長官会見要旨 (令和2年12月16日)

会見日時等

令和2年12月16日 14時00分~14時21分
於:気象庁会見室


発言要旨

   冒頭私から3点述べさせていただきます。

   最初は庁舎移転に関してでございます。
   先週、報道発表させていただきましたとおり、虎ノ門庁舎への移転が無事に完了いたしました。このことを記念いたしまして、新庁舎の開庁式典を明日、開催することとしております。
   また、先月の会見でも申し上げましたが、気象庁では、地域防災力の一層の強化を目指すため、地元の気象に精通する、29名の気象台OB/OGを「気象防災アドバイザー」として新たに委嘱し、市町村の防災業務を支援できる体制を拡充していきます。さらに、今後、気象台による市町村長への訪問等の機会を通じまして、気象防災アドバイザーに関する地方公共団体への周知を進め、気象防災アドバイザーに業務を委任しやすい環境づくりにも取り組んで参りたいと考えております。
   この気象防災アドバイザーに対し、明日の式典において、赤羽国土交通大臣より、委嘱状の授与を行うこととしております。

   続きまして、先週に開催いたしました「防災気象情報の伝え方に関する検討会」についてでございます。
   今回の検討会におきましては、今までの取組状況のフォローアップを行うとともに、今年度発生いたしました一連の気象災害を受けまして新たに明らかになりました課題について確認し、今後の更なる改善に向けて委員の皆様からご意見をいただいたところでございます。
   気象庁がこれまで取り組んで参りました記者会見での呼びかけや、大雨特別警報の指標改善、危険度分布の高度化などの改善の取組につきましては、一定の評価をいただいたものと考えております。
   一方で、例えば、台風を要因とする特別警報のあり方など、今後改善が必要な事項について、いくつかご意見・ご提案をいただいたところでございます。
   気象庁といたしましては、委員の皆様からいただきましたご意見を踏まえまして、内閣府や国土交通省水管理・国土保全局等の関係機関ともしっかりと連携いたしまして、年度末までに改善策をとりまとめて参りたいと考えております。

   最後に、「日本の気候変動2020」についてでございます。
   文部科学省と気象庁では、「気候変動に関する懇談会」の助言と協力をいただきながら、「日本の気候変動2020」を今月4日に公表させていただきました。
   この報告書は、日本における気候変動対策、適応策の効果的な推進に資することを目的といたしまして、国や地方公共団体、事業者等において、気候変動に関する政策や行動の立案・決定を行うにあたっての基礎資料となるよう作成したものでございまして、環境省においてとりまとめられております気候変動の影響評価においても活用されているところでございます。
   気温や降水、海面水位・水温の変化など、日本の気候変動の観測事実と将来予測を概観できる資料となっており、気候変動の担当者のみならず、様々な分野、幅広い世代の皆様にも是非ご一読をいただき、気候変動について考えるきっかけにしていただければと考えております。

   私からは以上でございます。

質疑応答

Q : 移転が完了し明日式典とのことですが、長官ご自身は3週間ほど新庁舎で仕事されていると思いますが、新庁舎での職場環境等、職員の方たちの様子を見られて、どのような感想をお持ちでしょうか。
A : 仕事をしていても非常に快適でございますし、執務環境としては格段に良くなったのではないかと考えています。一例を挙げますと、大手町庁舎には寒い部屋がございまして、冬になると手がかじかんでくるので、手をこすりながら仕事をしていたといった経験もありましたが、新庁舎ではそういうことは全くなく、非常に快適に仕事ができると、私だけではなく、職員の皆も同じように感じていると思います。良い執務環境になったので、パフォーマンスを上げていくということをしっかりとやっていくべきだと思っています。職員一同一丸となって、国民の期待に応えられるよう頑張っていきたいと思っています。

Q : 今年もまもなく終わりますが、この一年をこのタイミングで振り返って、仕事に関することで印象深かったことなどはありましたでしょうか。
A : まずは、新型コロナウイルスの関係です。これはそれぞれの個人のライフスタイルを大きく変えることになりましたし、我々の仕事のやり方も変えることになりました。これは皆様もご承知のとおりだと思っています。このような環境の中で、気象業務は国民の生活に欠くことのできない業務であると我々は認識しておりますので、まずは我々の気象業務をしっかり継続させていくということを目標に、新型コロナウイルスの感染拡大がかなり問題になってきた今年2月頃から庁内で何度か対策会議を開き、対策を進めてきております。幸いにしてこれまで業務が止まることなく継続できておりますので、これについては一定の成果があったかと思っています。
 それからやはり災害でございます。大変残念でございますが、ここ数年、毎年のように一度は非常に大きな風水害が発生しているという状況でございます。今年につきましても、球磨川の氾濫をもたらした令和2年7月豪雨という災害がありました。特に思うことは、線状降水帯は予測が技術的に非常に困難であることや、あるいは台風第10号のように、進路予測はそれなりに出来ていましたが、強度の予測や台風によってもたらされる降水量の量的な予測、こういったものについてはまだまだ十分ではないということが、今年改めて認識させられたところでございますので、我々は技術開発、これは永遠の課題ではございますが、やるべきことはまだまだたくさんあるなということを改めて実感した次第でございます。
 併せまして、今年について申し上げますと、新庁舎に移転させていただくことができました。また、今年10月には非常に大きな組織改編を行わせていただきました。新しい場所で、新しい組織で、気持ちをリフレッシュして職員一同国民の皆様の期待に一層応えていくような、そういった仕事をさせていただきたいなということを感じている次第でございます。

Q : 「防災気象情報の伝え方に関する検討会」において、これまでの改善の方向性について一定の評価というお話がありましたが、一方で、有識者の委員の方々からいくつか懐疑的あるいは批判的なコメントもあったかと思います。特に台風要因の特別警報への対応や、線状降水帯に関する新しい情報提供については、防災上どの程度効果を見越して出しているのかという点で、かなり厳しい意見もあったかと思いますが、どのように受け止め、どのような対応を考えていらっしゃるのでしょうか。
A : 私も出席していましたが、私自身はあまり厳しいご意見をいただいたという認識は持っておりません。一定の評価を得られたというのは、昨年度の検討会のご提言を受けて今年度実施した内容については、一定の評価を受けたことは間違いないと私自身は認識しています。改めまして、今年度の特に台風第10号に関して、台風要因の特別警報を、結果的には特別警報発表基準に達しませんでしたが、沖縄以外では初めて発表することになりそうだったということで、様々な課題が見えてきたということは事実でございます。それについて、我々として新たに様々なご提案をさせていただきましたが、基本的には、全否定であったり、我々が情報を改善することに対して懐疑的であることはなく、もっと建設的なご意見だったと私は思っています。一つ言えることは、あまりにも個別要因の問題点だけに視点を当てて、そこだけを改善しようとすることは、部分最適、つまり全体で見ると必ずしも最適ではないといったご意見ではないかと私は理解しました。防災気象情報としてトータルで見て、どのような形が良いのか、そこからしっかりと考えていくという考え方が必要だということで、そういう視点で個別の我々のご提案についてご意見をいただいたと私は認識しています。

Q : 生物季節観測の種目の変更に関して一点質問させていただきます。先月10日に種目の変更の発表をされて、その後気象予報士や生態学の研究者の方から、この判断に対して疑問を投げかける意見も相次いで確認されていると思いますが、率直にそのような世論が高まっていることについて長官ご自身はどのように感じておられますか。
A : 長年やってきたものについて見直しをすることについて色々ご意見があることは当然だろうと私は思います。逆に、見直すことが当たり前だろうとすべての方が思うということは、逆に言えば我々の見直しがあまりにも遅すぎたということになるのだろうと思いますので、そのようなご意見があるということは予想しておりましたし、当然だと思っています。ただ、見直した理由は、再三ご説明しておりますとおり、本来の目的を果たすような観測ができなくなったということでございますので、そういった点は丁寧に説明していく必要があるのだろうと思っています。その点、我々の説明が十分ではない部分もあるかもしれないという点は反省しているところでございます。併せまして、我々の目的にかなう生物季節観測は出来るものに絞らせていただきましたが、それ以外の目的で、例えばご意見としてあるのは動物の生態の変化を見ることが重要ではないかというご意見ではないかと思っておりますが、そういう目的で観測されることは今後も重要だと思っていますので、そのような観測をされる場合に、我々のこれまでの知見がお役に立てるのであれば、そこはご協力していきたいと思っていますので、仮にそのような申し出がありましたら、真摯に対応していきたいと考えています。

Q : 11月に発表し、実際の変更は1月からということで、また動物については全廃ということで、データを利用されている方からは、リードタイムが少ないという声や事前に相談があったらよかったのにという声も聞かれたりしますが、その点はどのようにお考えでしょうか。
A : そのようなご批判があるのであれば、我々としてもしっかりとご説明をしていきたいと考えています。ただ、特に動物についてはすでに観測できないという事例も多々ありましたので、我々としてはそのような状況を踏まえて今回の見直しをさせていただいたというところでございます。動物が様々な社会環境や自然環境の変化によって生態が変わっていくということを調査すること自体には非常に意味があることだろうと思っていますが、我々気象庁の立場として、残念ながらそこに気象という要素が絡まなくなった、あるいは絡んでも非常にわずかになってしまいましたので、それを続けることは我々としても難しいだろうと思っています。ただ、そのことはしっかりとご説明していく必要があるだろうと思っています。

Q : 先週、パリ協定から5周年ということで気候野心サミットも開かれ、来年のCOP26に向けていよいよカーボンニュートラルに向けた動きが加速すると思いますが、そのような動きについて気象庁としてどのような貢献ができるとお考えでしょうか。
A : 地球温暖化の問題に対しての我々の役割はしっかり観測をしていくことだと思います。実際に地球温暖化がどの程度進んでいるのか、あるいは温室効果ガスの濃度がどのようになっているのかといったことは、科学的にしっかりとした根拠あるデータとして必要でございますので、こういったものをしっかりと揃えていくということと、併せまして、気象庁だけでなく他機関と協力して行うことですが、地球温暖化によって日本の気候がどのように変化していくのかということを、科学的な根拠をもって予測し、それによって地球温暖化による影響を評価、あるいは対策に利用していただくということが我々の役割だと思っています。そのような点で、今回の「日本の気候変動2020」についても公表させていただいたということでございます。

Q : 「日本の気候変動2020」は、パリ協定5周年を意識してこの時期に公表したのでしょうか。
A : そこは担当からは聞いておりませんが、「日本の気候変動2020」は、パリ協定に従って温室効果ガスの排出を削減した場合と何も対策をしなかった場合とを並べさせていただいており、もちろんパリ協定に従って削減したとしても、現在よりも気温が上がるということですが、何も対策をしなかった場合と比べるとかなりの違いがあるということは一目瞭然だろうと私は思っています。そのことから、温室効果ガスの排出を削減していくことは非常に重要であるというメッセージは込めたつもりでございます。

Q : 新型コロナウイルスの感染拡大の中で、これから本格的な冬を迎え、寒い中で換気もしっかりしなくてはならないという今までにない難しい冬を過ごすことになるかと思います。実際に北日本では雪に見舞われていますが、気象情報が、新型コロナウイルスに対応する中で、人々が行動を判断する重要な情報にもなりうると思っています。そういった観点で長官がお伝えしたいことや、呼びかけがありましたらお願いします。
A : 気象情報は新型コロナウイルスの感染対策にもご利用いただけるでしょうし、それ以外の日々の様々な社会活動、経済活動、防災活動といった様々な事に使われていますので、我々としては正確な情報をきっちり出していくということに尽きるだろうと思っています。そのためには、我々が感染しては困りますので、そうならないように、職員の感染防止対策を徹底した上で、しっかりと情報を出し続けていくということが我々の責務だと認識しています。

Q : 「防災気象情報の伝え方に関する検討会」で、警戒レベル相当情報の変更の案が気象庁主導で示されました。この中で高潮については特に分かりにくいという指摘がありました。具体的には警戒レベル4相当に高潮特別警報と高潮警報の両方が入っている点と、また、高潮氾濫発生情報と高潮氾濫危険情報が共に警戒レベル5相当に入っている点が複雑で分かりにくいという指摘がありましたが、そのあたりを改善するおつもりはありますでしょうか。
A : 高潮については、もともと気象庁の高潮警報と水管理・国土保全局の高潮の情報があった上で、警戒レベルに当てはめていくとどうなるのかという観点で今回お示しさせていただいたということです。確かに分かりにくいというご意見はありましたので、そこはどうやって分かりやすく伝えていくのかということはこれからしっかりと検討していく必要があると思っていますが、もともと、レベル化があって我々の特別警報が決まっているわけではなく、あくまで特別警報があって、それを今のレベル化の考え方に合わせるとどうなるかということをお示ししたものだというのが私の認識です。出来るだけ分かりやすく、誤解のないようにすることは当然だと思いますので、そこはこれからの知恵の出しどころだと思っています。

Q : 熱中症警戒アラートについて伺います。全国展開するにあたって、北海道から九州まで全て基準を33とするということになっていますが、このことについて長官のお考えをお願いします。
A : 専門家である有識者の検討会において、これが適切だとご判断されたわけですので、我々はそれを尊重していくということだと思っています。

Q : 北海道から九州まで全く気候が違っていて、そういった中で生活している方々に対して一律の基準ということへの違和感はありませんでしょうか。
A : もちろん地域ごとに基準を変えるという案もあった上でご検討された結果だと思いますので、我々としましては、それを尊重していくということだろうと思っています。

(以上)

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