長官会見要旨 (令和2年11月18日)

会見日時等

令和2年11月18日 15時30分~15時49分
於:気象庁会見室


発言要旨

   冒頭、私から3点述べさせていただきます。

   最初は、庁舎移転に関してでございます。現在、新庁舎への移転作業を順次進めておりまして、これまでに経理や地震火山の関係部署に加えて、広報室及び記者クラブ等の移転を進め、今週からは記者会見をこの虎ノ門庁舎で行うことといたしました。報道の皆様にも会見室の機材準備などご協力をいただきまして、誠にありがとうございました。。
   引き続き、来月にかけて移転作業が順調に進むよう、しっかりと対応して参りますので、よろしくお願いいたします。

   次に、地域の気象防災の専門家の活躍促進についてでございます。
   これまで気象庁では、気象予報士等を活用し、防災対応の現場で即戦力となる「気象防災アドバイザー」を育成するための研修を実施し、市町村の防災対策の支援業務において活躍いただけるよう取り組んで参りました。
   今般、より多くの市町村の防災業務において、地域の気象防災の専門家が支援できる体制を構築するため、気象庁において、地域特有の気象情報に精通した全国の気象台OB/OGから、新たに「気象防災アドバイザー」を認定し、市町村の防災対策の支援業務において、一層活躍いただけるよう取り組むことといたしました。
   詳細につきましては、後日、改めてお知らせさせていただきます。

   最後に、雪のシーズンへの備えについてでございます。
   すでに、降雪・積雪を観測している地域もございますが、今冬は西日本の日本海側では降雪が多くなる傾向が予想されており、大雪に対する注意が必要でございます。その他の地方でも、寒気の流れ込みの一時的な強まりにより大雪となることがございますので、最新の雪に関する気象情報に十分ご留意いただき、大雪や風雪への万全の対策・対応をとっていただきたいと考えております。

   私からは以上でございます。

質疑応答

Q : 冒頭にご発言がありましたが、虎ノ門新庁舎で行う会見も今日が一度目ということで、まだ移転作業は続くと思いますが、改めてこの新庁舎で、今後気象庁はどのような役割を社会に果たしていきたいか、意気込みを教えてください。
A : 3月に新庁舎引き渡しがあった後、一度この庁舎を拝見させていただいたのですが、実はその後は今日初めてこの庁舎に入りまして、このような新しい庁舎に対してワクワクする気持ちはあります。新しい庁舎で仕事ができるという喜びは、私だけでなく、職員皆感じているところなのだろうと思います。このような新しい庁舎に移転できたということは、気象庁に対してより頑張れという国民の皆様からの激励や期待の言葉と私どもは受け取っており、これだけの良い執務環境をいただきましたので、これまで以上に高い成果を挙げられるよう、職員一同一丸となって頑張っていきたいと感じています。

Q : 庁舎移転と少し時期はずれますが、ほぼ同時期に組織改編もありましたが、そこを踏まえてどのような業務に力を入れたいとお考えでしょうか。
A : 新庁舎につきましては、先ほど申し上げましたとおり、非常に良い執務環境を与えていただいたわけですので、頑張っていきたいと思っています。また組織改編につきましては、たまたま時期が一緒になりましたが、目的はあくまで別でございまして、今回の組織改編は、キーワードとしては、防災と情報でございます。防災に一層力を入れていくという我々の姿勢と共に、我々の情報を色々な意味で防災だけではなく、社会経済活動にも活かしていただきたい、そのためには最新の情報、通信技術をしっかりと活用していくという思いで情報基盤部を作らせていただいたということでございます。

Q : 気象庁ホームページの広告について、まだ今日現在も広告掲載停止となっていますが、今後の再開の見通しや方針を教えてください。
A : 先月と同じ答えになってしまい申し訳ございませんが、現在広告運用業者と、詳細についての事実確認や今後の広告掲載再開にあたってどのような条件が必要か、そもそも今回なぜこのような事態になったのか、ということについてしっかり詰めているところでございます。もう少し時間がかかりますので、お時間をいただければと考えております。

Q : 広告掲載を停止している期間があるということによるホームページ運用上の資金面の影響等は今のところないということでしょうか。
A : 何度も申し上げていますとおり、ホームページについては必須のものだと思っていますので、たとえ広告収入が上がらなかったとしても、継続していくということは間違いありませんので、その点については特に問題ないと考えております。

Q : 先日、生物季節観測の対象を減らすというアナウンスがありましたが、このことについての考え方や背景を改めてお聞かせください。
A : 以前、組織改編に関する質問で、私は、気象庁の業務の目的、つまり、災害の防止、あるいは社会経済活動への貢献という目標は変わっていませんが、そのやり方については、社会や様々な情勢の変化、あるいは技術の革新によって変わっていく、あるいは変わらなくてはならないものだろうと申し上げました。生物季節観測についても、まさにその一つなのだろうと思っています。生物季節観測の目的については、ご案内のとおり、季節の遅れや進み、気候の変化といったものを捉えるために行われてきたものですが、こういった目標にかなうような観測が、気象台の置かれている場所における自然環境や社会環境の変化により非常に難しくなり、当初の本来の生物季節観測の目的を達することが難しくなったということで、そのような種目については観測廃止をさせていただく、こういった考えでございます。

Q : 生物季節観測の関連ですが、こういった観測は50年、100年単位で続けることに意味があると思いますが、例えば、50年後に振り返った時、あの時は都市化で確かに目的に沿うような観測はなくなったが、その後、緑を戻す等の色々な動きがあって、また目的にかなうようになったと、そのような変化がデータから見えるということもありうると思いますが、そういった歴史を重ねていく事の重みということはあまり考えられないのでしょうか。
A : もちろん長く続けないと意味の出てこない観測もございますので、そのようなことも重要だとは思いますが、現時点においては、従来の生物季節観測が、本来は様々な気候の変化、あるいは季節の進みや遅れと非常に良い相関を持っていたので、我々にとって意味のある観測だったのですが、現在のような状況になると、そういった相関がほとんどなくなっていますので、例えば動物観測をしたときに、たまたま観測されたからといって、気候の変化等を表すシグナルを持ってないわけですから、現時点においては、こういった観測を続ける意味はないだろうと私は考えています。

Q : 関連して、色々な観測が機械化されていくわけですが、前は空を見るという観測が減って、今度は動物や植物を見るという観測が減りましたが、今後こういった傾向がさらに続くのでしょうか。
A : 気象業務の目的がありますので、その目的にふさわしいやり方、やり方自体は今までも変わってきていますし、今後も目的にかなう最も合理的なやり方を選んでいくのだろうと思っています。やり方がどんどん変わっていくということは当然だと私は思っています。

Q : 例えば、生物季節観測を機械化するとか、何か手段を変えることはお考えないでしょうか。
A : 考えていません。

Q : 先ほど発表がありましたが、東京都で本日の新型コロナウイルスの感染者数が過去最多になったということで、気象庁は、地震火山現業や予報現業などで、感染にシビアなオペレーションになっているかと思いますが、今後どういった対策を取る予定でしょうか。
A : これまでもずっと対策を続けてきており、手洗いをする、マスクをする、会食については少人数にする、また現業室につきましては、基本的に現業室自体が汚染されると現業室が使えなくなりますので、そういったことがないように、全国の現業室においても、どうしても現業室に入らないといけない職員以外は基本的に入らないという措置を取って参りました。まじめな職員が多いので、しっかりとそのようなルールを守っていただいたおかげで、これまで気象庁内では感染者は1名にとどまっているところでございます。感染した職員は気象大学校の寮に住んでいたので、感染が判明した時には、我々も寮内で感染者が増えることを心配したのですが、しっかりと寮内でも感染拡大防止対策を取っていただいたということで、感染者はこの1名にとどまっているということなので、今の対策を今後も続けていくということが重要だと思っています。

Q : 洪水予報の関係で、民間の予報許可を検討するという動きがあると聞いてますが、その進捗について聞かせてください。
A : 洪水予報については、気象業務法上は気象庁長官の許可が必要となっていますが、一つは災害に直結するような現象であること、もう一つは気象現象だけでは予測が定まらない部分、例えば人為的なダムの操作や、河川の改修の状況などの人為的な要素も含めて別の要因が絡むといった点がありましたので、通常の雨や天気の予報と比べるとハードルが高いということで、これまで予報業務の許可をした例はなかったということが現実でございます。一方で様々な技術が向上してきまして、洪水についても予測するための新しい技術ができてきたこと、また実際に民間からも予報業務をしたいという要望もいくつかいただいているということがございますので、改めて、洪水ですので我々だけで出来る話ではありませんので、国土交通省水管理・国土保全局と共同で、現在の洪水に関する予報技術を色々と調査した上で、洪水予報業務のあり方について、有識者を入れて検討を進めようということまで決まったところでございます。これから詳細を詰めていくところでございます。

Q : 今おっしゃったように、技術の進展というところもあるかと思いますが、昨今、特に河川の氾濫で印象に残っているものも多いですが、そのような災害が頻発している状況なども踏まえての動きという理解でよろしいでしょうか。
A : その部分はないということではないのですが、そこは民間側から洪水の予報をしたいという要望の中に入っているのだろうと思っています。我々としては、民間側からの要望があるということと、技術が進んできて、こういった難しい予報も民間でも十分にできる部分ができてきたのではないかということで、これから有識者を入れて検討する話ですので、どのような結論になるかは分かりませんが、そこはしっかりと検討していきたいということでございます。

Q : 交通政策審議会気象分科会の提言の中で、産学官の連携として協議会のようなものを作るということがありましたが、今のことにも少し絡むと思いますが、産学官の連携については今の気象庁の状況を踏まえると、どこに重要性があるとお考えでしょうか。
A : 産学官の連携については、先月の長官会見でお話させていただきましたが、従来、官民の役割分担のようなものがありまして、官がやることと民がやることに一定程度の境界を設けていたということは事実ですが、どちらかというと、役割分担と言いながら競う部分があったり、あるいは役割分担の中でそれぞれが勝手にやっている部分があったことは事実だと思っています。ある意味切磋琢磨していくということは、お互いに技術を高めるという面では決してマイナスだけではないのですが、災害が頻発し、国として災害の防止軽減に力を注いでいくことに焦点を当てていくとなると、それ以外の部分については、どうしても民間の方に頑張っていただくということが必要だろうと思っています。したがって、今までは境界を設けて勝手にやっていたことを、できるだけ手を結んで、ある意味隙間のないように、官と民が様々なことをやることによって国民の期待や要望に応えられるような気象業務のあり方を目指していくということだろうと思っています。

Q : 今のお話ですと、民間の力を借りながら、気象庁としては防災により特化していきたいというようなお考えでしょうか。
A : 特化すると言うと、それだけしかやらないというように受け取られると少し違うのかもしれませんが、防災に関しては国が自らしっかりとやるべき話だと思っていますし、これだけ災害が増えてくると、そこには相当の力を傾注しないといけません。一方で、民間でできることがあるのであれば、そこは民間にお任せするという部分は当然あるのだろうと思っていますので、うまく隙間ができないように、国民としてニーズがあり、なおかつ民間でもできないようなことであれば、誰かがやらなければなりませんので、そこは民がやるのか官がやるのか議論していくのですが、とにかくそういった国民のニーズに応えられるように、それを最大限無駄がなく効率的にできるような姿が望ましいのかなと思っています。

Q : 洪水予報の民間許可についてですが、国土交通省と気象庁で出している今の洪水予報、民間ではなく行政で出している今の情報について、より改善を図っていくべきという声もあると思いますが、その点についてはいかがでしょうか。
A : 洪水予報の技術について様々な新たな技術が出てきています。こういった技術については我々も積極的に取り入れて、我々の今の洪水予報で改善できる部分があれば新しい技術をしっかり利用して、より良い指定河川洪水予報や洪水警報に活用していきたいということはそのとおりでございます。

Q : 来年に向けても改善の議論を進めていくというお考えでしょうか。
A : 今回有識者の検討会で議論する項目は三つありまして、一つは今の技術がどの程度信頼性の高いものなのかといったことも含めて、しっかり今の技術の最前線についてレビューした上で、洪水予報の予報業務のあり方を議論し、この中で官民の役割分担も議論されると思います。その上で、実際に民間に洪水予報の業務許可を与えるにあたっての審査基準や許可基準といった細部についても議論していきたいと思っています。


(以上)

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