もありますが予定通り掲載されるご予定でしょうか。
A : 気象庁ホームページに広告を載せるということは、大変多くの方にご覧いただいている当庁ホームページ内にweb広告の媒体を活用することにより、国民の皆さんへのご負担を少しでも減らして、ホームページの安定的な運用・継続的な運用を効率的に図ろうということで実施するものでございます。
 新しくリニューアルしたホームページについて、その広告を載せるべく準備を進めているところでございまして、7月の初めから広告を載せる計画としております。
広告の掲載によってホームページで提供している防災情報の閲覧性や速報性が低下することのないように十分配慮した上で広告を掲載したいと考えているところでございます。

Q : 今年から線状降水帯に関する情報等が出されるシビアな状況の中でも広告を掲載されるということでしょうか。
A : リニューアルしたホームページでの広告については、皆様からいただいた様々なご意見を踏まえて、非常にシビアな状況や避難などを呼びかけている状況のときは、広告の掲載を中止しようと考えています。
 例えば特別警報が発表されている時や記者会見を行って広く警戒避難を呼びかけているような状況では広告の掲載を中止しようと考えております。
 線状降水帯というのは事前の予測が難しく、事前に記者会見をやっていないような状況で、予期せぬ降水帯に対し、広く警戒を呼びかけなければいけない状況ですので、広告の    掲載を中止することも考え得るのではないかと思ってはいます。
 そういったことも踏まえて現在、庁内で検討しているところです。

Q : 今年から色々な情報の出し方が変わるということで、月末に詳しくご説明くださるとお話ありましたが、この予定は通常の梅雨入りに合わせたスケジュールじゃないかと思っております。こういう時こそ臨機応変に改善も含めて一般向けの周知も前倒して行ったほうがいいと思うのですがそのあたりはどうでしょう。
A : 改善自体はどうしても準備の都合などがあり、なかなか計画を前倒すことができないので、予定していたようなスケジュールで進めざるを得ないかなと思いますが、担当とも相談して、もし早くできるようであれば早めたいと思っており、そこも含めて庁内で検討させていただきます。

Q : 毎年シーズン前に「今年こそは命を落とす人をなくしましょう」と言って、シーズンが終わってみると結局いっぱい犠牲者が出ていることが多いですが、油断をせず情報に耳を傾けてとおっしゃっていたのはその通りですが、情報が来てても結局それが生かされていないということが毎年の繰り返しだと思います。情報の中身が見直されるこの機会にこれだけは強調しておきたいということがあればお願いします。
A : 今年の改善の中で一番大きなものというのは、先ほどから申し上げている顕著な大雨に関する情報だと思っています。
 これについては、先月も申し上げましたが、これだけをきっかけに何かをすれば良いという情報ではないので、そこにはぜひご留意いただきたいと思います。
もともと避難指示が出ている状況下で、"これは線状降水帯によるもの"という情報が追加されるというものです。
 避難指示は出たけれども避難しようかどうしようか迷っているというような方は、是非すぐに避難を始めていただきたいと思います。また、この情報が出るような状況というのは、危険度が急激に上がっていくことが十分考えられるので、今はキキクルがまだ赤だから黄色だから大丈夫だということではなくて、これはもういつ紫になるか分からないと、いつ避難が必要な状況になるか分からないと考えて行動をしていただきたいと考えています。

Q : 明日から災害対策基本法の改正に伴い、避難勧告というのが廃止されて避難指示に一本化されます。これは自治体が出す避難情報ではありますが、これに伴う気象庁の取組や情報の整合性などありましたらお願いします。
A : 避難勧告と避難指示の一本化については、キキクルの在り方をそれに合わせて変えていきたいと思っています。勧告と指示の一本化に合わせて紫を一本化することと、特別警報と警戒レベルとの対応について、これまで特別警報は災害発生情報を出すトリガーではないとされていましたが、今後、緊急安全確保の根拠というか、きっかけとするという風に変わっていきます。
 だからといってその特別警報をどう変えるということではありませんけれども、その点含めてしっかり周知をしていきたいという風に思っております。

Q : 先ほどのホームページへの広告掲載について改めて思っていることですが、去年始めた際に運用型の広告したことで不適切な広告が出ました。その後、掲載方法を見直して事前に審査が通ったもの、確実にこの広告が出るという形態に変えたと思います。それによって国民の負担が軽くなる金額が、当初、年間2億数千万円を賄えるという計画でしたが、運用型広告を止めて、純広告に変えたことで数百万円ぐらいしか賄えないのではという風に伺っています。
 その数百万のためにやる意味・意義があるのかという意見も聞こえていますが、その辺はどのようにお考えでしょうか。止めるという選択肢はもうそこにはないのでしょうか。
A : おっしゃる通りで、運用型の広告ではどうしても不適切な広告が排除できないということでしたので、1月からの広告については純広告という形で掲載をしました。
今度やるものについても同様に、事前にしっかりチェックして、これならいいというものだけが掲載される形にはしようと思っています。
 そういう風にすることで、運用型に比べると、当然それによる効果というのは小さくなってしまうところがございますので、もちろんその額によっては、それだけのために、という議論は多分出てくるのだろうと思いますが、今の時点でこういう額だからどうしようかということを検討している状況ではございません。

Q : 今後例えばそういう議論が出てくればそれは検討するということでしょうか。
A : 検討とした方がいい状況であれば検討を行いますが、今の時点ではそういう状況ではないということです。

Q : HPの広告に関連して、顕著な大雨に関する情報が開始されることに当たって、今後の雨のページに線状降水帯を赤い楕円で表示し、防災気象情報に関するページの充実が図られる一方で、そういったページにも広告を掲載する考えでしょうか。改めて長官の考えをお教えいただけないでしょうか。
A : 広告を乗せることの考え方は先ほど申し上げたとおりで、例えば雨量の図の中に広告が入ってくるわけではありません。あくまでも防災情報の閲覧を邪魔しないという形で広告を掲載しようと考えています。
 それから線状降水帯が出た時に広告を出すことにするのかというのは、先ほど申し上げたように今検討しているところです。

Q : パソコンの画面では周りとその図面と広告の距離は離れているかもしれないですが、スマートフォン上の画面ではかなり近接した状態になっており、誤ってタッチするとそのページに飛んでしまうということもあるかと思いますが、スマートフォンでの広告掲載について長官ご自身はどのように考えられたでしょうか。
A : パソコン上でもスマートフォン上でもどう見えるかということは庁内でしっかり見ていますし、閲覧性や操作性が低下しないようにということは十分配慮をしていきたいと思います。

Q : せっかく気象庁ホームページがリニューアルされて、自分の住んでいる地域の防災情報が今こういう状況だというのを一覧で確認できるようになっていますが、今度は避難指示で一本化されましたので、是非その地域に避難指示が出ているかのリンクを貼って、利用者がすぐ確認できるようになれば、より便利になるのではと思いますがそのような検討は行われていますか。
A : 今、具体的にそういうことを検討しているという状況ではありませんが、いいアイディアだと思いますので、将来の検討材料とします。

Q : 自治体によって防災関係の情報をウェブサイトでの提供を一生懸命やっており、県単位で防災のサイトを別途設けているところもありますが、特に町や村の方になってしまうと何よりも人手が足りないですし、お金も無いとのことから、もしやるのであれば業者委託するしかないとなっていますが、危機的状況が発生する段階で業者は対応できるのかという問題が生じます。
 やはり命に関する情報はいくつかのフェイルセーフがあった方がいいということもあり、どんな状況でも気象庁のサイトは基本的に回線等の可用性が高いので、最低限、気象庁サイトに行けば今自分のところはどうなっているか分かるようになれば、さらに便利になるのではという意見でした。
A : 本来自治体がホームページに載せるべきものを気象庁のホームページに肩代わりして乗せるという形にはなかなかしづらい部分はあると思います。
 一方で防災に関連する様々な情報を一覧で見ていただくことのメリットは大変大きく、私たちもハザードマップや他の情報と相互にリンクをしたり重ね合わせたりという方向性は持っていますので、そういう気象庁の取り組みや防災に関係する機関全体の取り組みの中で、そういった一覧性を高めていくことが適切なのではないかと思います。
 見る方々の立場からすれば、とにかく、並べて見られたり、ワンクリックで行けたりすることが大事だと思いますので、そういうものを実現するということは大切な考えだと思いますし、私たちもそのようにやっていきたいと思います。

Q : 今年の出水期に向けて、顕著な大雨に関する情報、あるいは今言及があった避難情報に関することなど、国民が防災行動に取るに当たって、参考にする情報が色々変わってきていると思いますが、これらの情報が国民にどこまで浸透できているのか、現状を長官はどのように評価されていますか。
A : 気象庁の情報を閲覧していただくという点では、昨年度のリニューアルで改善が図られたとは思っています。
 一方で、確かに住民1人1人が何を見なければならないのか、本当に全体を見ようと思ったら何と何を見なければならないのか一気通貫でサーッとみられるようになっているかと言われると、まだまだやるべきことはたくさんあるだろうと思っています。

Q : 例えばやるべきこととしてどんなことを考えていますか。
A : 先ほどのご提案のように、地域の防災に関する情報については、気象台であろうと自治体であろうと、命を守るための様々な情報を順番にパッと見られるようなものがあるというのはすごく良いのではないと思います。

(以上)

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