長官会見要旨 (令和3年1月5日)

会見日時等

令和3年1月5日 14時00分~14時37分
於:気象庁会見室


発言要旨

   皆様、新年明けましておめでとうございます。
   本日付で気象庁長官に就任いたしました長谷川直之と申します。どうぞよろしくお願いいたします。就任にあたりまして、皆様に一言私からお話をさせていただきたいと思います。

   これからの気象庁ですが、引き続き、平成30年の交通政策審議会気象分科会の提言にございます2030年の科学技術を見据えた気象業務のあるべき姿を目指して取組を進めていきたいと考えています。その提言では、安全、強靭で活力ある社会を目指し、「国民とともに前進する気象業務」との考え方を打ち出しています。この「国民とともに前進する気象業務」は、政府内の各行政機関や大学等の研究機関、地方自治体、あるいは民間企業など様々なところと、しっかり連携をして、気象業務を進めていくべきということだと私は解釈しています。

   これまで関田前長官のリーダーシップのもとで、気象庁は、災害時に気象台職員を自治体の災害対策本部等に派遣するJETT(気象庁防災対応支援チーム)と呼ばれる取組や、国土交通省や地方整備局等との共同での記者会見など、連携を重視した取組を進めてきています。また一方で、組織の改編や交通政策審議会気象分科会を通じた産学官連携のための検討を行うなど、私たちの仕事全体を連携重視で進めるための準備を進めてきたところです。私は、そうした成果をしっかり活かして、2030年を目指し、技術開発、情報やデータの利活用の促進、そしてこれらを車の両輪とする防災の仕事をしっかり前に進めていきたいと考えています。 少し具体的な課題についてお話させていただきます。

   まず風水害に関しては、昨年の令和2年7月豪雨や台風第10号等を振り返ってみましても、線状降水帯や、台風の進路や強度の予報の技術を、しっかり前に進めるということが大変重要で喫緊の課題だと認識しています。
   予測精度の向上のためには、観測・監視の強化や予測技術の高度化に向けて、私たち自身が着実に取り組んでいく必要がございますが、それに加えて、予測技術を飛躍的に進化させるためには、多くの分野の研究機関等と連携して進めることが大事だと思います。私としてはそのようなことをしっかり進めていきたいと思っています。

   また、防災情報の伝え方等の改善に関しましても、現在有識者会議等で様々検討いただいており、これから前へ進めますが、これについても、自治体や関係機関としっかり意思疎通をしながら進めていくことで、しっかりとした効果に結び付けたいと思っています。

   また、各気象台ではJETTの派遣や、気象台職員を各市町村毎に担当を決めて日頃からコミュニケーションを図っていく「あなたの町の予報官」といった取組を進めています。こういったことを強化していくことも重要だと思っています。先月、全国の気象台OB/OG29名を「気象防災アドバイザー」として新たに委嘱しております。気象防災アドバイザーは、市町村で、気象台から提供される防災気象情報の読み解きやそれに基づく助言等を行うことが期待されており、今後、その活躍を促進できるようなことを進めていきたいと考えています。

   次に、気候の観点からも情報提供をしていきますが、例えば先月、文部科学省と共同で「日本の気候変動2020」をとりまとめました。こういったものに基づく普及啓発活動等をしっかりと進めたいと思いますが、さらに大学等の研究機関や他の関係省庁とも広く連携することで、より有効な対策につながる情報提供ができればと考えています。

   地震火山分野については、観測や監視、また緊急地震速報等の情報の発表やその改善をしっかりと前に進めたいと思っています。
   加えて、地震の発生や火山の噴火等の予測が難しいとされている中、地殻変動や火山活動の推移などについて、少しでも理解を深めていきたいと考えています。そのためには、大学等の研究機関との連携をさらに深化させる必要があるだろうと思っています。それに基づく、少しでも有効な情報を社会にお届けできるようにしていきたいと思っているところです。

   全般的な連携の強化という観点では、先ほど申しましたように、昨年末の交通政策審議会気象分科会で、情報やデータ、さらに技術やノウハウを広く産学官で共有し、総力を結集して気象業務を進めていくべきとの方向性が出されております。こういったことを踏まえ、まずはできるだけ早く、産学官の関係者との対話の場を構築したいと考えています。そして、対話を通じて皆さんのニーズを確認しながら、新たにクラウド技術を使った気象情報やデータの共有環境を構築していきたいと思っています。特に大容量データ等を活用するハードルを下げて利便性を高めていくことで、産学官の様々な主体が、それぞれの持つデータや知見を持ち寄って協力できるようになり、一層社会活動に貢献できるようになると考えています。

   コロナ禍の中で新しい年を迎えたところで長官に就任したわけですが、日々の業務の確実な遂行・継続に万全を期していきたいと思いますし、今申し上げたような業務の発展も、連携を進めるためには、コロナ禍の中では若干不利な部分もありますが、様々な工夫を凝らすことでしっかり前へ進めていきたいと考えています。

   最後になってしまって恐縮ですが、お集まりの報道機関の皆様には、日頃から防災気象情報の伝達においてご協力いただいていることに改めて感謝を申し上げたいと思います。それだけでなく、私どもの情報のあり方や伝え方等についても、一緒に考えて、ご助言をいただいております。いわば、気象業務を一緒に育ててくださっている方々だと考えています。改めて感謝を申し上げます。引き続き、緊張感を持ちつつも、皆様と一緒に防災・減災に向けて進めて参りたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。

   私からは以上です。

質疑応答

Q : 新年が始まり、コロナ禍というお話もありましたが、改めて職員の皆さんも含めて、気象庁としてどのような一年にしていきたいかをお聞かせください。
A : コロナ禍で始まった一年ということでは、24時間体制で行っている業務をしっかりと継続していくということが最大の優先事項だと思っています。どんなことがあっても、国民の皆様にご不便をお掛けしないという覚悟で皆で頑張っていきたいと思っています。また、今色々お話ししたような連携を重視した業務の発展にも力を入れていきたいと思っており、まずは産学官の連携のための協議会の設立にすぐにでも着手したいと思っているところです。さらに、個別の技術開発等の課題の中では、令和2年7月豪雨をもたらしたような線状降水帯の予測精度の向上が大変重要な課題だと思っており、そのための水蒸気観測の強化や、技術開発の加速といったことを進めていくことが優先課題だと私は考えています。

Q : 今のお話の中で、連携という言葉を繰り返し使われたと思いますが、災害が激甚化している中で気象庁の果たす役割は大きいと思いますが、その中で長官としてどのような役割を果たし、リーダーシップを発揮していきたいかをお聞かせください。
A : 現在、国土強靭化として防災の取組を政府としても進めているところでございます。災害をもたらすような顕著な現象が起きたときに、うまく社会全体が動くことによって災害をかわしていくということにおいて、気象庁というものは、災害をもたらすような顕著な現象が来るということを皆様にお知らせするという、ある意味引き金を引く役割をしているわけでございます。これをタイミング良く、適切な形で出すということが最も重要なことでありまして、そのためには、社会が私たちの情報によってどう動くのか、どう動きたいのかをしっかり理解した上で、最適なタイミングで最適な情報を出せるようにしたいと、災害対応の点では考えています。また、技術開発も進めているところですが、私たちの情報は、空振りもありますし、見逃しもあるものです。その実力を皆様にご理解いただき、さらにはその実力を上げていくために、先ほど線状降水帯のお話をさせていただきましたが、このような努力もきちんとしているんだということも皆様に知っていただいて、皆様がそのようなことをご理解いただいている上で、情報をお伝えするというような形で仕事を進めたいと考えています。

Q : 先日、内閣府のサブワーキンググループで避難情報の見直しもありましたが、それについての受け止めをお聞きかせください。また、防災気象情報の発信の現在の課題や今後重視していきたい点があればお聞かせください。
A : 先日の内閣府のサブワーキンググループで、避難勧告と避難指示の一本化や警戒レベル5の情報の見直しがなされましたが、防災気象情報を発表する気象庁としては、分かりやすくて使いやすい情報を出すということが一番大事なことですので、そういった検討の成果に合わせて、私たちの情報をどうするかということを検討することが必要になってきます。今まさに防災気象情報の伝え方に関する検討会を開催しておりまして、ここでのご意見を踏まえながら、内閣府の検討内容ともしっかりと足並みをそろえて良い情報を作っていきたいと考えています。

Q : 長官は、先般の組織改編に伴って新設された気象防災監を務められたと思いますが、就任から約2カ月で長官になられたということで、着任当時はこんなことがしたいというようなことがあったと思いますが、2カ月でそれを達成することはなかなか難しいと拝察しますし、気象防災監として志半ばの部分もあったのではないかと思いますが、新しく長官になられて、新しい木俣気象防災監にどのようなことを伝えたのか、どのようなことを期待したいのかをお聞かせください。
A : 気象防災監としてやるべきことは、専門的な知識に基づいて防災に関する平時・緊急時のハイレベルの調整をすること、それによって迅速で的確な対応ができるようになるということです。まさにそれを進めるという中で、社会を構成する様々な方々は、避難に限らず、様々な事を気象情報に基づいてなさっていると思います。その動き方をしっかり踏まえて情報の出し方や伝え方を考えていくべきだと考えておりましたので、それに向けて、短い間でしたが、少しずつ関係するところとお話をさせていただいていたところです。後任の気象防災監にも、具体的に何をするということよりも、その考え方で、情報の使われ方をこちらが良く知り、先方にはこちらの技術の状況を良く分かっていただいて、お互いに納得尽くで情報の受け渡しを行い、より良い防災に繋げたいということを新しい気象防災監にもお願いしようと思っていますし、それはとりもなおさず気象庁としても重要なテーマだと思いますので、一緒にやっていきたいと思っています。

Q : 直近でも様々な自然災害があり、特に気象の分野では地球温暖化等の影響で、今後さらに激しい災害が起きることも予想されると思いますが、そういった中で、気象庁の役割や立ち位置も変わってきていると思います。そのあたりを長官はどのように考えていらっしゃるかお聞きしたいと思います。
A : 今後さらに激しい現象が起きることが予想されるということで、一つ一つの事象に関して厳しい対応を求められることが多くなるだろうという観点がまず一つあります。これに関しては、一つ一つの防災気象情報の改善をきちんと積み重ねていく、それも利用者サイドにしっかりと立って考えていくということがまずは大事なのだろうと思います。もう一つ、防災を少し広い視野で国土交通省としても取り組んでおり、国土計画や土地利用も含めて災害に強い国づくりを進めていますので、それにも貢献をしていきたいと思っています。これは、地球温暖化や気候に関する情報をこれまでも色々な形で提供してきましたが、それを計画に反映しやすい形にするためにはどうすればいいかをこれから勉強してきたいと思います。

Q : コロナ禍の中での、気象庁に求められる役割についてお聞きします。先般の災害では、避難所が一杯になってしまい受け入れが困難になったり、その中でより早い気象情報を求められたり、コロナ禍の中で求められる気象庁への役割は変わってきている部分もあると思いますが、そのあたりどのように考えられていますか。
A : 繰り返しになりますが、まずは着実に情報を出せるようにしっかり気象庁の中で対策・準備をして、どんなことがあっても情報を途切れさせないということが第一だろうと思っています。その上で、なるべく正確な情報を少しでも早くお出しすることで、皆様の避難について、どこに逃げれば良いのか、どのような対策をすれば良いのかを考えるための、時間的な余裕を少しでも持っていただくということが大事なことなのだろうと思います。どこに逃げるべき、どのような対策を避難所でするべきといったことは、それぞれ自治体や関係機関がやると思いますが、その方々に少しでも多くの時間を差し上げるということが、私どもの務めだと思います。

Q : 分かりやすい防災気象情報というご発言がありましたが、特に河川情報につきましては、去年から国交省や内閣府との縦割りの弊害が盛んに指摘されてきました。歴代の長官の方々も、他省庁との連携という点ではかなり骨を折られてきたことを承知していますが、そこに対してどのように向き合っていくお考えでしょうか。
A : 歴代長官というお話がありましたが、代を追うごとに気象庁と水管理・国土保全局との連携は進んでいると私は思っています。まだまだ足りないところはあるかと思いますが、相当な連携ができるようになって、例えば台風の際に、共同で記者会見をし、気象の観点と河川の観点との両方を皆様に同時にお伝えするということができるようになってきています。大雪の時にもやりましたが、必ずしも水管理・国土保全局とだけではなく、国土交通省内の道路局等の様々な部局とも連携して、全体的にメッセージを発信し、災害対策に臨むという形ができるようになっていますので、これをもっと進めていくということだろうと思っています。何かがあってできないとか、そういったことはもうあまりなくて、何をするのが最も有効なのかを皆で一緒に考えて、どんどんやっていける時代になっているなと思っていますので、今のチャンスを逃さずに連携を進めたいと思います。

Q : 更なる連携が必要な分野としては具体的にどのようなものを考えていらっしゃいますか。
A : 水管理・国土保全局との関係で言いますと、河川の情報は、極端に言いますと、気象庁が出している情報と国土交通省が出している情報のそれぞれを見ないといけない状態となっていますが、これを一緒にここを見れば全部が分かるという形にしていくということがまずは第一歩かなと思っています。

Q : 新型コロナウイルスで、まさに緊急事態宣言が出されようとしている中での就任となります。関田前長官の強いリーダーシップで、他の省庁で感染者が相次ぐ中、気象庁は未だ気象大学校以外は感染者0人となっていますが、そこに関してはどのようにアプローチをしていくお考えでしょうか。
A : 今のところ、おっしゃるとおり、新型コロナウイルスの感染者は気象大学校の1名で済んでいます。これは、このように言うと良くないのかもしれませんが、幸いという部分もあって、これだけ感染が広がってきますと、どのようなルートで感染するかも分かりませんし、感染者が出ることもあり得るというように考えていくべきなのだろうと私は思っています。むしろ感染者が出た時に、最初の感染者だけで食い止めて、業務をきちんと継続するようにしていくということが組織としては大事なことだと思います。もちろん、職員には一人一人の感染防止対策をしっかりやるようにということはきちんと伝え、それをやっていただいた上での話です。

Q : 気象庁ホームページの広告についてですが、1月中に再開することを目処とされていて、2月中旬以降は純広告の業者を募って広告を順次再開していくという方針でいらっしゃると思いますが、この方針は新長官の下でも続けていくつもりかどうかを教えていただけたらと思います。
A : 気象庁ホームページについて方針を変えるということはありません。昨秋にあったような、不適切な広告が掲載されるということが二度とないように慎重に準備をしていて、できるだけ早い時期に再開したいと考えています。2月中旬からは新しいホームページでの広告掲載となりますので、これについても同じような考えではありますが、再開ということではなく、新たな契約でもって進めたいと考えています。結論を申し上げますと、特に方針の変更はありません。

Q : 生物季節観測の種目の変更について、今年から大幅に種目が廃止されるということで、結構反響が大きく、それを受けて気象庁も先日、民間の業務支援にあたっていくという方針を明らかにされたと思いますが、こういった推移について長官はご覧になってどのように受け止められていたか、そして気象庁として、一部昨年末にも方針を出されていますが、どのように対応にあたっていきたいかお伺いできればと思います。
A : これまで申し上げてきたことの繰り返しになってしまうかもしれませんが、生物季節観測というものは、元々、生物を指標として、季節の遅れ進みや気候の変化を捉えようということでやってきたものですが、なかなか標本とするような動植物を見つけることが難しくなったり、季節の変化と生物の変化がなかなかマッチしなくなってきているということもあって、気象庁としてはそういったものを指標とする気候の把握はこれ以上は難しいだろうということで、多くの種目をやめることにしたということです。一方、民間の方々をはじめ、季節によって暖かくなったらこのような生物が出てくる、このような植物の花が咲くといったことについて非常に関心があり、また生態系そのものにご関心がある方もたくさんいらっしゃって、そういった方々がご自身で観測を続けていかれようとしていることがよく分かりましたので、その方々に少しでも支援になるように、私どもの観測のやり方や長期間の観測データを提供したりして支援をしていきたいと考えているところです。

Q : 長官は、特別警報の導入時に企画課長をされたり、気象防災監のお仕事をされたり、これまで気象防災に直接関わる役職に就いてこられたかと思いますが、長官ご本人として印象深い災害があれば教えてください。
A : 特別警報導入より前の話ですが、最初に本格的に災害対応の役職に就いたのは平成16年でした。平成16年は台風が10個日本に来て多くの被害がありました。その時から、気象庁の発表する情報と、避難勧告や避難指示に代表されるような行動をどう結び付けていくかということが非常に大きな課題となりました。最近になって警戒レベルが導入されて、そのことが非常に明確に位置付けられるようになりましたが、その前から少しずつ気象庁のこの情報はこのように自治体では使われて避難勧告等を出していきましょうということができるように段々なってきていたのですが、そのきっかけになった年が平成16年だったと思っています。自分が担当していたということもあって、非常に印象に残っている年でした。

Q : その時の役職を教えてください。
A : 予報部業務課の調査官です。

Q : 気象庁ホームページの広告に関してですが、どのようなところがこの広告の意義だと感じていますか。
A : 従前からご説明しているとおりだと思いますが、少しでも予算を効率的に使っていく中で、せっかく多くの方々がご覧になるという実績のあるホームページを運営しているので、それに広告を掲載することで予算の効率化を図っていきたいということ、狙いや意義はそういうところにあります。

Q : 趣味は何かお持ちでしょうか。
A : 釣りをしたり、料理をしたりといったところです。

Q : 他機関との連携で、産学官の協議会の設立をいち早く進めたいというお話がありました。構成するメンバーや運営のあり方についてどのようなものを具体的にイメージされているかを可能な範囲でご紹介いただけますか。
A : 情報交換をしたり、気象庁が持っている中長期的なものの考え方や、こちらから提供する情報やデータの形等にどのような変化があるかということを皆様に分かっていただいたり、また、新しい気象情報のニーズのようなものが出てきた時に、それに対してどのような形で対応していったら良いのか、その中で民と官、あるいは学の中でどのように一緒にやっていったら良いのかを協議する場、さらに先ほどご紹介しましたクラウドを使うような情報共有のあり方といったものを協議するための会と考えています。メンバーシップや会の構成をどうするかといった具体についてはこれから急ぎ検討するものというところです。

Q : 今年の3月で東日本大震災からちょうど10年という節目になります。気象庁にとっても様々な教訓があったかと思いますが、教訓を踏まえたこの10年間の取組で、成果が出てきた部分やまだまだ課題となっている部分があればお聞かせ願えればと思います。
A : 津波警報の出し方については、マグニチュードが大きく、津波の高さが必ずしも正確には分からないが巨大であるということが分かる場合、初めから数字を言うのではなく、巨大という表現をして、とにかく皆様に逃げていただいて、その後の詳しい分析で分かってきてから定量的な情報を出すという形の津波警報のあり方に変更したというところがございます。これが一番分かりやすいところではないかと思います。あのような巨大な災害を一つの契機として特別警報のようなものもできましたし、様々な防災情報のあり方の検討も進んでいると考えています。直接ここをこうしたということではなく、想定できないという言葉が色々取り沙汰されていましたが、とにかくどんな事があっても、あのような事もあり得るんだということを念頭に置いた様々な検討が進められてきていると考えています。

Q : 南海トラフ地震に関しては、東日本大震災後、改めて想定の見直し等が進んで、実際に気象庁も情報の出し方を、平成29年にそれまでの予知を前提とした東海地震の形から今の形に変えたと思いますが、このあたりが中々理解されておらず、浸透しきれてないという声もありまして、これも情報の出し方やあり方に繋がると思いますが、このあたりの運用状況をどのように考えておられますか。
A : 南海トラフ地震については、新しく臨時情報を出すということになったわけですが、そのことについての普及啓発が非常に大事な取組だと考えています。気象庁としても色々とイベントを開催したり、様々な形で広報に努めたいと思っています。できれば、内閣府や地元の自治体等としっかり協力して、皆様に「こういう情報が出たら、このようにすれば自分の命が助かるんだな」ということが分かっていただけるような広報の仕方を進めていきたいと思っています。

Q : 防災気象情報を適切なタイミングで出していくというお話がありましたが、逆に国民の側に求めることとしてはどのようなことがありますでしょうか。例えば気象庁も情報を出していますし、気象庁ホームページで危険度分布を見ると自分の住んでいる地域の状況がすぐ分かるような細かい解析も出ています。このような気象庁から出す情報を国民にどのように触れてほしいか、取りに行ってほしいか、どのようにお考えでしょうか。
A : まず国民の皆様にはご自身の住んでいる場所やいつもいる場所に気象に関連したどんなリスクがあるのかということをまずは知っていただきたいと思います。ハザードマップといったものができていますし、自治体からも様々な情報が提供されていると思いますので、まずはそれをご覧いただいて、「自分の住んでいる場所はこういうことがあったら危険になるんだな」という前提で、気象庁が発表する様々な情報は報道機関等から伝えていただいていますので、それに耳を傾けていただくということだと思います。そして、テレビやラジオ、気象庁の会見では、本当にきめの細かいところまでお伝えすることはなかなか難しいと思います。そのため、「この市についてはこんな危険があるんですよ」ということをお伝えすることになりますので、それ以上の詳しいところについては危険度分布等をご自身で駆使して、自分のところがどのように危ないのかということを分かっていただき、その上でとにかく早めの行動を、避難が必要であれば避難するといったことをしていただくことが大事なところだと思っています。併せて、ご自身でなかなか判断が付かない知人やご家族等がいらっしゃったら、そういう方にも声をかけていただいて、しっかり対応していただければと思います。ただ危険が来るということを思っているだけでは命は助かりませんので、日頃の生活は一旦諦めて、早めに逃げていただくことをお考えいただきたいと思います。

Q : 危険度分布に関して、気象庁の川の情報も危険度分布に反映していますが、水管理・国土保全局の方も河川の水害リスクラインの運用を始めています。このあたりの川の情報との連携についてどのようにお考えでしょうか。
A : これは一つの画面で両方をしっかり見えるようにしていこうということで、既に様々な調整を始めているところです。なるべく早く実現するようにしたいと思います。


(以上)

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